リウマチ性多発筋痛症

平野亜紀・もとぶ野毛病院(2015年3月13日掲載)

 高齢者の方で、ある日突然、朝のこわばりや筋肉痛、関節痛が出現し起き上がれなくなる病気があります。「リウマチ性多発筋痛症」という病気です。原因不明の慢性炎症性疾患で、50歳以上の中高年に発症します。リウマチという名前はついていますが、関節リウマチとは別の病気です。肩や上腕、後頸部、腰背部~股関節、大腿にかけて朝のこわばりや筋肉痛、関節痛、関節の動きづらさを認めます。「朝に肩が30分以上固まる」「朝は肩や腰が動かず、ベッドから起き上がれない。服を着られない」「夜中に肩や腰の痛みで目が覚める」などが典型的です。また持続する微熱やだるさ、食欲低下、体重減少、抑うつなどの全身症状も伴います。


 症状は急に始まり、2週間以内に病勢のピークを認めることが特徴ですが、治療しないとそのまま続くため、数カ月にわたり徐々に進んだようにみえることもあります。特徴となる症状や検査所見などを組み合わせた診断基準が診断の助けになります。


 男女比は1対2で女性に多く発症年齢のピークは70~80歳とされています。遺伝的素因や環境素因などが考えられていますが、現在のところ原因不明です。なお、他の人に伝染する病気ではありません。


 有病率は地域差があり、イギリス、北欧では年間発症率が10万人あたり41・3~112・6人と高いのに対し、南欧では12・7~18・7人と低く、アメリカの報告では50歳以上では生涯のうち女性の2・43%、男性の1・66%が発病するとされています。一方、わが国での正確な調査は少なく情報は限られますが、50歳以上の人口10万人につき約1・5人と、海外と比べて少ないです。しかし決してまれな病気とは言えません。


 治療はステロイドがよく効きます。治療開始後1~2週間以内に改善し始める例も多く、改善がみられたら少しずつ薬を減量します。一定の減量が得られた後も1年以上のステロイド治療が必要な例が多く、副作用である骨粗しょう症の対策が必須になります。ステロイド治療の効果が乏しい際には、合併症や他の疾患の鑑別が必要です。


 聞きなれない病気ですが、正しく診断されればコントロールが可能です。皆さんの周りで、いつも元気なおじいさん、おばあさんが突然、肩や腕の痛みが長引き、カチャーシーやバンザイができずに落ちこんでいる方がいらっしゃいましたら、なるべく早くリウマチ専門医にご相談いただければと思います。

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