運動する習慣が大切

上里博光・上里整形外科(2015年3月6日掲載)

 日本人の平均寿命は世界1です。そのため、日本では急速な超高齢社会を迎えつつあります。これから自分らしく生きるためには健康寿命が重要になります。健康寿命とは、日常的に介護の必要が無く心身ともに健康で、自立した生活ができる期間です。2010年の統計では、日本人の平均寿命は男性が79・5歳、女性が86・3歳です。一方、健康寿命は男性が70・4歳、女性が73・6歳で平均寿命と比較すると男性が9年、女性が12年余り短いのです。


 その間は病気等で自立した生活ができず、介護が必要になる期間です。この健康寿命を縮めている主な原因が、脳血管障害(脳出血や脳梗塞)、認知症、骨折や転倒などの運動器疾患です。わが国では高齢化の進展に伴い、運動器疾患患者が急増しています。


 運動器疾患とは、骨、関節、筋肉、神経などの運動器が傷害され、痛みや機能障害のため日常生活に支障を来す病態です。要支援、要介護の原因の第1位がこの運動器疾患です。しかし国民の認識は意外と低く、足腰が弱ってくるのは年のせいだと諦めている人も多いのです。


 高齢者の運動器疾患を放置すると、痛みや転倒、骨折などにより要介護や寝たきりの引き金になります。ひとたび要介護状態になると健康な状態に回復させるのは大変困難です。そこで運動器疾患の重要性を広く国民に認知してもらうために、日本整形外科学会では07年に「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」という概念を提唱しました。


 加齢に伴う運動器疾患(ロコモ)は今や「国民病」と言っても過言ではありません。足腰の筋肉は40歳を過ぎたころから衰え始め、75歳までには筋肉量が約半分になり転倒や骨折の危険が増大します。運動機能を長期にわたって維持していくためには、若いころから運動する習慣を付ける事が重要です。1日30~40分のウオーキングを週3~4回を目標に行ってください。


 足腰の不自由な高齢者はロコモ体操(左右交互に1分間の片脚立ちや両膝を軽く曲げるスクワットを1日3回)や大腿四頭筋訓練から始めるのが良いでしょう。ゲートボールやグラウンドゴルフは、仲間同士で楽しくでき、認知症の予防効果も期待されています。


 運動はメタボを解消し、脳血管障害を減らすのにも有効です。幾つになっても自分の足で歩ける「動く喜び、動ける幸せ」を大切に!

このページのトップへ