50代以降は要注意
野口隆史・浦添総合病院(2015年2月20日掲載)
人体にはたくさんの関節がありますが、その中でも肩関節は可動範囲が広く、日常生活のさまざまな場面で使用するため痛めてしまうこともめずらしくありません。肩腱板(けんばん)断裂もその一つといえます。
腱板とは、肩甲骨と腕の骨をつないでいる腱をいい、この腱が切れた状態が腱板断裂です。年をとるにつれ腱板は柔軟性を失い、徐々に擦り切れていきます。腱板が弱くなった状態で、転倒して手をついたり、重いものを持ち上げたときなどに切れてしまったり、全くけがをした覚えなく腱が切れることもあります。
50~60代以降に多くみられ、仕事やスポーツなどで肩関節を酷使してきた人は要注意です。主な症状は、腕を上げ下ろしする際にひっかかりを感じたり痛みが生じる。腕が上がらない、腕を上げ続けることが難しいといったものです。
夜間に痛むのも特徴の一つです。腕が上げにくいなどの症状は四十肩とも似ています。痛みは常に感じているものではなく、一時的に消えることもあるので、腱板が断裂していることを自覚できず、四十肩だから仕方がない、いま痛んでもまた治ると軽く考え、治療しないでいる人も多くいます。腱板断裂は、レントゲン撮影では写りませんが、MRI(磁気共鳴画像装置)を使うと患部がはっきりと確認できるので、確定診断には欠かせません。
腱板断裂の治療としては、まず保存的治療法があります。この治療法は、疼痛(とうつう)を緩和させる薬物療法と、リハビリによる肩の協調運動訓練などの方法があります。ただ保存療法では、断裂した腱板をつなぎ合わせるわけではないので、根本的な治療にはなりません。症状が軽い患者さんなら、一時的に痛みがとれて、その後の生活に大きな不自由がなければ、それでもいいという場合もあります。
一方、断裂した腱板をつなぎ合わせるための手術治療があります。腱板断裂の多くは、骨から腱が引きちぎれるように断裂するので、切れた腱を骨に縫い付ける必要があります。
一般的な手術療法は、肩の周囲4、5カ所に約1センチの皮膚切開を加え、内視鏡下に断裂した腱の端に糸を掛け、骨に縫い付ける方法です。手術後はリハビリを行い、肩の機能回復に努めます。肩関節はスポーツだけでなく、頭を洗ったり、服の着脱など腕を使う動作のほとんどに関連しています。肩の症状でお困りの方は、整形外科の受診をおすすめいたします。