ストレッチで心と体の柔軟性を
甲斐田和博・東風平第一医院(2015年1月30日掲載)
ストレッチは筋肉を意識して伸ばすことで、筋の柔軟性、敏捷(びんしょう)性、関節可動域の改善など心と体に効果のある手技です。1960年代、米国で考案されました。スポーツ競技の準備、整理運動にとりいれられ、競技中のケガの防止や競技後の緊張した筋や気持ちをほぐすのに有効です。80年代になると一般に広まり、日常生活でも利用されています。
ストレッチには筋肉をゆっくり伸ばす静的型と、弾みをつけて伸ばす動的型がありますが、一般には静的型をいいます。動的型はスポーツ競技などに使われます。
筋肉には伸ばすと縮む性質があり、これを伸張(しんちょう)反射といいます。伸張反射は(1)筋を適度に緊張させ、姿勢を保持する働き(2)筋を早く伸ばすと早く、ゆっくり伸ばすとゆっくりと出現する(3)人の意思でコントロールできる-の性質があります。
ストレッチでは、伸張反射を抑えることが必要です。簡単に手技を説明すると、筋をゆっくり伸ばし張りを感じたら(伸張反射の出現)20~30秒そのままにし(筋肉の伸びを意識する)、筋の張りがとれたら5~10秒再び伸ばし、終わります。筋の張りがとれなければ、再び伸ばすことはやめてください。
ストレッチには腹式呼吸が有効です。効果は次の通りです。
(1)筋の血流が増え、多くの栄養と酸素が送られ筋が活性化します。すると筋の柔軟性・敏捷性が増し、それが関節可動域も改善させ転倒や捻挫等を防ぎます。その結果日常の活動が改善します。また血流の増加は筋内の老廃物を取り除き、腰痛、関節痛、肩こりなどに効果があります。
(2)腹式呼吸と筋の伸びを意識することで気持ちがほぐれ、心と体をリフレッシュし睡眠や日常生活での過剰なストレスに効果があります。
(3)筋肉にある多くの動脈が活性化され、動脈硬化の予防・進行防止にも期待されています。
次の症状のある時はストレッチは禁止です。(1)発熱、急な痛み(腰痛、関節痛)(2)飲酒後、気分不良時。注意としては、寒い時は体を温めてから始める、筋肉に痛みを感じるまでは伸ばさない、などです。
ストレッチは、老若男女を問わず、どこでも、いつでもできます。継続することでこつもわかり上手になります。とくに中高年には生活習慣病の予防にも、おすすめします。手技の詳細はストレッチ関連の本を参照してください。