麻しん風しん混合ワクチン
野原薫・のはら小児科医院(2015年1月23日掲載)
沖縄県は第1期44位、第2期46位。これは全国学力テストの順位ではありません。2013年度の麻しん風しん混合(MR)ワクチン接種率の順位です。MRワクチンの接種対象は第1期として生後12ヵ月から24カ月までの幼児、第2期として小学校入学前の1年間です。麻しんの流行をなくすには95%以上の接種率の維持が必要です。
県内の接種率は第1期が92%、第2期が89%で、このままではいつでも流行する可能性があります。本年度の全国の麻しん患者数は5年ぶりに増加しており、400人以上となっています。1998年から99年の大流行の際は県内で8人の乳幼児が死亡しました。麻しんは感染力が強く、生命に関わる非常に怖いウイルス感染症で、特効薬はなく、千人に1人が死亡します。
しかし予防は簡単で麻しんワクチンを接種するだけで、ほぼ確実にかからなくて済みます。麻しんワクチンの接種はあらゆる医療行為の中で最も費用対効果が高く、近い将来、世界中から麻しんを排除することができるとされています。日本では78年から麻しんワクチンの定期接種が始まっていますが、いまだに麻しん患者がいることに、小児科医の一人として恥ずかしく思っています。
約10年前から全国の小児科医が声を上げ、行政に働きかけ、やっと最近3年間のMRワクチン接種率は第1期が95%に達しました。しかし、いまだに毎年5%近くの子供たちはMRワクチン接種を受けていません。これらの未接種の子供たちがある程度の数になると、散発的ですが流行する可能性があります。定期予防接種の実施主体は市町村で、未接種の子供たちを把握できるのは市町村だけです。定期予防接種は行政には積極的に勧奨する義務があり、保護者には努力義務があります。
MRワクチンの接種対象期間は第1期、2期共に1年間に限定されていますので、注意が必要です。現行制度では未接種の子供たちは定期予防接種の対象外となり、約1万円の自己負担で接種することになります。未接種の原因としてうっかりミスの他に、親の無理解、貧困、離婚などの諸事情があり、行政の支援が必要と思われます。予防接種を受けることは、子ども個人のためだけでなく、病気を流行させないことで社会全体も恩恵を受けますので、すべてを無料化するべきではないかと思います。