蚊媒介感染と沖縄

石田眞一・沖縄セントラル病院(2015年1月16日掲載)

 ある病原体に感染した蚊が人を吸血することで、その病原体が人に感染して病気を引き起こす事があります。


 その一つであるデング熱は、過去60年以上、日本国内での感染、流行はありませんでした。しかし、2013年8月に日本だけを旅行したドイツ人女性が帰国後、デング熱を発症。さらに昨年8月には東京都の代々木公園に立ち寄った首都圏在住の複数のデング熱の患者が報告されました。患者は全国各地で報告され、昨年10月末で、160人(都内108人)でした。


 デング熱の病原体はデングウイルスで、このウイルスに感染した人を蚊が吸血し、蚊に感染し、その蚊が別の人を吸血して、新たな感染が成立します(人↓蚊↓人)。世界で年間約1億人が発症します(そのうち約25万人が出血熱です)。


 デング熱の潜伏期間は3~14日くらい。頭痛、筋肉痛など風邪のような症状です。しかし、約1%に出血熱の症状があり、重症化することもあります。特効薬やワクチンはありません。対症療法のみです。


 日本でも海外旅行で感染して、帰国後に発症する症例が、毎年200例以上報告されていますが、昨年のデング熱の流行は、デングウイルスに感染した人が日本で蚊に刺され、さらに別の人をその蚊が刺すことによって起こった事が問題です。デングウイルスが日本に定着する可能性があるからです。


 もっとも、以前は日本に定着していたと思われ、明治26(1893)年に最初のデング熱の流行が沖縄県で報告されています。その後、沖縄県では、十数回の流行があり、最後は昭和30(1955)年でした。


 ウイルスを運ぶ蚊は日本ではヒトスジシマカという種類です。青森県以南で生息し、沖縄では冬でも活動するため、沖縄は定着しやすい地域だといえます。


 県衛生環境研究所報第40号(2006年)によると県内8地点での蚊の採集でヒトスジシマカは全体の3・4%存在したものの、遺伝子検査ではデングウイルスの遺伝子は検出されませんでした。


 しかし、お隣の台湾はデング熱の流行地です。亜熱帯気侯で観光産業が盛んで、また米軍基地もある沖縄県は、デング熱に限らず、マラリア(マラリア原虫による)、日本脳炎(日本脳炎ウイルスによる)など、同様の蚊媒介感染症に対する注意、蚊の撲減などの対策が必要です。


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