子どもの包茎

名城文雄 なしろハルンクリニック(2014年12月19日掲載)

多くは成長で解決

 男の子の包茎を気にする親からしばしば相談を受ける事があります。包茎とは、ペニスの先端を包む皮膚の口が狭いため亀頭を完全に露出できない状態をいいます。米国では新生児期または乳児期のうちに包茎の手術(環状切除術)をする風習があり、イスラム教やユダヤ教では宗教上の理由で新生児期に手術(割礼)が行われています。


 では「子どもの包茎は早めに治療をしたほうが良いのか」という疑問について考えてみましょう。


 本来新生児の陰茎は包茎の形をしており亀頭と包皮がくっついているのが正常で、成長とともに亀頭と包皮が徐々にはがれてきて亀頭が露出するようになります。


 亀頭が完全に露出するまでには個人差があり、包茎の割合は生後6カ月で80%、1歳から5歳の幼児では約60%とされています。


 思春期(14~15歳ごろ)でも完全に亀頭が露出しない子は少なくありません。以上の事から、子どもの包茎はほとんどが年齢とともに自然に亀頭が露出してくる事が多いため放っておいても良いと思います。しかし次の場合には治療が必要となりますので注意してください。


 (1)包皮の癒着が強く、尿が出し辛く排尿の妨げとなる場合。排尿の際に、亀頭と包皮の間に尿がたまってしまい、おちんちんの皮が風船のように膨らんで、おしっこの線も細くなることがあります。


 (2)亀頭包皮炎。亀頭部と包皮の間にたまったあかに細菌が繁殖し炎症をおこした状態をいいます。陰茎は赤く腫れあがり、膿(うみ)が出て痛みを伴うようになります。


 (3)膀胱(ぼうこう)炎や腎盂(じんう)腎炎等の尿路感染症を起こしやすい場合。


 (4)嵌頓(かんとん)包茎を起こす場合。包皮を無理に引っ張って亀頭を出した場合に、包皮がもとに戻らなくなっておちんちんの先が締め付けられ腫れてくることがあります。これを嵌頓包茎といいます。なおこの状態が長く続くと亀頭部の血行が悪くなり組織が壊死(えし)しますので早急にもとに戻してあげなければいけません。


 このような場合、かつては手術をしていましたが今ではステロイド軟膏(なんこう)を塗りながら狭くなった包皮を少しずつ広げていく治療(包皮ほんてん指導)が広く行われています。両親が時間をかけて包皮の皮を伸ばし、亀頭を露出させてあげる根気の要る方法ですが多くの例に効果があります。ただしこつがありますので泌尿器科医、小児外科医、小児科医等に相談してみるのが良いでしょう。

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