光の感度低下に注意
中山貞之・中山眼科(2014年12月5日掲載)
現代は車社会で特に鉄軌道のない沖縄では、車の運転ができなければ仕事や日常生活に不自由で行動も制限されます。老若男女だれでも車を運転しますが、高齢者の運転には注意が必要です。今回は目の性質で暗順応について説明します。
映画館に入ると、スクリーン以外は何も見えなくなる経験はありませんか。しばらくたつと、だんだん周囲が見えてきて暗さに慣れます。これを暗順応といいます。暗いところに長くいるにつれて、少ない光の量でも見えてきます。つまり目の感度が上昇していくことを示しています。
目には網膜に光が入ってくると、それを吸収して生体反応を生ずるセンサーがあります。大きく分けると、センサーには2種類あります。一つは錐体(すいたい)で、もう一つは桿体(かんたい)と呼ばれるセンサーです。
錐体は昼間のセンサーで明るいときに働きます。桿体は夜間のセンサーで暗いときに働きます。二つの性質の大きなちがいは、錐体は色を見ることができること、桿体は色を見ることはできないですが、光に対する感度はとてもよいということです。
錐体も桿体も正常なら、目は感度をゆっくりと増して状況に対応します。錐体は青色に強く、青い色の服は夜、暗いところでもよく映えます。
桿体が働いている暗いところでは、赤い色は黒くなって見えにくくなります。夜、赤い服は車の運転する人には見えにくいということを覚えておくことも大切です。
暗いところで高齢者の目の感度が上がらないのは、瞳孔の大きさと、水晶体の透過率が原因です。人の瞳の大きさは真っ暗なところで直径8ミリまで広がります。
明るいところでは2ミリくらいになります。この間を外の明るさに応じて変化します。水晶体の光の透過率の減退は、年齢とともに落ちています。
落ちる度合いは短い波長の領域で著しく、480ナノメートルの青い光に対しては21歳の水晶体は70%の光を通すのに、63歳は40%です。美しい青い花を見ても、かなり黒ずんで見えていることになります。
車の運転には、遠くが見える、広い範囲が見える、空間認知、危険回避、瞬時の判断等の視機能のあらゆる能力が必要です。
高齢者は老化に伴う目の機能の低下(視力の低下、視野の狭小化による夜間運転の危険、空間認知による速度や車間距離の不安定)や判断力低下による信号機の誤認等があるため運転には注意が必要です。