野球による子どもの肘故障

大嶺啓 スポーク・クリニック(2014年11月28日掲載)

 沖縄県内初のスポーツジムとクリニックが併設された名護市スポーツリハビリテーションセンターが名護市屋部に開設されて6年目を迎えました。過去5年間で当院を受診した患者の46%はスポーツ傷害です。年代別では小中高生の成長期の子どもたちが64%と非常に多く、種目別では野球、バスケット、サッカーの順。野球で最も傷害が多かった部位は肘関節でした。


 野球による肘の障害、いわゆる野球肘は成長期にボールを投げすぎることによって生じる障害で、投球時や投球後に肘が痛くなります。肘の伸びや曲がりが悪くなり、急に動かせなくなることもあります。投球動作で肘への負荷が過剰となることが原因で、肘の外側で骨同士がぶつかって骨・軟骨がはがれたり痛んだりします。また、肘の内側では引きのばされる力が加わり靱帯(じんたい)・腱(けん)・軟骨が痛みます。


 診断はエックス線検査やMRI検査で行いますが、痛みがひどくなったり、肘の動きが悪くなってから受診することが多い傾向です。最初は投球時に痛みが出現し、休めば良くなるので大丈夫だろうと思うからです。痛くても休みたくないとか、チームに迷惑をかけたくない理由で我慢をしている場合もありますので、痛みを感じたら早めに受診することが重要です。


 治療は投球禁止ですが、骨軟骨がはがれた場合には手術が必要になることがあります。投球禁止の期間にリハビリテーションを行い投球フォームのチェックと修正を行う方が良いと思います。


 野球肘の予防に必要なのは投球数の制限です。日本臨床スポーツ医学会は野球障害に対する提言で、全力投球数を小学生は1日50球、週200球以内、中学生は1日70球、週350球以内、高校生は1日100球、週500球以内としていますが、順守されていません。実際、甲子園大会での連投や投球過多があり、今年は軟式高校野球大会での延長50回も話題になりました。その後、検討されている延長タイブレーク制導入に賛成です。


 成長軟骨が存在する小中学生は骨や関節に障害を起こしやすく、正常な成長過程が阻害されて痛みを生じたり、将来、変形を引き起こす可能性がありますので投球数の制限は必要です。遠投も肘にかかる負担が大きいので、厳重に制限しワンバウンド送球を徹底してください。


 指導者や保護者も一緒に障害予防に取り組みながら、子どもたちには大好きな野球を楽しんでほしいと思います。

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