アルコール依存症のたどる道

仲本政雄・博愛病院(2014年11月21日掲載)

重度の認知症発症も

 11月は精神保健福祉月間です。今年のテーマは「沖縄の飲酒文化を考える」であります。県内のアルコール依存者の多くは、沖縄の飲酒文化に起因するといっても過言ではありません!


 依存症は糖尿病や高血圧と同じく生活習慣病みたいなもので、ほぼ毎日、日本酒(15%)に換算して約4合~5合を10年間飲んでいたら、振顫(しんせん)せん妄(もう)(自律神経機能亢進(こうしん)や幻覚などの症状)を起こし、重度の依存症になるといわれています。初期症状としては、晩酌しないと眠りづらいぐらいですが、次第に飲酒欲求が強まり、やがて昼間から飲酒するようになり、飲酒上のトラブル(無断欠勤、酒気帯び運転、DV、肝機能障害、糖尿病、痛風等種々のアルコール関連問題)が出現し、さらにひどくなると、離脱症状として、夜間の不眠、イライラ、手のふるえ、痙攣(けいれん)、幻覚症状がみられるようになります。そんな時はアルコールリハビリテーションプロクグラムによる入院治療が必要となります。(約2~3カ月)。


 依存者の多くは自ら依存症であるとの自覚が乏しく、進行してからやっと「酒をやめるチャンス」にぶつかります。まず飲酒が原因での欠勤が多くなり、職場から、酒をとるか仕事をとるかの決断を迫られる時がその時です! その時に断酒を決意し成功する人もいますが、多くは再飲酒を繰り返し、職を失い、経済的に行き詰まり、毎日酒のことで夫婦げんかをするようになり、離婚や家庭崩壊の危機を迎え、やがて酒をとるか家庭をとるかの決断を迫られる時がきます。


 その時こそまた酒をやめる大きなチャンスで、家族の説得により、入院して立ち直る人も少なくありません。他方、いったん断酒に成功しても飲酒欲求に負けて、結局、離婚、家庭崩壊の道をたどる人が多いことも残念ながら実情です。家族からも見放され、歯止めがなくなると、その後はますます酒浸りの生活となり、人生転落の一路をたどります。


 しかし、そのような状態になってからでも、入院治療により立ち直った方もいます。その時は余りにも失ったものが多すぎますが、それでもまだ救われる方で、さらに重度になると、コルサコフ症候群という脳の一番大事な記憶の中枢がおかされて、重度の認知症となってしまいます。


 病気は何でもそうですが、早期に気付き、早期に治すことが肝心です。依存症が疑われたら、最寄りの精神科にぜひ相談してください。

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