がんの早期発見・治療

上里一雄・おもと会 介護老人保健施設はまゆう(2014年11月14日掲載)

発症因子は生活習慣

 長年、がんの診療に関わってきた経験を踏まえ、いま一度がんの早期発見・早期治療について考えてみます。沖縄県のがんの動向をみると、男性は肺がん、大腸がん、胃がん、肝臓がん、前立腺がんの順に多く、女性は乳がん、子宮がん、肺がん、大腸がんの順となっています。男性は40歳代から、女性は30歳代から増加の傾向にあり、身近でも時々相談を受けます。


 がん発症の危険因子は男女を問わず生活習慣(喫煙、飲酒など)、肥満等が関わり、2005年の沖縄県のがん死亡数は2516人と死亡総数に占める割合は約3割となっています。県内の市町村の検診受診率は約1~2割とかなり低いのが現状です。


 喫煙は単独でも、がん全体の原因の約3割を占めるといわれ、がんのリスクが上昇するものとして、肺がん、喉頭がん、口腔(こうくう)・咽頭がん、食道がんなどが挙げられます。特に肺の扁平(へんぺい)上皮がん、小細胞がんは、たばことの因果関係が指摘されています。また、これまで経験した食道がんの患者さんの9割以上は濃度の高いアルコール飲料と喫煙を同時にとっていました。食道がんを予防するためには、喫煙をやめ、野菜や果物を多くとり、飲酒、熱い飲食物を控えることが大事です。肺がんの予防も同様です。


 自らのがん体験を述べます。55歳の時、職場の検診で胸部エックス線写真を読影し、肺尖(はいせん)の鎖骨の上に髪の毛ほどの線を発見しました。肺腺がんの可能性を感じてすぐにコンピューター断層撮影(CT)検査を受けました。案の定、肺腺がんの典型的な特徴を有していました。


 私は肺がんの専門診療をしていますが自分では手術できないわけで、自ら紹介状を書き、資料を持参して、先輩の肺がん専門医に相談しました。余計な検査はせず、即刻手術の日程を組んで無事終了しました。定年前には、違う部位のがんを発見して内視鏡手術により治療を受けました。これらのがんは喫煙とは関連性のないものです。2回目の肺がんの治療経験は定年後でした。別のがんの治療後のエッスス線写真を読影時に自分で見つけました。


 私はたばこが嫌いで一切吸いません。アルコールはほどほどにたしなんでいますが、医者の不養生を地で行っているかもしれません。もう5年以上たつので再発の危険は若干低くなっていると納得することにしています。こうした経験から強調したいのは、がんは早期発見・早期治療が大事であるということです。

このページのトップへ