除菌で胃がんを抑制

玉城政弘・たまきクリニック(2014年10月17日掲載)

 人間ドックの胃カメラあるいはバリウム胃検診で、自覚症状も無いのに慢性胃炎と診断された事はありませんか? また、ご家族や知人に胃がんをわずらった方はいませんか? 粘膜に炎症があっても自覚症状の無い方が多いのです。慢性胃炎の原因はピロリ菌が原因です。ピロリ菌は子供のころに感染し長期に胃内にすみつき、胃粘膜に炎症を起こし慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんの原因になります。40歳以上の日本人の70%以上が感染しているといわれています。


 胃がんの原因について多くの研究が行われ、いくつかのリスク要因が指摘された中でピロリ菌の持続感染が密接に関連している事が明らかになっています。今まで胃潰瘍、十二指腸潰瘍の除菌や除菌治療が保険適用されていましたが、去年の2月から慢性胃炎が追加されました。慢性胃炎に対する保険適用で、これから胃がん予防のための除菌治療が一層進むと思います。


 厚生労働省発表の2011年人口動態統計によると、日本人の死因は悪性新生物(がんなど)が一貫して上昇を続け、3・5人に1人は悪性新生物で死亡したと報告しています。国立がん研究センターの最新統計によれば、罹患(りかん)率と死亡率は胃がんが相変わらず男女計でトップです。


 一方、胃がんの死亡率は年々減少傾向にあります。診断技術の進歩により早期発見された事と合わせて治療技術の進歩によるものです。日本人は世界的に胃がんが多い人種ですが、幸い沖縄県は全国で一番少ない県です。


 胃がんの診断学は日本から始まったと言っても過言ではありません。早期胃がんを発見しようと切磋琢磨(せっさたくま)した多くの先人の努力があります。集団検診で行われているバリウム検査は日本で開発されました。


 除菌の保険適用は内視鏡検査をまず受けて、ピロリ菌感染胃炎と確定診断されることが条件です。ピロリ菌の感染診断方法には現在6種類の方法が保険適用されています。1次除菌の成功率は80%。2次除菌も保険適用されています。除菌は抗生剤と胃薬を組み合わせた服薬しやすいパック製剤を7日間服用しますが、下痢などの軽度な副作用以外はありません。自己負担は1割負担で490円、3割負担で1470円です。


 除菌すれば胃がん発生が3分の1に抑制されます。しかし除菌成功した患者も当然胃がんのリスクは残りますので、除菌成功後も年に1回の胃カメラ検査は必要ですのでお忘れなく。

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