健康農業のすすめ

松股孝・海邦病院(2014年8月15日掲載)

 高齢者の仲間入りをすると、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病を超えて、生活機能維持が一層大切になります。そのためには、適度に紫外線にあたるなどして体内にビタミンDを増やして骨や筋肉を強化しなければなりません。ビタミンDは、がん発生防止効果や感染症防止効果も知られるようになりました。


 暗くなるとセロトニンからメラトニンが作られます。メラトニンは免疫力を高め、睡眠をもたらし、心臓などの働きをよくする作用をもっています。そのためには、朝、日光を浴びて、脳にある松果体のメラトニン分泌をいったんとめておく必要があります。 脳細胞は酸素不足に弱いので、十分な血液を脳に届けられなくなると覚醒機能が働いて不眠症になります。不眠症防止には心臓を鍛えておく必要もあります。


 天地返しをしながらひげ根を取り除き、つぎの作物のために見栄えの良い畝を作る作業は心身を賦活してくれます。びっしょり汗をかき、汗につられて鼻水の分泌まで多くなることがあります。そのような日に感じる疲労感は、幼い頃の大声を張り上げて泣いた後の爽快さによく似ています。週1回のストレス発散に効果的なはずです。


 夏草をみていると、大地の栄養を奪っているのではなく、太陽の恵みを大地に固定してくれていることが実感できるようになりました。


 私はあと数年すれば、みごとに高齢者の仲間入りができます。「半農半医」の生活をおくることを目標にしています。医は食に、食は農に、農は自然に学べが大切です。自然とは土作りですから、不耕起農法もやってみたいです。


 津波で家をなくし、農地をなくし、家族をなくし、3年以上たったいまも仮設住宅にお住まいの皆さんが、野菜作りに取り組んでいます。3、4カ月に1度、現地に赴いて健康管理をさせていただいています。


 「息子をなくし、うつうつしていたが、健康農業に参加して、頭のもやもやがとれてきた」と言う人。「3カ月間も声がでませんでした」と言う人。腎臓の働きを示す血清クレアチニン値が改善している人や高血糖の状態を示すヘモグロビンA1cが低下している人もいます。健康農業は、メンタルヘルスにもってこいです。


 8月の祝日が「山の日」。7月の祝日は「海の日」ですね。6月の祝日が「農業の日」になれば三拍子。「早引きをせし子供らは 水田に姿映して 田植のおとも」のような国になりましょう。

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