不十分なイベントの安全管理

野原昌亮・野原整形外科(2014年5月30日掲載)

 「イベントの万全なる救護体制のため、医師の派遣をよろしくお願いします」との文面で、医師派遣依頼が医師会にきます。


 しかしイベントによっては十分な救護体制・機材がそろっておらず、万全な体制をつくることは難しいです。安全管理は医師1人だけではなく、主催者、スタッフ、イベント参加者などの協力があって初めて成り立ちます。


 日本には、急病になった人を救うため無償で善意の行動をとった場合は例え失敗しても責任を問われないという趣旨の「善きサマリア人の法」はありません。


 事故の際、派遣医だけでなく救護に参加した方々の責任が問われた場合に必要な保険の状況も不確かです。安心して協力できる環境をつくってもらいたいものです。


 さて、これから熱中症が増える梅雨明けの季節になります。熱中症は気温だけ注意するのではなく、気温が23~24度でも湿度が90%にもなると死亡事故が起こることがありますので十分注意してください。


 水分補給は塩分も一緒に取らないと、熱けいれんを起こします。OS-1(オーエスワン)という塩分補給に優れた飲み物が市販されているので試してみてください。


 突然死は心臓が原因のことが多いです。困ったことに、事前に自覚症状がなくても起きる場合があります。過去に心臓の病気の指摘を受けた方は積極的に検査を受けてもらい、体調を考慮してイベントに参加していただきたいものです。


 心臓発作に使用するAEDはイベントの救護ボランティアも習得し、参加者にもゼッケンを配る際などに1度触ってもらうような機会があるといいですね。


 心肺蘇生はチームで行い、マッサージは2分ごとの交代が基本となっています。事前に訓練すると、交代要員が多くでき救命率が高くなるはずです。


 人工関節手術後の過度の運動は要注意です。外国では、人工膝関節後にテニスなどをすると早く破損するという報告があります。かかりつけ医とよく相談して運動をすることをお勧めします。


 また、ジョガーが過度な厚着をして走っているのを見かけますが、脱水による一時的な体重減を起こすだけで減量にはあまり意味がないのでやめたほうがよいと思います。


 上下黒ずくめで夜間路上を走ると、交通事故に遭う危険があります。ぜひ目立つ色で、視認しやすい時間帯に走った方が安全だと思います。


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