健康長寿とロコモティブシンドローム
砂川憲政・とおのくら整形外科(2014年5月16日掲載)
完全生命表(厚生労働省)で2010年の平均寿命は男性79・55歳、女性86・30歳です。健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間を健康寿命といいますが、同年の健康寿命は男性70・42歳、女性73・62歳となっています。
平均寿命から健康寿命を引くと男性は約9年間、女性は約12年間は何らかの介護を要す期間となります。
要支援・要介護の原因は、2010年の調査で「関節疾患」「骨折転倒」などを合わせた「運動器の障害」の頻度が最も多いことが示されています。
運動器とは身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称です。運動器はそれぞれ連携して働いており、どのひとつが悪くなっても身体はうまく働きません。また複数の運動器が同時に障害を受けることもあります。
日本整形外科学会では07年に運動器の働きが衰えることに伴う要介護の状態や要介護リスクの高い状態を表す新しい言葉として「ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)」を提唱しました。
骨や筋肉の量のピークは20~30代で適度な運動と適切な栄養で強く丈夫に維持されます。しかし弱った骨や筋肉では、40~50代で身体の衰えを感じやすくなり、60代以降思うように動けない身体になってしまう可能性があります。
自分のロコモの程度を評価する方法として「ロコチェック」の7項目を使って確かめることができます。
(1)家の中でつまずいたり滑ったりする
(2)階段を上がるのに手すりが必要である
(3)15分くらい続けて歩くことができない
(4)横断歩道を青信号で渡りきれない
(5)片脚立ちで靴下がはけない
(6)2キログラム程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)を持ち帰ることが困難
(7)家のやや重い仕事が困難(掃除機の使用、布団の上げ下ろし)
ロコチェックは、骨や筋肉などの運動器が衰えているサインで、一つでも当てはまればロコモの可能性があります。
ロコモの予防には「ロコモーショントレーニング」として二つの運動が提唱されています。バランス能力をつける「片脚立ち」と下肢筋力をつける「スクワット」です。片脚立ちは 片脚で立位運動を左右1分間ずつ1日3回行い、スクワットは膝がつま先より前に出ないように尻を後ろに引くように身体をしずめる運動を行います。
いつまでも自分の足で歩き続けていくために、ロコモを予防し、健康寿命を延ばしていくよう心がけましょう。