生活習慣病と認知症

城間清剛・城間クリニック(2014年4月11日掲載)

禁煙や運動で予防

 年をとると物忘れすることは誰でもあります。しかし物忘れが目立ち、日付の間違いや約束を忘れたり、同じ話を繰り返したり、日常生活でさまざまな失敗が増えてきたら認知症かもしれません。昨年6月の厚生労働省の発表によると65歳以上の15%、7人に1人が認知症を発病し、予備軍である軽度認知障害を含めると65歳以上の4人に1人が認知症予備軍の状態にあることがわかりました。


 認知症は脳の神経に異常なタンパクが蓄積して神経が壊れる病気です。若い人や働き盛りの人にも起きることがあります。その発病にはいくつかのメカニズムが考えられています。近年、認知症の発病に生活習慣病が大きく影響していることが分かってきました。


 具体的には、糖尿病や高血圧をきちんと治療していない人は、そうでない人に比べて認知症になるリスクが2倍以上になるといわれています。肥満や血糖値の高い状態が続いても脳萎縮(いしゅく)がはじまり、認知症の発病に影響する脳内の異常タンパクが増加するという報告があります。運動習慣が少ない人も認知症のリスクが高まります。


 個人差はありますが年齢を重ねるにしたがい脳は少しずつ縮んできます。しかし1回15~40分のウオーキング程度の適度な運動を週3回以上行う中高年は、記憶や学習をつかさどる海馬が萎縮せずにむしろ増大して認知症の発症率が低下するという研究結果があります。


 糖尿病や高血圧をきちんと治療していくこと、禁煙し適度な運動を行うことが認知症の予防につながる可能性を多くの研究者が報告しています。


 メタボリック症候群や生活習慣病の早期発見と適切な治療のために特定健診や長寿健診を受けましょう。「禁煙し、メタボを改善しましょう」と自治体が積極的にPRしているのは、脳卒中や心臓病の予防だけでなく、脳の健康維持と認知症の予防の観点からも大切です。


 肥満、喫煙、食生活や運動習慣などの生活習慣を改善し、糖尿病や高血圧をきちんと治療して脳と体の健康に気をつけ認知症の発症を予防しましょう。


 生活習慣に気をつけていても、残念ながら認知症を発病してしまうことがあります。その時は、認知症の人と家族が安心して過ごせる地域づくりも大切です。思いやりや温かみのある地域づくりとともに一人一人の生活習慣と健康管理に気をつけながら生活しましょう。


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