喘鳴(ヒミチ)

石垣昌伸・浦添総合病院(2014年3月24日掲載)

相性合う吸入薬治療

 ゼーゼーして(「ヒミチ」がでて)不安になったことがありますか? 咳をして、むせて、またはむくみが出てゼーゼーする人のことを方言で「ヒミチャー」(ヒミチする人)と呼びます。


 風邪をひくたび長くヒミチしていれば「気管支喘息(ぜんそく)(一般的な喘息)」、体重が増えてむくみ横になれないヒミチは「うっ血性心不全(心臓喘息)」と同じヒミチャーでも原因はさまざまで放置してはいけません。明け方に強く繰り返す感冒時のヒミチや、ゼーゼーの聴取、長引く咳、他にも鼻炎等のアレルギーを有することが気管支喘息の診断のあてになることが分かっています。


 ヒミチは、主に空気を通す管(気道)の収縮やむくみによる狭窄(きょうさく)により生じます。気道の刺激が慢性化し柔軟性がなくなり長引きます。たんの詰まりやがんによる狭窄や入れ歯等の異物のむせ込みによっても生じ、軟骨炎による気道の形態保持力の低下によるつぶれや気道の炎症後の変形でも起こります。


 喘息や心不全のヒミチは息を吐くときに生じ、ひどくなると息を吸うときにも聞かれます。さらに呼吸が弱々しくなり、ヒミチが聞こえにくくなると危険な兆候です。息を吸うときのヒミチは緊急対応を要することが多く、すぐに受診が必要なサインであることを知っておいてください。


 病院では、このような喘鳴(ぜんめい)(ヒミチ)に対し、緊急を要する喘鳴(アナフィラキシー、急性喉頭蓋(こうとうがい)炎、喘息や異物による窒息)を念頭に、気道の確保、換気・循環の維持といった救急救命処置の必要性を見分けます。息苦しさがある人は、指に光を反射させ酸素を測るパルスオキシメーターを用い酸素投与の必要性をチェックします。喘息や肺気腫(たばこ肺)、うっ血性心不全(心筋梗塞など)、たん詰まり、肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)(エコノミー症候群など)も考慮します。


 慢性のものとして肺がん、腺様嚢胞(のうほう)がん(低悪性度のがん)や再発性多発軟骨炎(耳や鼻も溶ける炎症)等の疾患も鑑別します。ストレスなどが原因で声帯を緊張させてしまう声帯機能不全も、軽症ですが難治性ヒミチとして忘れてはいけません。


 ヒミチ治療は目覚ましい進歩を遂げています。内服薬、貼り薬や注射もありますが、今の治療は何より吸入薬で、吸えばすぐ効くうえ1日1回で済む薬も登場しています。相性の良い吸入薬を主治医とともに見つけて、ヒミチャーだけどヒミチの無い世界に導かれてください。


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