新しい糖尿病治療の目標

仲地健・翔南病院(2013年8月5日掲載)

患者減へ国際標準化

 厚生労働省の「2011年国民健康・栄養調査報告」で日本国民の4人に1人以上が糖尿病またはその予備軍であることがわかりました。糖尿病には、体質(遺伝)や過食・運動不足など生活習慣の乱れ(環境)によって起こりやすい2型糖尿病と、主に自己免疫によって起こる1型糖尿病があります。いずれも血糖値は慢性的に高くなり、治療が不十分な場合、眼・腎臓・神経などの細い血管がやられる合併症(細小血管障害)や心臓・脳・下肢などの太い血管がやられる合併症(大血管障害)が起こり、命を落とすこともある病気です。


 血糖値が2カ月間平均的にどれくらい高い状態であったかを知る血液検査がHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)です。糖尿病の治療経過をみるためだけではなく、人間ドックや健診で「糖尿病が強く疑われる人」や「糖尿病を否定できない人」を見つけるためにも測定されてきました。実はこれまで日本と米国などの諸外国のHbA1cは測定方法が異なっていて(日本はJDS法、外国はNGSP法と呼ばれる方法)、その値には一定のズレがありました(具体的には日本は外国より約0・4%低い値)。


 以前からこのズレをなくすため国際的に広く用いられているNGSP法へ変えようという動きがあり、今年4月1日から、病院やクリニックの外来あるいは人間ドックや健診でも、国際標準化された新しいHbA1c(NGSP)が使われるようになりました(基準範囲4・6~6・2%、糖尿病を否定できない6・0~6・4%、糖尿病が強く疑われる6・5%以上)。


 今年5月、熊本で開催された第56回日本糖尿病学会で発表された「熊本宣言2013」の中で、糖尿病患者さんが合併症を予防し、できるだけ健康で幸福な寿命を全うするための血糖コントロールの目標を「HbA1c(NGSP)7・0%未満」とし、学会として糖尿病合併症で悩む人々を減らすための努力を惜しまない事を宣言しました。


 個々の患者さんの治療目標は、年齢、罹病(りびょう)期間、合併症の程度、低血糖を起こす危険性などを糖尿病専門医または担当主治医が総合的に判断して設定しますが、今回はひとつのわかりやすい目標が示されたことになります。糖尿病治療に関する研究は進んでおり、有用な薬も次々登場しています。糖尿病が疑われた方はぜひ医療機関でご相談を。

このページのトップへ