日本の国民健康保険

二木良夫・ありがとう子供クリニック(2013年7月1日掲載)

世界に誇る医療制度

 病気にかかった時に、医者の診察を受け、必要なら入院して治療を受ける。日本に住んでいると普通のことですが、外国ではその普通のことが、簡単にできるとは限りません。筆者は、7年間ハワイで小児科医として開業するという経験をしました。その経験を基に、外国(アメリカ)の医療事情を少しお話しします。


 家族が盲腸(虫垂炎)になって、ハワイで手術を受けた時のことです。夜、救急室を受診して、夜中に手術、翌日夕方には退院。病院には24時間いませんでした。その時の請求金額は約150万円!(保険で1割負担)。もし、もう1泊病院にいたければ、ベッド代だけで、10万円の追加です(先日、ハワイの友人に聞いたところ、今は1泊20万円だそうです)。


 心筋梗塞で緊急手術などを受けて、2週間くらい入院した場合、医療費は1千万円を確実に超えます。日本には高額療養費制度があり、自己負担が最高でも月額約15万円です。アメリカにはそのような制度がないため、入退院を繰り返す人は、医療費が払えず、自己破産をして、家を取り上げられることが珍しくありません。


 日本は国民健康保険という世界に誇る制度を持っています。アメリカでは、生命保険のように、各自が予算に応じて、私的な健康保険に加入します。家族で加入する場合、1カ月で約10万円!です。


 正社員として働いている人は、会社が最低の健康保険代を支払ってくれます。しかし、自営業、パートの人にはとても払える額ではありません。ハワイ州では約3割の人が、健康保険未加入です。


 たとえ、保険に加入していても、受診に制限があることは珍しくありません。日本では、基本的にどの医者の診察も受けることができます。アメリカでは、安い保険の場合、受診できる医者が制限されます。近くに自分の病気を確実に治してくれる医者がいても、受診できるとは限らないのです。


 当たり前だと思っている日本の医療制度ですが、実はとてもありがたい制度ではないかと、アメリカでの経験を通して感じます。


 最後に、アメリカ旅行に行く時は、必ず成田空港で、旅行者保険に加入してください。クレジットカードに付いている保険は、100万円程度しかカバーされません。ちょっと大きな病気、けがをした場合、数百万の請求は日常茶飯事です。お守りだと思って、加入することをお勧めします。

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