ペインクリニックの腰下肢痛
比嘉康敏・牧港クリニック(2013年5月13日掲載)
病因・程度で違う治療法
腰は、体を表す月へんに要(かなめ)と書く通りとても大切な身体の芯となる骨(腰椎)です。また、腰椎の中には、脳から尾骨までつながる脊髄の通り道(脊柱管)があります。人間が進化し直立歩行を始めて以来、腰椎には常に負担がかかるようになり、しばしば腰痛に悩まされるようになっています。さらに神経に影響が及ぶとお尻、太ももの裏側、ふくらはぎにかけての下肢痛が生じます。今回はこの腰下肢痛の治療方法についてペインクリニックの立場から、従来の治療と新しい治療方法をご紹介します。
腰下肢痛の原因には腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症、腰椎手術後の再発による痛みがあり、おのおのの病因や程度により以下の神経ブロック法があります。
(1)仙骨部または腰部硬膜外ブロック 脊柱管内の硬膜外腔という場所に局所麻酔薬とステロイド剤を注入する方法です。外来通院治療が可能です。
(2)仙骨硬膜外造影 硬膜外腔に造影剤を注入して神経周囲の癒着や圧迫をみつけだす検査で、同時に治療効果も期待できます。1泊入院が必要です。
(3)神経根ブロック レントゲンで確認しながら痛み原因となっている神経に薬物を注入する方法で、時に劇的な効果があります。1泊入院が必要です。
(4)椎間板造影 神経を圧迫している椎間板内に造影剤を注入する方法です。ヘルニアの程度を詳しく知ることができます。また、椎間板内に薬液を注入することによりヘルニアを破裂させ、その結果神経根圧迫が急に軽減し、痛みが劇的に改善することがあります。
以上のような方法でも症状が改善しない場合には、最近日本で普及し始めた方法があるのでご紹介します。
(1)内視鏡下硬膜外腔癒着剥離術(先進医療指定) 硬膜外腔に内視鏡を挿入して、レントゲンやビデオ画像を見ながら硬膜外腔の状態を観察し、カテーテル操作によって硬膜外腔の癒着を剥離洗浄する内視鏡手術です。
(2)ラッツカテーテルによる硬膜外神経形成術(保険適応外) ステンレス製の先端部が柔らかい特殊カテーテルを痛みの原因となる神経根の近くに挿入し、ヒアルロニダーゼと高張食塩水を注入することで、硬膜外腔や神経根周囲の癒着や浮腫を改善し痛みを軽減する治療法です。
ペインクリニックでの神経ブロック法は症状の程度に応じてさまざまなものがあります。一つの神経ブロックで改善がみられない場合は、ペインクリニック専門医の受診をお勧めします。