増加する膵がん定期検診

岸本信三・沖縄県立南部医療センター(2013年4月15日掲載)

早期発見を

 膵臓(すいぞう)は、胃の後ろ側にある重さ約80グラム程度、長さ15センチ、幅3~5センチ、厚さ2センチの臓器です。その働きは、1日に約1500ミリリットルの膵液を分泌して消化吸収を助け、血糖を下げるインスリンや血糖を上げるグルカゴンなどのホルモンを分泌する、大変働き者の臓器です。しかし、本邦の膵がんは増加傾向にあり、2009年の膵がん死亡数は2万6700人で、これはがんの中では男性5位、女性4位となります。


 これまでの統計では、病気にかかる割合(粗罹患(りかん)率)と死亡する割合(粗死亡率)がほぼ同程度に近く、膵がんの診断が死を予告することを示唆し、膵がんが恐れられている理由の一つです。その死亡率が高い理由は、進行が早く、診断時には手術もできないほど広がっているからだと言えます。


 膵がんの早期発見の取り組みは始まっています。まず、危険性が高いグループの人たちは表のようです。この対象の方は、定期の検診が必要です。糖尿病や肥満の人は2倍近く、喫煙は2から3倍、家族に膵がんの人がいる場合は13倍、そして家族に3人以上膵炎がいる遺伝性膵炎の場合、健常人の53倍の膵がんリスクといわれています。


 また、大阪府立成人病センターは、膵がんの早期発見を多くされていますが、その報告によると、膵管の拡張(2・5ミリ以上)や膵の嚢胞(のうほう)(5ミリ以上の水分のたまり)がある方はそれぞれでは6倍、両者がそろうと27倍の膵がんのリスクとしています。問診や超音波検査、膵酵素などでスクリーニングを行い、精査が必要な場合は、MRI検査や超音波内視鏡検査、膵液細胞検査などを行うことで、早期発見を目指しています。


 膵がんの大きさが2センチ以下で、膵にとどまっている場合の予後は、5年生存率52・5%であるとの報告もあります。(膵がん全体では、手術ができた人の5年生存率は15~20%、手術できない人は3%)


 もしや膵臓の病気ではと思ったら、早めの検査が重要です。

このページのトップへ