産業医って何?

辻田敏・辻田労働衛生コンサルタント・産業医事務所(2013年4月8日掲載)

働く人のサポーター

 「産業医って何?」「そういえばうちの会社にも産業医が来ていると聞いたことがあるけど、何をしているか知らない」。これが多くの方々の実感ではないでしょうか? でも勤労者にとって産業医は意外に身近な存在なのです。


 さて会社などの事業を行う者にとって従業員の安全と健康を守ることは経営の基盤を整えることであるとともに道義的な責務でもあります。労働安全衛生法は事業者には労働災害を防止する義務があると規定しています。また労働契約法は従業員に対する安全配慮義務を規定しています。それに加えて昨今の職場では疲労・ストレスを感じる者が高い割合に達していることや労働力人口の高齢化、女性の職場進出が進んでいるなどの状況にあわせて、誰もが働きやすい快適な職場環境を実現することも求められています。


 常時50人以上の人が働く事業場では産業医を選任して安全衛生のうち医学に関する事柄を行わせなければなりません。この産業医は医師なら誰でもなれるというわけではなく、日本医師会や産業医科大学が実施する研修を修了するなどして産業衛生の知識と技能を備えた医師であることが必要です。今日では7万人くらいの医師が産業医資格を得て活動しています。健康診断などの健康管理、作業環境や作業方法の管理、健康教育など健康の保持増進のための措置について指導し意見を述べます。問題があれば事業者に対して必要な勧告もします。


 具体的には毎月1回以上職場を巡視して作業場の衛生状態や作業方法に問題があるかどうかを点検したり、健康相談を行ったり、健診後の医療区分と就業区分の判定を行ったり、衛生委員会に出席して専門的な意見を述べたりします。昨今は過重労働で心筋梗塞や脳出血を発症して死亡するいわゆる過労死の防止対策や飲み過ぎ食べ過ぎと運動不足でおこる肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病の予防対策、職場のストレスでうつ病を発症して自殺する過労自殺の防止対策にも産業医が関わることが求められています。さらに職場不適応で長期病休した労働者の職場復帰支援も産業医の重要な仕事です。


 このように産業医は勤労者が健康で働きつづけられるようにさまざまな活動をする医師で「働くひとのサポーター」ともいえる存在です。沖縄県では産業医の選任義務がある事業場の90%以上にすでに産業医がいます。健康診断で異常を指摘された人や多忙で眠れなくなった人など健康に不安のある人はぜひ一度産業医と面接相談してみてください。

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