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インフルエンザワクチンのすすめ(2005年12月6日掲載)

木下 玲子(こくらクリニック)

常識覆す今夏の流行

冬に備えて接種を

インフルエンザウイルスによって起こるインフルエンザは、A型とB型に大きく分かれます。インフルエンザは乾燥して低温になる冬に流行するもの、と思われてきました。

しかし、その「常識」が覆されたのが今年夏の沖縄での流行でした。今夏、県内の小中高七校十一クラスが学級閉鎖となりました。長崎県では九月十三日までインフルエンザによる学級閉鎖があったとのことです。実は、流行には至らないものの沖縄では、つい先頃までインフルエンザの患者さんがおられ、とうとう今冬に突入してしまったのでした。

今夏流行し、沖縄で分離されたインフルエンザウイルスはAH3型で、二〇〇四―〇五シーズンのワクチンに使用されたウイルス株に近いものでした。これまで国内では夏季にAH3型が流行した例はないそうですが、東南アジアにおけるインフルエンザの流行は、例年六―八月の雨期に流行のピークがあるといわれています。

タイでは一―二月と六―八月の二回流行があり、今回の沖縄での流行パターンと似ています。地球温暖化に伴い沖縄県のインフルエンザ流行形態も東南アジア型に移行することも考えられます。

また、南半球と北半球を移動する旅行者が増えたことで、冬の南半球から夏の北半球にインフルエンザウイルスが持ち込まれる機会が増えたため、ともいわれています。

今夏の流行では、昨シーズンのインフルエンザワクチンをきちんと受けたのにかかった、という患者さんが多数おられました。これはワクチンによってできた抗体が約三―四カ月しかもたないためもあります。従来冬(だいたい一―二月)の流行をターゲットにして接種してきたのですが、夏場まで流行するとなると、「いったいいつワクチンを受けたらいいのだろうか?」とお思いになる方もおられるでしょう。

例年、冬のシーズン開始前のワクチン接種をすすめてきたわれわれ医療従事者にとっても頭の痛い問題です。沖縄での夏場の流行は今年初めてなので、来年以降もこの傾向が続くのかどうかはわかりません。

高病原性鳥インフルエンザウイルスから変異した新型インフルエンザの流行も危惧(きぐ)されている昨今、せめて冬のインフルエンザ流行に備えたワクチン接種が大切なのではないでしょうか。高齢者や乳幼児では重症化が防げるといわれており、特に接種をおすすめします。

なお、最近空気中のインフルエンザウイルスを弱体化させる方法が発見されたり、痛くない鼻噴霧式のワクチンも開発されたりしています(日本での導入はまだ先ですが)ので期待したいところです。