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世界医師会(WMA)バリ中間理事会出席(報告)の件

日本医師会から、標記の件について報告があ りましたので、以下のとおり掲載致します。

世界医師会(WMA)バリ中間理事会出席(報告の件)

(国1)
平成25 年4 月15 日
社団法人 日本医師会
会  長 横倉 義武

平素より、本会国際活動にご理解を賜り、厚く御礼申し上げます。

本年、4 月4 日から6 日にかけまして、イ ンドネシアのバリ島において標記世界医師会 (World Medical Association、以下WMA) の 中間理事会が開催され、石井常任理事と共に出 席して参りました。

また、中間理事会出席の後、ジョグジャカル タにある保健センターの視察も行いました。

下記は、中間理事会における審議内容、理事 会決議案、声明案等の文書の内容及び取扱いを まとめたもので、4 月10 日、本会定例記者会 見において公表いたしました。

今後も、本会の国際活動につきまして、適宜ご報告させていただく所存でおります。

なお、内容についてのお問合わせは、担当事務局である国際課までお願いいたします。

お問合せ先:日本医師会国際課
〒113-8621 東京都文京区本駒込 2-28-16
Tel:03-3942-6489
Fax:03-3946-6295
Email:jmaintl@po.med.or.jp

第194 回世界医師会中間理事会(報告)の件

1.会 期:平成25 年4 月4 日(木)〜 6 日(土)

2.場 所:バリ(インドネシア)

3.参加者
 横倉 義武会長
 石井正三常任理事
 畔柳達雄参与
 (随行)能登国際課長、今村主査
 座光寺正裕    (JDN:日本医師会Junior Doctors Network)

4.中間理事会次第
 3 日(水)役員会議、作業部会(ヘルシンキ宣言、災害対策と医療)
 4 日(木)理事会、社会医学委員会、医の倫理委員会
 5 日(金)医の倫理委員会、財務企画委員会
 6 日(土)理事会

5. 参 加
 34 医師会およびNafsiah Mboi(インドネシア厚生大臣、武見フェロー1990 〜 91 年)、
 国際女医会(MWIA)、世界家庭医機構(WONCA)等、参加約150 名

6. 事前会議及び作業部会
 4 月3 日:役員会議 石井常任理事
      ヘルシンキ宣言改訂作業部会 石井常任理事、畔柳参与
      災害医療作業部会 石井常任理事

7. 理事会での主な議決事項

(1)新役員選出及び常設委員会委員、アドバイザーの任命
 理事会議長:ムケシュ・ハイカーワル(オーストラリア)
 理事会副議長:石井正三常任理事
 財務担当役員:フランク・モントゴメリー(ドイツ)
 常設委員会委員:医の倫理委員会:横倉会長
         社会医学委員会:横倉会長、羽生田副会長
         財務企画委員会:羽生田副会長
         アドバイザー:畔柳参与(医の倫理委員会、社会医学委員会)

(2)社会医学関係
 1)委員長選出:サー・マイケル・マーモット(イギリス)
 2)各議題の審議結果
  1)理事会で決議された文書
  ・医療行為の刑事的処分に関する理事会決議
   アメリカでは依然として医師が懲役または禁錮刑に処されていること、またシリアで反体制デモの負傷者ケアを行った医師が拘留されている状況を受けて提案されたアメリカ医師会による緊急決議案である。決議案では、医療行為および医療に関する意思決定への政府介入に対し反対している。
   審議により、医師は法を超える存在ではなく患者ケアに関連のない犯罪行為を行った医師は制裁を受けなければならないことが追加され、理事会にて緊急決議として提出され採択された。

 ・シリル・カラバス教授に関する理事会決議
   南アフリカの医師であるカラバス教授は、2002 年にアラブ首長国連邦(UAE)で勤務していた際に起きた子供の死亡に責任があるとして長い訴訟手続きが続いていたが、医師の専門団により今回容疑が晴れたにも関わらず依然としてUAE に拘留されている。WMA は、検察側が判決に異議を唱え、カラバス教授を無期限にUAE に留めると主張していることに懸念を表明している。WMA は医師の専門団の所見を踏まえ、カラバス教授は明らかに国際法上の基準からはずれた取り扱いを受けており、すみやかに本国に帰還させるべきであるとしている。

 ・医療行為と患者の安全の標準化に関する理事会決議
  本案は、フランス、スペイン、ドイツ医師会により提出されたものである。WMA は、非医 療分野の業界水準化団体が作成した標準をそのまま医療行為に取り入れるEU 内の傾向を懸念 している。WMA は、そうした団体は、医療に関する十分な倫理、学問的能力を有するもので はなく、結果として医療の質の低下を招くものであるという理由から、関連の医師組織にその 任務を任せるよう各国政府及びその機関に要請している。本決議案は、理事会決議として採択 された。

 2)コメント要請のため各国医師会に回付される文書
 ・拷問被害者の賠償請求権に関する声明案
  本案はデンマーク医師会により提出された拷問被害者の賠償請求権の保証を求めるもので ある。関連機関と図り拷問被害者の賠償のための連携業務を発展させるよう、各国医師会に 働きかけている。
 ・真菌性疾患の診断と管理に関する声明案
  本案は、ブラジル医師会が提案したもので、真菌性疾患の診断検査と抗真菌療法の処方を最 も効果的に提供するにあたり、各国医師会とそのメンバーである医師の指針となる内容である。 委員会での審議により、ブラジル医師会は倫理的側面の強調および文言を明確化した修正案を 作成し、修正案は各国医師会へ回付されることが決定した。

 3)その他
 ・ヒトパピローマウィルス(HPV)ワクチン
  アメリカ医師会では、HPV ワクチンに関するWMA の政策文書を作成するために、国内の ワクチンの専門家およびWMA 次期会長のマーガレット・ムンゲレラ(ウガンダ)と議論を続 けている。

 ・女性と少女に対する暴力
  2010 年に採択された「女性と少女に対する暴力に関するWMA 決議」に基づき、女性らに対する差別、暴力の排除に対して実施できることをイギリス医師会とWMA 事務局が検討を行っている。今後は様々な法的あるいはグローバルな機関より情報を収集し、文書を作成する予定である。

 ・医療データベースの倫理的考察に関する宣言改訂案
  本改訂案は、アイスランド医師会を中心とした作業部会によって作成されたもので、患者の 非特定情報と特定情報を含む医療データベースの利用について述べたものである。なお、10 月 の総会ではさらに審議を行うために、2002 年に採択された委員会と同じ医の倫理委員会に付託 されることが決定した。

 3)2003 年採択文書の分類
 ・SARS に関する決議:アーカイブ化
  2003 年に発生したSARS の対応において世界的な戦略の必要性が浮き彫りになり、公衆衛 生システムにおいて一部の根本的な脆弱性も露呈された。ゆえにWMA はWHO に対し、世界 の医療界が現状に沿った有意義な取組みと関与を早期に行えるようWHO 緊急対応プロトコールを強化することを決議した。
  本決議に対しては、大幅な修正を行うより、必要であれば呼吸器疾患に関する新規文書を作成すべきとの意見によりアーカイブ化することになった。

(3)医の倫理関係
 1)委員長選出:ヘイキ・パルベ(フィンランド)
 2)ヘルシンキ宣言改訂案
  ヘルシンキ宣言改訂案は、ロッテルダム(サテライト会議)、ケープタウン専門家会議、東京専門家会議における専門家の意見、WMA の加盟医師会の意見を受け、作業部会による議論 を経て草案が作成された。
  本草案では、弱者グループの保護の強化、被験者保護のための補償問題の明確化、試験後の 取り決めに関する具体的条件、倫理委員会の透明性の向上、体系的なプラセボの使用等が主な 改訂のポイントとなっている。
  本草案は、プレス発表、パブリック・コメント(4 月〜 6 月)が行われた後、新たな草案が 起草され、8 月のワシントン会議(作業部会、利害関係者ヒアリング)における議論を経て、 10 月のフォルタレザ(ブラジル)総会での審議に付される。
 3)各議題の審議結果
  1) 10 月の総会に採択のために付託される文書
  ・死刑執行の凍結を要請する国連決議に関する声明案
   声明案は、各国医師会からのコメントを受け、フランス、ドイツ、ノルウェー医師会が作成した。WMA は、死刑執行の世界的凍結を要請する国連総会決議を支持すると勧告している。

 2)コメント要請のため各国医師会に回付される文書
 ・女性のヘルスケアに対する権利とHIV 母子感染との関わりに関する決議改訂案
  2002 年にワシントン総会で採択され、2012 年プラハ中間理事会で「大幅な改訂」を要する 文書となった。南アフリカ医師会提出による改訂決議案では、行動目的として国連のミレニア ム開発目標(MDGs)のうちの1 つである「HIV/ エイズ、マラリアその他の疾病の蔓延の防止」 を追加し、女性のヘルスケアに対する権利を述べている。

 3)作業部会により検討される文書
  ・人間中心の医療に関するWMA 声明案
  アイスランド医師会提出。「人間中心の医療」の原則は、身体的・心理的・社会的・精神的 に良好な状態という意味での健康促進が前提とされている。そのためには、疾病の抑制のみな らず、科学と人間との調和に基づき、健康の向上、臨床現場でのよりよいコミュニケーション、 そして人の尊厳に対する尊敬と責任について、個人および地域レベルにおける理解を深めるこ とを求めて提案されたものである。技術進歩や細分化による医学・医療の中で「患者中心の医療」 の概念に比べ、「人間中心の医療」はより全人的な概念であるが、今まで明確化されてきてい ないので、今回「人間中心の医療」というテーマの重要性を呼びかけることを目的とする。
  委員会ではさらなる審議のため作業部会を設立することが決定された。作業部会には、日本、オーストリア、カナダ、アイスランド、スペイン、イギリス、アメリカが参加する。

(4)財務企画関係
 1)委員長選出:レオニード・エーデルマン(イスラエル)
 2)今後の会議開催日程
  ・2013年10月16 〜 19日:フォルタレザ総会/ ブラジル
             / 学術集会:非感染性慢性疾患
  ・2014年4月24 〜 26日:東京中間理事会/ 日程は予定
  ・2014年10月8 〜 11日:ダーバン総会/ 南アフリカ
             / 学術集会:国連ミレニアム目標後のヘルスケアに対する普遍的アクセス
  ・2015 年10 月14 〜 17 日:モスクワ総会/ ロシア
  (理事会承認)
  ・2016 年4 月14 〜 16 日:ブエノスアイレス中間理事会/ アルゼンチン
  ・2016 年10 月12 〜 15 日:台北総会/ 台湾

 3)ヘルシンキ宣言50 周年に関する準備委員会
  準備委員会ではヘルシンキ宣言採択50 周年を記念して、2014 年にフィンランドでイベントを 開催する準備を進めている。具体的には、宣言が採択された同じ会場での開催や、同宣言に関す る書籍の発行を検討している。

 4)災害対策と医療に関する作業部会
  各国医師会から寄せられたアンケート結果の報告が行われ、WMA のサイトを通じた本調査結 果の情報の共有化と、各国医師会における災害医療トレーニングプログラムの策定について言及。
  また、今後も2 〜 3 年毎に同様の調査を継続することの提言があった。

 5)WMA 元会長、理事会議長のネットワーク
  政策議論等へのアドバイスの提供を目的としたネットワークの構築。本ネットワークの取り決 め事項は、WMA の元会長であるダナ・ハンソン氏(カナダ)が作成した。WMA 事務総長より、 就任以来元役員の適切なアドバイスを受けていることが報告され、本ネットワークの有用性が認 められた。

 6)JDN(Junior Doctors Network)
  JDN とは、2011 年4 月WMA 理事会によって、世界初の若手医師の国際的組織として承認さ れた組織で、各国の卒後臨床研修医、専門医研修未修の医師から構成される。本会からはJDN のメンバーが初めてWMA 会議に参加し、各国のメンバーと交流を行った。さらにJDN の代表 者からは活動内容と今後の課題について報告を受けた。

 7)新規加盟申請
  モンテネグロ医師会より本理事会中に加盟申請がなされ、10 月の総会で議題として取り扱われる。

バングンタパン第3 保健センター(インドネシア)訪問について

1. 訪問日時:平成25 年4 月8 日

2. 訪問者:横倉義武会長、石井正三常任理事

3. 訪問先
 バングンタパン第3 保健センター/Teguh Rubed 所長
 インドネシア共和国ジョグジャカルタ特別州バントゥール県
 バングンタパン地区

4. 概  要
 バングンタパン第3 保健センターは、平成18 年5 月27 日に発生したジャワ島中部地震(マグニチ ュード6.3)に対する被災地支援として、都道府県医師会、郡市区医師会、一般会員から寄せられた 義援金により、AMDA(Association of Medical Doctors of Asia)の復興支援事業を通じて、平成19 年2 月末に建設され、その後バントゥール県に引き渡されたものである。医療面での支援は、インド ネシア医師会が行っており、当センターでは1 日約80 名、年間約24,000 人の診療を行っている。
 当復興事業の中心的な役割を果たした日本医師会の名前が入った銘版が、保健センター内部中央 に掲げられている。さらに、「友として、地震に被災された人たちの健康と幸せを祈る」としたプ レートも掲げられ、当事業における本会とAMDA への感謝の気持ちが示されている。
 当事業は、本会が保健センターの建設という具体的な復興支援事業に協力した初めてのケースである。
 今回の訪問を通じて、地域住民の健康管理に役立つセンターとして機能していることを目の当たりにし、また、AMDA では、さらに事業の拡充を図るなど継続して支援を行っていることが明らかとなった。




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