理事 平安 明
去る1 月26 日(土)、宮崎観光ホテルにお いて次期診療報酬改定の要望事項について、九 州ブロックの意見を取り纏めるための協議会が 開催されたので、以下のとおり報告する。
当日は、日医から鈴木常任理事、今村常任理事、藤川常任理事が出席された。
開 会
○宮崎県医師会 稲倉会長
お忙しいなかお集まり頂き感謝申し上げる。 0.004%アップの財源の中で実施された平成24 年度診療報酬改定からはや10 カ月が経とうとし てる。前回の改定でもエビデンス無くして引き 下げられた再診料や、入院中の患者における他 医療機関の受診の取扱いに引き続き、今回は入 院基本料の算定要件に包括された栄養管理体制 が大きな問題となっている。我々は無理難題を 要求している訳ではない。当たり前の医療をし て、当たり前の評価をして欲しいと要求をしているだけである。本日は日医より鈴木常任理事 並びに今村常任理事にご出席頂いている。今後 の中医協のなかでしっかりと意見を反映させて 頂きたいと考えている。医師会の使命は国民が 安心して医療を受けられる医療制度の堅持、地 域医療提供体制の充実である。政権交代後、初 めての社会保障制度国民会議が1 月21 日に開 催された。この動向についても財政の状況をみ ながら十分注意していく必要がある。最後に本 協議会が実り多きものになるように祈念する。
挨 拶
○日本医師会 鈴木常任理事
九州の先生方の熱心なご意見を是非お聞かせ願いたい。本日はよろしくお願いしたい。
座長選出
宮崎県医師会 河野副会長が座長に選出された。
協 議
日医社会保険診療報酬検討委員会委員である 寺澤先生(福岡県医師会常任理事)より九医連 として次期診療報酬改定に対する要望事項の取 り纏めの依頼を受け、各県より10 項目を限度としてご提案頂いている。(※資料1 参照)
ご提案頂いた要望事項の中から、複数県より 提案されているものを重要事項として優先的に 選択し、資料1 のとおり10 項目に取り纏めて いるので、これを基本案としてご検討いたたぎたい。(※資料2 参照)
【資料1】各県から提案された要望事項について
【資料2】次期(平成26年度)診療報酬改定に対する要望書(案)
【要望事項案に対する主な追加意見】
■社会保険診療報酬検討委員会委員 寺澤先生(福岡県)
各県より貴重なご意見を頂いた。この中から 3 つを重点項目に決めていただくことになる。 「(1) 初・再診料」、「(2) 入院基本料」、「(3) 入 院中の患者の他医療機関受診」の3 つについて はこの数年続けて要望しているものである。
「(4) 特定疾患療養管理料」については以前 月1 回だったものを日医の提案により月2 回と した経緯がある。これを要望することで外来管 理加算や特定疾患療養管理料自体の議論に拡大 することも考えられる等、難しい問題をはらん でおり、内容については絞り込むことも検討し た方がよい。「(8) 投薬」について。7 種類以上 の内服薬を投与した場合にペナルティが課せら れるのは薬価差が無い時代に決まったものであ り、現在の高齢化社会では廃止しなければなら ない。「(10) 画像診断」について、死亡時の画 像診断(Ai)を保険請求ではなく別枠とする方 法も検討できるのではないか。認知症患者の画 像診断加算についても小児や乳幼児の加算と同 じように考えるのか議論が必要である。
今回の改定では入院基本料に栄養管理体制や 褥創対策が包括された件について、中医協では 診療側より大きな反対もなく通っており、改定 後に大きな問題となってしまった。今後このよ うな事が起きないようなチェック体制について 検討委員会の中で提案している。
■鹿児島県
「再診料」について。再診料の逓減制につい ては、ドクターの技術料(ドクターフィー)が 評価されることが診療報酬議論の大きな前提になるということで要望事項とした。今後は慢性 疾患や合併症等が増加し、また75 歳以上が4 人に1 人になる時代が今後控えているなかで再 診料は重要となってくるものと考える。
■社会保険診療報酬検討委員会委員 寺澤先生(福岡県)
再診料は公益側の裁定によってエビデンスな く下げられたものであるから、いろいろと理屈 を付けずに元に戻すべきものである。コスト計 算や逓減制の話となると内容が変わってしま う。「理由が無いのに下げられた」、これを強く 言っていただきたい。
■大分県
「(4)の特定疾患療養管理料」について。現点 数225 点× 2 = 450 点の要望は通らないと思 うので、月1 回400 点としてはどうか。
「(10)の画像診断」について。救急にて来院 し蘇生を行うも画像検査を実施できないため、 死亡診断書作成の際に困っている。またこのよ うな検査の積み上げによりエビデンスが得られ て普段の診療にも利用できるのではないか。保 険請求ではなく別の方法とのお話があったが、 その場合には複雑な手続きとならないような議論も必要である。
■熊本県
「(4)の特定疾患療養管理料」について。小 児科では長くて2 週間である。場合によって2 回算定、1 回算定と区別してはどうか。月1 回 450 点とすると、2 回目に患者さんが来院した 場合に料金の差が生じる為、戸惑うことも考えられる。
■社会保険診療報酬検討委員会委員 寺澤先生(福岡県)
「(4)の特定疾患療養管理料」について。最初 から減額するのではなく450 点で要望し、い ろんな意見があることについて日医でよく議論 しフィードバックしてもらうのはどうか。中医 協委員である安達委員からは特定疾患療養管理 料を触ることで外来管理加算に影響しないか懸 念しているとのことである。
■沖縄県
「(4)の特定疾患療養管理料」について。退 院後1 カ月以内でも算定出来るように議論に加 えて頂きたい。また対象疾患についても現状に 則した形で拡大していただきたい。
重点項目としては「再診料」、「入院基本料」、 「入院中の患者の他医療機関受診」を提案して いる。入院基本料に栄養管理体制が包括された が、本県の離島地区では特に管理栄養士の確保 が難しく、地域から必要な医療が消え去ってし まう恐れがあることを伝えたい。また「入院中 の患者の他医療機関受診」については、一部緩 和されたが根本的な解決にはなっておらず、全 廃として要望項目に入れて頂きたい。
■長崎県
院外処方には「一包化加算」等が認められて いるので、院内処方でも認めて欲しいとの意見 があるので、要望として取り上げて頂きたい。
■熊本県
有床診療所や中小病院より「嚥下食の提供・準備」に対する評価を求める意見がある。
■社会保険診療報酬検討委員会委員 寺澤先生(福岡県)
従来の特別食の見直しが必要と考える。日医 の方で洗い直して頂きたい。病名に対して特別 食が査定される場合もある。「嚥下食」、「特別食」 についてご検討いただきたい。
■熊本県
この5、6 年間の経過を見てみると、加算点 数しか上がらない。方法として加算点数の新設 や増点について要望してはどうか。
○日医 鈴木常任理事
今回の改定では2 回連続のプラス改定であっ たことから、支払側、財務省からは再診料の引 き上げに対してものすごい反発を受けた。再診 料については元に戻すように要望を続けている が非常に厳しい状況である。先日の中医協では 外来診療について話し合ったが「総合診療医」 の話が出てきており、点数を包括化や引き下げ たいとの思惑が見え隠れしている状況である。 どのような作戦で要望していくのかご意見をお 聞かせ願いたい。
■宮崎県
先ほど方法論として加算を求めてはとの話が あったが、加算項目はある程度経つと包括され たり減算されるので、そのようなことがないよ うに対策を十分に取っていただきたい。
○日医 鈴木常任理事
一定の方向に進めたいときには加算等を設置 し、その後減算、廃止していくのは厚労省の良 く使う手であり、日本の診療報酬制度の特色で ある。海外の診療報酬制度はもっと大雑把なも のである。我々としては点数が下がるところに ついては下げ幅を少なくしたり、先延ばしとい ろいろと考えているところである。
【総 括】
○日医 鈴木常任理事
どの項目についても尤もな話であり、この後 の医療保険対策協議会でも提案されている項目 については、その中でお話したいと考えている。 「(6) 小児科外来診療料」については、要望事項 の内容を主張していきたいと思う。
「(7) リハビリテーション」についても尤もで ある。「(8) 投薬」についても、前回の不合理な項目に入っていたが優先順位から外れたもので ある。先日の社会保険診療報酬検討委員会のな かでも話が出ており、主張していきたいと考え ている。
「(10) 画像診断」について。診療報酬とする のか、別にするのか意見が分かれるところだと 思う。認知症については、他にも手のかかるも のはあるのでどのように判断されるかだと思う が、要望事項として上げて頂ければ検討したい。 貴重なご意見を出して頂き感謝申し上げる。
○日医 今村常任理事
先生方の要望についてお聞かせ頂いた。私共 が当然と思うところが、なかなか話が煮詰まら ないのは日医全体の力がもう一つなのかなと感じている。7 月の参議院選挙で羽生田日医副会 長を当選させることが少なくとも直接的には非 常に大事なことだと思う。
診療報酬に係る問題としては、ミクロ的にみ れば厚労省医療課の権限が大きいようである。医 療課長や課長補佐の基本的な考え方を把握する と共に、日医の考え方を理解してもらうことが重 要である。鈴木先生を中心に私共日医の考え方 を理解してもらえるように力を注いでいきたい。
■宮崎県医師会 河野議長
本日ご提案いただいたご意見を集約し各県に 目を通して頂いた後、日医へ提案したい。本日 はご協力いただき感謝申し上げる。
印象記
理事 平安 明
次期診療報酬改定の要望事項に係る医療保険対策協議会が、平成25 年1 月26 日に宮崎観光ホ テルにて行われた。日医から医療保険担当の鈴木常任理事を始め、今村常任理事、藤川常任理事 も参加され、各議題毎に日医からコメントを頂き、質疑応答等行った。
各県からの要望事項はどこも大きく異なることはなく、特に平成20 年改定時に理由なく引き 下げられた再診料と、栄養管理実施加算と褥瘡管理加算が廃止され入院基本料の算定要件に含ま れたことに対する見直し、地域医療に貢献しているもののあまりにも低い有床診療所の入院基本 料の見直しについてはほとんどの県に共通した要望であった。
初・再診料に関する鈴木常任理事のコメントは、「前回改定時には、2 年連続でプラス改定にな ったことと入院外来の枠を取り払ったことなどから、再診料の見直しには踏み込めなかった。次 期改定に向けて中医協で議論が始まったところだが、なかなか難しい状況である」として、2 年 前と変わらず厳しい旨を述べていた。藤川常任理事から、「自民党から民主党に政権交代した前回 改定時には、中医協委員として鈴木先生が孤軍奮闘したが、如何せん多勢に無勢といった様相で 厳しく、医師会自体が政治的に発言力を失っている状況を思い知らされた点も多かった。そうい った意味からも来たる参議院選挙では是が非でも羽生田副会長を当選させ、医師会の意見を反映 できるようにすることが重要である」と述べられた。
各地区の要望は地域で奮闘している会員の先生方の最低限の声であり、それすら絵に描いた餅 にしてはならない。診療報酬は極めて政治的に決着されていることを改めて鑑み、行動を起こす ことが必要であると感じた。