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第 6 回沖縄県女性医師フォーラム
〜広がる女性医師支援、そして男性医師支援へ〜

知花 なおみ

沖縄県医師会 女性医師部会副部会長 知花 なおみ

去る 10 月 20 日(土)沖縄県医師会館に於い て標記フォーラムを開催した。フォーラムでは、 「広がる女性医師支援、そして男性医師支援へ」 をテーマに、女性医師をはじめ男性医師や事務 長等が参加した。はじめに、知花なおみ副部会 長より開会の挨拶があり、続いて依光たみ枝部 会長の代理で挨拶文を読み上げた仁井田委員は、 「本フォーラムは、もはや女性医師のみでの支援 ではなく、医師全体の支援へとシフトすべき時 期に来ている。今回初めて男性医師の文字がテ ーマに登場したことは大きな進歩である。皆さ んの活発な討論を期待している」と挨拶した。

報 告

「女性医師部会の歩み」
沖縄県医師会女性医師部会委員 外間 雪野
外間 雪野

平成 19 年 1 月に厚生 労働省の委託事業である 医師再就業支援事業とし て、日本医師会に医師 の勤務環境の改善を目 指した女性医師バンクが設立された。

沖縄県においては、その約半年後、沖縄県医 師会内に「女性医師部会」の設置が承認され、 活動をスタートした。女性医師部会は、メーリ ングリストの立ち上げ、女性医師の支援、女性 医師バンク設立、医師会活動への女性医師の積 極的参加、男女共同参画社会の実現を目的に活 動を展開している。

当部会では毎年 1 回、沖縄県女性医師フォー ラムを開催しており、男性医師や医学生の参加 もみられる。参加者数は毎年 60 名前後で推移 しており、どの回も活発な意見交換が行われて いる。これまでの女性医師フォーラムのテーマ は、以下の通りである。(表 1)

表 1

その他に「女性医師の勤務環境整備のための 病院長等との懇談会」も毎年 1 回開催している。 この会では、県内各施設の病院長等を迎え、女 性医師支援に取り組んでいる医療機関の具体的 な事例報告や、沖縄県から女性医師等就労支援 事業についての説明を行い、医療機関に支援を 広げていく役割を担っている。

また、2 年前より、部会役員が各病院を訪問 し、病院に勤務する女性医師とざっくばらんに 討論を行う出張プチフォーラムを行っている。 これまでに県立中部病院、浦添総合病院、豊見 城中央病院、那覇市立病院、琉球大学附属病院 で開催し、女性医師支援を広める草の根的な役 割を果たしている。

また相談窓口では、育児、生活支援サポート を行っている施設などの調査や、復職研修、専 門医取得希望者への研修医療機関の紹介なども 行っている。また本部会にはメーリングリスト があり、男女を問わず、医師、研修医、学生な ど現在までに 234 名が登録している。メーリ ングリストを介して各病院の求人募集や、復職 など就業につながる情報はもとより、各種イベ ントなども発信している。

平成 22 年度には女性医師バンクを開設し、 本年度より沖縄県ドクターバンクと名を改め た。現在のところ登録医師数が 8 名(11 月現 在 10 名)、登録医療機関数は 28 件となってい る。就業斡旋については、平成 23 年度は成立 が 7 件、マッチング率は 16.6%、本年度のこ れまでの業績は成立が 5 件、マッチング率は 18.5%となっている。本バンクへの登録は、男 女問わず受け付けているので、もっと多くの医 師、医療機関に利用していただきたい。

これまでの活動をふまえ、今後は女性医師の みならず、すべての医師を支援する活動をして いきたい。

「琉球大学医学部附属病院での取り組みについて」
沖縄県医師会女性医師部会委員 銘苅 桂子
銘苅 桂子

当院における女性医師 支援の現状について、産 婦人科医局を中心に報告 する。

10 年前は、産休・育 休等の制度も充実してお らず、研究生という立場 で専門医の取得を目指す等、非常に厳しい状況 であった。現在各種支援制度が充実してきたこ とは、非常に大きな進歩だと思う。

女性医師支援は、女性医師専用の当直室や院 内保育・病児保育の整備などの勤務環境整備な どのハード面、休職された医師がもう一度安心 して就業できるようにするための再研修支援と いったソフト面、そして保育施設がどこにある のかなど、仕事を続けていくためにどうしても 必要な情報提供という 3 点が挙げられる。

しかし、どの大学でも各医局で女性医師が出 産などで働けなくなった場合には、その医師が 働ける条件に添った関連病院を紹介し、再研修 を希望した場合には、大学病院やそれぞれの研 修内容にあった働き方ができる関連病院を紹介 することがあるため、大学病院において、その ような支援が本当に必要なのかという声が時折 聞かれる。だが、これまで大学病院や各医局が 十分に女性医師の環境に合った病院を紹介でき ていたか、研修ができていたのかということは、 自分の経験からも疑問に思うことがあり、大学 病院においてもやはり各種支援は必要である。

当院の女性医師の割合は全体では 24%だが、 医員では 41%、研修医では 30%と、若い医師 における女性の割合が高くなっている。この医 員・研修医の時期は、研修をしたい、多くの症 例をこなしたい、手術や外来を行いたいとい った意欲に燃えている時期であると同時に、女 性として結婚も育児もしたいという時期が重な る、大変悩み多き時期である。その時に的確に サポートがされないままであると、途中でギブ アップしてしまうこととなる。大学において最 も重要なことは、若手女性医師が各種支援制度 を利用することによって、モチベーションを維 持し、専門医取得やキャリアアップを継続して いける環境を作ることであろう。

各医局における現在の女性医師の割合を見 てみると、産婦人科 43%、皮膚科 46%、小児 科 38%、内科も第 2 内科 38%、第 3 内科 29% となっている。外科系全体の女性医師の割合は 13%とまだ少ないのだが、外科の医局長も女性 医師に関しては悩んでおり、すべての科におい て女性医師をサポートするにはどうしたら良い のか、思案を巡らせているところである。

現在の大学病院の勤務形態には常勤と非常勤 があり、非常勤は 30 時間以上と 30 時間未満に 分かれている。常勤と 30 時間以上の非常勤の場 合では、有給・無休の違いはあるが、どちらも産 前 6 週・産後 8 週の産休が取得でき、出産一時 金も出る。育休も子が 1 歳になるまで取得できる など、待遇にあまり大きな差はない。また復帰後 の短時間勤務で、30 時間勤務でポストを継続し たまま復帰できる。育休中の健康保険や厚生年金 保険なども、大学病院が折半して負担してくれる。

最近では、実際に育休・産休といった時期を 挟んで短時間で再復帰し、研修を行っている女 性医師や、勉強のため、10 時間未満で研修を 行っている雇用形態の方もおり、少しずつでは あるが、多くの科で短時間雇用の制度が利用さ れているということがわかる。(表 2)

表 2

この制度をさらに有効に活用するためには、 まず週 30 時間の勤務であっても、手術も外来 も、入院患者もすべて担当し、きっちりと研修 をさせることが必要である。また、勤務終了時 間になっても、若い医師からはなかなか言いだ せないので、時間になったら上司から声を掛け ることがとても大切である。

すべての医師の協力がなければ女性医師支援 は成り立たない。しかし支援を継続することが、 すなわち人手不足を解消することになり、将来 的には、医師の勤務環境改善に繋がるという認 識の変換が、今日求められている。

女性医師支援に関するアンケート結果について
沖縄県医師会女性医師部会委員 伊良波 裕子
伊良波 裕子

今回、県内以下の 5 病 院に在籍する全医師を対 象に女性医師支援に関す るアンケート調査を行っ た。調査は本年 9 月 20 日から 10 月 4 日までの 期間行った。アンケー トの有効回答数は 342 件、 回答率は 34.8%で あった。内訳は男性 260 名、女性 82 名であった。

《主な調査結果》

◆回答者は 30 代、40 代の子育て世代の医師の 回答が多く、支援について関心が高かいと思 われる。

◆回答者の専門領域は、全体では内科が多い が、女性に限定すると全体的にばらつきがあ った。

◆主たる勤務先は、大学病院が多かった。

◆男性では既婚者が 87%、女性は 55%であった。

◆子どもについて、男性では 77%が「いる」 と回答。女性は既婚率の低さからか 31%に 留まった。

◆家事については女性の 78%が「ほどんどし ている」と回答したのに対し、男性では「ほ とんど・半分ほどしている」を合わせても 17%であった。

◆子育てへの参加は、女性では「していない」 と答えた方は無し。男性では「している」と 答えたのは 24%で、「たまにしている」が 48%と最も多かった。

◆家事や子育てをしている女性のほぼ全員が、 仕事と家庭の両立に困難を感じたことがある と回答し、男性は 28%であった。

◆家事や子育てをしていないと答えた男性は、 「これから条件が整えばしたい」が 37%、「や る意思はあるが忙しくてできないと思う」が 33%であった。

◆勤務形態について、超勤・宿当直を除いた週 あたりの勤務時間が男性では平均 50 時間、 女性は平均 40 時間であった。

◆当直・宿直回数 0 回が、男性では 24%、女 性では 41%と男性のほぼ 2 倍であった。し かし 4 回未満では、男性は 44%に対し、女 性は 22%と男性の 2 分の 1 であった。また 5 回以上当直をこなしている女性が 37%お り、おそらく未婚の方が頑張っていると思わ れる。

◆宿直・当直の翌日に、通常勤務を行っている 男性が 77%、女性が 57%であった。また、 半日勤務が男性では 13%、女性は 34%だっ た。(表 3)

表 3

◆現在の勤務状況については、満足と答えた方 が男女ともに約半数であった。現在の勤務環 境について今後改善されるとしたらとの問い に対して、「休日の増加」という回答が最も 多かったが、実現可能と考える方は半分以下 であった。(表 4)

表 4

◆女性医師支援については「知っている」、「聞 いたことはある」の回答が男女共に 70%以 上を占めた。

◆身近に女性医師支援を受けている人がいるか どうかについては「いる」、「いない」とはっ きり認識しているのが 20~30%程度で、あま り認識されていないとの結果であった。

◆受けている支援については、当直免除・回数 減との回答が最も多かった。

◆女性医師の離職を防ぐために女性医師支援は 「必要」とする回答が 90%を占めた。また、 医師不足解消につながるかという問いに対し ては、約 70%が「思う」と回答した。

◆医師不足解消につながらない理由としては、 「当直・オンコール等の負担が他の医師にか かることにはかわりない」、「負担が多くなっ た医師が他に移り、不均一な医師不足にな る」、「現状では女性医師しか恩恵を受けてお らず、十分に仕事が出来ない人材ばかりにな る可能性がある」、「女性だけが辞めているわ けではない」、「女性医師はマイナー科に多 い」、「働く女性にはよいが、家庭に入ってし まった女性を引き戻すほどではない」、「離職 の原因が子育て以外にもあるのではないか」 という回答が寄せられた。

◆「支援を受けない医師への負担があると感じ るか」どうかについては、男性 60%、女性 78%が「感じる」と回答した。

◆女性医師支援は結果として女性医師の勤務体 制が優遇されることになるのだが、それにつ いてどう思うかという問いには、「支援によ り全体としてよい結果が得られるならよい」 が 36%、「勤務時間に見合った給与差があれ ば問題ない」との回答が 41%であった。ま た「不満である」、「不満だがしかたがない」 との回答は合わせて 10%に留まった。(表 5)

表 5

◆女性医師支援が推進されるようになり、医師 全体の労働環境が変わったかとの問いに対 し、9%が「よくなった」と回答し、「悪くな った」が 11%であった。また「変わらない」 が 38%、「よくなることを期待している」が 42%という結果であった。

◆男性医師にも女性医師支援と同様な支援が あればよいと思うかの問いには、「思う」が 49%、「思うが現実的ではない」が 45%であ った。

◆この他、女性医師支援や医師全体の働き方に ついて、「負担となっている医師へのサポー トが必要」、「支援を必要とするのは女性医師 のみならず、子育てにかかわる男女全てに必 要」、また「女性医師支援に伴い負担がかか る他の医師へのサポートとして、病院内で雇 用制度の再考が必要」という意見もあった。

意見発表

那覇市立病院 小児科医師 新垣 洋平
新垣 洋平

初期研修の間に入籍、 子どもが誕生。その後 私は小児科の専門医を 取得。妻は妊娠・出産 などで休職した後、検 診などのパートを経て、 今年から夫婦ともに那 覇市立病院で勤務している。

当院の小児科の診療体制は実働 12 名で、小 児科病床数 28 床、NICU が 6 床で、3 つのグ ループに分かれて診療を行っている。現在産休 中が 1 名、琉大で研修中が 1 名、妊娠中のメン バーが 1 名いる。

深夜の救急外来の担当では、夜 11 時半から 翌朝 8 時半まで勤務した後、帰宅できる。妻も 夜間の救急外来に入っているが、19 時半まで と短い時間に当ててもらい、できるだけ帰宅で きるよう配慮いただいている。

2 人の子うち、下の子は病院に附属している 保育園に通っているため、勤務後に一緒に帰宅 するが、上の子は下校後、自宅近くの実家で面 倒を見てもらっている。実家の両親からのサポ ートで一番助かっているのは、実家で夕食を準 備してくれていることである。また、子どもが 病気になってしまった時には、上の子は実家に 預け、下の子は病児保育を利用している。病児 保育の手続きのため、朝の回診に間に合わなか ったり、私が重症例を担当している場合には、 どうしても妻が帰宅せざるを得ないため、妻の グループに負担がかかってしまう。しかしある 程度のマンパワーと、グループ制を敷いている ことから、スタッフも多少負担を許容すること ができるのだと思う。また、夫婦で同じ病院に 勤務しているため、職場の方々に二人の状況を 理解していただきやすく、とても助かっている。

医師になり、人の役に立ちたい、社会に貢献 したいという思いは男女問わず一緒だと思う。 また、男性医師も子育てに参加したい、妻に協 力したいと思っているはずである。子育ても大 事な社会貢献だと思うので、プレッシャーに負 けず、「帰ります」ということがはっきりと言 えるよう、男女共に育児支援が出来る職場環境 にしたい。私たちが現在受けている支援体制を、 更によりよく発展させ、次の世代に利子を付け て返すことが、今、負担をかけてしまっている 方々への恩に報いることだと思う。

ましどり整形外科院長 真志取 浩貴
真志取 浩貴

私は開業医として、妻 は常勤の泌尿器科医とし て総合病院に勤務、現在 子どもは 1 人である。

仕事というものは何 事も集中して行わなけ ればならないが、育児 や家庭で心配な事があると集中できず、ミスに つながることもある。それを防ぐためにも、病 院の女性医師支援、パートナーや祖父母の育児 に対する意識と協力など、女性医師を取り巻く 環境を改善し、集中して仕事ができる環境を整 えることが大切である。

仕事に集中するには、まず子どもを安心して 預けられる保育所が必要である。保育士の人数 や園の広さなどで園児の人数に制限があるの で、病院の院内保育所では多くの職員が利用で きるよう、病院側の理解と解決策が必要だと思 う。他にも、24 時間利用できる保育所や、病 児保育を併設しているクリニックなども必要で ある。また学会会場での託児所の導入もとても 助かる。幼稚園、保育所などを利用するための 諸手続きは、早めに行うことも重要である。

次に必要なことは、パートナーの育児に対す る意識と協力であり、これが一番大切である。 妻が急患などで帰宅が遅くなると、仕事と育児 の疲労から家庭不和が増えることもある。それ を防ぐためにも、夫との連携が必要である。妻 との会話を大切にし、仕事と同じように相手を 思う。お互い相手を気遣いながら、思いやりな がら生活をしていくというのが大事である。

また、家事は夫婦で分担する。子どもが 11 ヶ 月から 1 歳 6 ヶ月までの間、昼食の離乳食は私 がつくっていた。朝は私が保育園まで送り、夕 方の迎えと学校参観は妻に行ってもらう。実家 が上の階にあり、子どもを預けられるという大 変便利な環境であったため、子どもが体調不調 などの場合には祖父母に対応してもらうなど、 育児の分担ができている。先ほど新垣先生もお っしゃっていたが、祖父母の協力が得られるの はとても助かっており、私も大変感謝している。

ところで、以前、妻が妊娠していたときに勤 務していた病院の泌尿器科では、妻以外の女性 医師が勤務したことがほとんどなかったため、 妻が切迫しかかった折には、他科の医師から医 局長に「(彼女は)つらそうだが大丈夫なのか?」 と心配された。女性医師の少ない科では、妊娠 中の対応などが遅れがちになってしまうのだと 実感した出来事である。また、女性医師を支援 するための短時間勤務や当直免除、また子ども の行事や急な病気で勤務を抜けることなどにつ いて批判する医師もおり、すべての医師が女性 医師を取り巻く状況に対して理解を示している わけではないのも事実である。

最後に、私は「もし子どもが生まれて子育て をするのであれば、必ず育児に参加する。2 人 で責任を持ってやる。私は手助けもするけど、 口も出す」という観念を持っている。男性諸君 は、育児や家事は女性に任せるという先入観は 捨てた方がすんなりと協力できると思う。

意見交換

参加者は数名のグループに分かれ、「これまで の女性医師支援に対する意見」、「女性医師をサ ポートしてくれている男性医師の負担をどうと っていくか」、「男性医師支援へどう繋げていく か」、「医師全体の支援」について議論し、グル ープごとにまとめた意見をそれぞれ発表した。

A グループ

○産婦人科医 大久保 鋭子

女性医師は全くいないよりも、日中の仕事だ けでもいいから働いてくれたほうが良い。また、 女性医師がいることで職場の雰囲気が明るくな る感じがする。男性医師に対しては、当直明け は早めに帰り、日中働いている先生がサポート することで、少しでも負担が軽くなるような体 制を作る。職場では男性医師、女性医師にかか わらず、協力し合う体制が必要である。

病院や地域にできる要望としては、当直が可 能な女性医師への夜間保育所やベビーシッター の紹介などをお願いしたい。

B グループ

○那覇市立病院 内科 佐渡山 伸子

子育て支援や女性医師の支援の他にも、親の 介護や自分自身の健康問題などで離職せざるを 得ない場合など、病院全体でそのような事態に 対する支援を整えていくことが大事である。

働きやすい環境をつくっていくための具体案と して、主治医制を解体してグループ制にし、そ の制度を患者にも理解してもらう。患者側に主治 医がすべてという意識があると、医師も休みを取 りにくいため、患者にも「医師も病院を離れたら、 普通に生活している一個人である」ということ を分かってもらうのが必要なのではないか。

若い医師の中には結婚や、出産・妊娠などがど ういった状況なのか、思い浮かばないこともある と思われるので、ロールモデルを徐々につくり、病 院の体制として整えていければいいのではないか。

C グループ

○琉球大学医学部附属病院専門研修センター 特命助教 宮城 めぐみ

女性医師だけでなく男性医師に対するサポー トも必要である。医師全体が激務であり、医師 の負担軽減策の一つとして、メディカルクラー クなどの事務的サポートを取り入れるなどが考 えられる。

全体的には、育児支援や短時間制度を利用 している医師をマイナス 0.5 人ではなくプラス 0.5 人と考えられるような発想が、職場の全体 として持てるかどうかが大事であろう。

支援制度が整っていたとしても、実際にその 制度を知らない人がいることから、制度の周知 徹底が今後必要なのではないか。

また、時短や当直免除などの支援を受けてキ ャリアを継続するには、給与差をつけても良い のではないかという意見があった。医師の増員 と給与の調整も必要であるが、直ぐにできるこ とではない。

D グループ

○沖縄赤十字病院 泌尿器科 外間 実裕

グループの中で「以前は女性医師支援という 言葉すらなかった。女性医師として頑張れたの は、患者からの感謝の言葉や精神的なサポート があり、それが一番のモチベーションにつなが ったからだ」という意見があった。

男性医師の負担に関して、実際には給与に差 をつける等、当直明けの男性に代わり日勤は女 性医師が行うなどの体制が取れたら良いのでは ないか。また、女性医師をサポートすることに ついて、男性医師が負担と感じないような意識 改革が必要。今日参加している男性はそういう 意識を持っていると思うが、他の男性にも「女 性が働くのであれば男と同じように働けという のはおかしい」という意識改革をしてもらうこ とが必要ではないか。

E グループ

○琉球大学医学部附属病院 産婦人科 平良 理恵

まず夫が医師である女性医師の場合、どうして も妊娠・出産を機に家庭に入ってしまうケースが 多く、再就業時にも、育児を行いながら働ける場 が少ない。特に病児保育を行う施設が増えて欲しい。

琉球病院では、女性医師、男性医師のための 子育て支援が整っており、男性医師も育児休暇 を取得するというのは当たり前のようになって いるということだった。男女共に取得できるこ とから不平等感が緩和され、女性医師も働きや すくなったということである。各種制度をそれ ぞれが積極的に利用することも、女性医師が働 きやすい職場環境とするには必要である。

F グループ

○琉球大学医学部附属病院 放射線科 土屋 奈々絵

大学の医局に所属しているため、毎年病院を 転々とする状況である。出産時に勤務していた 病院で育児休暇は取れたが、育休明けから別の 病院で勤務することになり、育児休業給付金は 給付してもらうことができなかった。

このように転々として仕事をするのは、医師 の業界では当たり前のことなので、社会制度と して考慮されるようにして欲しい。

今後は、医師全体の負担を軽減するような取 り組みを推進しなければ、不満や不平等感はな くなっていかないのではないか。

○中頭病院 事務部長 知念 重之

当院の小児科では、現在常勤 5 名の医師が 365 日、救急車の受け入れ 24 時間、時間外、 夜 10 時まで患者を受け入れている。また、常 勤医師は毎週日曜に日直あるいは当直があり、 ほとんど休みがとれない状況の中で支えている のが現状である。院内だけでは解決できない部 分があり、地域の医師も一緒になって時間外 等々、週 1 回でも応援していただけたら、中部 全体の小児救急・時間外を守っていけるのでは ないかと考える。

○知花 なおみ副部会長

今後、介護の問題や自身の健康問題などで休 まれる医師が増えてきた場合に、現行のシステ ムを更に応用できるようなシステムに変えてい く必要がある。

病児保育・夜間保育はもとより、当直明けに 帰れるように他の医師がサポートするシステム や、職場の雰囲気を良くするための職員間のコ ミュニケーション、プラス 0.5 人という発想、病 院内でサポートするのが難しいことは、地域を 巻き込んだサポートシステムを構築するなど、 今日の話し合いで、これからの 10 年、15 年で何 を残していくかというヒントが出てきたと思う。

○中頭病院 院長 宮里 善次

女性医師部会にお願いしたいことがある。

前回の女性医師支援フォーラムで、県の女性 医師支援の一つとして、当直医に対する費用援 助というシステムが紹介された。ところが、あ のシステムは、院内の医師が当直を行った場合 には対象外となり、部外の医師が当直をした場 合には支援対象となっている。例えば、当院の 小児科医局で産休をもらう、あるいは産休明け で子育て支援を行っている医師がいたとして、 同じ医局の医師がかわりに当直を行ったと、あ の支援は対象外となってしまう。

琉大同窓会を対象としたアンケートの中で も、女性医師支援で一番うれしかったのは上司 の理解と医局の理解であるという結果がでてい る。しかし、女性医師に対して理解があり、周 りのスタッフでサポートしようとする病院ほど 県の支援を受けられず、理解のない病院ほど県 からの支援を受けられるシステムといえる。女 性医師支援に対して理解ある病院を増やすため にも、県に対し、女性医師部会でぜひその矛盾 点を突いていただきたい。

○知花 なおみ副部会長

この件については、女性医師部会の中でも話 し合い、矛盾点について県と調整していきたい。

○沖縄協同病院 院長 仲程 正哲

当院では 19 名の女性医師がそれぞれ常勤、 パートなどで勤務しているが、女性医師支援を 進めていくことで、医師の業務そのものを軽減 する 1 つの方向性を見いだせるのではないか。 例えば当直などについては、17 時から朝までの 時間帯を 2 つに分け、23 時までの準夜の勤務 を加えることで、年配の医師や女性医師も対応 しやすいなど、運用面を少し工夫している。現 在、泊まり込みの当直は行っていないが、研修 医からどうしても深夜の当直タイムを体験した いという希望があれば体験してもらっている。

日直など、他の面でいろいろ頑張っていただ くことはあるが、男性医師からの不満や不平等 だとの意見はない。

○琉球病院 院長 村上 優

今回フォーラムのテーマは「医師全体の支援 へ」だが、医者の業務の軽減を図らなければ、 この議論は堂々めぐりになる。

医者の業務の軽減を図るには 2 通りの方法が ある。

1 つは、とにかく医師を増やしていくことだが、 これには現実的にいろいろな制約がある。もう 1 つは、医師の業務独占をある程度改善していくこ とである。処方と診断以外のことは、臨床心理士、 ソーシャルワーカー、ナース、作業療法士など、 多職種で分担して軽減する。我々医師が業務独 占に固執し続ければ、医師が増えない限り忙し さは続くだろう。やはり我々自身が変わってい かなければ、環境も変えられないと思う。

閉 会

○知花 なおみ副部会長

今日お集まりいただいた皆様の意見から、今 私たちが抱えている多くの問題への解決策のヒ ントが出た。これらを 1 つ 1 つ解決していくこ とが出来れば、10 年後、20 年後はもっと働き やすい環境になっているかもしれない。そのた めには私たちの意識改革も必要である。

来年のフォーラムもぜひ参加していただける ことをお願いし、閉会とする。

印象記

女性医師フォーラムに参加して

沖縄県医師会女性医師部会 副部会長 知花 なおみ

10 月 20 日、第 6 回女性医師フォーラムが「広がる女性医師支援、そして男性医師支援へ」と いうテーマで開催されました。参加者は 39 名と例年より少なめの人数でしたが、このうち男性 が 13 名と 3 分の 1 を占め、多くの男性医師と共に話し合うことができた貴重な機会となりました。

本会では、まず、これまでの女性医師部会の歩みを振り返り、その後琉大病院での取り組みを 紹介してもらいました。大学でも短時間勤務制度が導入され、その利用者が増えていることから、 女性医師部会の歩みと共に大学等の機関においても状況は確実に前進していることが伺えました。

次に、県内 5 病院(琉大、中頭、浦添総合、県立中部、県立南部医療センター・こども医療センター) を対象とした女性医師支援に関するアンケート調査結果が報告されました。ここでは男性医師と 比較して女性医師の未婚率が高いこと、また結婚していても子供の数が少ないこと、さらに家事、 子育てをしている率が高いことなどが報告されました。さらにアンケート結果から女性医師支援 の具体的な方策についての認知度が低いことが示され、女性医師部会が毎年開催している病院長 懇談会などでの女性医師支援策について、もっと現場でそれを必要としている人たちへの情報提 供が必要と思われました。その他にも「女性医師の離職を防ぐために女性医師支援は必要か」と いう問いに対しては男女とも 80%近くが「必要である」と答えているものの、「支援を受けない 医師への負担があると感じるか」という問いに対して男性 60%、女性 78%が「感じる」と答え ており、女性医師支援が誰かの負担増にならないような運用方法の必要性が示されました。この 点については、その後の総合討論の中で、医師補助業務者を増やす、「医師」だけで医療を支える 視点ではなく「チーム医療」の導入に加えて、医師会、大学、病院で連携して「地域での支援」 を検討することなど様々な意見が交換されました。

その後、女性医師を妻に持つ 2 人の男性医師より意見発表が行われましたが、ここでは、家庭 生活と仕事を両立させるために男女が相互に思いやり、時間をやりくりしてこれまでキャリアを 積んでこられた経緯が発表されました。その中で、男性医師は病児保育のために早退するのを上 司になかなか言えない状況があり、男性医師の子育て支援策には職場環境と文化がより重要であ るとの報告がされました。また、すべての医師が女性医師を取り巻く環境に対して理解を持って いるわけではなく、勤務時間や当直、子供の病気などで勤務から外れることへの批判があり、職 場によっては女性医師を取り巻く環境は依然厳しいことや、不規則で予測できない時間の拘束を 伴う仕事と育児の両立は容易ではなく、職場でも家庭でも様々な方面での「連携」が必要である との発言がありました。最後に発表者からこれまで子育てと仕事を両立する上で配慮してもらっ た事柄については、利子をつけて次の世代にお返しするつもりであるという言葉があり、働き方 の多様性を作ることとそれをバックアップしていく職場の未来は明るいと強く感じました。

また、これからは女性医師支援だけではなく、親の介護や自身の体調不良などのある医師がで てくることも考え、病院全体でそのような人をサポートできる体制作りが必要であること、その ためには主治医制ではなくチーム制を主軸とした勤務体系の設置が必要なこと、女性医師支援を 他の医師の負担と感じさせないためにも、医師全体の負担を軽減するシステム作りが肝要で、そ のためには今から 5 年 10 年かけて長期的な視点で体制をデザインしていくことが必要であろう という意見がでました。その他にも病児保育の導入、当直明けに帰れるような勤務体制作り、各 病院でそれぞれロールモデルを作っていくこと、支援の制度の周知などの意見がでて、かなり熱 い討論となりフォーラムは終了しました。

「女性医師フォーラム」という名称だと、男性医師がなかなか出席しづらいので、「女性医師部 会主催 働き方を検討するフォーラム」など別の名前にした方が男性医師も参加しやすいのではな いか、という意見もあり、次回からは名称変更も検討が必要だとの認識が高まるほど、幅広い視 点で話し合うことができました。

また来年に向けて、さらに女性医師支援、男性医師支援、そして医師全体の支援に繋がる活動が、 女性医師部会に求められていると強く実感したフォーラムでした。