まえはら内科 宇座 達也
原発事故直後から数日間は「いったい日本は どうなるのか」と漠然とした不安感でテレビを 見ていた。ところがテレビでは、「がんばろう 日本」「日本は一つ」の繰り返しや道徳教育の ようなコマーシャルが刷り込みのように放映さ れ続けた。「健康や生死に関わる瞬時瞬時の情 報が欲しい時に、なんだよー」と憤りながら、 誰が、どんな意図でこんな放送内容を決めるの か不気味さを感じていた。テレビや新聞の情報 よりインターネットからの情報の方が正確で早 かった。特に外国提供のネット情報が役に立ち、 本当に日本の子供たちのことを心配しているよ うでもあった。情報不足(不信)の汚染地の住 民はガイガーカウンターを自腹購入して身を守 っている。
今では「どうしてこんな国になってしまった んだろう」とはっきりした不安がある。後出し 情報の2 次被害、避難させない住民の悲劇、お そまつな収束宣言、原発再稼働推進、金儲けの 原発輸出などなど、原発問題を契機に、様々な 手段で私たちは情報操作されていることに気づ いた。情報操作に陥らないための私の考えを述 べたい。
まず、情報操作の理解のため日本独自の「記 者クラブ」の存在について述べる。「ジャーナ リズムの崩壊」上杉隆著によると、本来、報道 機関は権力を監視する役割を担うはずだが、大 手マスコミは「記者クラブ」というのを作り、 それには取材の特権が与えられており、権力と 癒着して利害が一体化されている。「記者クラ ブ」以外の記者は、自由な報道が保証されてい ない。そのため、「記者クラブ」を介して、権 力者の都合の良い情報だけが都合の良いタイミングで流される。
私の印象では、情報操作の技は多彩で、テレ ビや新聞だけの情報からそれを見極めることは 不可能である。情報操作されないために、まず 結論から上げてみると、
1.どんな情報も疑ってかかる
2.テレビや新聞は裏を読む
3.信頼出来るネットや著者の本を探す
まず、情報ソースとしてのテレビは見ないほ うがいい。巧妙な情報操作で、その見極は不可 能である。テレビの時間をネットに振り当てた ほうが情報の質は格段に上がる。
いかにテレビが巧妙かの例をあげてみると、 まずgoogle で「中野剛志 とくダネ」を検索し てDailymotion の動画を見てみよう。TPP に 関して情報操作しようとするテレビ局側と、そ れを論破する中野氏のやりとりが見れる。
次にYouTube で「NHK が沈黙した日」を検 索してみる。当時「騒動おばさん」と悪人扱い されたが実はそうではなかった事がわかる。
新聞を読む際は、情報元に気をつける。不明 な情報元や各紙共通の記事は垂れ流し記事とし て疑う。誰がどういう意図で流したものか。ま た、内容が事実だとしてもなぜこのタイミング で情報を流されたかを考える。アンケート報道 の設問には、その意図を嗅ぎとる。記事の大小 は無視する。大切な記事が小さな扱いの場合も ある。写真はどこをカットするかでまったく印 象が違うので気をつける。何よりも大切なこと は、ネットの多数の視点を参考に裏をとる事で ある。
本からの情報ついていて言えば、大手メディ アの雑誌は、「記者クラブ」情報として疑って 読む。出版社の信用度は、どのような著者を重 用しているかで判断すると良い。
とりあえず、お勧めを2 つ。
一つ目に『週刊金曜日』。故筑紫哲也氏が創 刊時から関わっており、広告に頼らないで権力 に対峙する雑誌で原発や基地問題もよく取り上 げている。
二つ目に『DAYS JAPAN』。
サイト引用文 ―
本誌では、ジャーナリズム本来の「監視の目」 としての役割をになうべく、大手メディアが報 じない世界の現実を伝えてきました。最前線の フォトジャーナリストたちが命をかけた写真 を通して真実を訴え続ける雑誌DAYS JAPAN をどうぞよろしくお願いいたします。
― 引用終わり
情報操作に陥らないためには、ネットは必須 だと私は考える。多様な意見を汲み取るツール として最適だ。しかし、ネットの重要性が増し た分、情報操作のプロも混在しているので注意 したほうがいい。大手のポータルサイトは新聞 と同じ注意が必要で、新聞以上に当てにしてい ない。有用なサイトはリンク集も有用なことが 多いので、目星をつけたサイトからリンクをど んどん繰って、自ら吟味して欲しい。
情報操作に陥らないための観点からみると、 「ウィキリークス」の仕事は、もっと高く評 価されて良いはずだ。ジャーナリズムの仕事 の一つは、本来、そのようなスクープ記事を 取ることであったはず。スクープ記事は手柄 なのか犯罪なのかは恣意的である。過去の事 例を取ると沖縄密約の「西山事件」がそれだ。 問題の本質を女性問題にすりかえ、事を矮小 化し世論は情報操作された。「痴漢冤罪」も口 封じのための手口として事例は多いし、世論 は簡単に騙される。
原発問題が契機に、基地問題、小沢裁判、 TPP など社会問題も考えさせられてきた。国 民の正しい判断は、確かな情報を手にしなけれ ば始まらない。医療関係者として思うところが あるのは、「自民党をぶっ壊す」のキャッチコ ピーに湧いた「小泉劇場」で、結果は「医療崩壊」 だったのではなかろうか。メディアの罪は深い。