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日本医師会長に横倉義武氏が当選
−第126回日本医師会定例代議員会−

宮城信雄

会長 宮城 信雄

去る4 月1 日(日)、2 日(月)の両日にわ たり日本医師会館において第126 回日本医師 会定例代議員会が開催された。

なお、当代議員会の概要は以下のとおり。

第1 日目(4 月1 日)

当日は定例代議員会に先立ち、稲倉正孝九州 医師会連合会長の進行もと九州ブロック日医代 議員連絡会議が開催され、九医連九州医師会連 合会前担当県である池田秀夫佐賀県医師会長か ら、九州医師会連合会の諸行事が滞りなく無事 終了することが出来たことに対するお礼の挨拶 が述べられた。

また、横倉会長候補、今村、藤川常任理事候 補より日医役員選挙に向けた意気込みが述べられた。

 定刻になり、仮議長に加藤哲夫氏(島根)が 選出され、仮議長より開会宣言が述べられた後、 出席代議員の確認が行われ、定数である357 名 の代議員の出席をもって会の成立を確認し、続 いて加藤仮議長より議事録署名人として、池田 琢哉代議員(鹿児島)、嘉数研二代議員(宮城) が指名され、議事が進行された。

先ず、議長選挙が行われ、定数1 名に対し加 藤寿彦氏(愛知県医師会)、石川育成氏(岩手 県医師会)、渡部透氏(新潟県医師会)の3 名 が立候補し、選挙の結果、加藤氏152 票、渡 部氏128 票、石川氏74 票で加藤氏が当選を果 たした。なお、副議長候補者は、久野梧郎氏(愛 媛県医師会)1 名のため無投票により当選人と 決定した。

その後、加藤議長より8 名の議事運営委員(各 ブロック)が指名され、役員選挙の進行を確認 するため議事運営委員会が開催された。

役員選挙

○会長選挙

定数1 人に対し、現職の原中勝征氏、京都府 医師会長の森洋一氏、副会長の横倉義武氏が立 候補し三つ巴の戦いとなった。

選挙立会人並びに開票管理人の立会いのもと 投票による選挙が行われ、開票の結果、投票総 数357 票、無効票1 票、横倉氏154 票、原中 氏137 票、森氏65 票となったが、会長選出規 定に基づき、1 位の横倉義武氏の得票数が過半 数を超えなかったため、横倉氏、原中氏の決戦 投票が行われた。

決戦投票の結果は、投票総数357 票、無効票 1 票、横倉氏192 票、原中氏164 票で、横倉義 武候補が初当選した。

○副会長選挙

副会長選挙では、定数3 名に対し、松原謙二 氏(大阪府)、羽生田俊氏(群馬)、中川俊男氏 (北海道)、今村聡氏(東京)の4 名が立候補し、 投票による選挙の結果、今村氏、中川氏、羽生 田氏が当選した。

※今村氏286 票、中川氏276 票、羽生田氏220票、松原氏149 票

○理事、常任理事、監事、裁定委員選挙

続いて、理事、常任理事、監事、裁定委員の 選挙が行われ、常任理事選挙については、定数 10 人に対し13 人が立候補したことから、投票 による選挙が行われた。

立候補したのは、九州医師会連合会推薦の今 村定臣氏(長崎)、藤川謙二氏(佐賀)の2 名 の他、鈴木邦彦氏(茨城)、保坂シゲリ氏(神 奈川)、大野和美氏(愛知)、道永麻里氏(東京)、 三上裕司氏(大阪)、石井正三氏(福島)、石川 広己氏(千葉)、高杉敬久氏(広島)、小森貴氏 (石川)、葉梨之紀氏(神奈川)、石渡勇氏(茨城) であった。

理事、監事、裁定委員については、いずれも定数内の候補者で投票によらず当選人を決定し た。なお、監事は定数3 名に対し4 名が立候補 していたが、鈴木勝彦氏(静岡)が辞退したた め、3 名が無投票により選出された。

選挙終了後、横倉会長から新役員の紹介があ り、日本医師会が強くなるようオールジャパン で頑張りたいと述べられた。

選出された新役員等の陣容は以下のとおり。

会 長 横倉 義武(福岡)

副会長
 今村  聡(東京) 中川 俊男(北海道)
 羽生田 俊(群馬)

理 事
 長瀬  清(北海道)寺下 浩彰(和歌山)
 柵木 充明(愛知) 野中  博(東京)
 福田  稠(熊本) 稲倉 正孝(宮崎)
 川島  周(徳島) 伯井 俊明(大阪)
 岡本 公男(鳥取) 齊藤  勝(青森)
 塚田 芳久(新潟) 青木 重孝(三重)
 大久保吉修(神奈川)

常任理事
 石井 正三(福島) 石川 広己(千葉)
 藤川 謙二(佐賀) 葉梨 之紀(神奈川)
 三上 裕司(大阪) 今村 定臣(長崎)
 鈴木 邦彦(茨城) 小森  貴(石川)
 道永 麻里(東京) 高杉 敬久(広島)

監 事
 葛尾 信弘(島根) 尾ア 治夫(東京)
 川島 龍一(兵庫)

裁定委員
 浅野 定弘(滋賀) 村山 博良(高知)
 武者 吉英(山梨) 舳松  洋(東京)
 松田 尚武(福井) 仙波 邦博(埼玉)
 藤井 俊宥(茨城) 山本 光興(東京)
 小山 菊雄(福島) 島田 保久(北海道)
 福田  量(福岡)

代議員会議長  加藤 寿彦(愛知)
代議員会副議長 久野 梧郎(愛媛)

第2 日目(4 月2 日)

稲倉宮崎県医師会長の進行のもと、代議員会 に先立ち前日同様九州ブロック日医代議員連絡 会議が開催され、挨拶があった。

昨日の代議員会で幸いにも私たちが推薦した 横倉日医会長、常任理事に今村先生、藤川先生 が見事当選された。おめでとうございます。日 医役員選挙においては福岡県の松田会長、佐賀 県の池田会長をはじめ代議員の先生方にご尽力 いただいたことに対してお礼申し上げる。おか げで強い日本医師会が出来る事を期待してい る。日医の重要な使命として国民の健康と安心・ 安全を保障し、日本の医療保険を堅持し、地域 医療を守る事が大事である。九州一丸となって 日本医師会横倉執行部を支えていかなければい けないのでご協力をお願いしたい。

引き続き、蒔本先生から議事運営委員会の報 告として本日は代表質問が8 題と、個人質問が 12 題出ており、議席番号252 と議席番号75 番 は順番が2 番と3 番へ変更になったことの報告 があった。(三上先生が財務委員会に出席され ることから答弁を早めた。)また、会長挨拶と 会務について質問がある場合は昼までに私のと こに出していただければ、昼の議運で諮り取扱 を検討する旨の説明があった。

定刻になり、先日議長に当選された加藤議長 より、当代議員会が再開される旨挨拶があり、 早速、会長より所信の挨拶があった。

挨 拶

○横倉義武会長

この度、皆様のご支援により日本医師会長の 重責を仰せつかった横倉でございます。私は、 これまでの活動から、一貫して継続と改革を訴 え、オールジャパン体制の重要性を訴えてまい りました。原中前会長の実績を尊重し、そして 継続しそれを発展させスピード感を持って改革 に取り組む所存である。また、役員でありまし た私の立候補については前会長にも御礼を申し上げるとともに代議員の先生方にも御礼申し上 げる。

現在の日本医師会に課せられた使命は、国民 の健康と生命を守る強い専門家集団になること である。そのような思いから10 項目に渡る提 言をさせていただいた。その第一に、「日本医 師会の基本理念の明確化と発信」を上げた。基 本理念として私は「日本医師会の綱領」を検討 し、組織としての目的、目標、理想を会員のみ ならず国民の皆様に示したい。

もうひとつは、地域医療の重要性を訴えてき た。それは、ほかの候補と大きな違いはないと も指摘されたがしかし、私が強調してきたのは、 地域医療を守り、充実させるにはどうすればい いのか、何をなすべきなのかであり、それぞれ に異なる各地域の実態をきめ細かくくみ上げ、 それを分析して国政に反映させるために日本医 師会が、そして日本医師会長が先頭にたって実 行していくということである。

この30 年間近く、国は毎年のように医療改革 の必要性をかかげ、実行してきたが、改革が繰 り返されるたびに、日本の医療は改善されるど ころか、むしろ医療環境は悪化していると言っ ても過言ではない。これは財政の辻褄合わせに 力点が置かれてきたことも、その理由であるが、 最大の原因はそれぞれの地域によって異なる医 療提供体制をきめ細かく把握し、それを反映さ せた医療改革を行ってこなかったことにある。

日本の医療を良くしていけるのは、日本医師 会だけである。各地域の医師会から、その実情を 丁寧に組み上げ、何が不足しているのか、どこ をどう改善すればいいのかを分析し、国に対し て具体的に実現を迫ることができるはずである。

もちろん、改善のために必要な財源の確保も 求めていかなければならない。そして、それは スピード感をもって進めていかなければならな い。私はその先頭に立って実行していきたい。 今までの日本医師会に足りなかったことがある とすれば、その部分ではないだろうか。

例えば2013 年度からは、都道府県地域医療 計画が始まる。具体案は遅くとも、年内には策定されるだろう。

この新たな5 力年計画を、国や都道府県とい う行政だけに任せるのではなく、各地区の医師 会が主導権を持って策定しなければならない。 また、国が推進する医療の機能分化は、それぞ れの地域の実情に応じて、適切に対応していく べきである。

併せて、今なお続く東日本大震災からの復旧、 そして復興に向けて、目本医師会としてさらに 支援していく所存である。すべての国民が最適 な医療を受けられるための環境整備に全力を尽 くしてまいりたい。

医学は急速に進歩している。私が医師になっ た頃、体内の横断面をリアルタイムに画像表示 する事は夢であった。診断技術の進歩、内視鏡 等の診断・手術法の進歩、臓器移植だけでなく 細胞培養等の進歩、全ての分野で急速に進歩、 普及をしている。新規技術の開発、普及には それぞれ関係する学会の努力の賜物である。日 本医学会が各種学会を統括され、医師会員の多 くは関係する学会に所属している。今後とも医 学の進歩が臨床の場に普及し国民に還元するた め、日本医師会と日本医学会が車の両輪として、 国民の医療を守っていかなければならない。今 からの行く手には様々な困難が待ち構えている が、代議員の先生方のご指導をいただきながら、 役職員一丸となってよりよい医療を目指し、日 本医師会の強化を図っていく所存である。よろ しくご支援をお願いしたい。

引き続き再就任された高久日本医学会会長から挨拶が述べられた。

○高久日本医学会会長

横倉先生を会長とする日本医師会の門出にこ のような機会を与えられたことについて光栄に 思う。日本医学会は112 の分科会で構成され ており、数年前から基礎と社会と臨床の3 つの 部門に分けており、とくに臨床は80 の学会が 属している。3 月の初め日本癌学会、日本癌治 療学会、日本臨床学会の要望を受けて日本医学会の学会でがん登録の法制化について、多くの 議員にお願いしてきた。6 年前に医学会長に選 ばれた時から日本の医師は日本医師会を中心に 一致団結して意見を述べ、行動すべきだという 考えは今も変わらない。新しい会長先生を迎え られた日本医師会が今後ますます発展し、その 発展によって日本国民の健康と生命を守ること を心から信じている。日本医学会としても医師 会の先生方とともに日本の医療を発展させてい きたいというのが、私の信念であり、横倉会長 に対するご就任に対するお祝いの言葉とさせて いただきます。本日はおめでとうございました。

会務報告

羽生田副会長からこの1 年間で1,454 名の会 員がご逝去されたので黙祷を捧げたいと説明が あり、黙祷の後平成23 年度の会務報告が行われた。

議 事

第1号議案 平成23 年度日本医師会会費減免申請の件

今村副会長より資料に基づいて提案理由の説 明があり、賛成挙手多数により原案どおり承認 された。

第2号議案 平成24 年度日本医師会事業計画の件

第3号議案 平成24 年度日本医師会予算の件

※従来、医師年金は決算期が異なることから別 会計としていたが、公益社団法人移行後は、 医師年金も含めて表示することが求められて いることから、今後、医師年金を併せて表示 することにしている。しかしながら、認可特 定保険業の実施にあたっては医師年金を区分 して表示することになっており、従来と変わ らず独立して運用されると説明があった。

第4号議案 日本医師会会費賦課徴収の件

上記2 号議案、3 号議案、4 号議案について は関連事項として一括上程され、今村副会長よ り提案理由の説明が行われた。

また、議長より代議員の任期と同じく財務委員会を設置したいと提案があり承認された。

なお、財務委員会は議事運営委員会の決定事 項によって15 名の委員を持って構成すると、 代議員会規則第45 条前段により指名してよい か提案があり、15 名が指名され、午後に別室 にてご審議をお願いしたい旨説明があった。

第5号議案 日本医師会年金の特定保険業認可申請の件

今村副会長より提案理由の説明が行われた。

平成23 年度に施行された再改正保険業法に 基づき、医師年金制度を認可保険特定保険業と して、厚生労働省に対して認可申請を行う点に ついて審議いただきたい。認可取得は平成24 年10 月を目途とする。

平成18 年に施行された改正保険業法では、 場合によっては医師年金のような公益法人が運 営する共済制度は廃止とならざるを得ない可能 性があった。その後、日医から政府関係者や関 係省庁へ働きかけを行い、平成23 年5 月に保 険業法が再改正され、行政庁から特定保険業の 認可を受けることにより、平成17 年時点で共 済事業を行っていた、一部要件をみたした公益 法人における共済事業継続が可能となった。平 成25 年4 月に新公益法人移行とともに特定保 険業を開始するため認可申請することについて ご承認いただきたい。

また、AIJ に関わりなく堅実な運営をされて いるか確認したいと質問があり、今村副会長か ら健全な運用をしており、年金加入者には毎年 4 月に報告している旨説明があった。

第5 号議案について評決の結果、賛成挙手多数により原案どおり可決された。

追加議案

第6号議案 日本医師会役員功労金支給の件

今村副会長より追加議案として日本医師会役 員等功労金支給の件について、今回退任された 前役員の先生方への功労金支給についての提案 理由の説明があり、賛成挙手多数により原案ど おり承認された。(原中先生と保坂先生退任)

なお、議案の審議について、議長より、第2 号議案、第4 号議案の一括審議を付託するた め、また代議員会閉会中も日本医師会の財務に 係る審査を適宜行えるようにするため、財務委 員15 人が指名され、別室にて審議が行われた。

その後、財務委員会の三宅財務委員長より、 第2 号議案、第3 号議案、題4 号議案について、 それぞれ担当理事から説明を受け、慎重に審議 した結果、全会一致で原案どおり承認した旨の 報告があった。以上の報告を受け、本会議にお ける評決を諮ったところ、賛成起立多数により、 原案どおり承認可決された。

ブロック代表質問(8 件)及び個人質問(11件)についての質疑が行われた。

代表質問

◆医療にかかわる控除対象外消費税問題について

診療報酬等医療保険制度において、消費税を 上乗せで対応しようとするなら、毎年国民医療 費を明らかにし、消費税分を算出し、国民に明 示し国税から還付するような国民に分かりやす い制度にするべきと九州ブロックから代表質問 があり、今村副会長から答弁があった。

消費税率が8%に引き上げられる時点で、非 課税のまま、診療報酬で補填する従来通りのや り方ではまずいということは政府も分かってい る。日医も従来さまざまなデータを集めており、 高額投資の部分で、いわゆる資産として残るも のについての消費税は医療機関に大きな影響が あるので、日医の税制要望では常に第2 要望と して別の手当てとするよう求めてきた。また、 将来的に診療報酬で手当てするのではなく、医 療に関わる課税の在り方を検討するとも言って おり、我々は従来通りに、国民から見ても税と いう分かりやすい形の中で、ゼロ税率あるいは 軽減税率という課税方式とするよう主張してい きたい。

中医協に設置される検討の場では、現時点(消費税率5%)でマクロの額としてきちんと診療 報酬で補填されているかという補填額について の検証と、医療機関への補填方式が適切であっ たかどうかの検証を国民に分かる形でやりた い。また、消費税率が8%になったときに総額 でいくら必要で、それをどのように診療報酬の 中に乗せるかを議論する。その先(10%引き上 げ)のことについては、分かりやすい課税の形 を考えて主張していきたい。

◆医療の将来像と日本医師会について

近畿ブロックから代表質問があり、横倉会長から答弁があった。

○日本の将来の医療が営利目的であってはなら ない、国民皆保険体制というのは世界に誇れる 医療保障体系であるから、しっかり守るという ことを私どもは強く決意していかなければなら ない。また、日木医師会は断固としてTPP へ の参加に反対であるという声明を先日、出した。 国民医療を壊すというものに対しては、反対を 明確にしていきたい。

○日本医師会を造ることに、役員任期が短いと 言うことについては公益法人にする場合、理事 の任期は2 年と法律で決まっている。では、ど うしたら組織の継続性を保って役員交代をして いけるかということについては、役員が総入れ 替えせず、ある程度バトンタッチできるような 執行体制が必要で、そのためには若い世代の会 員に委員会などに参加してもらい医師会を理解 して貰っていけるような方策を考えて行かなく てはいけない。

◆日本医師会が国民の支持を得るために対外広 報と、日医会員の約半数を勤務医が占めてい る中で、理事に勤務医の枠を設けることについて

東北ブロックから代表質問があり、横倉会長から答弁があった。

○国民に信頼される医師会をどう造るかという ことについては、地道な対外広報と様々な方法 で国民へアプローチがあると思うが全都道府県が連動することが必要。

○執行部への勤務医の参加については、前年度 の勤務医委員会からも日医理事に勤務医枠をつ くってほしいとの要望を頂いた。理事の定数は 定款で決めているので、増やすとなると定款を 変える必要があり、前段階として理事会に諮っ た上で、理事会への勤務医オブザーバー参加を 検討する。

◆先進医療について

中部ブロックから代表質問があり、中川副会長から答弁があった。

先進医療制度と高度医療制度を統合し、審査 体系を統合することについて「安易な統合は避 けるべき。慎重に考えるべきだ」と見解を示し た。「今の形は必ずしも悪くない」と述べ、安 全性を担保する必要があると強調した。

◆日本医師会の自浄作用として再教育システムの構築について

中国四国ブロックから代表質問があり、羽生田副会長より答弁があった。

医師会の役割は、問題を未然に防ぐことであ り、自浄作用活性化や会員の倫理資質向上対策 の中で連携していきたい。再教育・再研修の取 り組みは厚労省だけに任せず、医師会が積極的 に進めていくべき。こうした取り組みを地道に 積み重ねれば、医療事故調や医師法21 条改正 の議論も説得力を増す。刑事訴訟を未然に防ぐ ことが大事である。

◆今回の診療報酬改定に関して日本医師会の見解について

東京から代表質問があり、中川副会長より答弁があった。

日医は今回の改定で、診療上、中小病院への 手当てを強く要望してきたが、前回改定で明確 なエビデンスがなく引き下げられた再診料を回 復できなかったことなど、決して十分ではなか ったことは誠に申し訳ない。中医協答申の付帯 意見にも今後、基本診療料の検討を行うことが明記されている。引き続き再診料をはじめとす る基本診療料の引き上げを最重要課題として取 り組みたい。

◆総合診療医問題について

北海道から代表質問があり、羽生田副会長から答弁があった。

標榜診療名としての「総合科」の新設は、ま ず総合科の受診を義務付ける受診制限や人頭払 いなどにつながることから、日医は反対である。 一方、学会が「医学的機能」面で専門医制を確 立した上で「総合診療科」を標榜することには 引き続き議論が必要である。

日医としては、厚労省の「専門医の在り方に 関する検討会」の審議動向を注視しながら、日 本医学会、日本専門医制評価・認定機構などと 協議しつつ、主導的な役割を果たしていきたい。 簡単に結論が出る問題ではないため、「総合医」 「総合診療医」といった名称を区別すべきか、 一本化すべきかどうかについては、引き統き議 論する必要があると考えている。

◆「医療診療消費税ゼロ税率」にした場合、消 費税納付額の減少や還付になることになるが、 その対応に国の財源確保の見通しについて

日医の見解について関東甲信越ブロックより質問があり、今村副会長から答弁があった。

日医は、医療費はゼロ税率課税がもっとも望 ましいということを提案し続けている。非課税 の現在は、診療報酬の中に医療機関が支払う消 費税分を補填するという形になっており、その 分の財源が問題になる。一方、医療費を課税対 象にして税率などを議論する場合は、医療機関 にゼロ税率や低減税率などを導入したときの消 費税増税1%当たりの税収減が焦点になる。消 費税は今、税率を1%上げると2.5 兆円程度の 税収入の増が見込まれている。今後、消費税 10%超に向けて医療費への課税を検討する場 合は、ゼロ税率導入による1%当たりの税収減 の程度などをあらためて検証する必要がある。 ただ、必要な税収入を確保するための税率を設 定すれば、1%当たりの税収減を別途財源で補 填する必要はないと思っている。われわれとし てはゼロ税率の旗は降ろさず、社会保障につい て必要な手当てをするよう要望し続ける。

印象記

安里哲好

副会長 安里 哲好

今回の日医代議員会および日本医師会の存在程、身近に感じたことはない。何故なら、我々の 代表であり、我々の身近な存在である横倉義武先生が日本医師会長に選出され、現執行部・理事 者の15 人中13 人が残り、ほとんど現勢力が維持され、加えて若い優秀な人材が更にその能力を 発揮できる環境が整ったと言えるからである。そして、就任後の準備期間もそれ程要らず、理事 者間の意思疎通も充分に培われており、横倉会長の下で明日からでも、提言を具現化していくも のと思われ、大いに期待するところである。

横倉会長の就任挨拶の中で強く心に残ったのは、1)「国民の健康と生命を守る」強い専門家集 団になること。2)「日本医師会の基本理念の明確化と発信」として日本医師会の綱領を作成する。 3)「地域医療の充実」で、すなわち、地域によって異なる医療提供体制をきめ細かく把握し、それを反映させ医療改革を行う。その事について、今の国会議員や中央庁の官僚にその力を求める のは無理で、各地域の医師会からその実情を丁寧に組み上げ、何が不足しているのか、どこを改 善すればいいのかを分析し、国に対して具体的に実現を迫り、改善のための財源の確保、そして、 スピード感をもって進めて行くことに先頭に立って実行し、全力を尽くしたいと所信を表明して いた。また、新たな都道府県地域医療計画を、国や都道府県と言う行政だけに任せるのでなく、 各地区の医師会が主導権を持って策定して行くべきで、国が推進する医療の機能分化はそれぞれ の地域の実情に応じて、適切に対応していくべきだと述べていた。

代議員会は第1 号議案から、退職理事者2 名の退職金・功労金について追加された第6 号議案 までが検討されすべて承認された。平成23 年5 月に保険業法が再改正され、行政庁から特定保 険業の認可を受けることにより、公益法人における共済事業継続が可能となったと報告していた。 平成24 年度一般会計(案)は149 億円の収入があり予備費3.3 億円を残し、収支差額24 億円の マイナスで、前期繰越を加味して次期繰越収支差額0 円であった。医賠責特約保険事業特別会計 は8.8 億円の収入で収支差額0 円、治験促進センター事業は収入(補助金)9.6 億円、業務費2 億円で収支差額0 円、女子医師支援センターは収入(委託費)1.6 億円で収支差額0 円。しかし、 今回の総合計(案)は医師年金事業が加味され、6,670 億円の事業で、+ 51 億円であったが、マ イナスの前期繰越が多額に残っており、総額収支2,204 億円のマイナスと報告しており、医師年 金事業も加味した収支予算書総括表(案)は、小生の理解を超えていた。15 名の財務委員会で検 討し、承認したことで同意したが、今尚十分には理解していないのが現状である。

代表質問は8 質問中、2 題が「消費税について」、2 題が「日本医師会のあり方について」、そ して「先進医療」、「日本医師会の自浄作用について」、「今回の診療報酬改定について」、「総合診 療医問題について」がそれぞれ1題ずつであった。個人質問は11 質問あり、その中で、「勤務医 を医師会に確実に加入させるための方策として〜医療制度・医療倫理に関する日本医師会認定医 であることを各種学会専門医認定試験受験資格にする案〜」は興味深い提案だと感じた。その他、 報告文をご一読いただけたら幸いです。

日医会館の隣にある六義園の大名庭園の桜はまだ蕾で、例年になく寒い4 月1 日であった。こ の度の代議員会は医師会長選挙に始まり、ドキドキしながらその経過を見守り、会場を閉鎖し決 選投票まで行ったが、われら九州の代表である横倉先生が会長に選出されたことはこの上ない喜 びで、春一番の吉報であろう。その夜は、ホテルオークラで横倉新会長の就任を祝い、美味しい お酒と楽しい一時を過ごした。