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君達を送る時、一条の涙

安里哲好

中部地区医師会会長 安里 哲好

初めての経験であった。中部地区医師会立ぐ しかわ看護専門学校の卒業式は厳かの中に、凛 として、清楚に執り行われた。入学式のとき、 一期生80 名の君達を迎え、その半年後に、少 ない人数で文化祭を催した。2 年目は、座学か ら病院実習に移る2 年目の折り返しの時期に、 私にとって、まさに感動的な一瞬であった宣誓 式に参列した。看護学生たちは講堂の舞台に作 った壇の上で、灯した蝋燭を両手で持ち、薄暗 闇の中で言葉を出して誓ったのか、灯火の光の 下で「病める人たちと常に共にある」と心に誓 ったのであろう。3 年目の今年、平成23 年3 月 10 日に、一期生75 名(男性5 名)の卒業式を 迎えた。清楚で美しい若い人たちの旅立ちであ った。社会に飛び立つ君達を送る時、卒業生代 表の答辞を聞き、万感の思いが込み上げて来 て、一条の涙が右の頬を流れた。左側に座って いた校長は涙で目の前が霞んでいたのではなか ろうか。それにしても、卒業生の全員が白衣姿 で臨み、整然として行われた卒業式であった。 起立して歩く姿、お辞儀や証書授与の折の立ち 振る舞は、華やかな表現をすれば宝塚風で、違 う表現をすれば防衛大学校風とでも表しよう か。私は激励の挨拶と、学校内外で社会活動を 積極的に行い、リーダーとしての資質の高い卒 業生に対して医師会長賞を授与した。

昆布の地(看護専門学校の所在地)は緑と広 い空間、そして坂を下って正門に入る際に、右 方の眼下に太平洋の大海原が目に入るぐらい で、その他何もないところである。校舎と講堂 は広く、公園も隣にあるが、地理的に社会との 繋がりが希薄で半閉鎖的な地域である。それ 故、学ぶ者に取っては良い環境であろうと思う が、一期生は寂しさを紛らわすかのように、年 齢の違う仲間同士で共に未来を語り合ったので あろう。答辞の中にも述べていたが、病気をし た学友、妊娠出産した学友、そして親の病死等 を乗り越えてきた学友らと共に励ましあい、連 帯意識が自然と芽生え、同志としての強い意識 が培われてきたのであろう。2 年目の後半から 学外での医療機関での実習がほとんどの様だ が、学校に帰って来て、更に学習するとのこ と。基礎分野360 時間、専門基礎分野540 時 間、専門分野1,000 時間、臨地実習1,035 時間 を短い3 年間で学び単位を取得している。3 学 年の終わりの期間は、早朝に、夕に、教員の指 導のもとに国家試験に臨んだとのこと。校長を はじめ全教員、講師の方々、実習施設の関係者 の方々に心から感謝すると同時に、一期生全員 の合格の吉報を心待ちにしていた。

中部地域における看護師養成は、県立コザ看 護学校(昭和21 年沖縄中央病院付属看護学校 創立、昭和34 年琉球政府立コザ看護学校とし て独立し、復帰後県立となる)が平成3 年に県 立那覇看護学校へ統廃合され、その後現県立看 護大学へ統合されている。医療・看護教育のメ ッカであった中部地域における看護学校の復活 は、地域の方々の強い要望でもあり、会員の悲 願でもあった。中部地区医師会前会長の金城進 先生が中心となり、平成12 年3 月の第48 期中 部地区医師会臨時総会において中部地域に看護 専門学校新設が全会一致で承認された。多くの 苦難を乗り越えて、開設にまで8 年の年月を要 し平成20 年4 月に開校した。開設の際、ご指 導、ご協力いただいた方々に、改めて感謝申し 上げる。

看護専門学校のお披露目もあって、平成21 年度の地区医師会連絡協議会は同校の講堂で開 き、終了後に施設を見学し、学生食堂で昼食を 取った。学校までの道程を示す標識は小さく、 道は迷路にて、たどりつくのに難渋したとの声 があったが、校舎・講堂や環境整備に対しては お褒めの言葉を多く頂いた。一方、会議の中 で、宮古・八重山地区の看護学生の地域枠の意見がでて、医師会立看護学校において前向きに 検討することになった。ぐしかわ看護専門学校 は、平成24 年度から、久米島町も含め4 〜 5 名の地域推薦枠を設定する予定である。

今年も、新しい80 名の学生が入学し、その 中の20 %は男性であった。「諸君の目指す看護 師の仕事は、心身の健康を病む人の心のより所 であり、希望の灯火です。勉学にはげみ、仲間 と語り合い共に歩み、健康で充実した3 年間を 本校で過ごし、将来、看護師になった諸君が、 患者さんに信頼され、地域で献身的な活動をさ れることを心から希望している」と激励の挨拶 を述べた。短い期間(3 年間)における看護学 生教育は、膨大な知識を集中的に取得させ、そ れに加えてグループ・ワークやコミニュケーシ ョン・スキル等についての粘り強い指導を要 し、そして、底流に流れる看護理念を骨肉のご とく自我と一体になるよう導いて行く事かなと 感じつつ、緩やかではあるが大きく成長して社 会に旅立つ際の輝いている卒業生の姿をみる感 動の中で、3 年間の労苦が癒され幸せな気持ち に包まれる時を教員と共に享受した。

中部地区医師会会長表彰

中部地区医師会会長表彰

巣立つ卒業生

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卒業証書並びに称号授与

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卒業の日を迎え祝福

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