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平成22 年度第3 回マスコミとの懇談会
「特定健診」について

玉井修

理事 玉井 修

平成20 年から開始された特定健診ですが、 様々な経緯を経て、沖縄県では腎機能検査や尿 酸値等の項目を含めた形で離島を含めた全県網 羅した集合契約を締結する事により、全国に冠 たる健診体制を整備しております。沖縄県医師 会が調整力を発揮し、国保や社保、市町村、地 区医師会および健診医療機関と集合契約を締結 する事により、複雑で難解な特定健診をより円 滑に運営しやすい利便性と、県民に特定健診を 受診しやすい環境を整備する為に大きな役割を 果たしています。集合契約を基盤とする事によ り、特定健診の受診率は平成20 年から21 年に かけて国保の集計で4.6 %上昇し、全国平均を 上回り、受診率の改善率は全国で1 番なので す。この事は全国的にも注目され、産経新聞な どの全国紙にも大きく取り上げられました。

様々な全国比較においてワーストの評価に 少々ウンザリしている昨今ですが、やれば出来 るという一つの結果が出ている様に思います。

集合契約がもたらしたもう一つの良い点に、 健診実施主体である国保、被用者保険との意思 疎通が大変スムーズになり、この様な形で健診 結果の統計解析を会員にお返しできたり、また 今回のようなマスコミとの懇談会において有意 義なデータ提供が可能となりました。今回保険 者が提供して頂いたデータはどれも県民の、特 に壮年期における健康状態が非常に危機的状況 にあり、早急に対応しなくてはならないという 事がハッキリしてまいりました。メタボ健診な どと言っている余裕はなく、既に危機的状況で 医療に繋がることなく病気を放置している県民 が普通に生活しているという空恐ろしくなるよ うな実態があるのです。今回の報告からも解る ように、今後はこの様な健診結果をどの様に医 療機関とリンクさせ、医療へ結びつける事が出 来るかが大きな課題です。そのためにも保険 者、市町村、医師会、健診医療機関が相互に協 力出来る様な環境整備が急がれております。県 医師会もその一翼を担えるよう全力で取り組み たいと思いました。

懇談内容

懇談事項

金城 由美子
沖縄県国民健康保険団体連合会事業課主事
金城由美子

皆さん、こんばんは。

沖縄県国保連合会で 保健師をしております 金城と申します。きょ うは先生方とマスコミ の皆様の前でこのよう な貴重な時間をいただ きましてありがとうございます。私からは、市 町村国保の特定健診結果報告ということで話を させていただきます。

まずは、市町村国保の特定健診受診率の状況 です。平成20 年度は27.4 %、平成21 年度は 31.8 %と約4 割伸び、約1 万人も受診者が増え ました。2 年続けて受診してくれた継続受診は約 7 割です。受診率を性別、年代別にグラフにしま すと、40 代50 代が2 割にも満たない状況です。

国の確定版様式6-10 (スライド1)では、上 が健診受診者(E)で 86,717 人、中段が特定 保健指導対象者( O 、 P ) となり合わせて 17,112 人と健診受診者 の約2 割、また、健診 結果から医療機関を受 診が必要な方(M)も 15,699 人と約2 割を占 める状況です。

検査ごとに詳しくみて いくと、「糖尿病フロー チャート」(スライド2) では、健診受診者のう ち、3 疾患治療なしの 53,010 人をHbA1c の値 で分けたところ、B のHbA1c6.1 以上(B)の受診勧奨判定値が1,729 人。「高血圧フローチャート」では、3 疾患なし で高血圧T度以上の受診勧奨判定値が11,381 人、その中で特にV度高血圧が491 人。「LDL フローチャート」では、同じようにLDL140 以 上が17,235 人見つかりました。

スライド1

(スライド1)

スライド2

(スライド2)

今、見ていただいた 3 疾患のフローチャー トをグラフにしてみま した(スライド3)。右 のB が先ほどの受診勧 奨値で保健となり、左 のC が医療のコントロ ールとなります。特徴 として、左のC を見て いただくと分かるよう に、高血圧とLDL は 薬が効きやすく、それ に比べて糖尿病は HbA1c7.0 以上が高い 割合で、薬だけでは難 しいという印象を受け ます。

次に「沖縄県は、なぜ糖尿病対策が必要なの でしょうか?」では沖縄県は65 歳未満の死亡 が全国1 位で、若い方がなくなっており、年齢 調整死亡率の中で、糖尿病が男女ともに全国1 位という実態があります。

スライド3

(スライド3)

ある市町村の2 年分の健診データで、健診結 果がどうなったのか糖尿病フローチャート(ス ライド4)でみてみました。糖尿病治療中の HbA1c7.0 以上が継続受診で20.9 %、新規受診 で37.0 %、3 疾患治療なしのHbA1c7.0 以上が 継続受診で19.4 %、新規受診で43.3 %と、初 めて健診を受診した方 が重症化している状況 です。このように健診 未受診者を掘り起こせ ば、値が悪い方が多く でてくることが予想さ れ、健診未受診者対策 の重要性がデータから も分かりました。

また、平成20 年は受 診していたが、平成21 年度は受診していない健 診中断者をフローチャー トでみると、826 人が未 受診者(前年度受診者3,068 人)で、3 疾患治療なしのHbA1c6.0 以上 は18 人(54 人中)受診していませんでした。

次に治療につながっても中断してしまう事例、 また治療にいかない事例があり、住民はどう判 断しているのか市町村が聞き取りをしました (スライド5)

スライド4

(スライド4)

スライド5

(スライド5)

右に平成20 年度健診結果、中央に平成21 年 度のHbA1c、NO15 以降は平成21 年度健診を 受診していません。NO2 :「全然分からない から自己中断」、NO18 :「別に体は何ともな いので病院には億劫で行っていない。血圧は 199/91」、MO23 :「食事と運動を指導され1 回の受診で終了」

こういった方への保健指導をどうしたらいい のでしょうか?

今、市町村では住民の声から資料を作成し、 保健指導用の教材として活用していますので、 その一部を紹介します。「症状がないから大丈 夫!!と思っていませんか?」の資料(スライ ド6)では「のどが渇く」といった糖尿病に特 徴的な自覚症状がでるのは空腹時血糖250 以 上、HbA1c9.0 以上といったことを自分の値と 照らし合わせながら見て貰っています。

スライド6

(スライド6)

最後に、メタボリック、糖尿病死亡も1 位と いう実態がある中で、生活習慣病を予防するた めには、日常生活がどう体に影響しているのか、 知る機会となる健診・保健指導が第一歩となる ため、一人でも多くの方が受診してくださるよ う今後ともご協力のほどよろしくお願いします。

新垣 清乃全国健康保険協会沖縄支部保健サービスグループ長

協会けんぽは、全国 健康保険協会管掌健康 保険(旧政府管掌健康 保険)に加入されてい る中小企業のサラリー マンを対象に健康保険 事業を行なっておりま す。平成21 年度、当支部に加入されている被 保険者分の医療費分析を行ないましたので、そ の分析結果と今後の保健活動についてご説明さ せていただきます。

●レセプトデータから見えてきたこと

平成20 年にスタートした特定健診・特定保 健指導を中心に保健活動に取り組んでまいりま したが、保険料に影響する医療費に着目し健診 データを活用して予防につなげるための保健事 業を展開していくことを目的に医療費分析を実 施しました。その結果、特定保健指導だけに集 中していては、ハイリスク者が後を絶たず、合 併症や重症化を防げずに医療費も押し上げてし まうという深刻な実態がみえてきましたので、 その概要をご報告いたします。

今回分析に使ったデータは、平成20 年度医 科本人分の5 月診療分レセプト89,972 件と平 成20 年度生活習慣病予防健診データ64,346 件 が基礎データとなっています。レセプト89,972 件分の医療費総額は15 億7 千万円で、このう ち1,659 件(1.8 %)というわずかな件数の入 院分が費用額でみると6 億5 千万円(41.2 %) にも上っていました。更に入院分の医療費の 56 %を生活習慣病が占めており、重症化した 生活習慣病罹患者の医療費が大きく影響してい ることが分かりました。

医療費がひと月に80 万円以上となっている 者は209 名おり、そのうち9 割が健診も保健指 導も受けていませんでした。また、短期間の入 院で高額となっていたのは心疾患、6 ヵ月以上 の長期間入院で高額となっていたのは、男性の 脳卒中が大部分を占めていました。血圧を治療 することで、発症を予防できたのではないかと 思えるケースも多く見られました。医療費が高 額となっているレセプトでは、基礎疾患として 高血圧・高血糖の割合が高く、かつ受診をした その日に心疾患や脳出血なども同時に治療が開 始されているというケースもあり、当県の外来 受診率の低さの影響を考えさせられる結果が見 えてきました。

●健診データから見えてきたこと

また、予想以上に、糖尿病や慢性腎臓病、高 血圧でありながら治療を受けずに就業している という労働者が多いという実態も明らかになり ました。特にV度高血圧(180 以上/ 110 以 上)に該当する方が680名、そのうち528 名(77.6 %)が未受 診、U 度高血圧(160〜179/100〜109)につ いては2,458 名が 該当し、そのうち 1,749名(71.2%) が未受診という深 刻な現状でした。 空腹時血糖値についても200mg / dl を超える 重症域の方が662 名おり、そのうち348 名 (52.6 %)が未受診という結果でした。空腹時 血糖126 〜 199mg / dl では3,368 名が該当し、 そのうち2,089 名(62 %)が受診されていない という衝撃的な結果が明らかになりました。分 析の結果、医療費への影響は一部の生活習慣病 を主病とし高額な医療費を伴う重症化した患者 によるところが大きいということが明らかにな ったことから、医療費適正化の観点からも生活 習慣病を重症化させない取り組みが重要であ り、健診結果から治療を要する対象者を早期に 医療機関で治療できるように働きかける保健指 導が急務となっています。当支部としてはこの 危機的状況に対応するため、健診結果で治療を 要する人を確実に医療に結びつけられるよう受 診勧奨及び保健指導をスタートさせ、重症化予 防に着手したところです。

そのため、今年度より保健指導を次の3 本柱 で展開しています。一つ目に従来より実施して いる「特定保健指導」を効果的に実施するこ と、二つ目に健康保持・増進として長期的な視 野で関わる「福寿うちな〜運動」(歩数計を利用した事業所単位の健康づくり)を実施するこ と、そして三つ目として新たに重症化予防・合 併症予防として短期的視野のもと「ハイリスク 者への受診勧奨」を展開しております。

●「福寿うちな〜運動」1 年を経過しての評価

(第1 クール・第2 クール参加事業所の結果から)

事業所単位の健康づくり運動「福寿うちな〜 運動」には、60 事業所、約1,200 名の方が参 加しています。4 月からスタートした第1 クー ルと7 月からスタートした第2 クールの事業所 の1 年を経過しての評価結果がまとまりました ので、その一部を紹介したいと思います。健診 受診率ですが、対象者数はそれほど変わりませ んが、受診率が3.3 %増加しております。特定 保健指導の利用者数においては392 名も増えて おり、その結果特定保健指導対象者率(いわゆ るメタボ該当率)が3.7 %も減っております。 通常、健診対象者が増えますと特定保健指導対 象者も増えるのが自然ですが、福寿うちな〜運 動に参加している事業所については、健診対象 者が増えているにも関わらず特定保健指導対象 者対象者が124 人も減少しております。第1 ク ールの事業所につきましてはなんと13.7 %も 減少していました。10 %の減少は厚生労働省 が5 年間かけて目指している目標値となってお ります。

周囲の人への波及効果も含め事業所単位での健康づくりの取り組みは効果が大きいと感じています。

沖縄県の抱える健康課題は非常に深刻な状況 です。健康長寿県復活のためには、今後も様々 な機会を通じて健康づくりのアプローチをして いくことが県民の健康度を底上げしていく上で 大切だと認識しております。医療保険者として この深刻な健康課題に取り組むため、しっかり と地域の実情に合わせた方法で保健活動を行な っていきたいと考えております。今後とも各地 域の医療機関および各地区医師会、県医師会、 保健所等関係機関の皆さまのお力をお借りしな がら、保健事業を展開していきたいと思ってお りますので、ご協力の程よろしくお願い申し上 げます。

質疑応答

○久場(医師会)

久場(医師会)

各事業所には産業医はいるのか。そのあたりの活動はどうなっているのか。






○新垣(協会けんぽ) 産業医との連携につ いては、協会けんぽは医療保険者なので、事業 所の保健師ではないというところで、先ずは本 人の了解を得なければ、産業医との連携が図れ ないというところがあり、当初本人の了解を得 て本当に必要な方は産業医に保健指導の経過や 結果について引き継いでいたが、「福寿うちな 〜運動」に参加して頂いている事業所につ いては、当初より事業所控えの健診データ も活用しながら、産業医に健診の結果を報 告して連携を図ったり、逆に産業医の先生 から福寿うちな〜運動に参加する従業員を 選定してもらったりしているため、事業主 さんの協力を得ているところはそうでない 事業所に比較してスムーズに産業医と連携 がとれている。事業所単位で健康づくりを していないところにはお一人おひとり確認 しながら進めている。事業所によっては、糖尿病が悪化して治療しないといけない状態 や、血圧が高いということが知られたらリスト ラされてしまうのではないかと思っている方も いた。特に、腎機能の状態(eGFR)が30 未 満の方々で治療を放置して人工透析になった方 など、会社を辞めて社保から国保に移行した 方々の訪問面談の結果、この状態は人工透析手 前なのでこれを社長に知られるとクビになって しまうや、仕事ができなくなってしまうなどの 理由で放置していた方がほとんどであった。た だ、そうであれば自然と仕事も出来なくなる状 況であるので、産業医の協力も得ながら進めて いっているところである。

○喜久村(医師会)

喜久村(医師会)

産業医をしている先 生方はよく分かると思 うが、全体を見るとそ んなにうまくいかない のではないか。今、お 話の事業所の方は非常 に頑張っておられ、結 果も良いが良すぎる面もある。事業主の意識、 個人のプライバシーの問題もあって中々積極的 にやってもらえない方も多いと思う。今後どう いう風にプレミアムグループを広げていくお考 えなのかお聞きしたい。



○新垣(協会けんぽ) プレミアムグループ を広げていくために、沖縄県経営者協会と協会 けんぽの共催で健康づくり事業を進めて頂けな いかお願いをしたところご了解を得られたの で、今後は沖縄県経営者協会との共催で進めら れることになっている。

特定健診も当協会けんぽの生活習慣病予防健 診を受けると事業主健診を受けたことにしても よいとする厚労省の考えもあるので、事業主健 診という位置づけでどんどん健診を勧めてやっ ていきましょうという考えである。また、重症 化予防について、事業主を集めて順次健康管理 をすれば予防も出来るし、治療をしながらでも 仕事はできる状況になることをご理解してもら うための説明会をスタートさせる計画である し、いろんな機会に重症化予防の必要性につい てご説明している状況である。

○喜久村(医師会) 非常に良いことで、広めて頂きたい。

病気になっているが受診しない人たちが多く いることは、医療関係者は分かっており、その ような方々をどのように受診させるかがいつも 念頭にあった。

○新垣(協会けんぽ) 今、受診勧奨案内文 と一緒に、状態が良くないがなぜ受診しないの か調査するためのアンケートを同封している。 仕事が休めず時間が確保できないのか、医療費 が高いのか、土日、夜、朝病院が開いていたら 受診するかといった内容のものである。それを 3 月に集計してその結果に基づいて、具体的な 対策を立てる予定である。ただ、北部保健所よ り得た情報によると、医療機関にご協力いただ き朝7 時半から診療を行って貰い、重症化して いる方々に案内したところ、これまで中々医療 に結びつかなかった方が会社に行く前に受診す るようになっているという実績があるとのこと であった。このあたりの意見を伺いながら県医 師会にも報告してご検討頂きたいと思っている。

○照屋(医師会)

照屋(医師会)

整形外科的な話にな るが、「メタボ対策(食 育)」と「ロコモ対策 (貯筋)」というテーマ で医療講演会をやらせ てもらっている。先日、 ある企業で講演をさせ て頂いた際に、社長さんからとても強い要望の あった「禁煙」の話をしたところ、後日、全社 員の中の喫煙者約40 人全員が「禁煙宣言書」 を社長に提出したとの事であった。職員の健康 管理の面から、社長自らのトップダウンの指示 で実行できたという事である。「率先垂 範」・・・。事業主のモチベーションが重要と 思われる。

今後、特定健診を地域でどのように盛り上げ ていくかということを考えると、学校医・産業医・公民館関係者・民生委員・老人会・婦人 会などを通して、各々の地域単位で一人一人に 声かけしていくような、細かい活動をしていか ないと受診率は上がらないと思う。「かかりつ け医」の先生が年に数回行っている血液検査の 一回を特定健診につなげて頂くと、約60 %ま で受診率が上がるらしい。やはり、医師・保健 師・民生委員などを含めた地域の核となる方々 との連携が最重要課題である。

○友利(沖縄テレビ)

友利(沖縄テレビ)

65 歳未満の死亡率が 男女とも高いというこ とであるが、その中で 糖尿病による死亡率を 教えて頂きたい。

今回、生活習慣病を 中心に糖尿病について クローズアップされているので、是非65 歳未 満の糖尿病による死亡率を調査して頂きたい。




○和氣(医師会)

和氣(医師会)

糖尿病という病気で 直接人が死ぬわけでは ないので、その死亡率 は恐らく出せないと思 う。心筋梗塞で亡くな った方が糖尿病を持っ てたり、腎不全で亡く なった方が糖尿病を持ってたりするために割合 でいくと糖尿病が大きく絡んでいるが、直接の 死因として死亡診断書に書かれることは無い。




○友利(沖縄テレビ) そうであれば本日の資料の書き方も工夫が必要かと考える。

一般の方の糖尿病に対する認識は低 いのではないかと思う。糖尿病がどう いったものなのか、どういうことにな るのか分かりにくいと思う。

○和氣(医師会) 本日の資料を見 て思ったが、沖縄県は糖尿病患者が特 別に多いというわけではなく、全国平 均並というところではないか。問題は 治療を受ける人が少ないということだ と思う。私は腎不全の方々の診療をしており、 そこで見る限り糖尿病の方は確かに多いが、な ぜ腎不全になったかというと糖尿病に十分な治 療をせず、結果的に透析になってしまう例を多 く見るのである。

全国に比べ沖縄県の透析患者は年齢が若いが、 これは早く病気になったからでなく治療を怠っ たために早くに末期腎不全になるからである。 沖縄の問題として、もちろん糖尿病患者が多い こともあげられるが、早期に治療をせず非常に 悪い状態になって治療を開始することから莫大 な医療費が掛かってしまうことがあげられる。

なぜ病気があることが分かっているのにその 人たちは治療をしなかったかというと、糖尿病 の怖さをわかっていないというのが先ほどお話 にあったとおりである。

糖尿病の人が目が見えなくなる、心臓が悪く なる、腎臓が悪くなって透析を受ける、これら のことは私ども医療者には常識だが、一般の方 達が本当に糖尿病で透析を受けることになるこ とを知っているのか疑問である。身近に糖尿病 合併症の方がいない限り糖尿病を治療しない怖 さを知るチャンスは無いので、是非マスコミの 方々にはこういった症状の無い病気がどんなに 怖いか、いざ悪くなった時にどれほど治療費が 掛かるのかを知らせて頂きたい。市民向け糖尿 病講演会をしても、集るのは興味を持っている 方ばかりで、ある程度知っている方ばかりが知 識を増やしているだけなので、やはり、講演会 に参加しないような方々に対して伝えられるの は、マスコミの力だと思う。本当は、更にその前の段階として子供たちに学校で教えてもらう ことが一番良いのだが。

○大城(エフエム沖縄)

大城(エフエム沖縄)

特定健診がスタートす る時から、こういった 会を通して、どうやっ て沖縄県の受診率をあ げていくかということ で、医師会の先生方は じめ関係者の方々はご 尽力されている状況を日頃からみているが、今 日お話を伺って国保連合会、健保組合、医師会 の問題だけではなく一人ひとりの意識の問題 で、その根幹にあるのは健康的な生活習慣をど う構築していくかという部分にくるし、その健 康的な生活習慣を維持するためにも経済的な問 題や社会基盤の整備について考えると、社会そ のもの自体で本腰を入れないといけないと痛感 した。運転免許の更新の際に交通事故現場の写 真を見せて恐怖心を持たせても、はじめの1 週 間だけ安全運転をしてすぐに元の運転スタイル に戻ってしまうように、恐怖を与えて自分自身 で改善させようというやり方だけでは先に進ま ない状態まで来てしまっていると感じた。

○友利(沖縄テレビ) 福寿うちな〜運動を 昨年から始まっていると伺ったが、歩数計等の 確保については予算が付いているのか。

○新垣(協会けんぽ) 予算は無い。参加して いる事業所でご購入頂いているところもあれ ば、個人でご購入頂いているところもあるし、 事業所で購入して給料から引いているところも あり様々である。目標を達成した人にはキャッ シュバックという事業所もある。

3 か月に1 回表彰を行っているがこれも予算 が無く、協会けんぽでは感謝状だけを用意し、 参加している事業所で賞品を持ち寄って頂き、 歩数の多い事業所や参加率など各種賞を設け事 業所に対して贈呈している。表彰式の際も全事 業所から参加費を徴収し、運営している。

社会保険料は事業所と本人の折半となってい ることから、医療費が掛かって保険料が上がっ てしまうと事業所の負担も増えることになる。 5,000 人規模の事業所では年間にすると数千・ 数億とかなりの額になる。(標準報酬額に応じ てなので1 億になる事業所とそうでない事業所 があります。誤解を招かないように表現を変え ます)そういう意味でも事業主には危機的状況 をご理解頂きご協力頂いている。また、この運 動では、それぞれの事業所で社長賞も設けても らっており、頑張った人に対して表彰を行いな がら楽しんで取り組んでいただいている。

あるデパートの企業では、各階に担当者が置 かれ、体重や歩数を争って成績が良いところは食 事券が貰えるなど、各事業所でも工夫している。

○喜久村(医師会) 健診データを確認して 個人に通知する際に、ハガキ代、人件費等が発 生するが、今後この事業を展開していく上で予 算的に可能なのか伺いたい。

○新垣(協会けんぽ) 結論から言えばやっ ていける。重症化予防をすることで、対象とな っている方々1 %を外来に繋げることで、最終 的には16 億の効果があると考えている。沖縄 の特別事業として予算化し、継続事業として続 けていく予定である。

○平良(医師会)

平良(医師会)

V度高血圧と空腹時 血糖200 以上の方の数 を示したグラフでは、 人口が遙かに多い那覇 市よりも浦添が高い数 値を示しているが、受 診者数、有病率などに ついて教えて頂きたい。






○新垣(協会けんぽ) 那覇市の受診者数 は、20,181 名、浦添市が21,716 名で、該当率 では那覇市が1.9 %、浦添市が2.0 %となって いる。実は協会けんぽ加入事業所の数は那覇市 と浦添市ではそれほど変わらず、逆に浦添市の 西洲で協会けんぽ適用事業所が増えていること から、今後逆転するのではないかと思っている。

○久場(医師会) 国保は医師会がかなり頑張 らないといけないのか、その辺の戦略をどのように考えているか。

○金城(国保連合会) 健診未受診者の内、 生活習慣病の治療中の方が66,700 人余りいる。 その方々が特定健診を受けてもらうと受診率は 5 割から6 割になると想定される。生活習慣病 の治療中の方は病院を受診している方で、特定 健診も受けていただくと受診率に反映できるこ とになるため、各健診機関にもご協力をお願い したい。

また、未受診者に関して、市町村職員が訪問 したり保健推進委員などを通じて何も症状が無 いことが健康では無いということなど健診の意 義を一人ひとりに地道に説明していかないとい けないと思っており、各市町村にて取り組んで いるところである。

○和氣(医師会) 協会けんぽは1 事業所あ たり約12 人ぐらいの事業所であるため、わり と取り組み易いと思う。これを国保がやるとな ると大変だと思うが、なにか工夫はあるのか。

○玉井(医師会) 市町村によって、例えば 受診をするとお米券が貰えるところもある。市 町村毎に対応策は任せられている。南城市では 夜に受けることができるナイト健診、那覇市で は日曜健診、出向健診などさまざまな取り組み が行われている。ただ、それが受診率の向上に 結びついているかというと成功している例もあ るが失敗例も多く、まだまだ暗中模索の状態で ある。事業所のようにトップダウンで出来ない 弱みがある。

もともと、健診に関心が無い人たちを掘り起 こしていくことが非常に大事であるので、そこ をどうするかが大きな課題である。

○新垣(協会けんぽ) 現在、協会けんぽで 取り組みはじめているのが、県内の北部、中 部、南部に議員の市町村会があることがわかっ たため、今回県議会事務局の方に「福寿うちな ー運動」に党の垣根を越えて参加してもらいた い旨のお願いをしているところである。感触と しては悪くないように思っている。協会けんぽ だけの問題と捉えず、沖縄県全体の問題として 当協会の三役も各方面に働きかけているところ である。