沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 12月号

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編集後記

本年も後僅かとなりました。この時期には何 時もそうですが、本年もあっという間の1 年と 感じます。管内閣の発足、普天間問題、尖閣列 島問題、チリの落盤事故等々、2010 年も様々 な出来事がありましたが、我々県民を元気付け たのは高校野球興南の春夏連覇で、暑い夏も爽 快にすごせた事が、数少ない良いことの一つで した。

本号冒頭で「平成22 年度全国医師会勤務医 部会連絡協議会」の報告が城間寛先生からなさ れています。近年の「医師不足」と共に、勤務 医の過重労働問題が慢性的に続いていますが、 医療費抑制政策を是正し、労働環境の大幅な改 善の早急な実現が望まれます。愛媛大学の石原 謙教授が述べられておられるように、日本の医 療は国際的に高く評価されているが、医療行為 あたりの医療費は、米国の1/10 で先進国の中 で最低のGDP 比である。医療費亡国論から医 師と医療費の削減が行われてきたが、DPC 導 入=萎縮医療→混合診療導入による民間医療保 険会社の利益導入といった図式にのらず、国民 は民間医療保険よりも公的医療財源にもっと目 を向け医療界への財源投資を大幅に増加させる よう、国民・マスコミに強くアピールする事が 重要と思われます。

報告事項では、平安明先生、小渡敬先生、玉 城信光先生、安里哲好先生が九州医師会連合会 各種協議会について報告があります。介護保険 対策協議会では療養病床廃止がみなおされ大き な議論はなかったとの事ですが、介護施設の充 実も是非重要施策にいれ発展させて頂きたいも のです。

「台中市医師公会・沖縄県医師会懇談会並 びに懇親会」が真栄田篤彦先生により報告され ていますが、宮城会長が述べられているように 近年は医療も外国との境が低くなっており、特 に隣国との交流は重要で、台中市との姉妹関係 は大変意義深いと思います。

「生涯教育コーナー」では玉城仁先生が「間 質性肺炎の診断と治療」について詳述されてい ます。間質性肺炎はびまん性肺疾患の代表的疾 患の一つですが、その病態は多様で診断において 専門的診療を必要とします。咳や息切れを主訴 に胸写にてびまん性陰影を呈する患者を診られ た場合、一度は専門科に相談され、その後連携 をとりながら治療をされる事が重要と思います。

「プライマリ・ケアコーナー」は金城光代先 生、照屋周造先生により膠原病診断のための病 歴と身体所見および関節リウマチにおける初期 治療について解説いただきました。膠原病を疑 う所見の取り方とスクリーニング検査、さらに は関節リウマチの治療について明日からの日常 診療に大いに勉強になりました。

「インタビューコーナー」は那覇市立病院医 師会会長の喜屋武幸男先生です。多忙な一般診 療、救急診療とともに臨床研修指定病院や地域 がん診療連携拠点病院として病診・病病連携を 緊密にとり、地域の中心的役割を果たされてい ますが、今後も益々の御活躍を期待いたします。

仲村秀太先生には、「世界エイズデーに因ん で」においてHIV/AIDS の現況を解説いただ きましたが、治療の進歩とそれに伴う問題につ いて認識を新たにしました。

「発言席」で村上優先生が「ペシャワール会 現地活動報告写真展」へお誘いのメッセージを されています。第1 回沖縄平和賞を授与された 中村哲医師の神のような貢献の歩みを綴った写 真展で生きる希望や勇気が感じ取られるようで す。年末のひととき訪ねてみたいものです。

田名毅先生と比嘉啓先生には「地域向け医療 講演会による医療情報発信の取り組み」を頂き ました。誤りもある様々な情報が氾濫する中 100 回近くの講演会にて正しい情報を届ける取 り組みに感服至極です。

随筆は、長嶺信夫先生にチベット紀行の投稿 をいただきました。チベットの伝統文化が壊さ れず、また復活する事を願ってやみません。

「本の紹介」では湧上民雄先生と石川清和先 生から4 冊の紹介があります。湧上先生の「葉 隠」は人生の一つの指南書として一度読みたく なりました。また石川先生の紹介では農薬の恐 ろしさを改めて考えさせられました。全世界が 認識すべきものと思います。

今年も医療界の厳しさは続きましたが、来年 は少しでも改善がみられるよう協力しあってい きたいものです。

広報委員 久場睦夫

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