今年は入梅早々から雨脚が強く、所謂男性型 の梅雨模様に感じられるのですが、本誌が皆さ んのお手元に届く頃は、夏本番へ突入の頃かと 存じます。
さて今月は3 題のトピックスを掲載しており ますが、いずれも県医師会の意欲的な活動報告 です。
卒後臨床研修のメッカと言われるほどに全国 に名を馳せる沖縄県の検討ぶりですが、「平成 22 年度研修医歓迎レセプション」は、その意 気軒昂を示す格好の場として県医師会が企画し たもので、多忙の中を仲井眞県知事にも臨席を 賜り、122 人の新研修医の出帆に華を添えて頂 きました。
その卒後臨床研修の更なる強化・拡大を担う 推進力として、琉球大学にクリニカルシミュレ ーションセンターの計画が進行中です。このシ ミュレーションセンターは、地域医療再生計画 として、向こう5 年間にわたり各都道府県に支 給される交付金を原資に、都合14 億円を計上 して計画される壮大なプロジェクトです。単に 卒後臨床研修のみならず、医師の生涯教育やコ メディカルの研修教育をも視野に入れ、総合的 な医学・医療の研修教育の場として計画は進め られるとの由、「医療崩壊」ばかりが叫ばれる 昨今、久方ぶりに夢膨らむ思いです。
恒例のマスコミとの懇談会は、全国的にもホ ットな話題である「小児救急の現状と課題、今 後の展望」をテーマ行われました。小児救急患 者が殺到する県立南部医療センター・こども医 療センターの我那覇先生が基調報告を行い、引 き続き意見交換を行いました。絶えることのな いコンビニ受診の現状、小児救急を行っている 医療機関の過重な負担と疲弊、全国的にみられ るこの様な小児救急医療の非常事態に対して、 マスコミの果たす教育的な役割に大いなる期待 を持ちたいと思います。また全国で唯一、我が 県だけが実施していない# 8000 についても、 県と医師会で早急に整備する必要性が強調され るところです。この# 8000 の問題は、本誌報 告の「第6 回沖縄県・沖縄県医師会連絡会議」 でも論議されており、本年7 月の実施を目処に 準備が進めているとの報告です。
「平成21 年度感染症危機管理対策協議会」 の報告は、昨年流行した新型インフルエンザ を、日医としてどの様に総括するかの検討会議 の報告ですが、現在厚労省で行われている検討 会議と併せ、水際作戦の評価、混乱した発熱外 来やワクチン接種の取り扱い等々が、今後の教 訓としてどの様に総括されてくるのか、注目さ れるところです。
生涯教育コーナーは、県立精和病院の前田浩 先生による「人格障害について」です。具に理 解しようと思うと相当に難解な概念ですが、 「一般の臨床現場では、下位分類に拘泥する必 要はなく、境界性人格障害を中核として理解し ておく」という大枠の括りで理解し、対処でき れば良いとのこと。一般医が実際に臨床の場で 遭遇した時、非常に慎重な対応が必要であり、 また如何に速やかに精神科医へと繋ぐかが肝要 かを教わりました。
琉大の細川篤臨床教授の「ハンセン病を理解 するために」は、月間・週間行事として寄稿を 頂きました。日常臨床で滅多に視ることも無い 昨今ですが、全く日本から消えた病気という訳 でもなく、世界ではまだエンデミックな地域も あるとのことで、何時、何処で遭遇するやも知 れません。疾患の輪郭を理解しておくために は、ぜひ一読が望まれる総説です。
若手コーナーは、県立南部医療センター・こ ども医療センター総合内科の仲里信彦先生によ る「内科初期研修医と指導医の徒然」で、日常 臨床の場で味わう研修医の教育を通して、世代 交代の妙を実感する味わい文章でした。
最後に、沖縄メディカル病院の大山朝賢先生 の「本の紹介コーナー」は、菊池英博氏の「消 費税は0 %にできる」です。小泉・竹中路線に おける「構造改革と小さな政府論、市場原理主 義」が如何に我が国の経済低迷の原因となり、 ひいては医療崩壊をも招く間違った経済政策で あったか論証しています。現在、医療・福祉の 為には「消費税の引き上げが必定」と四方八方 から叫ばれていますが、経済の基本的な原理と ダイナミクスを見事に解説し、「消費税は0 % にできる」根拠を展開しています。医療者にと っても必読の好著です。
広報担当理事 當銘正彦