理事 玉井 修
平成21 年11 月11 日(水)、沖縄県医師会館 2 階会議室において平成21 年度第3 回マスコミ との懇談会が開催されました。今回は病病連 携・病診連携がテーマで現在浦添市医師会にお いて推進されている健康情報活用基盤実証事業 について浦添総合病院の久田友一郎先生にご説 明頂きました。この事業は総務省、厚生労働 省、経済産業省による3 省連携事業で患者さん に関わる診療情報をインターネットを使って行 政、かかりつけ診療所、中核病院といった様々 な医療機関において垣根無く共有し、その円滑 な活用を目指そうというものです。今はまだ糖 尿病治療に関してのネットワーク作りが主体で すが、これが今後様々な疾患や地域を越えた大 きなネットワークになっていくことが期待され ています。この情報システムがしっかり機能す れば、予防医学、プライマリーケア、急性期医 療、慢性期医療、在宅医療、介護に至るまでそ の患者さんを中心とした様々な医療機関におけ る情報の共有と最も適切な医療サービスの提供 が可能となる事でしょう。期待に胸が膨らむ一 方で懸念されますのは、新たなシステムを既存 の医療圏に持ち込む場合、そのシステムの導入 費用や導入に関わるマンパワーの問題をどうク リアしていくかであります。今回提示して頂い たシステムは大きな導入コストも不要で、しか もそのシステムは既にかなり熟成され、習熟す るための大きな支障は無いとのお話しでした。 医療機関におけるこの様なシステム導入に関し ての問題は、レセプトオンライン導入に関わる 様々な紆余曲折の中である程度見えてきた感が あります。レセプトオンライン導入に関しては その医療機関によって様々な事情があり、政府 の決めた一律なタイムスケジュールで導入させ ようとした為に様々な歪みが露呈いたしまし た。システム導入にあっては、個々の医療機関 にその裁量をゆだね、現場に無理の無いように ある程度の自由選択度を確保しなくてはならな いと思います。
さて、マスコミとの議論の中で、この様なシステム導入の前に、先生方同士の顔の見える連 携は出来ているのですか?というご質問があり ました。全くそのとおりであります。どれほど 素晴らしいシステムをインターネットを介して 作り上げたとしても、我々医師同士の信頼関係 がその基盤に無くては無用の長物であります。 最近では病診連携懇談会が様々な医療機関や医 師会を中心として開催されております。この様 なface to face の信頼関係を礎としていなくて はどの様な連携のシステム作りも空しいもので しかありません。仏作って魂込めずという事に なってはいけないと思った懇談会でした。
開 会
○司会(玉井) 本日の司会を務めます沖縄 県医師会理事の玉井でございます。
生老病死と言いますけれども、現在、人はど うしても医療というものにかかわり、しかも 様々な医療機関にかかわって、医療保険・介護 保険と様々な社会保障とかかわっていかないと いけない時代になっております。核家族とか、 家族力が低下した状況でもありますので、病病 連携、病診連携といいますのは、どうしてもこ れから重要な課題になっていきます。
きょうは「病病連携・病診連携」ということ で、マスコミとの懇談会を開催させていただく ことになりました。
早速でございますけれども、本会を代表いた しまして、宮城信雄会長よりご挨拶をお願いい たしたいと思います。
挨 拶
沖縄県医師会長 宮城信雄
本日は、「病病連携・ 病診連携」をテーマに 懇談をさせていただき たいと思います。
我が国の医療制度は フリーアクセスになって おります。自由にどこの 診療所でも大学でも大病院でも受診ができると いう特徴があります。
しかしながら、本県でも県民の大病院志向というのは非常に根強く、どんな病気でもとにか く大きな病院で受診をという患者さんが非常に 多いということは否めません。
病院、それから診療所がそれぞれの役割を適 正に担ってこそ、地域医療というのは充実する ものだと考えております。
現在、問題となっております新型インフルエ ンザ、これは患者の発生が8 月にピークになっ たんですが、そのときに特定の大病院に患者が 殺到しました。そのために病院の機能が麻痺を してしまいました。その病院から地区医師会へ 応援を要請するという事態にまで至ったという ことは、皆さんご承知のことだと思います。
このことからも言えますように、患者さんは まずかかりつけ医を最初に受診をして、必要に 応じて病診連携、病病連携につなげていく、い わゆる地域完結型のネットワークの構築が必要 だと考えております。このネットワークが強化 されれば、より効率で質の高い医療が提供で き、しかも不必要な医療費の抑制にもつなげる ことができると思います。
本日は本県において、さきわけ的な存在であ る浦添総合病院の取り組みについてお話をお伺 いしたいと思います。
当院では医療相談、医療連携支援室を窓口と して他医療機関の情報提供、かかりつけ医の紹 介、それから受診相談、リハビリテーションを 目的での転院調整等の連携事業を行っており、 非常に先進的なお話がお伺いできると思います。
マスコミの皆様におかれましても、何とぞ忌 憚のないご質問、ご意見をいただき、病診連 携、病病連携の普及にぜひご協力を賜りますよ うお願いを申し上げ挨拶に代えさせていただき ます。ありがとうございます。
○司会(玉井) 宮城会長、ありがとうござ いました。
それでは、早速懇談に入らせていただきます。
本日のテーマであります「病病連携・病診連 携」について、浦添総合病院、健診センター所 長の久田友一郎先生にお話をお願いいたします。
懇談事項
糖尿病、病病連携・ 診診連携、病診連携と いうことですが、宮城 会長からもお話があり ましたが、日本の医療 システムはフリーアク セスですが、日本の病 院と診療所のできることの経過が少し違いま す。最初から少し説明させていただきます。
医療というものをミクロ環境とマクロ環境で 考えてみると、どうしても経済状態もあります けれども、現在のところはテクノロジーという か、IT 化をどうするかということが1 つの問題 になると思います。
欧米における病院というのは、むしろ福祉 的、あるいは慈善的な性格を持ち、収容機能を 担う公的な機関ということで、最初から病院は 入院機能という形できちんとした機能分化がなされております。ですから診療所は外来機能、 病院は入院機能という明確な区分があり、それ ぞれの役割がありますので、連携は比較的容易 です。以前は日本の病院は医者が開業して、有 床の診療所を経てというパターンが主だったの ですが、やはり日本の病院と診療所の機能分化 がその頃は未発達でした。現在はそのようなパ ターンはだいぶ解消されておりますが、お互い の役割分担が明確になっていれば機能連携や、 医療連携というのは容易ですが、やはり競合す る部分があります。
診療報酬体系がどうしても問題になってき て、厚生労働省はいろんな制度改革を行ってお ります。そのたびに診療報酬の改定があって、 現在まで外来重視型の診療報酬体系であるこ と、それからもう1 つは診療報酬の支払い体系 が「出来高払い制」ということもあって、小泉 改革でかなり医療費が削られ、その結果、医療 界は崩壊という直面になっております。
なぜ糖尿病をやったかと言うと、当時の病診 連携というのは高度医療の紹介、例えばCT と かMR だったんですが、浦添の場合は患者さん とドクターとコメディカル、いろんな部分の役割 分担が非常に明確なもので、このほうが開業医、 クリニック全体、それからコメディカル、それか ら病院という形で連携が進みやすい。糖尿病の 診療に関しては、お互いに利害が衝突するとい うことはありませんので、こういうものをもって いくと、病診連携や診診連携は、うまくいくの ではないかということでやっております。
実際はこういうものをつくってやるわけです が、現実としては、研修会や講演会の開催をし ます。それを持続的にずっと継続させ、さらに 発展させるのにはかなりの努力が要ります。
ここに掲げられたものが、すべて成し遂げら れたわけではありません。情報伝達システムと いうのは、その頃はインターネットを持ってい る先生方も少ないですし、紙による情報になり ます。
やはり病病連携や、病診連携、診診連携とい うときには、これは糖尿病に関してなんですけ れども、施設間連携にツールになるものがないと、なかなか連携はうまく機能しない。どうい うものをやっていくかということで、糖尿病の 場合は比較的病診連携や、施設間連携というの は可能なわけです。
例えば入院の場合だと、患者さんの要望に応 じて、あの頃は14 日の教育入院が普通だった のですが、それを8 日、5 日、3 日とか、でき るだけ受診者や、あるいは開業医の先生が利用 しやすいようなものをつくっていく。
それからもう1 つは、病院の先生とクリニッ クの先生が共通の治療、管理システムがない と、うまい具合にやろうとしてもなかなか難し いものがあります。
それから、「生活習慣病健康手帳」というも のが平成6 年ぐらいから出まして、浦添医師会 が患者さん用に各クリニックへ無料で配布して おります。受診者はその手帳を持っていろんな 施設をまわっていきます。その中身は患者さん が見ても、それから医師、コメディカル、みん なが共通に見てわかりやすいようにということ で、行政と診療所と病院という形できちんとし た機能連携がなされておりました。ところが、 だんだんと医療情勢は変化してまいります。
例えば浦添総合病院が地域支援型の病院だと か、救急型の病院を目指したときに、こういう 慢性疾患の治療は急性期医療の場合にできない ということがありました。むしろ病院の役割が 急性期病院を目指す病院になってくると、慢性 期疾患をどうするかということが、まだ十分解 決はされていませんでした。平成9 年度からの システムですが、僕は健診センターにおりまし て、このときは糖尿病じゃなくて、浦添市の地 域医療連携システムという形で診診連携だと か、病診・病病連携というのをしております。
よく地域完結型の医療と自己完結型という話 がでますが、地域完結型というのは多元主義的 な国家と惑星群といい、自己完結型というの は、私の言うことを聞きなさいというふうなも のじゃないかと理解しております。
これが1998 年に行われました第三次医療法 の改正で、介護システム、薬剤、病診連携、医 療の質の向上、インフォームドコンセント、医 療費の効率化、医療の質の向上、平均在院日数 の短縮だとか、様々な施策が国から出されまし て、医師会あるいは各クリニックの先生方、そ れから病院はこういうふうなものをどうやって やっていくかということで、ここまできており ます。
各病院で病診連携や、病病連携、診診連携を するときに、病院にはやはり医療連携室が必要 ということで、これを設置しました。それか ら、マップや、病院の施設紹介集をつくり、それから診療情報提供書と来院報告書を統一化し ました。各科のカンファレンスは熱心な先生方 がいると続きますが、その先生が息切れしてし まうと、なかなか続けることが難しい。
次は行政とタイアップした生活習慣病教室。 これも結局は受講者が少ないということでした。
あとは、かかりつけ医の機能として、プライ マリ・ケアの機能。それから、もう1 つは望ま しい医療連携室の機能ということで、紹介と か、逆紹介とかに関するようなものをつくると いうことで進んできております。
ですから、紙による紹介だとか逆紹介、それ から、診療所間の紹介がとても多いんです。病 院と診療所の紹介も多いですが、診療所間の紹 介も多くて、大体、毎月、紹介状は医師会から 発行しておりますが、かなりの数で紹介が紙ベ ースで活発に行われています。
平成10 年ぐらいに浦添市地域医療情報サー ビスネットワークということで、ホームページ を立ち上げました。First Class という掲示板 の機能があるものと、File Maker を利用した データベース機能がありましたので、それを使 ってシステムをつくろうとしたんですが、やは りインターネットにつないでいる先生方が少な いということで、その後、IT 化はやめて、紙 による連携が始まっております。
現在は、地域医療連携室はありますが、医療 連携推進協議会などはありません。産業医との 連携はまだしておりませんが、そのほかは連携 がなされております。
そういうふうな状況の中で、何が一番問題な のかといいますと、やはり情報の共有化がないと、なかなか難しいということで、それが今か ら紹介するものです。
厚生労働省と経済産業省、それから総務省と 三省の合同「健康情報活用基盤実証事業」とい うのがあります。浦添市が国から委託を受け、浦 添医師会もこれに加わっており、今、日本システ ムサイエンスさんと一緒につくっております。
「i-Japan 戦略2015」というのがありまし て、ここの三大重点分野に医療の地域の医師不 足の問題の対応ということで、遠隔医療技術の 活用があります。その三行目に地域医療連携と いうのがあります。三 省合同の「i-Japan 戦略 2015」では、2015 年 からこういうものを各 地域に展開していきた いと厚生労働省は考え ていますが、政権が変 わりましたので、今後 どうなるのかよくわか りません。
それから、もう1 つ はアメリカではEHR と いうエレクトロニク ス・ヘルス・レコードにより、健康情報を電子的 に保存することを行ってい ます。それを日本版にして、 この人のデータを生涯デー タベースの1 つのボックス の中に入れてそれを蓄積し ます。受診者、患者さん、 または患者じゃなく健康な 人でも、それを見たいとき はID とパスワードを入れる と、何年分かのいろんな情 報が積み重なってくる。そ れを見ることによって健康 が維持できるようにするこ とがこの事業の大きな目的 です。
浦添の健康情報活用基盤というのは少しわか りにくいんですが、個人の健康履歴というもの になります。自分がいつどの病院へ入って、ど ういう風邪をひいたのか、あるいは健診、特定 健診の結果、それから薬剤だったら調剤薬局の 服薬情報だとか、それから健診した際の情報を この活用基盤という個人のデータボックスの中 に入れます。これは毎年、自動的に健診データ が中に蓄積されるようになっておりますので、 ID とパスワードを入れると、自分の今までの 健康状態、体重の変化、いろんなものがわかるようになっています。 健康情報活用基盤とい うのは、日常の情報と 利用者の情報があって、 健康情報というのがあ ります。それから、運 動プログラムや、疾病 管理サービスとありま すが、これは現在のと ころU型糖尿病で、糖 尿病を主にこの事業の 中に入れております。
これは浦添市が浦添 市在住か浦添市に企業 のある方々に健康チャ レンジ手帳を配布して、 それを自分で体重や体 脂肪率、ウォーキング したときの歩数等を入 力すると体重が週ごと、 月ごと、年ごとにグラ フ化されて見えるよう になるものです。
これは、ここへ登録 すると、特定健診の情 報などが全部入ってき ますので、それを一括 して自分の今までの健 康情報が見れるという ようなシステムになっ ています。インターネ ットを開くと、健康チ ャレンジ日記ということで、浦添市民や、浦添 に企業がある方々がそこでチャレンジをしてい るということです。
疾病管理サービスモデルというものがありま す。病院があって、クリニックがあって、調剤 薬局があって、そしてフィットネス事業があり ます。この事業の一番大きな目的は、肥満を伴 う糖尿病について、できるだけフィットネス施 設を利用して、糖尿病の管理をしていこうというものです。さきほどのエレクトロニクス・ヘ ルス・レコードと全く同じような考え方で、個 人の健康情報、フィットネスの情報、そういう ものが全部蓄積されるようになっております。
こちらのほうはフィットネスでいろんなジム トレーニングだとか、有酸素運動をやるわけで すが、筋トレだとか、有酸素運動等のデータを 入力していくと、それがグラフ化されて見れる ようになっております。
もう1 つ、ここの健康情報、これは健康チャ レンジ日記です。これは浦添市の仕事で、浦添 医師会に委託されたのは疾病管理サービスとい うことで、今は電子情報共有ということで、診 療情報提供書をインターネット間でやることを 考えていただいております。
それからもう1 つは、先ほどからお話があり ましたが、在宅も電子情報としてインターネッ トを利用して、みんながちゃんと見れるようにすることです。各プレ イヤーといいますか、 ドクターや、コメディ カルなど、いろんな人 たちが在宅に関するこ とを見ようということ で、疾病管理サービス はU型糖尿病の疾病管 理をどういうふうにし ていくか、在宅医療ネ ットワークもまだ完成 されておりませんが、 今つくりあげている最 中です。
それから、診療情報 提供書を電子化すると いうことで、一番の問 題は健康情報というの は、何よりもセキュリ ティが大切だというこ とで、そのセキュリテ ィのことについては、 経済産業省のほうが対 策をたてているところ です。
現在のところは診療 情報提供書は、静岡で はCD を利用してやっ ております。病院から もらってきたデータ、 あるいはクリニックの データをCD に焼き付 けて、それを持っていっているわけですけれど も、そういうことではなくて、インターネット を介してすぐに見れるようにしようというシス テムをつくっております。
病病連携とか病診連携とか機能連携が進んで いくには、お互いの病院間の役割分担だとか、 病院とクリニックの役割分担をきちんとしてお かないと、なかなか連携はうまくいきません。 でも、それは各病院、クリニックがこれから考えていただいて、機能連携などがスムーズにな るよう、病院の果たす役割だとか、自分のクリ ニックの果たす役割だとか、そういうものを明 確にしていくようにすれば、おそらく病病連携 だとか、病診連携というのはうまく機能すると 思います。
ただ、紙ではなくて、できれば電子化された ものでということで、「i-Japan 戦略2015」で はそれを全国的に展開していきたいということ で、浦添市医師会のほうは今年の11 月から糖 尿病の疾病患者サービスとか、それをつくって スタートしています。
○司会(玉井) ありがとうございました。
診療情報がIT 化されて、連携していくとい うことは、非常にいいと思いますが、セキュリ ティの問題等があるとは思いますので、このへ んについて日本システムサイエンスの久田昌則 さんよりご説明をお願いいたします。
○久田昌則(日本システムサイエンス)
セキュリティに関し ては厚生労働省から医 療に関するガイドライ ンであるとか、あるい は診療ASP というシス テムに対するガイドラ インというのはさまざ ま出ておりまして、このガイドラインに沿った 医療情報ですから、高度なセキュリティを保っ てこの情報を確保しています。特にASP とい うのは、今まで医療情報は病院、またはそれに 類するところにしか置いてはいけなかったんで すが、厚生労働省から、これを外部保存という ことで、医療情報を病院以外のところに置い て、これを管理していこうというのが今回の実 証事業でございます。現在11 月9 日から一部 稼動しておりますが、データセンターの中にサ ーバーを置いて、その中に医療情報をためてい っている状況です。
したがって、その中ではネットワーク等は非 常にセキュリティの高いVPN という、インタ ーネットを使っております。1 回入ったら外か らは入れないという、ネットワークを使いまし て、各クリニックさん、あるいは疾病サービス でいきますと、フィットネス、そういうところ とつなげてやり始めたところです。
これが厚生労働省の医療情報のガイドライン に載っているところでございまして、これにし たがって今回は構築をしているところです。
○司会(玉井) 末端の診療所の感覚からす ると、お金かかるんじゃないかなという気がし て、どうもそのへんがちょっと心配なんです ね。財源的な問題は起こらないか。また、それ を習得するのに高齢の会員の先生方は苦労する のではないかという気がするんですけど、この へんはどうなんでしょうか。
○久田昌則(日本システムサイエンス) 今 回は3 カ年にわたる厚生労働省、総務省、経済 産業省の実証事業ということで始めておりま す。これは実証事業ですが、浦添市をモデルと して、総務省のシステム基盤と書いてあります が、これが総務省の基盤で、これをベースにい ろいろなアプリケーションを構築をして使って いきます。
今回は国の予算で、基本をまずここでつくっ て、今後これを展開するということになるが、 全部このまま修正しないで使えるかというと、 そうではないと思いますが、このシステム自身 を国としては各都道府県・市町村にどんどん普 及させていこうということがねらいです。した がって、今後、基本のシステムをこのまま使え るということになると、各クリニックでも、通 常ネットにつながっているパソコンがあるかと 思いますが、そこにまず診療ASP というもの を、パソコン側にソフトをインストールしてい ただければ大丈夫です。疾病管理のほうは、こ れは経済産業省の事業ですが、ネットにつなが るパソコンがあれば、費用的にはそれほど負担 にはならないのではないかと思っております。
システム的にはまだいろいろブラッシュアッ プしなければいけないところは多々あるかと思 いますが、基本これである程度構築ができるの ではないかと思います。
○司会(玉井) ありがとうございます。
何かご質問とか疑義とかありましたら伺いた いんですが、久田先生、例えば糖尿病もあるで しょうし、あと、浦添総合病院が今つくってい ます脳卒中のクリティカルパスとかありますよ ね。クリティカルパスとの整合性というのはど うなるんですか。
○久田友一郎(医師会) クリティカルパス はかなりお金がかかるみたいです。あとは県全 体を統一するのは難しいということなので、各 地区医師会でパスをつくっていただければ、南 部から那覇地区医師会へといった場合に、モバ イルという紙で連携するということで、地域連 携パスは、これからやらなければいけないこと だと思います。当初概要としては、地域医療連 携パスで糖尿病だとか、そういうようなものに ついてある程度つくる予定で一部出来上がって いましたが、予算の都合で今、紙だけの情報。 おそらく将来は地域医療連携パスもこういうふ うな形になってくると思います。
○司会(玉井) 今現在は、結局だれかに聞 くとか、または親戚のだれかに聞いてみるとか ということぐらいしか、情報の出所がないんで すね。
そこをクリティカルパスというものを使って 情報を共有して、様々な医療機関が情報を連携 させて、情報を一本化するラインをつくろうと 動いているところなんですね。
下地先生、何かないでしょうか。
○下地(医師会)
ふれあい広報委員の 下地です。
今のクリティカルパ スは脳卒中とか、あと は少し整形外科的な、 そのあたりができてい て、実際に今、診療報 酬で認められているのは、急性期の病院とリハ ビリの病院とをつなぐクリティカルパスである 程度必要最小限の情報はお互いに共有しようと いうものとなっています。しかし、リハビリ病 院から今度は在宅とか診療所とか、そのあたり まで広がっていかなくてはいけないと思いま す。今動き出しているのは急性期とリハビリ病 院をつなぐクリティカルパスで、将来的には玉 井先生が言ったように診療所、在宅あたりまで ずっと広げて、やっていかなくてはいけないと 思います。
○照屋(医師会)
ふれあい広報委員の 照屋と申します。今後 の提言のような話にな るかもしれませんが、 一言意見を言わせて頂 きたいと思います。す でにお話が出ていまし たが、継続するための予算の問題、それからセ キュリティの問題。この2 点が大きな問題だと 思います。浦添市医師会単独の糖尿病を中心と した、ネットワーク作り・システム作りのお話 でしたが、例えば「GP ネット」のような、一 般医(G)と精神科の先生方(P)とのネット ワークですとか、他地区医師会とのリンクも可 能なネットワークが必要になっていくと思いま す。そして、産業医・学校医の先生方との連携 や、在宅医療の現場との連携がスムーズに行わ れるようになると、様々な情報が共有化され、 素晴らしいネットワークが出来上がると思いま す。先程話しました「GP ネット」の件ですが、 大阪の方ではネットワーク化がかなり進んでい るようです。琉球大学の精神科の近藤先生のお 話では、沖縄でもネットワーク作りを推し進め ていて、多くの先生方の参加を呼びかけている とのことでした。最近では、自殺の問題なども ありますから、さらに産業医・学校医の先生方 にも広げていく必要があると考えます。そこで、 継続するための予算の問題とか、セキュリティ の問題が大きくなってくると思いますし、ネッ トワーク化が途中で計画倒れにならないよう に、相当エネルギーのある人材が必要不可欠 になってきます。いろいろな問題点をクリアし ながら、「病診連携」・「病病連携」・「診診連携」というネットワークが確立されていくこ とを、心から願っております。
○久田友一郎(医師会) 実は糖尿病を取り 上げたのは、構築しやすいというふうなこと で、それがある程度のベースになって、糖尿病 の健康情報活用基盤ができると、すべての疾患 に利用できると思います。
それから、先ほど久田さんがおっしゃいまし たように、診療所提供のシステムがきちんと構 築されれば、これは各地区医師会にもっていっ たら、どこもいじることはないということで、 全県的に広めることができるんじゃないかと考 えております。
ですから、今のところは実証事業ということ で、セキュリティの問題だとか、それから先ほ どお話がありましたように、クリニックのドク ターが使いやすいシステムでないとだめなんで す。使い勝手がいいかどうかとか、本当に日常 の診療をしながらこういうふうなことができる かどうかということも含めて、それから、患者 さん本人もこのデータを見たときに本当にわか りやすいのかどうかとか、そういうようなこと があります。
それから、もう1 つはやはりインフォームド コンセントの問題で、診療情報提供書の中には 受診者本人が見てもいい情報と、これはちょっ と受診者にはマル秘情報というか、ドクターだ けが見れるような情報というのが分かれており ます。患者さん自身がガンだとか、精神化疾患 だとか、いろいろなもので直接病名を知られる と困るということについては、それは匿名のと ころでドクターだけが見れ、受診者は見れない というふうな構造になっております。
○司会(玉井) 先生、ちょっと確認したい んですけど、この情報はどのような形で持たれ るんですか。例えば患者さんがCD か何かを持 っているんですか。患者さんが持って歩くんで すか。
○久田友一郎(医師会) 患者さんはデータ ベースにアクセスします。サーバーはどこかの 企業などに置くことになると思います。サーバ ーの中に患者さんのデータが全部保存されてい るんです。患者さんは自分のID とパスワード を入れると、そのサーバーから自分の情報を見 るということで、患者さんのいろんな薬剤と か、いろんな情報は全部院外というか、外のサ ーバーを運営するところで委託するということ になると思います。
徳島でしたか、産婦人科の遠隔医療がありま したね。あれはあまりお金がかかっていないと いう話なんですよ。だから広がれば広がるほど お金はかからないということです。
それから、浦添市長がこの事業を引き受ける ときに、国の事業って3 年間経ったら、すぐに 「はい、さよなら」ということが多いので、そ うならないようにということで、念を押してお りました。ちゃんと2、3 年は面倒を見てくれ ということですけれども、それはまた政権のこ とですので、わかりません。
○司会(玉井) レキオの仲宗根さん、どう お考えになりますか。情報の共有化というか。 これは本人が持ち歩くらしいんですけどね。
○仲宗根(レキオ社)
県民は診療所へ行く よりはやっぱり大病院 に行けば優秀なお医者 さんがいて、いい機械 を置いていて、行けば すぐその日で検査をし てもらってすぐ結果が わかるというのが一般ですよね。診療所の先生 方には失礼ですけれども、一般の人たちという のは、どうしても公立の大きな病院のお医者さ んのほうが優秀だと勘違いしている。行けば逆 に、医者になってまだ1、2 年しかならないよ うな人たちにあたるかもしれないのに、そこに 堂々と行きます。それよりは診療所へ行ってそ こから情報診療提供書、紹介状をもらって病院 に行くというのがいいと思います。
いろんなお話が出ていたんですけれども、今 日は、病病連携の話ということだったものです から、例えば患者さんが診療所から大きい病院に行く場合の、病院の使い方とかという話なの かなと勘違いしていました。どちらかという と、システムの話になってしまって、私には少 し難しかったですね。
あと、この情報の提供やシステム化の問題 は、日本医師会が日医総研をつくられたとき に、電子カルテじゃなくて、国民みんなにチッ プを入れたカード形式の保険証でもってほかの どこの病院に行ってもこの人の病歴がわかる と。確かこれが日医総研の試算で40 兆円ぐら いかかるという話が当時出てきたと思うんです ね。あの話もどうなったんだろうと。国民にと っては逆にこのほうがいいんじゃないかと思う んですが。
フリーアクセスということがある以上は、紹 介状を持たなくても行けるのが本当ではあるん ですよね。200 床以上の病院になると、紹介状 を持っていないと逆に特定療養制度というのを 設けて、2,000 円から5,000 円の初診料を取 る。もちろんこういうのもいいんですが、そう すると本当のフリーアクセスの制度というのは 形骸化されているんじゃないかなと私は思って います。
そういったものも含めて、もう少し我々が利 用しやすいような形の病院、病病連携のものに しても、わかるような情報提供をしてもらった ほうがいいんじゃないかなと思います。
○久田友一郎(医師会)
実は各病院の医療連携室というのは、このよ うなことをやっています。紹介だとか、それか ら自分の患者さん、入院した患者さんが退院し たときには診療所へちゃんと紹介状を持ってい ってくださいというふうなことは、大体どこの 病院でもやっていることです。
それからもう一つは、病院は例えば慢性疾患 の患者さんがたくさん病院に集中すると、非常 に待ち時間が長くなるということがありますの で、やはりクリニックはクリニックでの役割、 病院は病院の役割ということで、いろんな医療 機器が必要な場合は、クリニックの先生方はち ゃんと紹介してくれます。昔のように本当にか かりつけ医の先生を信頼して絶対大丈夫だとい うぐらいまで、医療はきてます。
私らは健診センターにいるんですが、高血圧 だとか、糖尿病などというのは病院に紹介しま せん。全てクリニックの先生方へ紹介をして、 精密検査だとか、そういった検査が必要な人は クリニックへ紹介状を書くんですけれども、ほ とんど受診者に聞いて八重山・宮古とか全部ク リニックの情報を持っていますので、どこが近 いんですかということで、そういう形で紹介し ております。ですから、病院の中の機能として は、以前に比べてかなり充実しております。患 者さんの困ったことだとか、相談ごとは、病院 の医療連携室で対応しています。
クリニックの先生方は長い間勤務なされた先 生が開業しているというパターンが多くレベル はみんなかなり高いです。専門性も生かしなが らほかの分野も全部見ていくというふうなこと がかかりつけ医、家庭医ということなので、こ ういうことはほとんどのクリニックの先生方に は浸透しています。
ですから、精密検査が必要だったら、すぐ適 切な病院を紹介します。とにかく市内であって も、市外にいい病院があると、そこを紹介する んですね。だから自分が絶対信頼する病院のと ころへ紹介しますので、その点については心配 はないと思います。
例えば、慢性腎臓病で、まだ軽い状態であれ ば、普通の内科医の先生は腎臓の専門の先生に 3 カ月に1 回診てもらって、あとは普通の管理 はクリニックの先生がするとか、そういうシス テムも大体できあがっております。
医者の側からすると、クリニックの先生も病 院の先生も、病院の先生は専門性は確かにあり ますけれども、クリニックの先生もきちんとし たホームドクターとしての、ここ十数年ぐらい の間に変わってきておりますので、医療の世界 は紹介だとか、逆紹介だとか、精密検査だとか そういうことについてはかなり公平になってい ます。
○嘉手苅(医師会)
南部地区医師会の嘉 手苅です。
南部医療圏という中 で、脳卒中の連携シス テムづくりの検討をや って、来年の4 月あた りに始めようかという ことで、赤十字病院の高良先生を委員長にして 会議を開いています。脳卒中といいますと TPA とか急性期医療で3 時間以内で治療する ということがあって、どこに運んでいいかわか らない。急性期医療を受けて、あと、急性期病 院から、また、後方病院、回復期病院へ移さな いといけない、そういった流れがうまくできな いと救急網ができませんから、今、そういった システムづくりを進めています。又、介護保険 施設で、意外と脳卒中、糖尿病が増えています ので、糖尿病とか高血圧の管理をするというの は内科の先生が非常に大事ですので、そういっ た連携システムができればいいのかなというこ とで、県医師会も頑張っていますので、来年の 4 月を私も期待しております。
○司会(玉井) 脳卒中のクリティカルパス はかなり今進んでいますよね。ガンのクリティ カルパスというのはどうなんですか。増田先生。
○増田(医師会)
琉大病院のほうで 「沖縄県ガン診療連携協 議会」というのを組織 しており、そこの下に6 つ部会があります。そ の1 つの地域ネットワ ーク部会というところ で、「五大ガン」と俗に言われている肺がん、 胃がん、大腸がん、乳がん、肝臓がん、その5 つに関しては、今年の3 月に各専門医によるワ ーキンググループがつくられました。各ワーキ ンググループごとに3 回から多いグループです と10 回程度会合を重ねて、全体会議を3 回や りまして11 月4 日に最終的に完成しております。また、沖縄県医師会を中心に私ども協議会 の部会がサポートするような形で、研修会を再 来週の11 月末の木曜日から14 回〜 16 回、離 島も含めまして計画しております。来年4 月1 日からそれを始めるということになっておりま す。これは紙ベースになります。その場合はど ういうことがあるかというと、基本的に手術や 大きな抗がん剤治療や放射線治療は、簡単に言 うと大きな病院、拠点病院を中心で大きな病院 でやって、ただし、例えば手術をして抗がん剤 治療が終わって、あとは外来でフォローするだ けの患者さんが多くいらっしゃるんですが、そ の方々、離島の方々も含めて毎回、毎回大きな 病院に来ていらっしゃるんですね。実は毎回、 毎回、例えば琉大病院に来る必要があるかとい うと、ほとんどなくて、ただ採血をして確認を してお帰りになるだけなんです。その方々、大 ざっぱに言うと、年12 回、毎月来ていただく うちの2 回は親病院に来ていただく。だけど残 り10 回は地域のクリニック、もちろん病院と いうこともあると思いますが、多くは診療所を 中心にお願いをする。そういうマニュアルをつ くりまして、各診療所にお願いをして今後はみ ていただこうかということです。
○司会(玉井) 玉城さん終末期のいろいろ 特集記事とかをつくられていますけど、実際に こういう連携の情報はちゃんと家族の方たちに は伝わって、自分たちの医療というか、診療と かそういうものをセレクションできているんで しょうか、どうでしょうか。
○玉城(琉球新報社)
終末期だけには限ら ないんですけれども、 現状は自分で情報を探 さない限りは得られな いというのがあります。
話を聞いていて、患 者の側にも医療者の側 にも両方とも課題があるなと思っていて、患者 の側からすると、やっぱり受診の仕方というの が、先ほどからずっと問題になっているように、大病院志向というのがあって、これはなぜ そう思うのかというと、今の医療の高度化だっ たり、専門化だったり、細分化という状況がわ かってなくて、どうしても大病院の先生方に聞 くと、もう落ち着いている、本当はリハビリの 病院だったり、療養病床に移って静かな環境の 中でいろんな専門の介護の方だったりとか、理 学療法士さん等がふんだんにいるところに行っ たほうがいいのに、やっぱりずっと急性期病院 にいたがるという、これを説得するのがすごい 大変だというお話はすごく聞いていて、患者の 側もこういう意識というのが医療を潰してしま うというのをまず知らないといけない。
ではなぜ患者がそう思ってしまうのかという と、やっぱり不安というのもあると思うんで す。これは私も体験がありますし、いろんな方 から聞くのが、大病院とかに行くと診療科同士 でさえも連携ができていない、情報が共有化さ れていない。ましてや病院−診療所、病院−病 院、診療所−診療所で、本当に情報が共有化さ れるのか。じゃ病院が診療所に紹介をする、診 療所が病院に紹介をするといっても、本当に適 切なところを紹介してもらえるのかというのが あるので、大病院、いわゆる名前がしっかりし ている大病院に行ってしまえとか、有名な先生 のところに行ってしまえというふうになると思 うんですね。だからこのあたり医療の側という のも、いろんな情報がいろんな人にわかりやす くみえるようにしてもらいたい。あと1 つ私が 思っているのが、健診ですけれども、健診とか でひっかかってしまうと、病院へ行ってくださ いとか、検査を受けてくださいとかになるんで すけれども、そのときにどういう病院がこの検 査をやっていますよというのを、一覧でいいの でそういうのがあれば、また、患者さんはそこ から学んでこの病院はどういう診療をしている んだろうというふうに調べて勉強をして行くの かなと思っていて、両方とも歩み寄りという か、努力が必要かなというのを今感じました。
○司会(玉井) 僕らもっと情報をわかりや すく、例えばネットとかといっても、そういう ニュアンスがどうしても伝わりにくいんですよ ね。そのあたり例えば顔の見えると言ったら変 ですが、そういう情報の提供の仕方をしないと 本当はいけないんでしょうね。
何かほかにご意見とか。
大城さん、何かありますか。
○大城(エフエム沖縄)
病診連携と聞いて最 近思い当たることがあ ったなと思って、興味 深くお話を聞いていた んですが、慢性疾患で すとか、がんのそうい った病院とか、あるい はクリニックに携わる機会の多い患者さんに関 して、病院内部でのシステム、それがここ10 年特に整いつつあるというお話でもあったんで すけれども、たまたま先日、家内が下腹部に違 和感があるということで、たいした痛みではな いんだけど、ちょっと痛みがひどくなっている ので、どこか病院に行こうかといったときに、 どこのクリニックに行けばいいのか。具体的に 言うと何科に行けばいいのか、内科に行けばい いのか、産婦人科に行けばいいのか、なかなか 判断がつかない。やっぱり大きい病院に行った ほうがいいんじゃないのというふうに本人は考 えていたみたいなんですけど、いやいや、それ はちょっとまずいから、まずは産婦人科に行っ てみようかということで、産婦人科に対応はし てもらったんです。やっぱりそういった意味 で、例えば手を折ったとか、比較的自分でどこ が悪いとわかるものに関しては、やはりクリニ ック、例えば整形外科の門を叩きやすいという 部分はあるかと思うんですけれども、かかりつ けのお医者さんをもたない軽症の患者さんの場 合は、特に内科的な部分の疾患だった場合に、 どこに行けばいいのかわからない。もう大きな 病院に行ってしまったほうがあちこち行かなく ていいからいいやというふうに、大きな病院の 門を叩いてしまうという現実も、やっぱり大病 院志向に拍車をかけているんじゃないかなと、個人的には思うんですが、そのあたりはいかが でしょうか。
○司会(玉井) 玉城先生、外国の場合はど うでしょうか。
○玉城清酬(医師会)
アメリカに留学して いたんですけど、向こ うは保険システムで動 いているんです。これ は実際にあった話です けど、自分の家内が熱 を出したときに、かか りつけ医に電話をして「熱が出ているから診て くれ」と言ったら、「来週の火曜日に来てくだ さい」といった感じなんですね。日本自体がア メリカの真似をしようとしているけど、実はた いしたことないんですね。アメリカに留学して 言うのもなんですけど、あまり学ぶのがなかっ たかなという感じで。
大病院志向といっても、向こうはできないん じゃないかと思います。結局、診てもらいたい なら救急に行きますが、救急はごった返してい て、例えば、撃たれて死にそう、血がどんどん 出ている状況でも「どこの保険に入っています か」と、そういった聞かれ方をするので、ちょ っとシステム的には全然違うと思います。
○司会(玉井) 全くそのとおりなんですよ ね。「ER」とか見てすごいなと思ったりするん だけど、実はそういうところなんですね。
○増田(医師会) イギリスでは地域のGP のリストがあるので、自分のGP を決めて、そ こと契約といいますか、申請をします。そした らそこのGP が自分のかかりつけ医になるから、 すべての国民はかかりつけ医を必ずもたなくて はいけないシステムになっていまして、その代 わりそこに行く分には診察代はただです。私み たいな外国人留学生に関しても、私の家族もだ だですね。その代わり大きな病院は紹介状がな いと一切みないので、ですから日本のフリーア クセス性とはちょっと別のシステムで動いてい ますから、ちょっとまた違うなと思いますね。
○仲宗根(レキオ社) アメリカの場合は、 保険はメディケアとメディケイドですよね。見 習うべきものが1 つもないとは言ったんですけ ど、僕は1 つあると思うんです。アメリカの場 合はほとんどが民間保険ですよね。お医者さん は必ず民間の保険会社と契約していますよね。 患者さんはそんなにたくさんは診ないんですけ れども、患者さんが来たら、「私は、○○専門 の○○です」ということを必ず患者さんに言う。
今、日本で問題になっている「5 分間診療」 のものがありましたけれども、向こうは15 分 間やらないと、診療として保険会社が認めない とか、そういったいろんなのがありますよね。 日本では、皆保険制度というのは我々にとって いい面もあるし、それからお医者さんにとって いいのもあるんですけれども、逆に言うと我々 にとって悪い面もあるのかなと思います。つま り保険制度ですべてカバーされているのはいい んですけれども、お医者さん側の立場になる と、患者さんがお客さんではないわけです。お 金は払ってはいるんですけれども、何かもらっ ているような感じがないというのがあると思う んです。アメリカはどの保険に加入している か、当然聞きいて薬を使うときには保険会社に 電話をして、この薬を使っていいか確認をとり ます。医療中心よりもお金中心ですから、そう いった面はよくないんですけれども、もう少し 患者さんに対して親切に接するというものに関 してはいいんじゃないかなという気がしますけ れども。
○司会(玉井) ここにいる先生方は、皆さ ん親切な先生方なので、もし、親切じゃない先 生がいらっしゃいましたら、マスコミの皆さん 方で何か言っていただければ、県医師会のほう でまたお話し合いをしたいと思います。
皆保険制度の話がありましたが、何でも診て もらえるという形になってしまいます。例えば インフルエンザに罹ってない証明書をもらいに 来たり、本当に気軽なんです。病院に対しての アクセスがもうちょっと高ければ、こんなに気 軽に利用されたりはしないと、思ったりはするんですが、何でもかんでも病院に行って、病院 で証明書をもらってこいというような風潮も、 確かに助長されているような気もしますね。き ょうも感染していない証明書を書きましたけ ど、先生はどうですか。
○下地(医師会) 最近はそういうのはあま り来ないんですが、当然そういう患者さんに対 しては、こういうのは書けませんよと言います。
先ほどの大病院志向の問題にちょっと戻りま すけれども、私は浦添で内科を開業していま す。浦添に限っては大病院志向はかなり低くな っていると思います。10 年前に開業しました が、年々、紹介する患者さんは増えていまし て、大体年間300 件以上の紹介状を書きます が、大体6 割が病院、4 割が診療所です。診療 所間でも紹介状を書きます。また、他の診療所 から喘息のコントロールが悪いからということ で、私のところに来る場合もありますし、そう いう意味においては浦添では病院・診療所の役 割分担がはっきりしてかなり病診連携等はうま くいっていると思います。
一番のポイントは、急性期病院側が病院の機 能と診療所の機能をはっきりさせたことだと思 います。それがあるからこそ病診連携が必要に なってくるわけです。病院で医療を完結させる と病診連携はいらないわけです。そういう意味 では急性期病院側が主導して機能分化をはっき りさせると、病診連携はどんどんうまくいきま すし、診診連携もうまくいく。そうするとこの 地域の医療を自分たちで守ろうという気持ちが だんだん出てくるんですよね。
先日のインフルエンザのときに、那覇市医師 会がすぐ那覇市立病院に応援に行きましたね。 あれはそういうふうな病診連携があって、地域 医療を自分たちで守ろうという気持ちがあるか らこそ、すぐできたと思うんですよね。
そういう意味においては、病診連携、診診連 携、医療連携はかなり重要だし、それをやるた めには病院側が機能をはっきりさせていかない といけないなというふうに思います。
○喜久村(医師会)
那覇市医師会の喜久 村です。
那覇市医師会の病診 連携の話が出たので、 ちょっと紹介しますが、 病診連携という言葉は 医者の側から出てきた んですね。皆さん方、今日の話はとっつきにく い、わかりにくいということだったんでしょう けれど、非常に進んでいるんです。やっぱり患 者さん、皆さんがしっかり受け止めてほしいと いうことはあるんです。
病診連携という言葉が出てきたのが、昭和 60 年頃に日医が言い出したんですけれども、 その頃は保険の点数とかつかなくて、勉強会を していたんですね。病院に行って診療所の先生 方が勉強する。そういうことから始まったんで す。でも、その頃は医者が少なくて、なかなか 定着しなかったということを聞いていましたけ ど、やっぱりこういう今の時代に続く流れがあ ったのかと思うんですね。
那覇市医師会では、平成12 年(2000 年)頃 から病診連携、診診連携という話題があって、 浦添総合病院はかなり進んでいるんですけれど も、病院もその頃は試行錯誤だったんです。診 療情報提供書とか書く時代になったんですけれ ども、医師会が主体になって那覇市内にある病 院と診療所、浦添総合病院とか、豊見城中央病 院等を含めた11 の病院と診療所の先生方の意 見交換会を始めたんです。そういうのでもって 病診連携というのを広めていったわけです。こ れが最初につくった病診連携情報誌のサマリー ですけれども(那覇市医師会病診連携情報誌を 提示)、懇親会を毎年やっていて、玉井先生も よく知っています。先生方も病院からかなり出 席し、そういうのを広げてきています。
そういうことで、医者としては一生懸命なん です。勉強会もしますし、研修会もします。そ れを知ってもらいたいと思うんですけれども、 なかなかフリーアクセス、会長が言われましたように、どこの診療を受けてもいいというよう な、ある意味非常に贅沢なシステムがあるため に、多くの方が大病院に行っているわけです。 そこのところ役割分担、整理しようということ で、医療の側は一生懸命です。先生方も浦添総 合病院の久田先生など、かなり進んで、一生懸 命になっているんですけど、それはなかなか理 解できない、今がきっかけなのでこれから広ま っていくとは思うんです。そういうことを団体 としてもやっていますし、私は那覇市医師会で ずっとこういうことにも関わっていますし、若 い頃は、勤務医として大学病院にもいました し、それでもやっぱり年を取ると時代は進歩し ているということでありますから、そういうこ とは勉強会をしっかりやっていこうということ です。卒後臨床研修の研修医が今、脚光を浴び ていますけれども、開業している先生方も一生 懸命そういうことは勉強している。
この前、新型インフルエンザの話がこのマス コミ懇談会でもとりあげられましたが、那覇市 医師会では、県立南部医療センターの先生を講 師に呼んで講演会をしました。また、沖縄で最 初に亡くなった方を解剖して、CPC を明日す るからという通知が医療センターからきまし た。そういうことも医師会に連絡があります し、私は出席するつもりです。そういう研鑽と いうのを診療の後、ふだんはだいたい午後7 時 半とかそういう時間から勉強会をしているとい うことは知ってほしいということです。これは 各地区の先生方もそういうふうにされていると 思います。なかなか伝わらないというのはもど かしい感じがありますけど、少なくともここに おられるマスコミの方々には、よく理解してい ただきたいなと思います。
○司会(玉井) ありがとうございました。
最後に宮城会長にまとめていただきたいと思 います。
○宮城会長(医師会) 一番大事なことは、 患者さんが一番いい医療が受けられるような状 態ができたらいいということですよね。今まで 日本の病院というのは、自己完結型、すべて自 分の病院で診ていこうということがあったんで すが、そうではなくて状況によって変化してき ているのは、その地域は地域の医療機関が全部 協力をして、その地域の医療を守ろう。地域完 結型医療になってきているんです。そういうと ころから病診連携や診診連携、病病連携という のが出てきているわけです。
大学から話があったように、開業している先 生は基本的にすべて専門性をもって開業してい るんです。むしろ病院にいる先生よりは、その 道に関しては専門かもしれない。そういう先生 が今開業している。昔と少し変わっているのは そういうところがあるわけです。そうすると、 どこのクリニックはどの専門だということもは っきりしているわけです。それと同時に、ただ その専門だけをやっているわけではなくて、か かりつけ機能ということで、専門を中心にし て、その周辺の病気も診れるようになってきて いるわけです。
ただ、専門以外のことについて、あるいは専 門についても自分のところで診れないものにつ いては、きちっと病院を紹介する。その病院で も病院の専門の先生を紹介するというふうにな ってきているわけです。
それから、医療供給体制についても限りがあ ります。今度のインフルエンザの問題でもわか ったはずです。すべての患者さんが1 つの病院 に集中していったら、その病院の機能というの はストップしてしまいます。そういうことがな いように、普段から連携をとっておけば、ああ いうことは起こらないということです。
病院へ行けば何でも診てくれるというのは、 これは1 つは間違いというのもあるんですよ。 その病院には病院の特徴がありますし、それか ら、その専門がいるかどうかというのもわから ない。みんな看板を見て、あの病院へ行けば大 きな病院だからいいだろうと思っても、実はそ うではないというのはいくらでもあるというこ とです。
ですから普段から何でも相談できるというか かりつけ医をぜひもったほうがいい。そのかかりつけ医は、その人のことに関してはすべて責 任をもつ。あるいは家族についてはすべて責任 をもつということになると思います。
例えば診療所でかかったときに、そのかかっ たときのデータをすべて残しておく。それか ら、病院へ行けば病院に行ったデータも共有を される。産まれたときから亡くなるまで、すべ て1 カ所にデータを蓄積されておれば、必要な データというのは、その本人が必要なときに瞬 時に出せるはずなんですね。それがそういうシ ステムをつくろうということになっていると思 います。必要なときに必要なデータが出せない と意味がないんですよ。デジタル化していくと いうのは、そういう意味があると思います。情 報を共有化して、必要な情報というのはお互い にやりとりをして、それから一番いい医療、そ の人にとって一番いい医療はどこで受けたらい いのかということを一生懸命、地域連携で考え て。ただ、それが紙ベースではなくてIT を使 いながらネットを通じてやっていこうという方 向にいっているということで、非常に浦添のほ うは国のモデル事業になっていますから、かな り進んだ事業になっているので、ちょっとわか りにくかったところがあるかもしれませんが、 基本的なものはそういうことだと思います。患 者さんにとって一番いい医療が受けられるよう な連携がとれるようにと、それが基本にあると いうことです。
それも1 つの病院にシステムを任せると、や っぱり自己完結型の医療にどうしてもなってい かざるを得ないので、そういう意味では、地区 医師会や県医師会がそれをリードしていけば、 地域完結型の医療に向かうということです。シ ステムをつくるにしても、ある一定の機能をも ったところ、これは地区医師会、あるいは県医 師会の中にそれを置いておかないと、1 つ問題 が起こってくるというのはそこにあると思いま す。どうしても自己完結型の1 つの病院を中心 にした医療になっていきますので、それを避け るためにもこういうネットワークづくりが必要 になってくるのではないかと考えております。 クリニックというのは、技術が落ちているとい うことではなくて、非常に最も高い専門性をも った先生が開業しているという理解をしていた だければ、少しみんなの考え方も変わってくる のではないかと思います。
○司会(玉井) 宮城会長、ありがとうござ いました。
これで懇談会を閉じさせていただきます。
皆様、本日はどうもありがとうございました。