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平成21 年度第2 回マスコミとの懇談会
「新型インフルエンザに関する沖縄の現状と対策について」

玉井修

理事 玉井 修

期日:平成21 年9 月17 日(木) 於:沖縄県医師会館

5 月に行われたマスコミとの懇談会は、まさ に沖縄における新型インフルエンザ流行前夜と いう絶妙のタイミングに新型インフルエンザに 関して多くのマスコミを集めて開催され大変有 意義なものになりました。その後8 月に沖縄県 では全国に先駆けての第一波流行がやってきま した。沖縄県全体で5 万人の感染者を出したと されるこの第一波流行期において検疫から始ま り、感染初期の封じ込め、感染拡大期の発熱外 来体制の拡充まで、沖縄県の新型インフルエン ザ対策は様々な経験をいたしました。また、多 くのマスコミ報道も県民に対して重要な情報を 提供する大切な役割を果たして頂きました。第 一波は収束に向かい、今後第二波に向けてどの 様な対策をとるべきか、今しかないタイミング でもう一度マスコミとの懇談会を開催しまし た。第一波を一度総括し一体何が起きたのか、 何が問題だったのか、どの様に対応しその効果 はどうだったのか。しっかり総括してみたかっ たのです。渦中にあると実際には全体像が見え ていないところもあり、ここで一度総括し、第 二波の到来に合わせて軌道修正すべきところを お互い意見交換する事は非常に重要だと思いま した。第二波の感染拡大はより大きいものとな り、更に季節型インフルエンザとの混合感染、 タミフル耐性の問題、変異による強毒化の可能 性など今後の見通しは全く読めません。これま での経過も、我々の予想を越えた出来事が多く 発生しています。未知の感染症にどの様に対応 しても、人の英知の及ばないところで予想を越 えた出来事が起こるのです。我々の出来る事 は、常に情報を共有し、最大限の努力をお互い の協力の下に継続して行く事でしょう。危機に 際し多くの医療人、マスコミの努力、勇気、情 熱が試されています。今後はワクチン接種な ど、非常にデリケートな問題もこの中に入って きます。県民全体に相互協力と、医療に対する 理解を深めて頂かなくてはなりません。この未 知の感染症に対して、自分だけ助かればいいと する自己中心的な考え方が社会的なモラルの崩 壊を助長し社会不安が生じます。自分を律し、 相互に協力し、お互いを思いやる社会規範を醸 成させる事が必要です。そのためには出来るだ け正確な情報を迅速に県民に届ける必要がある でしょう。マスコミとの懇談会が微力でもその 為に機能できることを切に希望いたします。

懇談内容

開 会

○司会(玉井) お忙しい中、お集まりいた だきまして、ありがとうございます。

現在一応は沈静化の方向で、もう今しかない というタイミングで、こういう会を開かせてい ただきました。そうでなければ医療従事者が多 分こんなには来ないと思います。

ここまでの第一波を振り返って、どういうこ とがあったのかということをもう一度おさらい しておきたいということと、第二波がどのよう なことが起き得るのか。また、そのために我々 はどういう準備をしておけばいいのか、そのあ たりをこれまでの反省を踏まえて、一度総括し ておきたいということで、急遽テーマを差し替 えて新型インフルエンザということで、再び5 月に引き続いて会をもたせていただくことにい たしました。

第二波になると、今回の3 倍から4 倍ぐらい のピークがくるのではないかと言われています ので、このあたりを踏まえてぜひ活発な議論を していただきたいと思います。

それではまず、本会を代表いたしまして、宮 城信雄会長にご挨拶お願いしたいと思います。 よろしくお願いいたします。

挨 拶

○沖縄県医師会長 宮城 信雄

宮城信雄

皆さん、こんばんは。

本日は当懇談会にお 忙しい中をお集まりい ただきまして、ありが とうございます。お礼 を申し上げたいと思い ます。

皆さんご存知のように、沖縄県では6 月の末 に第1 例の新型インフルエンザが発生して、瞬 く間に流行が拡大しております。残念なことに は、全国で初となる死亡例が沖縄で出たということ、それからつい最近も2 例目が出たという ような状況になっております。

また、先ほど司会の玉井先生が話されました ように、ピークは過ぎて大体沈静化しつつある のですが、学校が始まって2 週間たって、学校 での集団発生というのも出てきております。

厚生労働省は、日本では感染というのは10 月にピークを迎え、最悪の場合は36 万人が入 院を必要として、それから重症化する人が3 万 8,000 人に及ぶということを発表しております。

1918 年に世界で4,000 万人の死者を出した スペイン風邪も春の時点ではそんなに亡くなる 方は多くありませんでした。しかし、第二波の 秋口に急激に重症者が増えて、世界で4,000 万 人の方が亡くなったと言われておりますが、今 度の新型インフルエンザのウイルスはその型や 感染者が圧倒的に若者、青年者層に多いなどス ペイン風邪に類似した点があることから非常に 懸念されております。

本日は、沖縄県福祉保健部医務課結核感染症 班長の糸数公先生を講師に迎えて、本県におけ る「新型インフルエンザ対策の現状と課題」に ついて、皆さんとともに懇談をしていきたいと 考えております。

今後、予想される第二波を想定して、県民の 健康を守るべく我々はそれぞれの立場で、それ ぞれの役割を再認識して対応していく必要があ ると考えております。

マスコミ各社におかれましても、ぜひともご 協力を賜りますようお願いを申し上げ、挨拶に 代えたいと思います。ありがとうございます。

○司会(玉井) 宮城先生、どうもありがと うございました。

早速でございますけれども、糸数公先生に今 回のインフルエンザのこれまでの流れについ て、総括していただきたいと思います。

懇談事項

「新型インフルエンザ対策の現状と課題」
沖縄県福祉保健部医務課結核感染症班長
糸数 公
糸数公

皆様、こんばんは。

後半のディスカッシ ョンの時間をぜひ長く とりたいと思いますの で、私からはこれまで の患者の発生動向、そ れからどういうことが 起きていたかということのレポートを短めに報 告させていただきます。

新型インフルエンザ対策の現状と課題という ことで、これまでの流れを総括していきたいと 思います。

感染の状況ですが、今、会長からもお話があ りましたように、一番最初の患者は6 月29 日 に報告されて、7 月24 日までが国が全数把握と いう定めた期間だったんですが、1 カ月弱の間 に143 名の報告がありました。その後、クラス ターサーベイランスということで、集団を早め に見つけるような体制に変わったんですが、そ れが9 月15 日までに集団発生が報告された施 設は487、保育所が214、小学校93、中学校 57、高校36 となっております。

30 週時点、7 月20 日からそれまでのB 型イ ンフルエンザからA 型インフルエンザに切り変 わった時期で、(それ以降は)95 %以上が新型 インフルエンザとなっています。これは簡易キ ットでA 型となった検体111 例、その当時です が、調べたら106 例が新型のH1pdm となって いたことから、ほぼA 型は新型インフルエンザ だろうということで、県のほうは取り扱ってい ます。

定点当たりの報告数は、報道でもありますけ れども、一番新しい数字が定点当たり13.38 と いうことで、46.31 というのが一番多かったん ですが、それから現在では、3 週連続して減少 をしてきております。

これは県に報告があった発生早期から感染拡大期までの患者の増え方のグラフです。1 例目 が6 月29 日に出て、それから7 月5、6 日、夏 休み明けぐらいから各学校で流行が続きまし た。この当時の流行の中心は10 代の子供たち、 あるいは学童ということで、各地で休校などの 措置が行われて夏休みに突入していったという ことになります。

これが定点当たりの報告数の推移で、県に報 告を上げる際に、定点の医療機関の先生方にイ ンフルエンザA 型が何名、B 型が何名と書いて いただいております。それを集計しているんで すけれども、23 週、24 週というのは6 月、あ るいは5 月の終わりぐらいですが、その頃も沖 縄県で新型は出てなかったんでが、B 型の季節 性のインフルエンザで学級閉鎖が起きたりし て、そういったインフルエンザの流行がくすぶ っておりました。沖縄県は3 年連続夏場に流行 り、大体夏休みが入ると減るというようなパタ ーンで、B 型はいつもと同じような動きで30 週 に徐々に減っていきますが、A 型の新型インフ ルエンザは30 週あたりから急に増えていきま した。これが34 週目まではどんどん増えてい って、患者さんが救急病院に押し寄せてといっ た状態にありましたけれども、幸い、今は減少 傾向にあります。

次のグラフが年代別の報告数の推移で、先ほ どの全数把握の頃は、10 代が中心というふうに 言いましたが、入れ替わったのが30 週でここ から4 週間続けて増えていきましたが、20 代が 実は報告としては増えてきているという状況に なっております。30 週以前は学校で流行が広が り、それが地域・コミュニティの中に広がって いったと考えています。20 代、それから30 〜 49 歳という大人、私たちの世代があって、そこ からまた家庭の中に広がって小さい子供たちに 広がった可能性もあるかと思います。このグラ フを見ると10 代の数というのは、それほど増 えてもいないということになっております。

今は37 週目のデータが一番新しいんですが、 これが今13.38、この数字が定点当たり10 を下 回ると警報が解除されることになります。警 報・注意報は定点当たり10 で超えて、定点当 たり30 になると警報の基準になり、それが10 を割り込むと警報が解除されるという仕組みに なっているようです。

全国の37 週の新しい定点当たりの数は3.4 と か3.5 とかになりそうだと、昨日うちの担当が 言っておりました。先週が2.6 ぐらいですから、 大都市を中心に少しずつ増えつつあります。た だ沖縄がこれだけ毎週続けて減っているので、 全体の数は伸び悩んでいるようにもみえます が、沖縄以外は結構今から広がってくる可能性があるという分析をしております。

結局、沖縄県は、何名患者が出ていて、入院 がどれだけで、重症がどれだけというのを少し 整理しなければと思いながら、なかなかできて いなかったのですが、まず一番下の患者さんの 数というのは、これも推定の世界なんですけれ ども、サーベイランスの報告がインフルエンザ 患者全体にあたるんですが、先ほどの8 週間で 今1 万人ちょっと超えるぐらいになっていま す。このサーベイランスシステムというのは、 報告数の5 倍から10 倍の実際の患者がいると 国立感染症研究所では言っております。サーベ イランスの報告をするという姿勢については、 沖縄県は他県より熱心であると聞いていますの で、一番低い5 倍でとってみると、患者はこの 8 週間の間に5 万人出たのではないかと推測さ れます。この円柱のグラフが、年齢が左から0 歳、1 〜 2 歳、3 〜 4 歳、5 〜 9 歳、10 〜 14 歳、 15 〜 19 歳で、15 歳以下を足すと、約半分を占 めています。その次も10 代の後半、20 代、30 〜 49 となりますので、罹った今の世代を見て いると、先ほど会長がおっしゃったように非常 に比較的若い世代への偏りになっているかと思 います。

また、どのぐらい重症化したか、入院が必要 な患者さんが出たのかというデータを出してお ります。今、県には入院サーベイランスといっ て、各保健所から入院事例について報告が上が ってまいります。病院の先生方からの報告があ り、今のところ53 例ということになっている んですが、53 例で済んでいるわけはないと思っ ていて、最近、厚生労働省の調査があった中 で、ある期間の入院数ということがあって、そ の病院の数、病院から出てきた数を単純に足し たら235 という数字が上がっております。これ でもまだ全体ではないかと思いますが、先ほど 想定した5 万人の患者から試算すると、100 分 の1 が500 で、その半分ぐらいが入院している のではないかと推測されます。

入院事例の年齢区分で見てもやはり半分が 15 歳以下ということになり、小児科のほうに 非常に多く負担がかかっていたのではないかと 思っております。

あと、入院になると高齢者が罹ったら重症化 しやすいというのがあるのか、割合が多くなっ てきております。これもまだ確定の数字ではな いので、現在、県が病院にお願いをして入院し た症例について、入院後の経過も含めた調査を 企画しているところです。また、ご協力のほど よろしくお願いします。

重症というのは人工呼吸器、それから脳症と いうことになりますが、今まで9 例あります。 ただ、私たちがまだ把握できてないのもあるか もしれないという認識ではあるんですが2 人の 死亡者が出ており、沖縄県における入院や重症 化率というのも、今後また続けて調べていきた いと思っております。

ここからは沖縄がどういう状況だったかにつ いてのレポートになります。

「感染が全国に先んじて拡大している理由」、 これは厚生労働省に呼び出されて発表したとき の資料ですが、理由ははっきり言うとわかりま せん。仮説というか、私たちが統括監とよく話 していることをそのまま書いただけで、7 月下 旬以降に天気もよく若い世代の活動が活発であ り広がったと考えています。夏休みに入ったた めに学校の管理がかえって行き届かず、部活等 の集団の中で感染したのではないかと見ており ます。沖縄県が呼ばれたのは、先進的な取り組 みではなくて、先行しただけということで発表 してまいりました。

「重症事例の発生状況」ですが、私たちは先ほど少しお話した、合計9 例の重症患者を認識 しております。2 人の方は残念ながらお亡くな りになりました。

9 例の内訳で、基礎疾患があるのが3 例、な いのが6 例。これは国が示しているハイリスク になるとみられる基礎疾患です。

乳幼児2 人、小学生2 人、中学生1 人という ことで、過半数は子供になります。

発症してから、ICU ケアになったり、人工呼 吸器につながれたりという重症化が、3 日以内 というのが5 例ということで比較的経過が早く 進展しているのではないか。

8 例でタミフル耐性なしを確認というのは、 重症化した事例については、県の衛生環境研究 所のほうがタミフル耐性じゃないかとか、病原 性が強くなっていないかといったチェックをし ておりますが、今のところタミフル耐性とか病 原性に関するような遺伝子の変化はないという ことを受けています。

「医療現場で何が起こっていたのか」。これ は私が言うよりも、先生方のほうから後ほどお 話をいただきたいと思います。

多くの軽症患者が医療機関を圧迫していて、 年末年始のような忙しさが続いていると。特に 休日夜間は救急病院に患者が集中し、患者を分 散する必要が生じている。

電話による相談が予想以上に施設の負担にな っていると。電話対応のための要員を確保しな ければならないくらいスタッフがそれに割かれ ているということを聞きました。

重症者に適切な医療提供する態制の整備が急 がれますが、特に南部医療センター・こども医 療センターの小児科では、心臓手術後のICU ケアが感染者がいるために待機せざるを得ない 状況になっているということでした。

同時に県内で4 〜 5 例と書いてありますが、 正確には4 例、同じ時期に子供のICU ケアの患 者が発生したために対応できる病床、それから レスピレータ等の医療資源の不足が懸念された という状況が8 月の3 週、4 週目に起きてしま いました。

「今後どのような対策が必要になるか」とい うことで、縦軸が定点当たりの数で、今回のピ ークは46 でした。左が今回私たちが経験した、 大体30 週から8 週間にわたって起きたもので、 人口の5 %弱ぐらいが感染した、あるいは患者 になったと計算をしております。

国の試算では国民の20 %が罹るだろう、通 常のインフルエンザの2 倍が、今回罹るだろう と言われているので、まだ残り15 %が隠れて いるというか、今後冬場に罹る可能性があると いうふうに少し大ざっぱに考えました。次来る山が、ピークが同じような期間に発生するんだ ったら、山の高さが単純に3 倍になってきて、 定点当たり135 という非常に、もう考えられな いぐらいの患者の集中が起きることも考えられ ます。一方、この面積が同じで、底辺のほうを 3 倍にすれば、高さはあまり変わらずにだらだ らと来る患者を治療できて、医療態勢としては こちらのほうがパンクしないで済むといわれて はいます。ただ、これは3 倍にすると6 カ月間 ずっと新型の患者側が次々と来るというのも、 実は結構大変かなというふうに考えています が、国の方針もこういう急峻なカーブではなく て、少しなだらかになるような対策ということ があります。1 つのシェーマチックに出してみ ました。

今後必要な対策ですが、まずは患者発生の スピードを緩やかにすることが必要です。これ が大切なことかと思います。ここに書いてある のは今、県が行っていたり対応していること で、9 月7 日から30 秒のテレビスポットCM を 放映しております。結構お金をかけたつもりな んですが、やはり本数は限定されていますの で、まだ見たことがないという人もいらっしゃ るかもしれませんが、1 カ月間の予定で組んで おります。

学校・保育施設での集団発生の場でやはりま た感染が広がる恐れがあるので、一定の基準を 示して、休業の要請をお願いしております。こ れがスピードを緩やかにするための1 つの作戦 です。

感染発症した患者の受診を分散させるという のは、今回の教訓もあったので、1 つ受診行動 に対する啓発ということで、熱が出ても自宅で 様子を見れるのであれば自宅で見るというの を、先ほどのコマーシャルの中にも入れており ます。

数多くの患者が一部の医療機関に集中してい るという状況がありましたので、医師会に所属 する医療機関に時間外休日の依頼を呼びかけ、 一部で実施していただきました。これは終了い たしましたけれども、このような対応を行って おります。

各地区で保健所と地区医師会、それから中核 病院の中で医療態勢についての話し合いを続け て頂きたいとお願いしていますし、実際に行わ れていると認識しています。

電話相談については、負担が非常に病院に大 きくかかってしまいました。発熱外来の頃のイ ンプットがあって、病院に電話してから必ず行 くようにということがまだ県民の中にあるの か、そのように救急の現場にどんどん電話がか かってきて、対応できなくなるということがあ りました。

これは看護協会の先輩方にボランティアを要 請して、基幹病院で時間外の電話相談について 対応していただきました。これをまた今後継続 するためにいろんな取り組みを調整していると ころです。

重症化の予防。それから重症事例に対応でき る医療態勢の確保ということで、今回特に顕著 になった小児科のICU 治療のために、どんど んICU ケアの子供が出たらどこで診るかと、限 られた資源を有効に活用するために、今、医療 情報ネットワークという毎日のレスピレータの 使用状況、あるいはICU の空き状況を県庁に ファックスで報告していただいて、それをとり まとめてそのままファックスで返すという、非 常にシンプルなシステムですけれども、試行錯 誤で、様式を変えたり、あるいは内容を少し検 討したりしながらずっと今継続をしているとこ ろです。

透析医会、産科医会のほうとも重症化防止のための態勢について検討を行っております。こ れはまだ形が重症のときはここというふうなと ころまではいっていませんが、今後も継続して 行っていきたいと思っております。

「スタッフの声より」には、各病院から寄せ られた国の調査の中にあったものを出していま す。これがこの次の波の課題そのものかと思っ ています。圧倒的に人員が足りない。特に小児 科、それから看護師。小児科の場合は1 階の救 急室には救急患者がたくさん押し寄せてきて、 その上のICU では重症患者を診るというふう な、同じ病院でそういうことが起きてしまう と、非常に問題が大きくなるということです。

それから、看護師さんも特別な対応が必要に なるために看護態勢が組めない。医療機器は人 工呼吸器、それから輸液ポンプなど不足をして いる声もありました。サージカルマスクの不足 も何度も指摘を受けているところです。

病棟の確保ということで、重症でなくても一 般の病棟に入れようと思ったら、個室の空きが なかなかないとか、対応できないという病院も まだありますので、患者がどんどん増えていく と、病棟の確保も問題になってきます。

それから補償についても、明らかに業務で感 染した職員に対する補償であるとか、スタッフ への予防投薬、ワクチン接種の負担金の補助 を検討してほしいという要望があり、これは安 心して業務に就けるかどうかというところにつ ながると思うんですが、そのような課題があり ます。

スタッフの疲弊感。これも印象的な言葉だと 思うんですが、通常の対応を行いながらの新型 の対応なので、スタッフが非常に疲れ気味であ ると。患者がいなくてもオンコール体制にしな いといけないので、精神的につらいとかという 声がやはり多くみられました。

次の波というのは長丁場になるということで すので、疲弊をなるべくためないような形の態 勢で私たちがいろいろ課題を考えていきたいと 思っております。

これは咳をするときは手にやらないで肘にや りなさいと言っているスライドです。最近はこ のスライドを最後にいつも使うようにしている んですが、手のひらにつけるとべったり手につ いてしまってそこから人にうつってしまうの で、保育園の先生とか、学校の先生などにこれ を見せております。

以上が今までの県の現状のレポートです。課 題については、また皆さんからいろいろ教えて いただきたいと思います。ありがとうございま した。

質疑応答

○司会(玉井) 糸数先生、ありがとうござ いました。

知花先生、正直言ってこれだけ濃密な感染症 に対してドクターが1 人とか、2 人しか倒れて いないというのは、意外と防御できているのか なという感じが逆にあるのですが、どうなんで しょうか。

○知花(医師会)

知花(医師会)

那覇市立病院の内科 の知花です。

私はインフェクショ ンコントロールドクタ ー、感染管理医師をし ています。

うちの病院はかなりた くさんの患者さんが来たのに、なぜこんなに医 療従事者が罹ってないかというご質問だと思う んですが、研修医がほとんどでして、ここに書 いたのは7 名なんですけれども、うち6 名が研修 医、1 人がスタッフだけ。ほとんどが20 代で、 20 代以上は罹っていないというのが現実です。

最初に、たて続けに感染者が出たものですか ら、通常のサージカルマスクからN95 マスクに 対策を切り替えました。あとは、部屋の構造と か、そういうのは変えられないので、なるべく 接しないように診察の工夫をしていって、これ ぐらいで抑えられたという感じです。

実際こんなもので収まってよかったと思って います。これを見るとナースが結構休んでする ようにみえるんですが、実は業務上で感染した 人というのはそんなにいなくて、家庭内、自分 の子供からうつったというのがほとんどでし た。ドクターは職業で、ナースは家でうつって おります。

あまりにも生々しいデータで、これを出して いいのかなと思ったんですが、結構休業者が出 たというのが現実です。

○司会(玉井) 実際に現場はどんな状態で したか。

○知花(医師会) 忙しかったですよ。特に 週末の急病センターが非常に忙しくて、やっぱ り来るのが小児科と内科が多かったんですけれ ども、うちの病院で統計をとってみたら、小児 科と内科が半々でした。結構、小児が多いのか なと思っていたんですけれども、結構、内科も 来ていて両方忙しかったという感じです。本当 に大変でした。

○司会(玉井) 下地先生、実際に新型イン フルエンザを民間診療所でやるということがどん なことだったのか、先生の感想をお願いします。

○下地(医師会)

下地(医師会)

最初は、まだ病原性 がわからない時期とい うのは、かなり緊張し たんですけど、だんだん 病原性が大体見えてき て、あとはインフルエン ザは基本的には飛沫感 染と接触感染だということで、サージカルマス クと手洗いを徹底してやっています。今のとこ ろはあまり院内感染らしいのは出ていません。




○司会(玉井) いろいろと現場の生々しい 声も聞こえたと思いますけど、マスコミの皆さ んから何か質問がありませんか。

○玉城(琉球新報社)

玉城(琉球新報社)

新報の玉城 です。

先生方、本 当にお疲れ様 です。

こちらの立 場からなんで すが、実際新型インフルエンザとい うのは新しいことなので、こちら側 も報道をどうしたらいいのかと非常 に迷った部分があって、最初に全 国、大阪とかに出たときに物々しい ような恐さをあおり立てるような報道でもいけないし、住民に適切な情報、適切な 行動ができる情報はどうしたらいいのかと非常 に悩むところがありました。

今までの報道を振り返って、こういう報道は よかった。逆にこの報道はどうだろうかという 率直なご意見を聞かせてください。

○遠藤(医師会)

遠藤(医師会)

中部病院の遠藤です。

報道で気になったこ との第1 点は、最初の 死亡者が出たときに、 保健所への連絡が遅れ たということが紙面で 非常に大きく扱われた ことです。その頃、現場には非常にたくさんの 患者さんが来て、大混乱の中で対応していると ころでした。若干報告が遅れたということを、 非常に大きく報道することに対し、マスコミの 無理解を強く感じたと同時に、必死の思いで仕 事をしている医療従事者が非常に傷ついたと、 私は思っております。

数日後に、現場の大変さを記事にしていただ き、救われた気持ちになりました。どうもあり がとうございました。報道機関の方もきちっと 勉強していただき、何が重要で、何を県民に伝 えることが使命なのかを冷静に判断していただ きたい。

○司会(玉井) 感染していない証明書を書 かされた先生がいらっしゃいますか。感染して いない証明書というのを書いてもらいに病院に 来ること自体が非常に危険ですね。それを新聞 社に取り扱って頂いて、これはナンセンスだと いうことをちゃんと話していただいたのは、僕 はあれはよかったなと思うんですね。

○宮里(医師会)

宮里(医師会)

実は南部地区医師会 から、それで学校とも めたという報告があり まして、教育委員会に 連絡をしまして、医師 会は書かない方針だと 伝えております。そもそも学校感染症というの は、法律で決まっていて何日したら学校へ行っ ていいとか、熱が下がって何日したら行ってい いとか決まっているはずだから、それさえ守れ ばいいと。糸数先生と相談して、それを対策本 部で練って、対策本部からホームページで1 週 間経っていれば治癒証明書はいらない。熱が下 がって2 日経っていれば、治癒証明書はいりま せんという話をして頂きました。


○糸数(沖縄県) 今年の1 月に感染が多く 発生したときにも、同じ問題で保健所から問い 合わせがありました。何でわざわざ完治証明書 をもらいに来ないといけないんだというのがあ ったので、そのときは教育庁にお願いをしたん ですが、これは学校の判断だからということ で、何も出してはくれなかったので、保健所長 の名前で各学校にこういう事は危険で、医療を 圧迫するから通常季節性のインフルエンザだっ たら、そういう必要ないという文書を出してお ります。私たちはそのような認識をもって今回 の新型の件でかなり教育庁とやりとりしていま すので、次の波を受けて同じように、玉井先生 がおっしゃっていたような、こういう不必要な 受診は減らすということを浸透させていきたい と思っております。

○中田(医師会)

中田(医師会)

確か医師法では診断 書は求められたら出さ ないといけないという ことになっていたと思 いますが、診断書を拒 否していいのですか。

鳥型インフルエンザ みたいに非常に死亡率が高いだろうと言われて いる場合は、危険性を強調するのはよくわかる んですが、今回の新型インフルエンザは確かに 一時期急激に増えましたが、重症患者が山のよ うにいたという印象は開業医からはあまり感じ ないんですね。

中部保健所が出された診断書がありました ね。インフルエンザに罹っている診断書で、あとは自宅で熱を測って、何日かしたらそのまま 書類を持って学校に行ってくださいと。僕はあ のアイディアは非常に素晴らしいと思いました。 解熱して3 日目から学校へ行っていいですとい うのは、実際に診断書に書いているものですか ら、医者としては書きやすい診断書でした。あ れは2 回も3 回も来る必要はないから、患者さ んにも負担がないし、なおかつインフルエンザ に罹った患者さんの異常行動をみるために、と きどき親が測ってくれればいいということで、 非常に治療としても役に立つし、社会的にもい い診断書だと思いました。だけどあまりにも診 断書は「いらない、いらない」とやり過ぎたら どうなのかなと、ちょっと思ったんですが。

○宮里(医師会) 罹ったときの診断書は何 日加療を要すと書かないといけないと思いま す。あるいは解熱して何日後に出校してよろし いと。治癒証明書まではいらないと思います。

それから、罹ってない証明書はこれは病気で はありませんので、タミフルの検査キットはそ のために使うものではありませんので、全く必 要ないと思います。

○中田(医師会) 病気になったという診断 書はやはり必要だと思うんです。治癒証明書は その診断書で、熱が下がったという基準を書い ていますが、それをやってご家族が学校に出 す。あるいは会社に出すというふうな形にすれ ば非常に素晴らしいだろうと思います。

それから、病気がないという証明は永遠に無 理なことですので、できたら病気がない証明書 をもらいに来たいというのは、マスコミでそん なのは無意味だよというようなことを広報して いただけたら有難い。あと、学校側も病気の診 断書だけにするというような形であれば、先生 の言うようにやれば社会的な混乱はなくなるだ ろうと思います。

○宮里(医師会) 少なくとも教育委員会は 各地区をまわって、全校の校長先生に説明して あります。

○又吉(沖縄タイムス社)

又吉(沖縄タイムス社)

沖縄タイムスの又吉 です。軽症の患者さん が救急医療機関に殺到 して電話もかかってく る。患者さんもやっぱり 心配だからかける気持 ちもわからなくもないと 思うんですよ。ですから、軽症の方は原則帰宅 待機なわけですけれども、重症化を判断する目 安というのがあまり浸透していないと思います。

その点をどのように広報できるでしょうか。 肺炎も結構、急速だというお話も聞いたので。

○宮里(医師会) 私は小児科なので小児科 だけで言わせていただきますと、うちの病院で は5 人小児科へ入院しました。あと、妊婦さん がお1 人。この5 人のうちの4 人は初日から呼 吸困難の症状が出ておりました。2 日目にはも うアップアップして、本当に挿管しようかどう しようかというぐらいでした。ただ、少なくと も48 時間以内でしたので、タミフルを投与し、 酸素投与しながら何とか乗り切って挿管は免れ ました。

ただ1 例は入院した時すでに4 日目で、乳児 でしたけれども、この子はそれほど強くはなく て、7 日目ぐらいで一気に重症化していきまし た。小児科に関して言えば、1 日、2 日目で呼 吸器症状があるという雰囲気がします。

○司会(玉井) 知花先生、何かご意見あり ませんか。重症化の目安というか、

○知花(医師会) やっぱり呼吸困難感と か、息切れなどの呼吸器症状が強い点でしょう か。厚労省のホームページにも載っているので はないでしょうか。

○當銘(医師会)

當銘(医師会)

実際、僕は電話相談 係りをやったのですが、 重症化の目安は何なの かを特定して、病院を 受診したほうがいい、 或いはしなくてもいいという判断はできませんでした。普段元気な子 に風邪症状が出てきて、インフルエンザかもし れないと思ったら、病院を受診するのを勧めま した。A 型でないかどうかを早めに判断し、A 型陽性であれば新型インフルエンザと考えて、 早期の治療開始が望まれますので。ただ、問題 はA 型であっても、発症早期には検査しても疑 陰性のことがあるので、そのへんの判断をまた 慎重にならなければいけないのですが。新型イ ンフルエンザに対するタミフル、リレンザの早 期投与の重要性が強調されている状況下で、発 症初期に相談を受けて、あなたは「軽症だから 待っていても大丈夫」という言い方はできない と思います。

○野原(医師会)

野原(医師会)

小児の季節性インフ ルエンザでは脳症が怖 いのですが、今回の新 型インフルエンザでは 急速に進行する肺炎が 目立ちましたし、心筋 炎も報告されています。 ですから注意すべき症状として、意味不明の言 動や痙攣、意識障害などの神経症状に加え、呼 吸数が多い、呼吸困難があるなどの呼吸器症 状、更にぐったりして脈が弱いなどの循環器症 状がある場合は直ぐに救急を受診するべきで す。意識、呼吸、脈拍が重要です。



○宮里(医師会) 軽症化で帰したとして も、やっぱり2、3 日は注意してください。2、 3 日過ぎればまず大丈夫だと思います。

○知花(医師会) 急病センターを受診され た患者さんが大体発症して何時間ぐらいで病院 を受診しているかというのを調べたんですけれ ども、結構患者さんたちも知識があるという か、最初にあまり早く来すぎてしまうと、キッ トで陰性に出るということもよくご存知でし た。大体12 時間超えて来院される方が多くて、 やはり1 日ぐらい家で見て、キットで陽性にな る頃合いを見計らって来ていただいているとい う感じがしました。ですから待てる人はそれで いいと思いますし、来るならわざわざ急病に来 なくて、日中の普通のかかりつけの先生のとこ ろでもいいかなと思います。やはり待てる人は 大丈夫だと思うんですけれども、インフルエン ザを思わせる症状があって、呼吸困難などいつ もと違う症状が出たら、それは発症から何時間 経っていようと、すぐ病院を受診して全然構わ ないと思います。

確かに、今の段階で沖縄県では死亡者が2 人 に止まっているんですが、だれがどのくらい重 症になるかというのは、本当にまだわからない ところがありますので、心配な方はやっぱり病 院を受診されて構わないと思います。

○司会(玉井) 基礎疾患のない方でも重症 化するというのが出ていますので、やはり油断 はできないですよね。

○中田(医師会) 軽症の人は自宅でという お話がありましたが、軽症って本当に判断でき るかというのは難しいところもあると思いま す。一番問題なのは、すぐ救急病院に殺到する ということが問題ではないでしょうか。アメリ カ方式で自宅でという話をされていますが、正 直言いまして、私の診療所は8 月に比べたらず いぶん暇です。今年の1 月が一番忙しくて、8 月がまたパタパタして、9 月になって中盤は暇 という状況ですけど、新聞と僕らとは別世界の ような感じがするぐらい。

ところが今、統計を見ていると確かに2 万人 とか4 万人のうちの2 人の死亡に止まっていま す。何で重症化が少ないかというと、やはり早 期の治療じゃないかと思います。私のところも 玉城さんと話したその日に、中学生の子ですが レスピレータ管理の人が1 人出ました。この人 はマイコプラズマ肺炎と、新型インフルエンザ とが重なったため、2 次救急に送ったらそこか らさらに搬送されて、3 次救急の中部病院に行 ったとのことでした。インフルエンザで重症化 したのは3 人いましたが、確かに基礎疾患がな いというんですが、小さいときに喘息があった とか、若干、全くピュアではないかもしれない けど、でも、確かに急激に3、4 時間で重症化しています。だから明らかに重症になる人は、 もう当たった人だという感じがしますが、それ 以外に、もしかしたら、軽症のうちに僕ら治療 しているかもしれないんですよ。だから検査を 早めにするのが悪いことではないんじゃないか なと思います。ただ、さっき言った熱が出て、 12 時間過ぎてから受診することや、あとは救 急病院にそんなに脅して行かせる必要はないか なと思います。「軽症者は自宅ではなくて、軽 症だと思ったら診療所へ行ってください」でも いいのではないかなと思います。電話で対応で きるか確認してからですが。

今の時点で夕方になって駆け込んで来る患者 さんがいっぱいいて、昼間はガラガラです。な ぜかというと、病院に行くと病気がうつるよ と。一生懸命隔離しているのが、まるで無意味 のように待合がガラガラになって、車の中にい てというような形ですね。だから病院に行った ら「うつる」からというのでは、重症化してか ら来ることにも繋がりますので、必要があれば やっぱり受診すべきです。

重症化して来てすぐ入院となると、結局、救 急の負担が減らないんじゃないかなと私は思い ます。

○司会(玉井) 実際に民間病院で、診療所 でまず診れるということをちゃんとアナウンス していただいたので、そこから重症患者をセレ クションして、後方支援病院に送るというシス テムが今回の第一波に関しては少なくとも機能 したと思うんです。それが重症患者に対して濃 密な医療を提供できる1 つのスタイルとして、 ある程度定着したような気がします。

○宮里(医師会) 8 月16 日でしたか、那 覇市立病院が非常にパニックになったという報 告を受けて、それからその前の中部地区の実務 者会議で遠藤先生からも開業医の協力がほしい という要望がありまして、ちょうど定点あたり 46 のときに、8 月のその翌週の火曜日に沖縄県 の宮里統括監とお会いしまして、医師会長と知 念局長もお会いしまして、その話し合いの中で 開業医の先生にも時間外と日曜祝祭日の応援を お願いしましょうということで、25 日に通達 を出しました。ところが幸いといいますか、そ の週からどんどん下がってきまして、実際動い たのは2、3 日だったと思うんですが、那覇市 医師会は市立病院の要請に応じまして、16 日 の週の土日、内科の先生お2 人と小児科の先生 お1 人がもうすでに応援が入っていたというこ とです。

それから、今回はその前の定点がどんどん下 がって応援の必要がなくなりましたけれども、 第二波の応援のときにはこの形でいきますよと いうシステムができましたので、かなり軽減さ れると思います。定点当たり30 を超えた場合 は、そのときにも輪番制で、あるいは応援とい う形で入っていただければ対応できるかなと思 います。

それから、2 次医療圏ごとに事情が異なりま して、南部医療圏は2 つの病院に集中している というのが明らかでありますので、ほかの救急 病院も受診するようにアナウンスしていただき たい。それから、中部地区に関しては遠藤先生 たち実務者会議がかなり具体的に詰めてありま す。先日、うちの病院にも中部地区医師会から 何曜日に応援に行ったらいいでしょうかという 問い合わせがありましたが、今のところ落ち着 いているので第二波のときにご協力頂きたいと お願いしたんです。

それから、北部地区に関して言えば、2 病院 ですけれども、会員の先生方が地区医師会病院 の応援に出かけるということで了承しているよ うであります。

南部地区医師会もそういうことで、開いてい る救急病院に誘導という形で問題ないだろうと 思っております。

○司会(玉井) 那覇市医師会の友寄会長が 今日いらっしゃっているようですけど、友寄会 長、病診連携はうまく機能したんでしょうか。

○友寄(医師会)

友寄(医師会)

6 月の末でしたか、県 から患者さんが急増し たら応援医師を派遣し てほしいという要請が ありました。それで会 員に募りましたら12 名 の先生がすぐ手を挙げ てくれましたので、それを登録しておりました が南部医療センターからはそういう要請はあり ませんでした。

市立病院から8 月の末でしたか、応援してほ しいという要請があったので、9 月いっぱいは 大体土曜、日曜、祝日は会員の先生の応援を決 めてあったんですが、9 月の半ばで患者さんが 減ったので現在は止めております。 何かの役には立ったと思います。

それから、時間外に診療所、病 院を開けるということはもう少し 徹底してやらないと、スタートし て2、3 日やったようですが、開け ても患者さんが来ないという状況 があったかと思います。それから、 患者さんの受診行動を見て、それ から患者さんの数ですね。南部で は南部医療センターと市立病院の 救急診療所に集中しますので、一 般診療所が開けてもなかなか来な いと思います。

○川野(医師会)

川野(医師会)

市立病院の川野です。

8 月1 6 日日曜日に 206 名という非常に多 くの患者さんが訪れま して、これでは市立病 院の医師がとても大変 だということで、8 月 17 日に院内で会議を開きまして、ぜひ応援を 頼もうということで、那覇市医師会に声をかけ ました。そしたら迅速に8 月19 日に那覇市医 師会員で臨時の理事会を開催していただき、8 月22 日、23 日の土日に応援をしていただくと いうことになりました。土曜日に1 名、日曜日 に2 名、3 名で、小児科はまた別ですけれども、 大人のほうはそういう応援体勢でした。

それから、先ほどお話がありましたように、 若干患者さんが少なくなってきましたので、8 月29 日、8 月30 日、それと9 月5 日と9 月6 日の応援をしていただいた後は、とりあえず 何とかうちのスタッフでできるだろうというこ とで、この次に回っていただくということで今 回の波は何とか乗り切ったというような感じ です。

この表では9 月3 日に患者さん多いですが、 沖縄特有のウークイの日で、開業の先生方が休 まれたのかなという感じです。

○知花(医師会) 結局、那覇市医師会から 応援をいただいたドクターの数は延べ14 名で、 発熱外来で診た患者さんは450 名、本当に助か りました。今回、那覇市医師会の対応がとても 早く、本当にタイムリーにその週末から応援に 来ていただけたので、有難く感じております。 本当にありがとうございました。

○司会(玉井) こういう応援態勢もありま す。あと、実際に診療所を土日、開けてみたら あまり来なかったですね。

○遠藤(医師会) 厚生労働省と連絡をとっ ているんですが、那覇市立病院がやられた方法は非常に効果的だと認められています。クリニ ックでは時間外に開けても多くの患者さんはそ れに気づきません。新聞に載せていただいてい ますが、非常に小さなスペースです。時間外の 医療機関を見る人はほとんどいないのではない かと感じています。

開業医の先生方が診療時間を延長されると、 医師だけでなく、看護師、事務職員、門前薬局 まで開けなければいけなくなり、非常にコスト パフォーマンスが悪い。日曜日に開けると、休 みが無くなります。そのため厚生労働省も少し トーンダウンしています。やはり那覇市立病院 でやられたような形で、救急告知病院に応援に 来ていただくスタイルが良いのではないでしょ うか。その際には、いくつか条件を整えなけれ ばなりません。報償費をどうするんだというこ ともあります。今後、ぜひすり合わせをさせて いただきたいと思っております。ありがとうご ざいました。

○宮里(医師会) 報道のあり方で1 つだけ お願いがあるんですが、糸数先生のデータにも ありますように、半分は子供ですので、子供た ちに手を洗いましょう、うがいをしましょうと いっても、聞いて受け流してしまう感じになる んですね。具体的に手を何回、どこからどこま でこすりましょうとか、手を洗ってうがいし て、顔洗ってという順番とか、もっと具体的 に、どうせ新聞で報道するのであれば、絵かな にかを使って子供がわかりやすいようにやって ほしいと思います。アメリカでは歌をつくった りやっているみたいです。

○野原(医師会) 新型インフルエンザ対策 で重要なことは死亡率の把握だと思います。国 や外国からの報告では死亡率が0.1 %とか、 0.5 %とか推計されていますが、今日の糸数先 生の発表から患者が5 万人だとすると死亡率が 0.004 %、重症化率が0.02 %、入院率が0.4 % と計算されます。これは4 月の神戸のデータで も同様で、パニックになるほどではありませ ん。確かに季節性インフルエンザと比べて若年 者の患者が多く報告されていますが、わが国の 医療レベルは高く、行政の対応は大げさすぎる と思います。どうして季節性インフルエンザは あまり問題にせず、新型だけが報道されるの か、もう少し冷静に対処してもらいたいと思い ます。

○司会(玉井) 重症化症例もあるので、難 しいところもあります。

この話をしていいのかどうか分かりません が、ワクチンというのが今度出るんですけど、 糸数先生、どのようなワクチンが出る予定かち ょっと教えていただきたいのですが。

○糸数(沖縄県) ワクチンの話は本当にマ スコミの方々と一体となって県民に啓発しなけ ればパニックを起こすかもしれない、非常に重 要なテーマだと思っております。最後にお話し ようと思っていましたが、一番最初にやる作業 としては、名簿をつくるという作業があります。 数が足りないので優先接種をする順番を決めま す。まず最初は医療従事者、重症化防止のため のワクチンということで、医療に携わる人たち というのは間違いなく最初なんですが、その医 療従事者の範囲もまだはっきり示されておりま せん。出ているのは医師とか看護師とか、救急 隊員というのは例として出ていますけれども、 じゃその中にいるスタッフとかはどうなのかと いうのは、まだ国は結論を出していません。

次は罹ったら重症化する人ということで、そ の次のランクに妊婦さんとか、それから基礎疾 患を持った人というように、随時接種をスター トしていくというスケジュールがあるんですけ れども、まだ国からはっきりとした接種対象が 示されていないので、1 つは県民が何で私は違 うんですかとか、不公平感に基づくいろんなク レームだったりの行動というのが少し心配され るところです。だからこれもまた、一緒に話し ていきたいと思います。

効果についても、効果はあると思うんですけ れども、重症化防止のための効果であるとか、 あるいはこれを打てばすべて解決するというわ けではなくて、きょう話したような受診とか、 そういう対策の一環としてまず弱くなる人を守るためにやるという位置づけです。これは詳細 が決まったら、マスコミの方とも何回か意見交 換することになると思いますので、ぜひ混乱少 なく接種が進むようにということを考えており ます。

国産ワクチンの見込みは、今、1,800 万人し かつくれないということで、今年度に限っては 輸入ワクチンで対応することになると思いま す。最初に国産のワクチンを打って、後半は輸 入のワクチンになると思います。後半になると きには、就学前の子供や1 歳以下の子供を持つ 両親、あるいは小中学生とか、高齢者というよ うに順番をつけて、行動プランを立てていくこ とになります。それをなるべく多くの方が合意 した上で進めていくということで、その作業に ついてはお願いしたいと思います。

○野原(医師会) はしかワクチンの予防効 果は95 %以上です。しかし、季節性インフル エンザワクチンの発症予防効果は、臨床内科医 会の報告では皆の期待ほどは高くなく、年度に よっては50 %を割ることもありますし、新型 インフルエンザワクチンでも同程度の発症予防 効果だと思います。現行のインフルエンザワク チン最大の目的は重症化を防ぎ、死亡を減らす ことですので、誤解がないように報道してもら いたいと思います。

○司会(玉井) 予防接種、ワクチンを打つ のは、ハイリスクの基礎疾患を持っていらっし ゃる方というのを規定してアナウンスして接種 という形になるわけです。なぜ私は打てないん だという人は必ず出てくるはずですよね。お金 があれば打てるワクチンじゃないというわけで すよね。社会的にそういう合意をつくらないと いけません。

○宮里(医師会) ワクチンは罹らないため に打つというのではなくて、目的は死者を出さ ないということなんです。マスコミの皆さんも これからの目的は死者を出さないための戦いに なる。だれも免疫を持ってないですから、誰で も罹るんだということを知った上で、重症化し やすい人たちに優先的に打ってあげることにな る。それから、現場で戦っている人にも罹らな いように打ってあげる。基本的には死者を出さ ない、そのための一方法なんだということを理 解していただいて、報道をしていただきたい。

○高崎(沖縄タイムス)

高崎(沖縄タイムス)

沖縄タイムスの高崎 といいます。

先日、県内2 人目の 死者が24 歳の基礎疾患 のない女性ということ で、結構ショッキング なニュースが出ました けれども、家族3 人が罹って、タミフル、リレ ンザを使用していたということなんですが、リ レンザの使用方法に何かあったのか等、詳しい 状況を知っている方がいたら教えてほしいと思 います。

あと、若者に発症者が多くて、死者も重症患 者も多いということですが、これはどうしてで しょうか。また、県内の入院重症者の割合を見 ていると、年齢に結構ばらつきがあって、通常 考えるのは体力の弱っている高齢者とか乳幼児 が重症化しやすいのかなと思うんですが、結構 そういうふうにはなっていないのかなと思うん ですけれども、そのへんはたまたまなのか、や っぱり規則性がないような感じになっているの かというのを教えてください。

○司会(玉井) 當銘先生、今、インフルエ ンザの治療というのは大きく分けてタミフル、 リレンザというのがよく使われているとは思う んですけど、どんな治療薬なのか簡単に教えて いただけますか。

○當銘(医師会) そのへんの質問が出るん じゃないかなと思い、急遽、調べられる範囲で 調べてきたのですが、まず、うちに新型インフ ルエンザで入院した患者は、7 月から入院が始 まりまして、現在まで26 人が入院しています。 小児科が16 人、成人が8 人です。男女比でみ ると、成人のほうは女性が6 人で、男性2 名と かなり女性のほうが目立ったのですが、子供の 方は10 対6 で、男性のほうがむしろ多くなっています。次に基礎疾患のない人が26 人中14 人、基礎疾患のある人が12 人です。基礎疾患 の内訳は気管支喘息が5 人、それから糖尿病、 先天性のくる病、パーキンソン、癲癇、心疾 患、ネフローゼ、COPD の患者がそれぞれ1 人 ずつインフルエンザで入院しています。

年齢は最年少が9 カ月の男児で、最高齢が 76 歳のパーキンソンの女性です。年代別で見 ますと、5 歳以下が7 人、6 歳〜 10 歳が5 人、 10 歳代が5 人、20 歳代が5 人、30 歳代が1 人、 50 歳代が3 人、70 代が1 人です。

死亡した24 歳の女性ですけれども、この方 は肉体的には免疫不全に関する基礎疾患はない のですが、精神発達遅延がありまして、就職支 援をするようなコロニーというんですか、そう いう特殊な社会的施設の支援を受けて仕事をし ている女性でした。家族の2 人はタミフルを飲 んでいたのですが、本人は飲み薬が苦手という ことでリレンザが処方されたことになっていま すけど、リレンザをきちんと吸入できていたか どうかはまでは確認できていません。

一般的に、リレンザとタミフルで効力に差 があるかというと、ほとんど差はないものと考 えています。ただ、予防投薬という観点ではタ ミフルのほうが効果があるようなことが言われ ているみたいですが、治療薬として使う場合に 両方の薬剤で差があるかというと、それは無い と思います。むしろリレンザの注射で劇的に改 善した症例が、外国で報告されているみたい です。

合計26 人が入院していますが、現在入院し ているのは重症化した3 人だけです。心筋炎で 入院した子と、ウィルス性の重症肺炎の9 カ月 の子と、それから26 歳の女性が重症肺炎で入 院しているのですが、この人はインフルエンザ 肺炎そのものじゃなくて、肺炎球菌性肺炎を合 併して呼吸不全になって入院している症例で、 こちらは抗生剤によく反応しており、救命でき るものと予想しています。

○和氣(医師会)

和氣(医師会)

本日肺炎で1 人入院 がありました。追加し てください。

○當銘(医師会) 質問にありました、どう して若年者に重症患者が多いのかということに 関して、はっきりしたことは分かりませんが、 おそらく1970 年代の後半にアジア風邪という のが流行っていまして、これは現在の50 歳代 以上の人は経験している訳でして、恐らくその 時できた抗体を持っているのが、今でも効果を 発揮しているのではないかということで、その 為に年寄りには罹りづらくて、若者のほうに重 篤な症状が出ているのではないかと推測はされ ているようです。

○司会(玉井) これからの変異というもの もあるでしょうから、油断はできないとは思い ます。

○謝花(沖縄タイムス社)

謝花(沖縄タイムス社)

沖縄タイムスの謝花 と申します。

やはり第二波に備え て啓発的な報道という のはこれから大事だな とお話を伺って思って いたんですが、実際、 今、第一次の流行の最中にもいろいろ工夫して やっているつもりなんですが、報道している部 分に対する問い合わせとか結構あったりして、 私たちもかなり模索しているんですよ。どうい った報道が、特に啓発において期待されて、第 一波のときに役に立ったのか・立っていなかっ たのか。先ほどの時間外診療も少し小さかった というお話がありますよね。そういった部分も 含めて、今患者さんが受診されるときに、ある 程度知識をもっていらっしゃると、それは一体 どういうところからとっているのかとか、どういう情報が有益だったのかと知りたいですし、 第二波に向けてはこんな工夫をしたらどうかと いう提言があったらぜひお願いしたいんですが。

○遠藤(医師会) これはリスクコミュニケ ーションですよね。リスク回避するには、リス クアセスメント、リスクコミュニケーション、 リスクマネジメントがあります。マスコミの方 には、ぜひリスクコミュニケーションをお手伝 いいただきたい。来るべき危機に対して何をし なければいけないかという報道をしていただき たいんです。そのためには、県民に分かりやす いキャッチーな標語が必要だと思います。

私は、県民に「6 つのお願い」と言っていま す。それは「うつさない」「うつらない」「つぶ さない」です。まず「うつさない」は、感染し たであろう方は1)外出しない。どうしても外出 しければならない時は、2)咳エチケットを守っていただく。マスクをしていただいて、咳・く しゃみがあるときはティッシュで鼻と口を押さ える。そして、よく手を洗う。「うつらない」 は、3)咳をしている人に近づかない。私は講義 で、マスクをしている人には近づくなと言って います。そして4)手洗い、うがいをきちんとす る。最後の、「つぶさない」は、地域の医療機 関をつぶさないと言うことです。感染初期ある いは重篤でない方は昼間に5)開業医の先生を受 診する。6)妊婦、基礎疾患のある方は、まずか かりつけ医に相談していただいてから、適切な 医療機関を受診していただく。以上合わせて6 つです。

県民が新型インフルエンザ対策と言えば、 「うつさない」「うつらない」「つぶさない」と、 すぐに口に出して言えるのが理想です。それぞ れ2 つずつ入れて「6 つのお願い」としました。 これを、新聞、ラジオ、テレビなど、あらゆる メディアで繰り返し言っていただきたい。この 6 つをしっかりやっていただければ、大きな混 乱は起きないと思います。

もう1 つお伝えしたいことがあります。5 月 の流行時に、医療機関にマスクの供給が途絶え ました。神戸、大阪でマスクをしないのは罪悪 であるというような報道が繰り返しされたた め、マスクがたくさん使われました。一般人が 大量のマスクを消費したため、医療機関へのマ スクの供給が途絶えたのです。私はこの秋も心 配しています。感染した人がマスクをするのが 適切であって、感染防止のために街中でマスク をする必要はありません。ぜひ適切なマスクの 使用法の報道をしていただき、マスク不足の発 生を防いでいただきたい。

○下地(医師会) 開業していて思うんです が、患者さんの家族の感染がとても多い気がす るんです。2 割くらいもしかしたら、あるいは それからもうちょっと多いかもしれませんが、 この家族内感染がとても多い気がします。うち も家族内感染の防止のための注意事項を書い て、診断がついたらみんなに渡しているんです が、記事のほうでもぜひ家族内感染の防止につ いて、そのあたりの記事もぜひ載せていただき たいと思っております。

それと報告ですけど、浦添市医師会も9 月16 日から浦添総合病院に休日で応援に入っていま す。9 月いっぱいはやる予定でいます。

○司会(玉井) 医療機関は2 カ月間、新型 インフルエンザをずっと扱ってきましたが、 我々はほとんど罹らないですよね。50 歳以上の 人が多いからなのか分かりませんが、でもそれ はやっぱり本当に基本的なことをしっかりやっ ているだけなんですね。やはり基本的な手洗い とか、そういう当たり前のことをちゃんと地道 にやっていけるかどうか。例えば学校で換気を するとか。そういうあまりお金のかからないと ころをちゃんと地道にやっていくということを しっかり啓発していただければ、かなりピーク の波を緩やかにできるんじゃないかと僕は思い ます。特別なことでも何でもないですよね。沖 縄県民がなかなかやりにくいことを、ぜひ報道 の力でやっていただければなと思っております。

どうも今日はありがとうございました。