沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 12月号

第3 回沖縄県女性医師フォーラム

沖縄県医師会女性医師部会委員
玉寄 真紀

去る10 月3 日(土)沖縄県医師会館に於い て標記フォーラムを開催した。

今回、フォーラムでは、県内の「子育て世代 女性医師」、「子育て終了世代女性医師」、「子育 て中の女性医師の夫である男性医師」をシンポ ジストに、仕事と育児の両立等について発言い ただき、その後行ったワークショップでは、女 性医師が抱える諸問題の解決や働きやすい勤務 環境整備等について、女性医師の生の声を伺 い、全体討論で意見を纏めた。

参加者は医師48 名(院長、副院長8 名)、研 修医14 名、医学生3 名、女性医師部会役員11 名、その他一般等8 名を合わせ計84 名であっ た。うち男性も14 名(医師12 名、研修医1 名、一般1 名)参加があった。

その概要について次のとおり報告する。

挨 拶

沖縄県医師会女性医師部会長 依光たみ枝

今日は中秋の名月ということですが、皆さ ん、お月様よりもこのフォーラムを優先してい ただき、ありがとうございます。

平成19 年、2 年前に女性医師部会が立ち上 がりました。今回のフォーラムは3 回目を迎え ますが、1 回と2 回は著名な女性医師の先生に 講演をお願いしました。

昨年、当フォーラムの参加者が少なかった反 省を踏まえ、女性医師部会役員会でいろいろ検 討した結果、若い方たちの意見を汲み取る場所 が必要ということで、今回は従来の講演とは企 画を変更し、シンポジウムやワークショップ、 全体討論等を行うことにしました。

今回、若い女性の医師の本音を聞き出そうと いうテーマを持っておりますが、私の本音を自 我流の川柳で挨拶とさせていただきます。

「初めちょろちょろ中ぱっぱ最後にどばーっと 3回」

これは釜でご飯を炊いたことがない人は分らないと思いますが、実は最初30 人参加者がいるかどうか非常に心配しました。それがあっと言う間にこの1 〜 2 週間で会場が満杯になり、役員一同感謝しております。

「忘れるな次世代担いて我にあり」

いつも研修医に言っています。国づくりは、 人づくりからです。これは子育ても研修医も一 緒だと思っております。それぞれの立場で皆貢 献していると思うので、それをぜひ誇りに思っ てください。

「家庭でも育児・家事は当直制」

これは先輩の男性医師の言った言葉です。し かし、子供が泣くとどうしてもおっぱいがない と、やはりお母さんには勝てないと嘆いており ました。

「我が子の寝顔で疲れ吹っ飛び旦那の寝顔は……」

男性職員は胸に手をあてて自分は何と言われ ているかなと思ってください。

「お母さんきょうも掃除してないよと子に言われ」

実は、これは娘に言われたことです。そのと き、私は食べないと死ぬけど、埃では死なない よと子に言い聞かせました。

「復職前夜挿管困難の悪夢で不眠症」

これは皆さんも感じたことと思いますけど、 私はそのとき麻酔医をしていたので、明日から 仕事というときに非常にストレスでした。

「女医さんの笑顔が職場のバロメーター」

これは非常にいい職場、笑顔がいきいきして いるところはいい職場だと思います。

「女医バンクパンクするほど殺到し」

役員一同夢見ています。

皆さん、今日は活発なご意見、ご討論をよろ しくお願い致します。

報 告

(1)「全国女性医師の勤務環境報告」と「県 内女性医師への個別聞き取り調査報告」
沖縄県医師会女性医師部会委員
仁井田りち

近年、医師全体に占める女性医師の比率が増 加傾向にある背景をもとに、女性医師を取り巻 く現状や課題などについて説明を行った。

また、今回、沖縄県医師会が県からの委託 (ふるさと再生雇用特別基金事業)を受け、平 成21 年8 月から平成24 年3 月までの約3 年間 「沖縄県女性医師バンク事業」を実施すること について概要を紹介した。

※詳細は会報11 月号の「平成21 年度女性医師 の勤務環境整備に関する病院長等との懇談 会」に掲載のため省略

(2)「女性医師求人・復職研修支援に関する 調査」結果報告
沖縄県医師会女性医師部会副部会長
涌波淳子

「沖縄県女性医師バンク事業」の実施に向け て、本年5 月下旬、県内女性医師勤務状況把握 とその改善のための一環として、県内94 病院 (公的病院含む)を対象に行ったアンケート調 査結果について報告を行なった。(回答率は 63 %)

※詳細は会報11 月号の「平成21 年度女性医師 の勤務環境整備に関する病院長等との懇談 会」に掲載のため省略

シンポジウム

座長 琉球大学医学部附属病院

専門研修センター 玉寄真紀

安里 千文(大浜第一病院・与那原中央病院)

島袋美奈子(中頭病院)

大久保宏貴(琉球大学医学部附属病院)

○座長(玉寄) これより4 名のシンポジスト の先生方をお迎えして、様々なご意見を伺い、 その後、ワークショップを開催させていただき ます。早速ですがシンポジストの先生方をご紹 介致します。

皆さんから向かって左側から、安里千文先生 です。現在は、大浜第一病院、与那原中央病 院、沖縄県総合保健協会で非常勤として勤務されております。5 人のお子さんがいらっしゃい ます。

続いて、島袋美奈子先生です。3 人のお子さ んを育てながら、中頭病院の産婦人科として勤 務されています。

そして、大久保宏貴先生です。ご本人は整形 外科の先生で、奥様は産婦人科の先生で、今回 は女性医師だけではなく、女性の医師を奥様に 持つ男性医師の立場からもいろいろご意見を伺 いたいと思っております。

Q :「どのように仕事と子育てを両立してい るか?」「一番助けになった具体的な制度や サポートなど(病院側・家族)」について

○安里先生

安里先生

今日お集まりの皆様 は、第一線で堂々とお 仕事されている方ばか りなので、壇上にあが りお話しするのは恥ず かしいのですが、「こう いう勤務もできる」と いうことを参考にしていただけたらと思います。

私は平成2 年に卒業し、ずっと続けていれば 今年20 年目の医師になる段階ですが、そのう ちの大凡7 年は2 回に分けて3 年と4 年で完全 に仕事をせず、主婦業をしていた時期がありま す。13 年の間で常勤は約3 年ぐらい、あとの 10 年は今のような形で、非常勤の形でコマを 組み合わせながら1 週間のスケジュールを組む という形態を取っています。

現在は、与那原中央病院の外来と、大浜第一 病院での訪問診療、沖縄県総合保健協会で健診 業務の手伝いをし、4 年ぐらい前からスポーツ ドクターをしたりして、仕事をしています。

主人と私の名誉のために申し上げますが、家 族計画の失敗ではなくて、6 人のオーダーをい ただきましたが、やはり年齢的に制限があり5 名で終わりとさせていただきました。正常分娩 も体験しましたし、帝王切開も経験して、一番 最後は双子が生まれて一気に増えました。無理 やり仕事を中断していたわけではなく、結構、 主婦業も楽しんでいましたので、あまり私的に は「休んでいる間に仕事ができない」とか、 「早く復職したい」という意識はありませんで した。幸い内科医であったので、時間的に少し 余裕ができたときに、健診業務から始めてい き、基本的な診察手技を練習しながら勘を取り 戻し、外来の業務等に繋げていったような気が します。また、当直業務に関しては、私のほう で遠慮させていただいていました。

一番手助けになったサポートに関しては、今 も続けているヘルパーさんやお手伝いさんとい ったような、第三者の方を雇うという点と、家 電製品です。経済的な負担もかかりますが、そ ういうところにお金をかけることに対する配偶 者の理解もありました。家事に関しては、主人 は「勘弁してほしい」とのことでしたので、残 念ながら分担ではありませんでした。しかし、 便利なものを買うことに関しては非常に積極的 で、今家には食器洗い機が2 台ありフル活用し ています。そういうことで時間をつくってきま した。

○島袋先生

島袋先生

中頭病院産婦人科の 島袋です。簡単な自己 紹介ですが、私は3 人 の子供がおり、3 人のお 産をした後の勤務形態 がそれぞれ違っていま す。第一子の出産後は、 中頭病院で2 年間勤務しておりました。そのと きは常勤で週1 回当直をして、オンコールはな いという状態でした。子供は1 歳から2 歳だっ たと思います。当直の日は、姑さんと主人に見 てもらったんですが、そのときは大学の麻酔科 勤務でしたので、まだ少し時間に余裕がありま した。

ただ、2 年間の勤務で、お互いにかなりぎり ぎりのところでやっているような状態でしたの で、第二子を出産した際には、いったん病院を 辞め、開業医の産婦人科で非常勤として4 年間 勤めました。その間に、第三子を出産し、その まま産休をいただきました。第三子出産後は、 4 カ月でやっぱり非常勤で外来のみということ で、同じ開業の施設で復帰しました。

最初の第一子のときは保育園と祖母だけだっ たのですが、祖母が調子が悪いときにどうして もサポートができなかったため、第二子からは 祖母プラスベビーシッター、あと、家政婦の役 割をしてくれる方にお願いをしていました。現 在は午前中は家政婦さん、午後からはベビーシ ッタープラス祖母という形で3 人の子供の相手 をしてもらっています。

今勤めている病院は2 年前に移ったのですが、 今年の4 月まではやはり非常勤で「火曜日から 金曜日まで半日という形態で、午前中で夕食を つくって出かけ、午後は主に外来勤務、それか ら週一は手術を主に担当する」という形で行っ ていました。ただ、帰りがどうしても業務終了 までいる状態であったので、やはり遅いときは 8 時〜 9 時とかというのがざらにあり、ベビー シッターさんと祖母のほうには、子供の夕食と、 お風呂などの世話をお願いしていました。

これまでの経験で一番助かったのは、ベビー シッターさんの存在が大きかったです。第二子 を出産した後は、そういうサポートがなかった ので、学会等にも全然行けず、勉強会にも行け ない状態だったんですが、第三子出産後は、夜 の勉強会にもベビーシッターさんにお願いし、 だいぶ出席できるようになりました。

○玉寄座長 具体的なサポートというと、院 内保育や家族、両親のサポートというのが思い 浮かびますが、今のようにベビーシッターや第 三者のサポートを得られるという選択肢もある みたいですね。

○玉寄座長 では、次に大久保先生にご意見 を伺いたいのですが、奥様もお医者様というこ とで、奥様をサポートする上で何か心がけてい ることはありますか。また、先生ご自身も整形 外科医で、夫婦共にフルでお仕事を続けていら っしゃる現状などについても併せてご意見を聞 かせてください。

○大久保先生

大久保先生

琉大整形外科の大久 保です。

会場には妻も、しか も父までいるという状 況で、非常に話しにく いのですが、僕がここ にいるのは多分、女性医師の70 %が男性医師と結婚しているという ことで、生の意見を聞きたいということだと思 っていますので、生の意見をお伝えします。

サポートでまず1 つは、家事をやっています。 僕は今大学院生で研究をしているのですが、時 間的に都合がつきやすいということもあり、妻 が子供を迎えて家に戻ってくる前に、洗濯と食 器洗いまではできるように心がけています。正 直に言うとこれはやらざるを得なかったという 状況です。

もう1 つは、妻は精神的な面でかなり負担が 大きいと思います。フルタイムで働きながら育 児もしなければならないので、学会や勉強会、 ドクターの歓送迎会など、息抜きをする時間を できるだけとってあげるよう妻の両親のサポー トも得ながら心がけています。

これは僕の意見ですが、家のことは結構頑張 ってやっているつもりですが、「男性が外で働き 女性は家を守る」という基本的なスタイルはあ ったほうが良いと思っています。その中でもで きるだけサポートをするように心がけています。

○玉寄座長 勇気をもって生のご意見をあり がとうございました。

次に、女性医師の場合、ライフサイクルがい ろいろ変わりますが、ライフサイクルが変わっ ても仕事に対するモチベーションを維持できる ように、またはキャリアアップを続けられるよ うにするために、何か心がけていることがある でしょうか。これまで医者を辞めずにいられた 秘訣について聞いてみましょう。

○安里先生 私は「一旦職を離れ状況に合わ せて、できないことはやらないみたい」な感じ のスタンスでやってきました。少し無理をすれ ば当直とかできたのかもしれませんが、時間に ゆとりのない診察をしていると、患者にも迷惑 をかけてしまうので、そういう意味では、時間 に余裕のあるスタイルを貫かせていただいたと いう形でした。

○玉寄座長 島袋先生は、復帰当初、外来で のお仕事が中心だったようですが、その後、再 び手術もなさっているようで、より厳しい現場 に戻られたといっても良いと思いますが、如何 でしょうか。

○島袋先生 まず、私の場合は結婚後、最 初、専業主婦を数カ月したのですが、その際 に、「私の天職は主婦ではなく医師だ」という ように思い込んだというところからまず始まっ ていると思います。自分は産婦人科医で女医の ニーズは高かったということもあり、「自分が仕 事を続ける必要がある」と、非常にやりがいを 感じて仕事をしていたということがあります。

ただ、当初、産婦人科は常勤医しか勤めては いけないような風潮があり、2 人目を出産した ときには退職も覚悟したというか、「もう仕事 ができないのではないか」と思ったのですが、 非常勤でも勤めても良いという病院がいくつか 現れ、しばらく外来中心の仕事を4 年間ほど行 っていました。次第に外来の仕事に少し物足り なさを感じてきたこともあり、また、それと産 婦人科医が不足している現状もあり、普通と言 うと失礼ですが、「普通の産婦人科医に戻ろう」 と決意しました。

その際に、今現在勤めている病院から、「非 常勤でも良いので是非勤めてほしい。希望を伺 う」とのお話があったので、そちらに転勤し て、勤務を始めました。

以前、仕事していた場所でもあり、医師や看 護師とのコミュニケーションも非常に良くとれ た場所でもありました。とりあえず私のほうと しては、「やってみないとわからない」と考え ていましたし、あと、「やってだめならまた考 えよう」と思っていたので、「自分ができるだ けの努力はする。責任を持てるだけは持とう」 というような気持ちでした。周りの方は見守っ ていてくれたというような感じです。

結局、子供もちょっと大きくなり、将来を考 え始めて、仕事にやりがいを求めていた時期 に、私自身の可能性に関して試そうというよう な気持ちでいてくれた人が周りにいたというこ とが、私にとっては一番良かったことではない かなと思っています。

○玉寄座長 「ライフサイクルに応じて仕事 を継続しながら、さらなるキャリアアップを目 指す」という選択肢があってもいいですし、も しくは「復職して、その後も無理なく仕事を続 ける」というような選択肢、様々な選択肢があ っても良いかと思います。

仕事を続ける側の先生方と、それを受け入れ る側の病院、そして雇用者の先生方が、「互い の多様性を認める」という姿勢が必要になって くるのかもしれないですね。

あとは、島袋先生のお話にもあったように、 病院側から積極的にサポートの内容を提示して いただけたのは、とても大きかったのかもしれ ません。

今回、ご意見は出ませんでしたが、ほかの先 生方の意見を聞きますと、「チーム医療であれ ば無理なく仕事が続けられる」といったご意見 もありますし、あと、中には「復職するまでの ブランクがなるべく短いほうが良いのではない か」というご意見も頂いたことがあります。復 職するまでのブランクが短いと不安も少なくて 良いのですが、ちょっとブランクが長いとどう してもしり込みをされるといった先生方もいる かもしれません。そういった場合には臨床の勘 を取り戻すための再教育の場や、そういう研修 システムの確立が必要かもしれないですね。

では、大久保先生にもお聞きしてみましょ う。仕事を続けられるような環境を整えるには どのようなことが必要だと考えられるでしょう か。女性医師の旦那様としてのご意見以外に も、ぜひ復職を受け入れる現場、同僚医師とし てのご意見も頂けますでしょうか。

○大久保先生 夫としての立場として、仕事 を続けられるようするには、先ほども話たよう に家事等をバックアップしていくことが必要に なると思いますが、家政婦さんを雇う等も1 つ の方法だと思います。長期的にみれば両親の近 くとか、同居をするというのも1 つの方法だと 思っています。

あと、同僚医師としての立場で仕事を続けら れるようにということですが、病院の管理者と の懇談会の話でもあったと思うんですけど、勤 務形態というのはかなり改善してきている面は あると聞いています。しかし、夜間保育やハー ド面は、充実にはまだ時間がかかるということ もお伺いして、お答えになるかどうかは分らな いのですが、一番大事なことは、「病院経営者 や、部長クラスの先生だけじゃなくて、本当に 身近に一緒に仕事をしている先生が、そういう 女性の医師を助けてあげるという理解のあるこ とが一番大事である」と、僕は思います。

あと1 つは、「女性医師がどういうスタイル で仕事をして、どの機会にどれぐらいのものを やりたいというのがあらかじめわかっている」 と、対応がしやすいかなと思っています。

○玉寄座長 時間も限られているので、最後 の質問ですが、今後、医師バンクを設立し、具 体的に運営していく訳ですが、それに対して何 かご意見のある先生はいらっしゃいますか。

○安里先生 「医師バンクがあれば『始めよ う』かなと思っている女医さんたちも動きやす いかな」と思います。私自身も今の職場に就職 するとき、院長先生や事務長さん達と結構やり とりをして、自分の勤務形態を作れた部分もあ るので、バンクのほうにできるだけ情報を集め て、是非積極的にそれを活用していただけた ら、もう少しスムーズに再就職が叶うのかなと 頼もしく思っています。

ワークショップ

参加者は予め割振られた各々のグループで、 問題点(1)病院側に求めること、2)行政や県医師会などに求めること)や改善点(前述を受け て)を話し合い、その対策について活発な意見 交換が行われ、女性医師部会役員が各グループ のファシリテーター役として意見を取り纏めた。

全体討論

全体討論では、各グループがワークショップ でディスカッションした内容から「問題点・要 望・改善策・女性医師が取り組むべきこと」等 について、纏めた意見を発表した。

1 グループ:自分の目的を明確にすることが大 事。専門医をとるのか、お金を稼ぐのか、働き がいのあるシフトを見つけるのかなど、はっき りさせることが大事である。

もう1 つは、子育ての後、復職時の人材バン クの確立が大切であり、加えて、保育施設やベ ビーシッターなどの情報を提供するバンクの確 立が必要である。

2 グループ:働き方について、チームという形 で動く体制の確立を望む。「この先生がいない と出来ない」という体制ではなく、フレキシブ ルに働けるような形態があれば、それが女医さ ん同士ではなくて男性医師であったりとか、い ろんな形で働けると思う。

また、私からの要望としては、いつ何時でも 緊急時に受け入れが可能な保育園を作って頂け たら良いと思います。

3 グループ:基本的に仕事を継続している人ば かりだったんですが、自分の最優先事項を明確 にすることが大切ということになりました。子 供を産んで子育てをしたいという目的のもと に、それに合った仕事を見つけてされている 方、また、経営者としっかり話し合いの上、勤 務形態を形成した方がいました。

また、仕事を覚えなければならない段階で子 供を出産した場合や経済的な面で家政婦さんを 雇うのは難しい場合に、「安くできるベビーシ ッターや経済的な援助等の情報がほしい。斡旋 してほしい」とのことでした。

それから苦しくなる前に、やはり不利な状況 ではありますが、雇用者に思い切って「自分の できること・できないこと、やりたいこと・や りたくないこと」を話してみるのが大事だとい う意見がありました。

それから、自分が抜けてしまった場合に患者 さんに不利益がいかないような体制を目指すた め、3 人シフト制(朝が強い人は朝働く。昼間 保育園で預けられる人は昼働く。夜型という人 は夜働く)の提案がありました。

4 グループ:男性医師が3 人おり、その先生方 の意見として「やはり女医さんがハッピーに働 けるような方策」をこのような場で求めていき たい。それから人手不足で大変であるため、パ ートナーが欲しい。それは男女共に強い要望が 出ていました。

それから、女性医師の子育てをされた先生か ら、同僚先輩の「帰っていいよ」というような 温かい言葉で救われたという意見がありました。

また、今後改善して貰いたい問題点として は、入園待ちの問題や、保育情報の提供があが っていました。

「子供が病気にかかったとき、家に来て見て もらうことがやっぱりベスト、子供のストレス が少ない方策が良い」という意見があり、「金 銭的にベビーシッターを雇う補助制度があれ ば」という意見が出されました。

5 グループ:キーワードとしては、チーム医療 とワークシェアリングの確立があがりました。 どうしても女性が働き続けるためには、「結 婚・妊娠・出産のライフサイクルの中で、多様 なニーズに応えられるような、様々なバリエー ションのある勤務形態を確立することで、みん なが長く仕事を続けられるのではないか」とい う意見が挙がっていました。

あとはチーム医療を行う上で、どうしてもマ ンパワーが不足しているため、出ずっぱりで仕 事を続けなければいけないということがあった んですが、それも様々な勤務形態をつくること で、できるだけ仕事を辞める女医さんをつくら ないようにすることが、マンパワーの確保に繋 がるとの意見が出ました。

そのためにも、男女問わずみんなの意識改 革が必要だという意見になりました。自分た ちの力で制度を変えていこうということになり ました。

6 グループ:子育てなどでブランクのある医師 や研修途中の医師にとって、「そのブランクを 埋められるような、スキルアップのための短期 研修施設等の紹介があれば助かる」という意見 が1 つと、経営者側からも雇うにあたり、「『ど のような条件で働きたいのか』ということを明 確にしてもらうと助かる」という話がありまし た。また、同僚としても非常勤ドクターがいる と助かる病院もたくさんあるので、「そういう ドクターの活用をもっとできるようなバンクの 充実を希望する」という話が挙がりました。

7 グループ:実際に働いていく女性医師の側 が、ヘルパーさんや家政婦さん達を受け入れる ことや任せること、自分たちのほうがもっと心 をオープンするような心の強さを持つことが大 事だという意見が挙がりました。

8 グループ:ちょっと系統立てた意見というの は出ていないんですけれども、偶然女医は全員 既婚者ということで、具体的な家事の乗り切 り方等の話が出まして、一番みんなの興味を 引いたのは、「このベビーシッター代を670 円 から1,000 円の間で設定したら、すごくたくさ んの方が殺到されて選びやすかった」とか、あ とは面接の仕方ですとか、「家政婦センターに 頼むよりもハローワークに出したほうがいい」 ということが、かなり現実的な話題として挙が りました。

あとは、これからお産される方、既に子供を 持っている方、あとは院生に変わられた先生な どのお話もありまして、玉城先生のご結論とし ては先ほどのベビーシッター代もそうなんです けれども、「どんなに困った状況に陥っても医 師の時給を上回るものはなかなかないので辞め てはいけない」という力強いご意見でした。

9 グループ:ハード面では、院内保育、病児保 育、あと授乳室の確保という貴重な意見をいた だきました。私自身は未婚なので、発想がなか ったのですが、確かにこれから女医さんが復帰 するとしたら、授乳室も必要だなと感じまし た。女医専用の当直室を、という意見もありま した。

また、「男性医師、女性医師の区別なく、介 護や育児などの休暇をしっかりとれるような環 境づくりというのが必要じゃないか」というこ とで、現在、医師という立場で、例えば自分の 家族が入院してしまったときは、付き添いがで きないというパターンはとても多いと思うので、そういった労働環境の現状について、私た ちのほうからマスコミを通じて外に発信してい き、環境改善につなげるようにしていけたら良 いと思います。

10 グループ:院内保育所を設けている病院は 増えつつあるのですが、どうしても必要として いるのは病児保育や24 時間保育という意見が あり、現状では院内に設けて欲しいというのが 心情としてあるということでした。

また、女性医師バンクへの要望としては、特 に育児支援について、「病児保育の実施施設や ベビーシッター等の支援情報について、いざと いうときに相談できるようなシステムを作って いただければありがたい」ということでした。 また、依光先生のお母さんから子供は身内がみ るのが一番良いというアドバイスも貰いました。

それから今日は男性医師も参加していますけ ど、琉大の第一外科では、女性医師に広く門戸 を開きたいということで、何を準備したらいい のかを勉強しに今日は参加したという発言があ りました。

また、夫婦が医師で働いている場合に、男性 の医師が自分の女房である医師に何かあった場 合に、代わって家庭のことができるような配慮 を持った姿勢が病院に今求められているのでは ないか。7 割の女医の夫が医師だという現状か らすると、やはりそういう要望も出てくるのか なというふうに考えます。

○司会(玉寄先生) ありがとうございまし た。皆さん感じていらっしゃる問題点や改善 策、自分たちが心がけること、大体一緒だった ようです。

簡単にまとめてみると、病院に求めることに ついて、ハード面は、院内保育以外に病児保育 や夜間保育の設置を求める意見が出ました。 「院内全てに設置されることが望ましい」とい う意見もあると思うのですが、やはり費用の面 や敷地の問題等で必ずしも全ての施設では備え られないのだと思います。そういった時に先ほ ど意見が出ましたベビーシッターやハウスキー パーなどを積極的に利用していくと、院内に全 て備えなくても、ある程度カバーできるかもし れません。

現在、女性医師バンクでは、復職をするにあ たっての情報の配信が主体になっていますが、 「生活をサポートするようなベビーシッターや ハウスキーパー等の情報もバンクとして発信で きるよう模索も必要かな」という印象でした。 あとはソフト面について、病院に求めることに ついては、やはりチーム医療や再研修システム の充実化、多様な勤務形態の確立、あとは「メ ンタル面でのサポートが出来る様なシステムが あれば」といった意見がありました。

女医バンクの活用は幾つか意見が出ているの ですが、管理者の先生方だけではなく、現場の 先生方も含め職場全体、病院全体として共通認 識を持っていただき、できれば温かく迎え入れ る環境づくりに取り組んでいただけたら理想で すね。「復職をする場合に、女性医師が復職し て働く場合に、必ずしも1 日フルで勤務した り、当直業務をこなさなくとも、たとえ外来一 コマだけでも、検査を担当する人数が1 人増え るだけでもやっぱり職場の環境というのはだい ぶ労働の負担が緩和されるということとつなが る」と考えています。そういう意味でもやはり「積極的に1 人でも多くの医師、女性に限らず 場合によっては男性も、医師バンクに登録いた だき、雇用者の先生方にご利用・ご活用いただ くことが重要だ」と感じました。

復職支援の話題になると、「受け入れる側の 現場の先生方にしわ寄せがくる」という声も 聞かれたりするので、そういった時に「復職支 援の方を取り入れるという視点以外に、職場 の環境の負担を少しでも軽減するという意味 でも、医師バンクの活用というのは十分期待 できるのではないか」と思いました。

幾つかご意見が出たんですけれども、是非 ここでこういった意見を受けて、病院長の先 生や行政の先生に、「実際実現が可能かどう か」、あとは「復職支援に取り組んでいらっし ゃる側としての意見」というのを伺いたいと思 うのですが、涌波先生、何かご意見があれば お願いします。

○涌波副部会長 結局のところ、「皆で働き やすい職場づくりをするためには、これは必須 ではないかな」と思います。また、「病院によ って規模も違うだろうし、病院の社会的役割も 異なるため、それに応じてそれぞれの立場で考 えていくしかない」と私は思っています。

それから、「病児保育等も敢えてやらなくと も、それ以外のサポート体制が取れれば良いこ とだし、今できることをどのように解決してい くのかということを、女性医師側も雇用側も、 そして一番大きいのはやはり社会的にも全部の 意識改革かな」というふうに私は思いました。

○司会(玉寄先生) ありがとうございまし た。今日は久米島からも村田先生が参加されて おりますので、是非ご意見いただけたらと思い ます。

○村田先生(久米島病院院長) 今日は2 つ の立場で出席しました。1 つは病院長という立 場で、女性医師をどの様に迎え入れるだろうか という問題。それからもう1 つは、実は私の娘 は自治医大の最終学年で、順調にいくと来年中 部病院のほうで3 年間研修をして、それから離 島に出るということなので、父親としてずっと 心配していました。果たして自分の娘が充実し た女医人生を送れるかという問題で。

それで、この中で意見が出なかったのが、1 つ私の体験ですが、実は私、出身が麻酔科で、 麻酔科は既に20 代、30 代の医師はもう半数が 女性で占めており、麻酔学会自体が非常に女医 の問題を捉えて、学会のあるたびごとに、シン ポジウム等で大きな取り扱いをしています。そ のときに私がちょっと懸念したのは、せっかく 300 人ぐらい集まれる大きな会場で開催したに もかかわらず、そこに出席している人は私みた いな管理者やあるいは、実際に子育てで傷つい てしまった経験のある人だとか、ほんの40、 50 人ぐらいしかいません。片や医療機器の展 示場に行くと、そういう若い女性がいっぱいい て、これは「自分の問題にならないと切実な問 題にならない。これではいけないのではない か」と思います。

是非、そういう女性医師部会でも良いのです が、今男性に関しては医師会の結束率というの は悪くなってきています。逆に、「女性医師は これだけ結束しているのだ」ということをアピ ールし、もっと問題を投げかけるべきではない かと思います。1 人の医師を育てるのにおそら く億単位のお金を使っています。皆ケースバイケースで個人の努力で何とかやっている現状 を、これは国家として無駄じゃないかというこ とを、もっと政府に突き付けるべきだと思いま す。そうすれば、先ほど出ましたけれども、ベ ビーシッターを雇いたくても、それだけ稼いで ない。確かにそうです。子供を産んで育てる若 い時には医者としてキャリアはあまりないです から稼げません。そういうのは、国がきちんと 無利子で何年間かお金を貸してあげる。そうし て医師がキャリアを積めば、10 年後には必ず高 額所得者になるわけですから、そのときに返せ ば良いのだというような制度を国に迫るよう な、そのためにはやっぱり結束率を高くして、 圧力団体として活動するぐらいの気構えがない と、この問題はいつまでたっても個人の慎まし い努力で何とか現状維持をしている。これを何 とか変えるべきじゃないかなというのが私の意 見です。

○司会(銘苅先生) 貴重な意見どうもあり がとうございました。私も同感です。産婦人科 学会でもたくさん女医が増えてきていますの で、そういった問題を若手の医師として集めて 会を開いたのですが、やはり今が苦しい人しか 集まってくれない状況です。喉元過ぎれば熱さ 忘れるで、本当にこれから試練を乗り越えなけ ればならない人たちは今勉強で手いっぱいの状 態で、そういったことをお話できないでいま す。だから、辛い時にはその話題が出るのです が、それが過ぎたらまたそのことはお預けにな ってしまい、結局、それが重なって、こういっ た医師不足や医療崩壊を招いているのだと思い ます。

これは女性医師としてではなく、医師一人と しての責任を持ち、継続して医師を続けていか なければ、日本の医療は崩壊してしまうという 覚悟で、私たちは責任を持ち最後まで医師とし て働かなければならないと考えています。

今、困っている私たちが声を上げ、少しずつ でも何か改善できることを国に言っていければ 良いと考えています。それぞれの立場で、それ ぞれがすごく忙しすぎて、もうその時を過ぎて しまったら「ああ、あのとき大変だったな」と いう問題になりがちであるので、その時期を過 ぎてしまった人たちも、是非こういった会に足 を運んでいただき、今苦しんでいる人に対し、 こういうことを改善してくださいということを 声を大にして言っていただきたいと思います。

もう1 つ、今日はすごくありがたいことに、 マスコミの方も来ていただいていておりますの で、是非、この実情をご理解いただき、患者さ ん側にも理解して貰いたいことは、医師、特に 女医としては自分の家族もありながら、目の前 の患者さんから離れられない実情があり、家族 を犠牲にして、その場の患者さんを救っている という自己犠牲で、今まで成り立ってきている 状況です。患者さん側も、自分の主治医はこの 人しかいないというわけではなく、主治医制は もう医療崩壊に繋がるというような意識改革を していただきたいなと思います。一番言いたか ったのはその点です。

○司会(玉寄先生) 幾つかご意見が出まし たが、実際それぞれの先生方、女性医師の先生 方、またそれを受け入れる側の病院の先生方、 それぞれがマッチングしそうですが、お互いに もやもやしているという中で、やはりそれぞれ の頑張りや立場だけではなく、大きな目で捉え るシステムや制度改革というのもが、今後必要 だと感じました。

本日は、行政の立場の先生も参加されており ますので、お答えしにくい部分もあろうかと思 いますが、是非、崎原先生の方から何かご意見 があれば、お願いします。

○崎原先生(ゆいまーるプロジェクト推進室専 任担当官) 私は、行政マンではありません が、沖縄県の離島医療支援の仕事を県から委託 されている民間の者です。当初から沖縄県女性 医師部会とお付き合いがあり、ここで感じたの は、先ほどのワークショップで話が出たのが、 卒後7 年目で1 年間で胸を張って休めるのが1 週間という状態です。そして、月に10 日間当 直という状態でした。そういう信じられないよ うな勤務体系で、それと似たような形で頑張っておられ、例えば、1 人の先生が子育て、或い はおめでたという時に「おめでとう」と言えな い医療界の環境があること自体がおかしいと思 います。既に、ライフワークバランスが崩れて いて、お互いの同僚に何かあった時に、助けて あげられない、素直に言えない環境がおかし い。これを何とかしなければならないと僕は一 番思っています。こういうことは、恐らく一般 の方は知らないため、声を大にして医療界とし て発信していかなければならないと考えていま す。これまでも例えば小児科医が倒れ、誰もい なくなって初めて住民が立ち上がってくれると いうケースはありましたが、そうなってはいけ ないので、その前に積極的に実情を分って貰う ということが大事だと思います。

○司会(玉寄先生) 本日は、沖縄県福祉保 健部健康増進課のほうから、上原真理子課長が 参加されておりますので、ご意見を賜りたいと 思います。

○上原課長(沖縄県福祉保健部健康増進課課 長) この4月から県に勤務している上原です。

行政側からということでのコメントではな く、今、崎原先生から発言のあった女医に限ら ず、医師というのは当直をすると36 時間勤務 になる、サイボーグでもないのに、労働基準監 督署は一体どうなっているんだろうと、こうい う仕事の仕方を当たり前でずっとやってきたこ とをもうやめなければならないと思います。今、 医師も増やそうという話も出ており、後期研修 も期間を短くしようという動きもありますが、 大元の仕事の仕方が、男性にとっても疲労困憊 であり、家族との時間はない状態で、仕事を強 いられながら、それを当たり前の様に受け止め てきた時代を少し変える時期にきていて、さら に、女性医師がこれだけ増えたからということ を一つの切っ掛けとして、きちっとした労働時 間で家に帰れるような方向に持っていく施策を 厚労省が打ってくれるように政府に皆で言った 方が良いと思います。

○司会(玉寄先生) 貴重な意見ありがとう ございました。

本当に、我々女性医師だけではなく、これを 切っ掛けに医師全体が継続して医療をきちんと し、患者さんに良い医療を提供できるように、 我々の環境を改善する必要があるのではないか と切に思いました。

こういった女性医師部会の非常に限られた人 数でやっていると、病院長等との懇談会で院長 の先生方は「いや、女性のためには一生懸命、 ソフト面、ハード面を整えているのだけど、女 医さんが働かないんだよ」と言われてしまった ので、非常に私としてはショックでした。やは り、今日の意見を伺い、皆さんとても一生懸命 仕事を続けたいと思って、頑張っていらっしゃ るので、その意見をまた病院長等との懇談会な どで、勤務環境の改善のために意見として役立 てていきたいと感じました。

閉 会

沖縄県女性医師部会委員  玉寄真紀

本日は、女性医師のみならず、病院長の先生 方、行政の方、女性医師を奥様にもち、また復 職希望者を受け入れる同僚医師としての立場で ある男性医師の先生、医学生・そして医療関係 者以外の方々と、本当に様々な立場の方々が一 同に会し、活発にご討議頂き非常に画期的で有 意義なフォーラムとなりました。

本日の内容を通じて、「復職並びに女性医師 支援への取り組みは、復職を希望するご本人の キャリアアップのためだけではなく、男女とも に働きやすい職場環境の整備にも繋がる」と感 じました。

県医師会はこれからも県内女性医師の状況把 握や復職における問題点の掘り起こし等を行 い、改善策を見出だし、皆さんの声を働く環境 に届けるべく、県内各医療機関の病院長の先生 方と懇談会を重ねながら、皆様から頂いたご意 見をできる限り実現できるように、引き続き 様々な努力をして参ります。

本日は、遅くまでお付き合い頂き、誠にあり がとうございました。

印象記

玉寄真紀

沖縄県医師会女性医師部会委員
玉寄 真紀

今回の女性医師フォーラムは、「復職支援への取り組みは、男女ともに働きやすい環境整備にも 繋がる。皆で、今一度働く環境を考えてみよう」との趣旨のもと、短時間ながら報告・シンポジ ウム・ワークショップ・全体討論と盛りだくさんの内容で開催させて頂きました。週末ではあり ましたが、多くの皆様にご参加いただいて且つ活発にご討議いただき、会を企画した者の1 人と して改めて心より厚く御礼申し上げます。

仁井田りち先生には「『全国女性医師の勤務環境報告』と『女性医師求人・復職研修支援への個 別聞き取り調査結果報告』」と題し、女性医師が増えている中で充分な内容とは言い難い労働環 境や福利厚生の現状・聞き取り調査により明らかとなった女性医師のご意見などをご報告して頂 きました。女性医師を取り巻く現状や問題点は多くの方々が感じていらっしゃることと思います が、数字や現場からの「生」の声として示して頂くと非常にインパクトがあり、改めて「復職支 援への取組の実現化が急務である」ことを実感致しました。

涌波淳子先生には「『女性医師求人・復職研修支援に関する調査』結果報告」と題し、「復職者 を受け入れることで見えてくるもの」を、様々な観点から具体的にご発表頂きました。それによ り、「『復職したい医師』が居て『復職を受け入れたい病院』があるにもかかわらず、それが上手 くマッチングしていない現状」も浮かび上がり、やはり「その両者がきちんと結びつくようなシ ステム、医師バンクの必要性」が感じられました。

そして、4 名の先生方をお迎えしてのシンポジウムでは、「家電製品やベビーシッターの利用」 といった経験者ならではのサポート内容や、「主婦業・育児でも仕事でも、時間をかけながらも自 分が選びたい道を進んできた」という励まされる内容の経験談もお話し頂きました。それにより、 「サポートの情報提供の必要性」や「『復職する側』および『復職を受け入れる側』の双方が互い の多様性を認めることの重要性」などを感じました。

また「夫としての立場、復職する先生を迎え入れる同僚医師の立場」からも、夫婦ともに医師 として生活を送っている現状を踏まえ様々なご意見を頂きました。それによって、復職する側の 先生が、自分を省みるきっかけとなったり今後の方向性を考えるうえでのアドバイスにもなった のではないかと思います。

ワークショップでは、各10 グループに分かれて「復職するうえでの問題点・その改善策・女性 医師側の自らを省みて成すべきと考えられること」などについて、活発にご討議頂きました。

その内容を全体討論の場で各グループの代表者にご発表頂きました。そこで、必要とされてい るサポートが具体的に把握でき、更にはその内容をもとに管理者の先生方を含め多方面からご意 見を伺えたことは大変有意義でした。

今回のフォーラムは、参加者数が多数だったこともさることながら、女性医師・復職を希望す る医師の他にも男性医師、雇用者や管理者の先生方、医学生、女性医師のご家族・・と本当に 様々な立場の方々にご参加頂けたことで、非常に画期的で有意義なものとなったことと思います。 そして、フォーラム終了後もご参加頂いた多くの方々から反響が寄せられました。それを受け、 「本フォーラムを『イベントの1 つ』として終わらせるだけではなく、『復職支援への取り組みの 確実なスタート』としたい」と、実感致しました。

今後も、少しでも皆様の声を実現化できるよう取り組んで参りますので、何卒宜しくお願い致 します。