沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 8月号

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編集後記

この1 〜 2 年来、高病原性鳥インフルエンザ (H5N1)が何時アウトブレイクするか喧噪され る只中で、今年の4 月、メキシコ発の豚インフ ルエンザ(H1N1)が新型と公式認定され、そ の対応に世界中が困惑しています。新型とはい え、今回の豚インフルエンザは伝染性、かつ病 原性において予想されたパンデミアとは大分様 相が異なり、低病原性であることです。WHO も世界各国からの感染広報告を受け、6 月半ば には遂に最高の警戒水準であるphase 6 への突 入を宣言しているが、何百万人、何千万人もの 死亡が予測されたパンデミアとのギャップに、 国も県も、そして1 番医療現場がその対応・対 策のあり方に戸惑い禁じ得ない状況なのです。 折しも厚労省の現役技官・木村盛世氏が「厚生 労働省崩壊」という著作で深刻な厚労省内部の 問題を指摘しているが、医療現場を殆ど知らな い医系官僚が為す医療政策の珍奇さを、今回の 一連の新型インフルエンザ騒動の中にも垣間見 る思いがします。国からの朝令暮改の施策に振 り回されながら、第一線の現場では日々の悪戦 苦闘が続いているのです。

その様な時局の中で企画された今回のマスコ ミとの懇談会は、福祉保健部より感染症担当官 である糸数公先生をお招きして、県の新型イン フルエンザへの認識と対策・指針について話を して頂いた後、意見交換が行われました。丁 度、兵庫、大阪を中心とした関西方面で新型イ ンフルエンザの集団発生がみられた時期と重な り、国の大々的な水際作戦が取り払われ、国内 の拡大防止へ路線変更が為された時期でもあっ たが、島嶼県である沖縄では依然として水際作 戦に準じた対応策を展開するという微妙な端境 となり、為された論議も今ひとつ焦点が定まら ない印象でありました。

宮城会長からは、第1 回都道府県医師会長協 議会の報告があります。2009 年度の予算を決 する直前の緊迫した状況下で、日医の方針をど のように国策に盛り込んでいくかが議論の中心 であるが、医師確保の問題、救急医療のあり 方、有床診療所の活用、開放病床の運用、介護 報酬の問題等々、重要な案件が討議されていま す。また、勤務医の入会しやすい日医にするた めの模索は、懸案である「医療安全調査委員会 設置法案」の是非と共に、開業医と勤務医が大 同団結できるかどうか、大きな試金石の一つと いえましょう。

6 月14 日に行われた県医学会総会は、一般 演題が126 と相変わらずの盛況で、研修医企画 ミニシンポジウムも斬新な試みでした。また聖 路加国際病院長・福井次矢先生をお招きしての 特別講演は、医療の質の評価として、従来から 言われている構造structure、過程process、結 果outcome の3 要素の中で、ともすれば結果の みが重要視されがちであるが、評価自体が難し い結果よりも、過程の評価であるQ u a l i t y Indicator(QI)の活用を説いています。聖路 加ではすでに100 にも上るQI を作成し、実践 しているとのことであるが、極めて実効性の高 い活動となっているようです。

恒例の「緑陰随筆」は何と22 編の投稿を頂 きました。この一事においても、会員諸氏の本 誌への愛着を強く感じる次第で、広報誌編集部 としても感謝に堪えません。一編、一編が味わ い深い文章であり、一気に掲載したいところで ありますが、編集の都合上、来月9 月号との分 割掲載になることを、平にご容赦ください。

今月はその他にも、稲冨洋明先生の旭日小綬 章受章祝賀会の報告や大城清県立北部病院院長 就任インタビュー等の喜ばしい記事や、仁井田 りち先生の日医会館で開かれた女性医師支援セ ンター・シンポジウムの大事な報告があります。

学術的な記事は、みなみしまクリニック島袋 毅先生の「糖尿病のABCD」に加え、県立南部 医療センター・こども医療センターからの3 編の 投稿となりました。神里尚美先生の「パーキン ソン病治療の新しい展開」、大城一郁先生の「外 来で血小板減少の患者をみたとき…」、そして久 貝忠男先生の「末期重症心不全患者に対する心 臓移植に代わる治療法の展望」であるが、何れ も要領よくまとめられ、明日からの実践的な臨 床の知恵として役立つ素晴らしい仕上がりです。

盛夏の候、本誌を一服の涼風としてお慰みく ださい。

広報担当理事 當銘正彦

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