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第39 回全国学校保健・学校医大会

理事 宮里 善次

去る11 月8 日(土)、10 : 00 より、新潟市 新潟コンベンションセンターにてみだし大会が 開催されたので報告する。

午前の部は、4 分科会が開催され、各県医師 会から応募のあった演題について発表と活発な 質疑応答が行われた。午後は、都道府県医師会 連絡会議・開会式・表彰式が行われた後、シン ポジウム・特別講演が行われた。

「よりよい子どもの健康環境を目指して」を テーマとしたシンポジウムでは、養護教諭・栄 養教諭・保健所長(産婦人科医)・学校医から それぞれ発表があり、フロアからの質問がかな り多く出された。

特別講演は、今年のNHK 大河ドラマである 直江兼続について、「直江兼続と『天地人』」と 題して、居多神社宮司の花ヶ前盛明氏より講演 があった。

参加者は、全国医師会の学校医等学校保健関 係者約600 名でした。

以下は、その概要。

第1 分科会 「からだ・こころ(1)」12 題

1.学校における運動器検診の実施経験とその 意義について(新潟県医師会)

2.学校における運動器検診体制の整備・充実 モデル事業(第3 報)(島根県医師会)

3.小学生駅伝大会主頭上選手の検診結果 (京都府医師会)

4.愛知県医師会学校保健部会学校健診委員会 の歩み(愛知県医師会)

5.新潟県の小・中学校におけるインフルエン ザ流行時の措置と意思決定の実態 (新潟県医師会)

6.非典型百日咳の現状と対応について (神奈川県医師会)

7.秋田県北部における地域内麻しん阻止対策について−学校保健法第12 条適応による出 港停止措置と緊急麻しんワクチン接種効果の 検討−(秋田県医師会)

8.園・学校のため登園・登校基準について改 訂版「意見書」の使い方−(大阪府医師会)

9.地域と学校の連携による子どもの体づく り−総合型地域スポーツクラブによる子ども のスポーツ支援−(新潟県医師会)

10.小学4 年生の肥満の有無別にみた高校生ま での危険因子の追跡研究(和歌山県医師会)

11.メタボ対策は学校保健委員会から(千葉県 医師会)

12.児童生徒の生活習慣病対策−茨城県学校 保健会の試み2)平成14 年より平成 19 年の6 年間の成果(茨城県医師会)

第2 分科会 「からだ・こころ(2)」12 題

1.発達障害を抱える子どもたちへの就学支援 (埼玉県医師会)

2 . 特別支援教育における児童精神科医 (ADHD)の講演の有効性について (三重県医師会)

3.子どもの虐待の心理的後遺症と虐待の一次 予防(徳島県医師会)

4.「新潟県中越沖地震子どものこころのケアチ ーム」に寄せられた相談の精神科診断統計 (新潟県医師会)

5.広島県安佐地区における「健康教室」事業 の報告(広島県医師会)

6.高校生の性に関する意識・行動と性感染症 の実態調査から(奈良県医師会)

7.思春期健康相談に用いるスライド「君たち の生と性を考える」(東京都医師会)

8.学校保健における産婦人科医の役割と重 要性(宮城県医師会)

9.給食の摂食状況から推定する健康状態の 把握(愛知県医師会)

10.仙台市における学校給食アレルギー対応に ついて(宮城県医師会)

11.学校医・学校歯科医による食育活動−完 全米飯給食が日本を救う−(新潟県医師会)

第3 分科会 「耳鼻咽喉科」12 題

1.就学時健診において異常を認めた同一児童 の小学校6 年までのティンパノグラムの変動 (徳島県医師会)

2.耳鼻咽喉科健診で見つかった軽度・中東度 難聴児について(神奈川県医師会)

3.学校健診よりみた鼻副鼻腔炎症性疾患の 疫学(山梨県医師会)

4.学校健診における言語検査の再認識 (徳島県医師会)

5.小中学校における音声言語異常検査の現状 と問題点(第2 報)(北海道医師会)

6.特別支援学校における耳鼻咽喉科健診に関 する問題点(大阪府医師会)

7.浜松氏における政令指定都市移行に伴う耳 鼻科医会の取り組み(静岡県医師会)

8.横浜市における耳鼻咽喉科学校医活動の現 状と問題点−小学校養護教諭に対するアンケ ート調査結果から−(神奈川県医師会)

9.旧新潟市における集団健診方式について (新潟県医師会)

10.学校保健活動に対するアンケート−耳鼻科 学校医の職務に対する意識について− (広島県医師会)

11.宮城県における耳鼻科高位の健診に関する 現状および意識調査(特に、校医報酬、担当 校数の格差について)(宮城県医師会)

12.耳鼻咽喉科学校医の役割(千葉県医師会)

第4 分科会 「眼科」9 題

1.学校眼科医に求められるもの (新潟県医師会)

2.学校における眼外傷の傾向と対策 (大阪府医師会)

3.横浜市での色覚(説明・検査・バリアフリ ー)啓発−考え方と進め方、成果と展望 (神奈川県医師会)

4.学校のおける色覚に関して配慮を要する児 童・生徒への対応状況(広島県医師会)

5.高校生に対するCL のケア指導後の結膜嚢内 細菌の有無についての調査(神奈川県医師会)

6.オルソケラトロジーの問題点 (神奈川県医師会)

7.学童期のロービジョンケア(新潟県医師会)

8.就学時および学校健診で指摘された屈折異 常弱視児の視力予後(新潟県医師会)

9.学校・眼科医・地域ボランティア・教科書 出版社の連携による弱視児童への支援 (愛知県医師会)

都道府県医師会連絡会議

第40 回大会(平成21 年度)の担当都道府県 医師会について協議を行い、協議の結果、広島 県医師会と決定した。

開会式・表彰式

1.開会 新潟県医師会番場道夫副会長より開 会の辞が述べられた。

2.挨拶 新潟県医師会佐々木茂会長より担当 県として挨拶があった

「ご多忙の中、全国の学校医並びに学校 保健関係者がお集まりいただき、誠に感謝 申しあげます。今大会のメインテーマは 『みつめよう子どもの健康と未来』としま した。学校保健環境を取り巻く環境は多く の課題があり、どれも慎重かつ的確な対応 が求められております。本日は、午前中 は、分科会を、午後から「よりよい子ども の健康環境をめざして」をテーマにシンポ ジウムを開催し、養護教諭、栄養教諭、産 婦人科医師の立場からのご意見をいただく とともに、新潟県の学校医の現状について のアンケート調査を発表させていただきま す。今大会が、ご参加の皆様方のご協力に より、実り多いものとなりますよう祈念い たします。」

続いて、日本医師会唐澤人会長から主 催者挨拶があった。

「本日ご参集の皆様方におかれまして も、地域医療の一環としての学校医活動の 重要性を再認識していただき、児童生徒の 健康管理の充実のために、なお一層ご活躍 させるようご期待申しあげます。・・」

3.表彰 学校医10 名・養護教諭9 名・学校関 係栄養士8 名に、日本医師会唐澤会長より表 彰状が手渡された。

4.謝辞 受賞者を代表して、新潟県医師会学 校医廣川宏氏からお礼の言葉が述べられた。

5.祝辞 文部科学大臣・新潟県知事・新潟市 長・日本学校保健会会長・新潟県教育委員 会教育長より祝辞をいただいた。

シンポジウム

テーマ「よりよい子どもの健康環境を目指して」

1.「学校医と取り組む学校保健活動」
〜新潟市立東中野山小学校の取組〜
新潟市立亀田西小学校養護教諭 田中和子

生活習慣に関わることを中心に学校医から具 体的なアドバイスをもらい、学校保健活動を実 施した。学校医と連携して行った事業は、1)健 康診断・健康相談2)学校保健委員会で専門家 としてのアドバイス・講演3)感染症集団発生時 の対応指示4)健康教育への参画(禁煙教育)5) 学校教職員研修への参加(特別支援教育・性教 育への助言)等。

また、生活習慣に関わる指導(保健指導・健 康調べ・すいみんカード・生活習慣だよりの発 行)、学校医・学校歯科医、学校薬剤師による 健康教育(禁煙教育・むし歯や歯周病予防教 育・薬物乱用防止教育)等を行った。

2.「子どもの食生活状況と栄養教諭のかかわり」
新潟市立小須戸小学校栄養教諭 曽根有佳里

新潟県では、19 年度から栄養教諭が行政に2 名配置され、20 年度には小・中・特別支援学 校に30 名配置され、新たな一歩を歩み始めた ところである。朝食欠食と食事内容の問題、偏 食の問題、朝食摂取と学力の関係、栄養バラン スと学力の関係等が浮き彫りにされた現状を踏 まえ、昨年度までの学校栄養職員として給食管 理に努めると共に、学校における食育指導にも 関わってきた。現在は、学年に応じた食育指導 の内容を設定し、6 年間を見通した指導になるよう努めている。また、子どもだけでなく保護 者にも理解していただくために、試食会・参観 日を活用しての食育指導等を行っている。「早 寝、早起き、朝ごはん」をより浸透させるた め、保護者や地域には「早く寝かせましょう、 早く起こしましょう、朝ごはんを一緒に食べま しょう」をキャッチフレーズに呼びかけを強化 し、学校・家庭・地域で協力し、正しい「食」 を選択する力を持ち、諸外を健康で過ごせる子 ども、親、地域の育成に力を注ぎたい。

3.「産婦人科から見た思春期の心と身体」
新潟県村上地域振興局健康福祉部医監
(村上保健所長) 佐々木綾子

1)公衆衛生に目を向けさせるきっかけ

産婦人科医として23 年間病院に勤務した 後、7 年前から公衆衛生医として保健所長の 仕事をしている。勤務医時代に思春期外来を 週1 回行い、主に、中高校生を診察してきた が、近年の性感染症の広がりや人工妊娠中絶 の増加は目をおおうばかりの現状であった。 若者のあまりの無知・無防備さに愕然とし、 このままではいけないという憤りの気持ちか ら、公衆衛生に目を向けさせるきっかけとな った。

2)若者の性行動は、低年齢化・活発化してお り、性行為のハードルが低くなっている。

3)思春期をめぐる現状。

4)摂食障害(過食症・拒食症)から見えてくる 思春期の心

5)子宮頸がんは20 歳代の若年層で増加〜 HPV 感染が原因

6)まとめ:学校保健と産婦人科

・初交年齢の低年齢化や若者の性活動の活発 化は急速に進んでいるが、避妊や性感染症 の知識は不足しており、無防備なネットワ ークを形成している。そのため、10 代の人 工妊娠中絶実施率は依然として高い。

・若者の多くは、性の情報や知識を雑誌・イ ンターネットなどから得ており、必ずしも 正確ではない。正確な知識は子どもたちの 心と身体を守り、流行に流されることなく 自分の頭で考え、生き方を決定する力の源 である。

・子どもたちへの性の指導は、家庭・学校・ 地域で役割分担をしながら、年齢に適した 内容で、繰り返し積極的に実施する必要が ある。心と身体の両面から、生涯にわたる 性の健康を国民全体で考えていく時代が来 ている。

・学歴重視・格差社会そして課程の教育力低 下のなかで、子どもたちは昔とは異なる厳 しいストレスにさらされ、さまざまな問題 行動としてSOS を出している。ただ嘆いた り、しかりつけるだけでなく、学校への行 きづらさの原因を知り理解しようとする努 力と、見守り続ける姿勢が求められている。

4.「新潟県における学校医活動の現状」(アンケート調査より)
新潟県医師会理事・学校保健部長 石田央

新潟県医師会会員で学校医として携わる医師 の実態や現状を調査して今後の学校医活動に役 立てることを目的としてアンケートを実施した。 調査内容は、学校医の役割(1)保健管理医2)学 校保健の指示者・助言者3)こころの健康4)特別 非常勤講師5)教職員の健康管理医としての役 割)及び学校医と学校の連携についてである。 調査結果を纏めると次のとおりである。

1)学校と学校医の関係は概ね良好である。

2)学校医の年齢は、50 代、40 代、60 代が全体 の74 %であった。

3)専門科別には、内科・小児科・耳鼻咽喉科・ 眼科で84 %を占めていた。

4)学校医の殆どが、特別に注意している疾患が あった。

5)それらの疾患は、アレルギー疾患、生活習慣 病、メンタルヘルス等であった。

6)新潟県の学校保健委員会等の設置は、全国平 均に達していなかった。

7)児童・生徒と職員の健康管理医が同一者でな い比率が予想以上に高かった。

各シンポジストからの発表の後、フロアとの 活発なディスカッションがあった。

特別講演

「直江兼続と『天地人』」と題して、居多神 社宮司の花ヶ前盛明氏より講演があった。

次期担当都道府県医師会長挨拶

広島県医師会高杉敬久副会長より、「先程開 催された都道府県医師会連絡協議会で、次期第 40 回大会の担当は、広島県医師会と決定いた だいた。平成21 年11 月14 日(土)リーガロ イヤル広島にて開催するので、多くの学校医の 先生方のご来県をお待ちしています」との挨拶 があった。

閉 会

新潟県医師会渡部透副会長より、閉会の辞が 述べられ閉会となった。

閉会後、懇親会が盛大に開催された。

印象記

宮里善次

理事 宮里 善次

平成20 年11 月8 日、新潟県朱鷺メッセの新潟コンベンションセンターにおいて『第39 回全国 学校保健・学校医大会』が行われた。

「みつめよう子どもの健康と未来」をメインテーマに、全国から625 人の参加があった。

午前中は4 つの分科会に分かれて、合計44 演題が発表されたが、私は第一分科会の『からだ・ こころ(1)』の12 演題を集中的に拝聴した。

内科検診を中心とした感染症、心臓、腎臓、生活習慣病に加えて、今回は2 演題の運動器検診 に関する発表に注目した。

新潟県医師会の発表は『学校における運動器検診の実施経験とその意義について』と題し、小 学生905 名、中学生478 名から得られた事前アンケート調査から、有症状の生徒(小学生)に対 して整形外科医が二次診察を行った事例である。最終的に三次検診で異常ありと診断された症例 は小学生で19 名(2 %)、中学生で15 名(3 %)いたことが報告されていた。

また島根県医師会から運動検診に関する第三報が発表されたが、検診の標準化をめざして、診 察の仕方がビデオ作成されていた。

従来の内科検診から一歩踏み込んだ形で、整形外科医が専門性をいかして、学校保健に関わる かと云う点で、新たな展開を感じた発表であった。

午後は「よりよい子どもの健康環境をめざして」をテーマにしたシンポジウムと郷土史家による 特別講演“直江兼続と「天地人」”が行われた。

ケネディ大統領が日本の記者団に「日本で一番尊敬する人物は上杉鷹山(米沢藩9 代目主君)」 と答えたと云われるが、上杉が師と仰いだ人物が上杉景勝の家老直江兼続であったと云う。

上杉家が山形の米沢藩に藩替えをされ、百二十万石からわずか30 万石に禄高を減らされた時、 財政立て直しに尽力したのが直江兼続であった。

彼は藩のグランドデザインを作り上げ、新田開発、水利事業、商工業の振興、農作物の栽培症 例、鉱山の採掘など殖産興業に尽力し、見事に藩を立て直したのである。

その企画力と判断、実行手腕は現代にも通じるものであることを痛感した。