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年頭所感

宮城信雄

会長 宮城 信雄

平成21 年の新春を迎えるに当たり、会員の 皆様に謹んで新年のお慶びを申し上げます。

昨年はアメリカのサブプライムローンに端を発 した金融経済危機が世界を襲い100 年に一度と いう大不況が日本にも覆いかぶさってきておりま す。総理がリーダーシップ発揮できず有効な対策 を打てないまま政局は迷走を続けています。

昨年4 月から施行された後期高齢者医療制度 は年金問題もからんで国民から大きな不興をか いました。医療を年齢で区別するのは問題であ るとの指摘もありますが、日本医師会が当初か ら主張していたように保険ではなく保障との考 えをもとに制度を作りかえる必要があります。 公費を9 割投与し、自己負担は保険料を含めて 1 割にすべきです。受けられる医療サービスは 当然年齢によって区別すべきではありません。 医療費抑制策は医療費が増えると国が滅びると の医療費亡国論からスタートしておりますが、 欧米を見ても社会保障費にお金を懸けている国 で滅びた国はありませんし、国際競争力も高い レベルを保っております。

社会保障費の自然増を5 年間で1.1 兆円削減 するつまり年間2,200 億円の機械的削減は2006 年から実行されてきました。しかし医師不足、 偏在等からくる医療崩壊の現状から麻生総理も ようやく2,200 億円の圧縮は限界にきていると の認識を示し抑制の見直しを示唆するようにな ってはきたものの残念ながらまだ撤廃すると断 言はしておりません。医療費を抑制し続けた結 果日本という国はOECD 加盟30 カ国中GDP 費に占める医療費は27 位にまで転落してしま いました。日本より下には韓国、メキシコ、ト ルコしかいなくなりました。

医師不足との認識を内閣として漸く認め養成 数を過去最大まで増やすことを決めました。全 国で約700 名の増になります。琉球大学も地方 枠2 名に加え地域特別枠を5 名増やし計7 名増 すとの決定をしております。しかし彼らが一人 前になるには10 年はかかると思われます。欧 米先進国並みの人口1,000 人あたり3 名まで医 師を増やすには10 万人程度増やす必要があり ます。年間700 人増では焼け石に水です。何年 たっても欧米に追い付くことはないでしょう。 医療費を欧米先進国並みに引き上げずに医師数 だけを増やすと将来大きな問題に発展すると思 われます。

社会保障は平時の安全保障です。社会保障費 の大幅増を実現させるためにも国の政策を大き く変換させる必要があります。財源確保が問題 になります。特別会計の無駄を省くことは勿論 ですが、それだけでは恒久に社会保障に回せる 財源は確保出来ないでしょう。消費税を含めた 税の在り方を抜本的に見直す必要があります。 今年は必ず総選挙があります。社会保障を重視 し、そのための財源確保を担保しているかどう かが判断の材料の一つになるものと思われます。

医療界には「医療安全調査委員会設置法」 「新臨床研修制度見直し」「総合医」等解決しな ければならない多くの問題を抱えておりますが 皆様方の知恵をお借りしながら提言してまいり ます。

長年の懸案事項でありました、沖縄県医師会 館も皆様方のおかげを持ちまして無事完成し昨 年11 月25 日より新会館で業務を開始しており ます。会員の拠り所ともなり、学会活動や医師 会活動が今まで以上に活発になるものと期待を しております。

平成21 年丑年が会員の皆様にとりまして明 るい希望に満ちた一年になりますように祈念し て年頭のご挨拶と致します。

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