沖縄県医師会女性医師部会長
依光 たみ枝
女性医師部会では、去る10 月4 日(土)ホテ ルロイヤルオリオン(旭の間)に於いて、日本 医師会医師再就業支援事業マネジャーの保坂シ ゲリ先生をお招きして、「女性医師支援の流れ と私達の取り組み」と題した講演を開催した。
保坂先生は、日本医師会男女共同参画委員会 委員長、女性医師バンク東日本センターコーデ ィネーター等を歴任され、女性医師の活動に大 変精力的に取り組んでおられる先生で、男女共 同参画社会の実現や女性医師の積極的参加によ る医師会活動の活性化等、最新の動向を知る良 い機会となったので、フォーラムの概要につい て報告する。
挨拶・活動報告
女性医師部会を代表して私から部会における 活動報告を行った。
「今日は土曜日ということもあり、40 人ぐ らいの参加人数ということですが、講演会を優 先してお集まりいただき、本当にありがとうご ざいます。
沖縄県の女性医師部会が発足しましたのが、 ちょうど1 年前です。ということで始めに、沖 縄県医師会女性医師部会の活動報告をしたいと 思います。
去年の8 月21 日に正式に女性医師部会が発 足をいたしました。女性医師部会の委員は9 人 です。県医師会の理事の宮里先生、玉城副会長 のお二方が参加してくれまして、11 人で動い ております。
活動の内容としましては、平成19 年度は役 員会を3 回開催しました。女性医師が家庭と仕事を両立できるよう、勤務環境の整備について 意見交換を行いました。
手始めに女性医師の現状を把握しようという ことで、女性医師名簿の登録を促して情報提供 の場としてメーリングリストを立ち上げました。
去年10 月20 日に第1 回の沖縄県の女性医師 フォーラムを開催し「これからの女性医師の役 割、そして女性医療と漢方」と題して千葉県立 東金病院の天野恵子先生にご講演をいただき、 隣の部屋に託児所を設置しました。
講演終了後の懇親会には、100 人程の参加者 で大いに盛り上がりました。
平成20 年度の事業計画としましては、役員 会を3 回から4 回開催を予定してます。去った 9 月10 日、女性医師の勤務環境整備に関する病 院長等との懇親会を行いました。40 人程度の 参加者がありました。そして、本日、女性医師 フォーラム2 回目の開催の運びとなりました。」
講 演
司会(銘苅委員):それでは、これより「女性医 師支援の流れと私達の取り組み」と題しまして、 日本医師会医師再就業支援事業マネージャー保 坂シゲリ先生に講演をいただきたいと思います。
本日の座長は委員であります、北部地区医師 会の松本美幸先生が務めます。それでは、松本 先生よろしくお願いします。
松本座長:座長を仰せつかりました北部地区医 師会病院の松本と申します。よろしくお願いい たします。
恒例によりまして、保坂先生のご略歴を紹介 させていただきます。
保坂シゲリ先生は、昭和49 年に東京医科歯 科大学医学部をご卒業の後、小児科に入局さ れ、医学部附属病院、同愛記念病院、土浦協同 病院、国立病院医療センター小児科をご勤務さ れました。
昭和59 年からは、こどもクリニック若葉台 を開設されて現在に至っておられます。
横浜市医師会常任理事、日本医師会女性会 員懇談会委員長、男女共同参画委員会委員長、 医師再就業支援事業運営委員会副委員長、女 性医師バンク再就業支援事業部長を歴任されま した。現在は女性医師バンクコーディネータ ー、医師再就業支援事業マネージャー、日本小 児科学会代議員をなさっておられます。
本日は「女性医師支援の流れと私達の取り組 み」ということで、お話していただきます。
では、先生、よろしくお願いいたします。
ただいまご紹介いただきました保坂でござい ます。
本日はこのようにお話しさせていただく機会を いただきまして、本当にありがとうございます。
お話の内容はあちこちに飛んで、ばらばらな 話になってしまうかもしれませんが、私の言い たいことの意を酌んでいただくようにぜひよろ しくお願いします。
それでは、話を始めさせていただきます。
きょうの演題の題は、「女性医師支援の流れ と私達の取り組み」ということで、少し皆さん の参考になるかなと思うことをお話しさせてい ただきます。
まず、国の女性医師支援の流れのお話をさせ ていただきまして、それからそれにかかわる私た ちの働きかけがどういう形でやってきたかという ことのお話、それから、ただいまご紹介いただいています医師再就業支援事業というのがどうい うことなのか、どういうふうにやっているのかと いうことのお話をさせていただいて、それから当 然皆様知っていらっしゃることが多いと思うん ですけれども、知っておきたい法律、女性医師 の働くことに助けになる法律と補助制度につい て、ちょっと触れさせていただきまして、最後に 私が本日申し上げたかったことということで閉 めくくらせていただきたいと思います。
T.国の女性医師の流れ
まず、国の女性医師支援の流れでございます けれども、女性医師数の推移はもう皆様方ご存 知のように右肩上がりにあがってきておりま す。平成4 年が11.9 %だったものが平成18 年 で17.2 %と、本当に爆発的に増えているとい うことは、どなたも気づいておられることだと 思います。
国家試験の合格者の男女比でございますけれ ども、当然これもずっとこの10 年ほど30 %台 で、本当はもっと右肩上がりに40 %を超えて いくんじゃないだろうかというふうに予測され ていた部分があるんですが、女子学生の入学を 抑えるということをできる限り皆さんやってい らっしゃるようで、女子学生の数がそれほど爆 発的に割合が増えていかないというところで、 何とか3 分の1 という線でここのところいって いるようでございます。
これから先も急に増えるということは、女性 医師だと役に立たないんじゃないかというふう なことを言っている人が今でもいまして、爆発 的に増えるということはおそらくないと思いま すが、3 分の1 を下回るということは、もうこ れから先、あり得ないだろうという前提で皆様 考えられたほうがいいと思います。
最初に女性医師のことについて、国の政策の 中に女性医師という言葉が出てきたのが、「新 しい少子化対策について」という平成18 年度 9 月の「少子化対策会議」という内閣府の会議 で出てきたものでございます。
この中で産科医療と小児科医療が少子化対策 に絶対必要だということがありましたので、そ こで初めて地域における産科医療機能云々とい うところに出てきて、「女性医師等の仕事と育 児の両立支援や再就職支援等に努める」という 言葉が出てきております。
小児医療のところでもやはり同じように、小 児科医の確保に努めるということの中に、「女 性医師の仕事と育児の両立支援や再就職支援等 に努める」という言葉が出てきております。
こういうものは、ぽっと出てきているようで すけれども、非常に大事で国の文書として書か れたものに出てくるということが、後々非常に 役に立つということの、まず最初の一歩でござ います。
このとき皆様、評価してい るか、していないかは別にい たしまして、小泉政権のとき のサプライズで出てきた猪口 さんが少子化男女共同参画担 当大臣でございましたが、そ のときの政策で、この文書を もって日本医師会の会長あて にそのときの局長が医師会に 来ております。社会のあらゆ る分野において、2020 年まで に指導的地位に女性が占める 割合が少なくとも30 %程度になるように期待し、各分野においてそれぞれ 目標数値と達成期限を定めた自主的な取り組み が進められることを奨励するということが、少 子化担当大臣のほうからこういうことなのでよ ろしくお願いしますという文書で来ております。
それから次に、平成18 年8 月31 日に「地域 医療に関する関係省庁連絡会議」というのがご ざいまして、そこでできた文書でございますけ れども、その中に新医師確保総合対策の中で、 緊急に取り組むべき課題といたしまして、人材 の有効活用のところの部で、「出産・育児等に 対応した女性医師の多様な就業の支援」という ことが、やはり文章として出てきております。
院内保育所の件もここで初めて、医師の子弟 について院内保育所を利用させるようということ を非常に強く打ち出しております。それからもう 1 つ、女性医師の勤務環境を 改善することで、女性の育児 と仕事の両立を支援するとい うことを病院事業者等に啓発 普及を行うと、関係省庁が言 っていたんですが、実際には 具体的に何もしない状態であ りました。
また、ここで初めて女性医 師バンクというのが出てきま すけれども、「女性医師バン クの委託事業について実施主 体となる公的団体に運営を委 託し、できるだけ速やかに女 性医師バンク(仮称)を創設することにより事 業の適切な運用を図る」ということで、実施主 体となる公的団体というのが日本医師会でござ います。その前に様々な話があったんですけれ ども、とにかく日本医師会でやってもらおうと いうことになったようでございます。
次に出てきましたのが、「医師に対する出 産・育児等と診療の両立の支援について」とい うことで、厚生労働省医政局と、雇用均等・児 童家庭局が通知を出したものでございます。女 性が増えているし、女性医師が出産・育児等に 伴っていったん離職せざるを得ないことが多 く、とにかく女性医師の確保が今後の医療にと って大事であるということの視点で、様々な支 援策の周知、呼びかけを都道府医師会・県知事 宛に通知したものでございます。
この中に先ほどの院内保育所に今まで医師 は入れない、看護職にだけ限定してやっていた 院内保育所の利用対象者に医師も加えなさい ということとか、それから入所可能の枠を有効 に使いなさいとか、それを勤務する医師にきち っと言ってくださいというようなことを言って います。
それからもう1 つ、国家公務員と地方公務員 の短時間勤務制度について〔国家公務員の育児 休業等に関する法律の一部を改正する法律案に ついて〕でございますけれども、人事院の意見 といたしまして、最初に平成18 年8 月に育児 のための短時間勤務の導入ということが考えら れました。先ほどの話にも出てきた、第2 次男 女共同参画基本計画の中で、 平成17 年の話ですけれども、 育児のための短時間勤務を導 入しようという話が出てきて おりまして、それについて国 家公務員と地方公務員もやら なければいけないだろうとい うことで出てきた法律でござ います。それが平成19 年4 月12 日に衆議院で可決、5 月に参議院で可決されており まして、5 月16 日に公布さ れまして、もうすでに施行さ れております。
その内容でございますけれども、育児のため の短時間勤務ということで、小学校に入るまでの子供を養育する常勤職員について週に20 時間 とか、週25 時間とか様々な勤務のパターンの中 から選択ができると。そのときに給料は勤務時 間に応じた額であるけれども、ほかのもの、住居 手当てとか退職金の換算とか、それからあとは 地位が向上するかどうかについての判定基準と か、そういうことには、この短時間勤務を取っ たということがマイナスにならないようにという ことでやりましょうということでございます。
地方公務員についても同じように、平成19 年の8 月1 日からすでに施行されております。 ですから国立病院においても県立病院において も、本来は短時間勤務制度というのが適用され ることにはなっております。
続きまして、今度は平成19 年度になりまし て、また医師が不足だということで緊急医師確 保対策についてということで、また政府与党が いろんことを言っておりますけれども、その中 で3 番に書いてありますように、女性医師等の 働きやすい職場環境の整備ということが一番緊 急医師確保対策の中で大事なことであるという ことで、女性医師バンクというものに対する期 待が非常に高まっておりました。国会答弁など でも厚生労働省大臣はもちろんのこと、総理大 臣まで医師確保対策に女性医師バンクをつくっ て取り組んでいるというようなことを言うぐらい、かなり女性医師の勤務支援ということが国 の施策として出てきております。
本年度(平成20 年)でございますけれども、 4 月に内閣府の男女共同参画推進本部が、女性 の参画加速プログラムというのをつくっている んですけれども、その中で活躍が期待されなが ら女性の参画が進んでいな い分野についての重点的取 り組みのトップの職業に女性 医師を挙げて、女性医師に ついて重点的に取り組もう というふうに言っておりま す。実際の取り組みの内容 は別にして、とにかくこのよ うに文書を書いているという ことだけでも非常に画期的 なことだと思います。そこの 中で勤務体制の見直しとか、 継続就業支援とか、復帰支 援、意思決定の場への女性 の登用促進等々ということがございます。
先ほど沖縄県医師会で医師会活動に女性をも っと参画させるというのが目標であるというふ うにお話が出てまいりましたけれども、意思決 定の場に女性の登用が促進されるためには、現 在、主に中心的なことを担っている男性の考え ももちろん非常に大事でございますけれども、 参画する女性のほうもかなり大きな犠牲を払っ て積極的にやらないとこれ は進まないと。すべての分野 でそうであり、医療の分野 でも、それから医師会の分 野でもそうだというふうに思 っております。
厚生労働省のほうは、舛 添大臣の私的諮問機関であ りますけれども、「安心と希 望の医療確保ビジョン」と いうのが平成20 年の6 月に 出ているんですけれども、そ の中でもやはり女性医師の ことが出てきまして、医師 の勤務環境の改善の中で女 性医師の離職防止・復職支援というのが非常に 大事であると。医療分野が男女共同参画のモデ ルとなるよう早急に対策を進めるというふうに 書き込んであります。
診療報酬のことでございますけれども、本年 度の20 年の4 月に改定されました診療報酬の 中で、入院基本料等加算の施設基準の中で、 「医師事務作業補助体制加算に関する施設基準」 というのと、「ハイリスク分娩管理加算に関す る施設基準」というところに、短時間正規雇用の医師の活用というのがとられているというこ とが1 つの施設基準の算定要件として初めて出 てきております。これも後ほど言いますけれど も、これも黙って出てきたことではないもので ございまして、非常に残念だったのは、今回の 診療報酬の改定のときに小児入院管理加算とい う、小児科関係の病院の先生はご存知かもしれ ませんけれども、今まで1 から4 まであったの が、1 から5 までになったのかな。それに常勤 医が何人以上いる施設はこれがカウントできる という項目があって、非常勤の医師を常勤換算 するときにどういうふうにするかということが 非常に厳しい、非常勤といっても常勤的非常勤 じゃないとカウントされないような基準になっ ているんですね。それをぜひやめてくれと。短 時間勤務正規職員制度のことがああいうふうに 言われているのに、ですから週20 時間でも十 分換算するべきなのに、それが20 時間ではな くて確か28 時間とかだったと思うんですけれ ども、それを変えてくださいということを相当 言ったんですけれども、ちょっと私たちの力不 足で、それは結局お金に直接関係があることな ものですから、算定基準を甘くすると算定する 病院がたくさん出ると、診療報酬をいっぱい払 わなければならないということで、それについ ては残念ながら時間切れで認められませんでし た。次回の改定のときは絶対にそれをやってい ただこうと思っております。
次に、来年度の予算の概算要求の現在わかっ ている部分でございますけれども、女性医師の 支援の関連の部分について、文部科学省は相当 熱心にやっています。文部科学省のところでや っているところは、高等教育局の医学教育課と いうところが関与しているんですけれども、そ こで大学病院の短時間正規雇用制度の採用への 補助ということを予算で組んでいます。それか ら、大学病院、特に小児科、産婦人科の女性医 師の復帰に際しての人件費補助という、復帰の ときにダブルで人を置かなければいけないとい うことに対しての補助だと思うんですけれど も、そういうことも考えております。
厚生労働省のほうは
というこのぐらいの項目を挙げています。
U.私たちの働きかけ
今までは国がどういうふうに施策をとろうと してきたかというお話をさせていただきましたけ れども、それに対しては一体私たちは何をして きたかということをお話しさせていただきます。
まず、日本医師会というところには今でも女 性役員は1 人もいません。その中でちょっと前 に、坪井先生が会長だったときに、一時女性役 員がいたり、あるいは女性の話す委員会みたい なものがあったりしたんですけれども、それが 一時なくなっていたというところで、平成16 年度に大阪の植松会長が会長になられたとき に、とにかくそういうものをつくって下さいと いうことをお願いしまして、「女性会員懇談会」 というのが日本医師会の会内委員会としてでき ました。そこで女性医師に巡る諸問題につい て、勉強しながら検討してまいりました。その 中で実現したことは臨床研修期間中に産休をと るというか、子供を産むということは全く制度 を決めた人たちは考えていなかったんですけれ ども、実際問題出てきまして、それをどうする んだということで、これについては要望を出し まして実現しております。
それから、次に16、17 年度は「女性会員懇談 会」と非常にやさしい名前なんですけれども、 私たちとしては不満であったので、この懇談会 の名前を「男女共同参画委員会」というふうに してくださいということをお願いしまして、女 だけが女のことについて集まって考えるのはおかしいんじゃないかということで、この沖縄の 女性部会も玉城先生ともうお一方が委員に入っ てくださっていますけれども、やはり男性も一 緒に取り組んでいただかないと話にならないと いうことで、男性の委員も入れていただいて 「男女共同参画委員会」というふうに名称も変え まして、諸問題を検討しておりました。様々な 要望を出しまして実現しております。
1 つ目は、今日もこちらの会場には託児所が 設けられておりまして、たくさんのお子さんの お母さんたちも参加されて、お子さんも託児室 で参加していただいているということでござい ますけれども、日本医師会が行う研修会並びに ほかの団体が日本医師会会館で行う研修会等の 開催に際しては、ぜひ託児室を整備してくださ いということを会長あてにお願いしています。
先ごろ、福岡で「第4 回男女共同参画フォー ラム」というのが開かれたんですけれども、第1 回の男女共同参画フォーラムが開かれたときに、 初めて日本医師会会館の中に託児室ができまし た。それをもっと世の中全体に広げてください ということで、要望書を書いてお渡ししました ところ、会長も快くそのことを受け止めてくだ さいまして、平成19 年度では日本医師会の事業 計画の中に、日本医師会が行う研修会等の開催 に際しては、託児室を併設するということがは っきりうたわれておりまして、その後は必ず託 児室の希望がある人は言ってくださいというこ とをご案内に入れまして、1 人でも希望者がいれ ば託児室を設けるということになっております。
ついでに申し上げますと、最初に第1 回の男 女共同参画フォーラムが開かれたときは、どこ に託児室を設けるかということで、余っている 部屋で、あまり環境のよくない部屋を与えられ たのですが、今は日本医師会会館は6 階建てな んですけれども、6 階に昔は偉い人しか絶対に 入れなかった懇談室というのと、それに和室が 付いているんですけれどもすごく立派な部屋 で、先日ちょっとそこを覗いてきましたらば、 会館ができたときに沖縄県医師会から、寄贈さ れたすごく立派な沖縄の塗物がございました。 すごく立派な十段ぐらい大きな重箱みたいな、 台みたいなものが付いているのが床の間に飾っ てありましたけれども、その部屋を今は託児室 をやるときは使わせてもらっているということ で、時代の変遷を感じます。
このときに都道府県医師会にも託児室を設置 して下さいということを、当時の担当常任理事 だった羽生田先生の名前で各都道府県医師会に お願いしていただいています。
それに併せまして、いろんな製薬会社等が学 術講演会等を各地で開催されると思うんですけ れども、そのときにもぜひ託児室をつくってね ということを会長名で製薬団体連合会のほうに お願いしています。具体的にこれが実現してい るかどうかについては、申しわけないんですけ どフォローアップしていませんので、やってく れているところもあるかもしれません。それか ら、先生方がそういうのがあるときに、製薬会 社の人に「託児室もつくってね」と一言いって くださると、「実はこういうものも出ているのよ」 というふうに言ってくださると、結構やってい ただけるのかなというふうに思っております。
続きまして、日本医療機能評価機構が医療機 能評価をやっているわけですけれども、そこに ゆとりある勤務体制、子育てしながら勤務でき る支援体制、それから休業後の再就業を支援す る体制について、機能評価の項目に加えてくだ さいということを会長あてに、勤務医委員会と いうのが日医にあるんですけど、それと男女共 同参画委員会と合同でお願いしましたところ、 会長名で医療機能評価機構のほうに要望を出し ていただいています。
そうしましたところ、21 年の7 月から開始予 定の評価の方法の中に、こちらから要望したゆ とりある勤務体制について、それから、子育て しながら勤務できる支援体制について、それか ら休業後に再就業を支援する体制についてそれ ぞれ評価項目に入れますということの返事をい ただいております。
日付は大体、平成19 年の初めだったと思うん ですけれども、先ほどお出ししました都道府県知事あてに医政局長と雇用均等・児童家庭局長 の名前でいろいろお出ししたという文書を出し ましたけれども、都道府県は国立病院やナショ ナルセンターに直接あまり関与しないものです から、そこに直接厚生労働省から言って下さい ということ。それからもう1 つは、正職員の短 時間勤務制度、このときはまだ導入されていま せんでしたけれども、それをとにかく早急に導 入してくださいということと、もう1 つはこれ は実は実現していないんですが、教職員に設け られているのと同様な産休・育児の代替要員に ついて制度化してくださいということをお願い してくださいということを会長あてにお願いし たんですね。そうしましたところ、これは1 番 と2 番については実際に取り組んでいますとい うことで、厚生労働省等が説明に来まして、実 際に実現しておりますが、3 番についてはどこも そういうことを管轄するとこ ろは今のところないし、実現 不可能だろうということでペ ンディングになっています。
これは文書として会長名で 厚生労働省にお願いしたとか ということではないんですけ れども、こういうこともやっ たということでございます。
それから、非常に私的なも のなんですけれども、その他 の場面で政府や議員や行政へ 何をしてきたかということで ございますけれども、実は今 年の4 月頃にそのとき福田総理大臣が成育医療 センターを訪問されて、その後の記者会見で発 言されたと。その後に町村官房長官が発言され たんですけれども、女性医師の支援を特に力を 入れてやるぞというようなことをおっしゃった ものですから、「さあ、それ」ということで、厚 生労働省の医政局と内閣府の男女共同参画局に 押しかけていきまして、このようなペーパーを 出してきました。そのときに説明したのは、こ の短時間勤務、正職員制度を採用する病院への 支援をしてほしいと。診療報酬とは別枠でやっ てください。それから、院内保育所補助の使い 勝手の改善と増額をしてください。それから、 院内保育所以外の保育サービス利用への補助の 新設をしてください。それから、保育システム 相談員制度の相談員の養成・設置の促進の補助 をしてくださいという項目を出してきましたら、 来年度の厚生労働省の概算要求で、実際にこの 中のほとんどが予算に入っています。というぐ らいに、何かやると実際は動くと。そういうこ とをきょうは申し上げたくて、何にもやらなけ れば、みんながこういうふうに言っているねと いうことで、だれもが考えていることであって も、だれかがやらないと動かない。だけどタイ ミングもあるんでしょうけれども、動くことも あるということでこれをお出ししました。
V.医師再就業支援事業
先ほどから言っております医師再就業支援事 業という事業のことについてちょっとお話しさ せていただきたいと思います。これは先ほども 出てきました、主に女性医師バンクのことでご ざいます。
平成18 年の11 月に厚生労 働省と委託契約を結びまし て、平成19 年1 月に女性医 師バンクというのが日本医師 会の中に開設されておりま す。これはどういう特徴があ るかといいますと、無料であ るということ。求人側も求職 側も無料であるということ と、それから会員でない方、 医師であれば会員でない方も 登録できますよと。求人のほ うももちろんできますけれど も、求職者、非会員の方もい いですよということと、それ から医師がそれぞれの求職者の先生にコーディ ネーターとして付いて、いわゆる担任みたいに なって付きまして、ご相談にのって就業先を紹 介するという、この3 点が非常に特徴的です。 それから日本医師会という公的な団体がやって いるということで、ある程度バックアップがで きるということもございます。
運用状況でございますけれども、8 月末現在 ですが、求職登録者数が延べ354 名、現在求職 している方が249 名ですけれど、延べ354 名の 方が登録がございました。求人施設は936 施設 で、求人登録件数は2,283 件というふうに適度 な数の求人・求職がございます。
実際の実績ですけれども、実に100 件の実績 が上がっています。その中で再研修を紹介した 件数9 件ですけれども、この9 件の中には麻酔 科とか、小児科とか、放射線科とか、非常に医 師不足と言われているところの科の研修も入っ ております。
続きまして、これは内容のデータでございます けれども、上のほうのグラフが全求職者の中の割 合で、下のほうが就業を決定した方の中の割合 ですけれども、年齢的には30 代〜 40 代前半まで が多いというところでございまして、小学生未満 のお子さんがいる方といない方は大体半々ぐらい で、いる方のほうが決まる率が高いというのは、私どもバンクの役割がそういうところに生きてき ているのかなというふうに思います。
それから、診療科別ですけれども、様々な科 がございますが、やはり内科系のほうが決まり やすいかなと。眼科は求職者は多いけれども意 外と決まりにくいという特徴がございます。
産婦人科の常勤の先生も1 人お休みしていら した方も常勤で働いていただくようになってい ますし、麻酔科もそういう先生もいます。
施設種別ですけれども、診療所と病院と大体 半々ぐらいです。老健とかにという方も多いん ですけれども、それはあまり決まっていません。
勤務形態ですけれども、やはり圧倒的に非常 勤、またはパート、アルバイトという方が4 分 の3 ぐらいで多いですし、求職者の中での割合 に対しても就業決定者の中での常勤の割合が ちょっと少ない。このへんがこれから頑張って いかなければいけないところかなと思っており ます。
地域別ですけれども、求職者は北海道にも一 応いらして、九州にもいらして、ただ残念なが ら求職者は沖縄も1 人いらっしゃるんですけれ ども、沖縄に住んでいられる 方ではなくて、将来、沖縄 で就職したいという方が1 名 いらっしゃいます。
北海道でも決定されてい ますし、東北でも少ないけれ ども決定されていますし、一 応全国で決定されています。 九州もかなり、福岡に西日 本センターというのがありま してやっていますので、かな り頑張って決まっているんで すが、沖縄は今のところまだ ゼロです。でも、次に皆様に お目にかかるときは沖縄もぜ ひ決めるようにしたいと思い ます。
これは登録時の就業状況で すけれども、お休みしている 人はやはり決まる率が高いと いうのは、それは当然のこと だと思います。
それから、離職期間は様々 でございます。
これが申し上げたかったこ とですけれども、会員と非会 員の割合は、かなり非会員も いまして、病院にお勤めのと きは会員になっていたけれども、お辞めになっ て今、就業していないので会員でなくなってい らっしゃらないという方もこのぐらいいらっし ゃいます。実際に就業が決まる方は、会員より もむしろ非会員の方が多いと。ですから、日本 医師会としてやっておりますけれども、厚生労 働省の委託事業ですから、当然、全体に対して やるべきものでございますので、当然でござい ますが、しかしながら、日本医師会の会員以外 の方にこれだけの手助けをさせていただいてい るということは、実はすごく誇るべきことじゃ ないかと思っております。
私たちのやっている医師再就業支援事業の1 本目の柱が「女性医師バンク」でございました けれども、2 本目の柱が「病院長、病院開設 者・管理者等への啓発、意識改革」ということ でございまして、女性医師の置かれている現状 や、現在日本の医療の中で何が求められている かや、それから、出産・育児にかかわる様々な 法律や補助金制度についてをテーマといたしま して、講演会を全国で開催しようという趣旨 で、全国の47 都道府県の医師会にお願いをい たしまして、日本医師会と共催でこういう会を 平成18 年度から今年で3 年目ですけれどもや っておりまして、大体毎年20 数箇所の都道府 県で開催させていただいております。
それから、もう1 つは医学生や若い医師への ロールモデルの提示・支援・啓発を行うこと で、女性医師が若いときから将来に対して希望 をもって働いていけるようなことをサポートし ていきたいなということでこれを始めました。
男女共同参画委員会、平成18 年度の頃は女 性会員懇談会でしたが、そこでモデル事業とし て全国10 カ所でやりました。昨年度は男女共 同参画委員会の予算の中で、全国の20 幾つか の都道府県でやっていただいていますが、と申 しますのは厚生労働省の医師再就業支援事業の お金を使おうと思いましたら、学生はだめだと 言われたんですね。学生は厚生労働省がやるこ とじゃないと、最初の話では否定されてしまっ たんですけれども、もちろんお金もなかったこ ともありますが、ところが余計なことなんです けれども、厚生労働省と文部科学省が交流人事 をやりました。昨年の何月かから、文部科学省 の方が厚生労働省の医政局医事課の課長に来ら れました。この事業全部は医事課が管轄なんで すけれども、それでおかしいねということを言 ってくださいまして、今度、医師再就業支援事 業の中で医学生や若い女性医師への支援の講習 会というのも予算が取れるようになりまして、 これを全国でやっていただいています。沖縄県 医師会も、先日9 月に病院長とかと話をされた とのことでした。実施県には日医を通して補助 金が交付されるようになりました。今日のがこ ちらですね。
これは文部科学省や厚生労働省と話すと、な んで医師会はそんなにできるのと。彼らは実際 にやろうと思うと、やるのが大変なわけです ね。大したお金も皆さんに補助金が日本医師会 から出るわけではないのに一生懸命やっていた だく。それから、実際の参加者の人数を、当然 委託事業ですから何人参加していますというこ とを言うと、何でこんなに出てもらえるのと驚 くわけです。だから日本医師会をあなどったら いけないよと。日本医師会は痩せても、枯れて も日本医師会だから、日本医師会の力を利用し ないで日本の医療のことをやるということはあ り得ないんだよということを申し上げる1 つの 大きな力になっています。
先ほどから申し上げている保育システム相談 員って何?と思われるかもしれませんけど、す でに沖縄県医師会にもお知らせしておりますが、子育てをしながら働く女性医師にとって、 地域の保育施設やその他の保育サービスの利用 が有効であるけれども、保育を必要とする医師 に対して、それら保育システムの情報提供を行 うことのできる体制を整うことが重要であると いう視点で、要するに院内保育所だけではだめ だと。院内保育所もつくるのも必要だけれど も、地域性とか、その方の勤務の状況とかによ って、院内保育所ができるのを待っていられな いということも1 つありますし、それから、院 内保育所をつくるのは非常に不経済だというこ ともありますし、とにかく、ありとあらゆる保 育サポートシステムといいますか、そういうも のを使って女性医師が育児をしながら勤務を継 続できるようにしなければいけないと。それに ついてだれかがそういうことについての情報を 把握していて、相談があったときに教えてあげ る。それから、具体的に場合によっては、手続 きが非常に煩雑である場合に、手続きの代行も もしできるようになればしてあげるというよう なことも目指して、保育システム相談員という のを全国に置きたいということで、本当は保育 システムの相談員はどういう職種に対しても必 要なんでしょうけれども、私たちは医師会でご ざいますので、それから女性医師に対してのサ ポートが非常に遅れているということなので、 女性医師に対して保育についての相談にのって 支援してあげるような相談員を各都道府県医師 会に置いていただこうということで、今度11 月19 日に保育システム相談員の講習会という のを、日本医師会で開催することになっており ます。この保育システム相談員というのは、女 性医師バンクのコーディネーターを医師がやっ ているので、医師がやらなければならないので はないかと誤解している方がいるのですが、そ うではなくてこれは事務の方にやっていただく のが非常にいいのではないかと。医師がやるよ りも事務の方が、保育のシステムを把握してい ただいて、それを常に情報を更新しながら相談 にのっていただくという。相談があったときに 調べていただくのでもいいんですけれども、こ の保育システム相談員の講習会にはぜひ事務の 方、それからそのことをきちっと推進するため には役員の方がいないと話が進まないと思うの で、役員の方と1 名ずつ参加していただいて、 ぜひぜひこの保育システム相談員を沖縄県医師 会にも置いていただきたいということでお願い したいと思います。
実は、先ほどの厚生労働省の予算のところに も出てきましたけれども、この保育システム相 談員について、厚生労働省も予算をつけてくれ ます。講習について私たち日本医師会の委託事 業の中に予算をつけてくれるわけですけれど も、さっきも玉城先生とお話して、県がお金が ないからだめというお話がありましたけれど も、県がお金を出してくれれば、国がお金を出 すという、県2 分の1、国2 分の1 という、保 育システム相談員の相談窓口というか、そうい うところの費用の予算を概算要求では厚生労働 省は出しています。政局がこういう状況になっ ているので、実際に予算はどうなるかはっきり はわかりませんが、おそらく私はつくと思いま す。その額が一都道府県当たり、年間780 万円 ぐらいで、その半分を国が出すと。その半分を 県が出してくれさえすれば、そのお金が出るよ ということになっておりますので、いろいろな 予算で交渉されることが多いと思いますけれど も、ぜひ頭に入れておいていただいて、そうす ると700 万円ぐらいのお金が県の医師会に入れ ば、その中で十分相談員の人件費と場所代とい う感じなんですけれども、できると思いますの で、よろしくお願いします。
今までは医師再就業支援事業ということで、 国会をこの「医師再就業支援事業」という名前 で通ってしまっているので、3 年間はその名前 は変えられないということで、「医師再就業支 援事業」などというわけのわからない名前の事 業でやってまいりましたけれども、そもそも最 初から再就業を支援するんじゃないんだと。就 業継続を支援するというんじゃなければおかし いだろうということで、契約の内容は就業継続 支援でやってきているのですが、事業の名前がこういう状態でしたが、厚生労働省の来年度の 予算要求の中では、「女性医師支援センター事 業」という名前に変わることになっております。
ですから日本医師会がそれを受けるとすれ ば、日本医師会の中に女性医師支援センターと いうものができると。その女性医師支援センタ ーの中に女性医師バンクがあるという形になる 見込みになっておりますので、そのこともお話 させていただきました。
W.知っておきたい法と補助制度
知っておきたい法と補助制度でございますけ れども、これは皆さん本当に ご存知だと思いますが、まず 産休が労働基準法で決められ ていることであると。産休と いうのは義務であるというこ とが1 つ。これに内容が書い てあります。それから、育児 休業については育児介護休業 法という中で決められたこと であるということ。それで内 容がこういうふうになってい るということでございます。
それから、育児休業という のは何で保障されているかと いうのは、雇用保険法である ということ。ですから育児休 業の給付金、育児休業基本給付金とあるんで すけど、その給付金は雇用保険から出ている ので、雇用保険に入っていない人は対象にな らないということ。そのことだけはよく覚えて おいてください。とにかく雇用保険に入れない ような就業形態はなるべくやめようということ で、実は先日、熊本だったと思うんですけれど も、派遣で雇用保険に入っていたのにもかか わらず育児給付が出ないという方の問題があ りまして、そのことも国のほうに厚生労働省等 にこういうのを何とかしてくれということを申 し上げているんですが、法律の隙間でそういう こともあるということでございます。でもとに かく雇用保険に入ってほしいということです。 これは細かい法律でございます。
それから、これは厚生労働省のほうで出す病 院内保育所運営費補助金というものの内容でご ざいます。これも後でご覧ください。
日本医師会で今年の2 月に院内保育所を含む 医師就労支援の現況に関する調査というのを行 いましたら、回答率50 %近く47.7 %で、院内 保育所の設置状況は設置して いるところが結構あるという ことがありました。31 %が設 置しています。していなのが 60 %でございます。
もう1 つは院外の保育所等 と個別に契約しているという ところもありますけれども、今 後の院内保育所のことについ ては、もちろん設置できると ころはどんどん設置していた だく。設置できないところは 保育所等と契約したり、それ から女性医師といいますか、 医師が育児にかかる費用につ いての補助金を院内保育所が ないところは出すというような ことについて啓発していきたい というふうに思っています。
それから、もう1 つは院内 保育所の相互利用ということ についても今後研究していく 課題だと思っております。院 内保育所はあるけど空きがあ るようなところには、ほかの 病院に勤めている女性医師の 子弟も預かっていただくよう な方式を今後つくっていけれ ばいいなというふうには思っていますが、お金の 問題があるのでなかなか難しいかもしれません。
「財団法人21 世紀職業財団」をご存知です か。すごくいろんなことをやっていまして、 「仕事と家庭と両立しやすい環境整備に対する 各種助成金」というのを出しておりまして、 様々な補助金があります。その補助金をもらう には、次世代育成支援対策推進法による一般事 業主行動計画というのを策定して届けていない と、この補助金は出ないんですけれども、一般 事業主行動計画というのをぜひ病院は立ててい ただきたいと。従業員の数が300 人以上の企業 は義務になっているんですけれども、義務規定はあるんだけれども、罰則規定がないのでつく ってないところもまだいっぱいあるということ でございますので、それをつくっていただきた いということをお願いしたいと思います。
いろいろな補助金があるんですけれども、院 内保育所の補助金も、さっきの厚生労働省のや つは国が3 分の1、県が3 分の1、事業所が3 分 の1 というのがあるので、県がお金がないと出 ないということがあったんですけれども、これ は直接の補助金でございますので、事業主や事 業主団体に直接補助がいきます。要件に合って いれば、例えば設置するときはこの助成限度額 の2,300 万円の2 分の1 で、中小企業であれば 中小企業というのは医療機関の場合、100 人以 下のところを中小企業と言うらしいんですけれ ども、補助金が2,300 万円の 3 分の2 ですから1,400 万円 ぐらいですか。1,500 万円近 く設置費の補助金が出るとい うふうなことで、これはもし 院内保育所をつくろうと思え るところは、ぜひご利用して いただきたいと思います。た だ、県立とか国立、公立はだ めだということです。いろい ろなものがあって、ベビーシ ッター費用の補助とか、そう いうものもあります。短時間 勤務の促進についての補助金 というのもあります。資料を 後でご覧ください。
先ほど言っていた、一般事業主行動計画とい うのが定められていまして、どうやったらでき るかということを一応簡単な資料をつけてあり ますので、ぜひそういうことについてご自身が 従業員の数、100 人ぐらいの事業の運営にかか わっていらっしゃる先生の場合もそうですし、 それからそうでない先生もこういうものを自分 の事業所でつくってくださいということをお願 いしていただきたいと思います。資料を一応付 けておきました。
それから、短時間正職員制度についてもいろ んなことがありますけれども、厚生労働省とし て様々な支援金を出しています。これもさっき の21 世紀職業財団を通じて出ている補助金で ございます。
もう1 つ面白いのは、中小企業の事業主団体 向けの助成金というのがありまして、短時間勤 務制度を普及させることを一生懸命やっている 事業主団体には、そのことにかかる費用の補助 をしますよというものもございます。病院協会 とかが実際にやっているところも、申請したと ころもあるようでございますけれども、年間数 件の予算しかないので、出したらみんながもら えるかどうかわかりませんけれども、こういう ものもございます。これも21 世紀職業財団が 経由しているところでございます。
21 世紀職業財団というのは、東京に本部が あるんですけれども、地方事務所というのは全 国の都道府県にございまして、何かあるときは 沖縄の地方事務所(098-869-9076)に連絡し ていただければと思います。
X.本日、皆様に申し上げたかったこと
最後に、本日、私が皆様に申し上げたかった ことを言って終わりにさせていただきます。
個人的なことでございますけれども、私が女 性支援になぜ取り組んでいるか、よく何でそん なに一生懸命やってるのと言われますけれども、 そもそも最初は私は小児科医でございます。昭 和59 年に勤務医を辞めておりますので、ずっと 自分は勤務医ではなかったんですけれども、勤 務医の過重労働につきましては、特に小児科で 自分がよく知っているものですから、何とかで きないかと。どこでどうしたら何とかできるか ということを常に考えておりました。そういう 中で、直接ではないんですけれども、間接的に 知っている方が何名か過労死いたしました。
それから、女性医師の割合がこれだけ増えて いるのに、非常に取り組みが遅れていると。特 に日本医師会の取り組みは全くされていないに 等しかったということで、その2 つが重なりま して、医師の勤務環境を改善するためには、ま ず女性医師への取り組みをすることが糸口とな って、それで大きな役割を果たしていけるので はないかと。日本の医療の未来を考えたとき に、やはり男女共同参画こそが日本の医療の未 来を開くことであるというふうに思いまして取 り組んでおります。
本日、皆さんに申し上げたかったことは、私 たちは国や自治体や医師会やほかのだれかに何 かを求めるのみではなくて、それぞれがそれぞ れの役割を担っていると。1 人1 人が若い先生 も、年寄りの先生も、男の先生も、女の先生も 自分たちが役割を担っているということを自覚 して行動する必要があるのではないかと。壁は 厚いけれども、いつか必ず突き崩すことができ るし、あるいは越えることができるということ を私自身は信じておりますので、皆様方もぜひ そういうふうに思っていただいて、ご自分ので きるところでできることを続けていっていただ きたいと思います。
御清聴ありがとうございました。
質疑応答
松本座長:短時間就業制度について、私の知り 合いの病理の先生も今とられているんです。そ れで半日で、仕事を午前中だけされて、午後に は帰られるんですけれども、全く代替という か、代わりの先生の支援とかが全くないもので すから、仕事量は変わらないし、責任の重さと か全く変わらなくて、それを短時間のうちに何 とかこなして、必要だったら呼んでねという形 でお家に帰られると。そういう形を取られてい るんですけれど、それだったらむしろ今日はち ょっと仕事が暇だからお家にいるけれど、用事 があったら呼んでねというふうに、現場で了解を得て帰れる体制のほうが、仕事は一緒なのに お給料が半分になってしまうと。どうも、かえ って窮屈な制度のような気もするんですけど、 まだ始まったばかりの制度のようで、実際どの ぐらい取られているかとか、どういう要望があ るか、問題点があるかということはまだはっき り把握されてないかもしれないんですけど、何 かそういう点について先生のお考えがありまし たらお願いします。
保坂氏:ありがとうございます。
必ずこういうことをすると、雇用側はそれを 利用します。今の先生のおっしゃったように、 働く人のプラスになる方向にではない方向に利 用します。それはやっぱり現場でみんながそれ を阻まなければいけないと思います。
ただ、今は人がいないのでなかなか、その制 度の中でもそういう場合は代わる人というか、 サポートする人を雇えるような制度にしなさい というふうにはなっているんですが、現実には 雇いますといってもいないからというのが、多 分、雇用側の話だと思います。
そこで1 つ注意しないといけないのは、ちょ っと前にホワイトカラー・エグゼンプションと いうのが出てきましたよね。あれは実は働く側 にとって最悪の制度だと私は思っております。 元々医師がほとんどあれに近い形でやってきた んですけど、それを正当化されると、もう到底 私たちはそのうち給料はすごく安くて、すごく こき使われてというふうになってくると思いま すので、今の先生のご質問に直接関係ないかも しれませんけれども、ある制度に入るときに、 入る人がよっぽど気をつけないと利用されてし まう。そういうことをさせないような何かいい 方法があるかどうか考えてみますけど、なにし ろ私が考えても、皆さんがいっぱい考えて、皆 さんがいろんな意見を上げていただいて、皆さ んがサポートしてくださらないと、私は体が大 きいのでばたばたすると結構目立つので、厚生 労働省に行っても、内閣府に行っても、またあ いつが来たと思われますけれども、そんなんで は到底もう破れない壁はいっぱいあるので、い ろんなことでいろいろ教えてください。よろし くお願いします。
松本座長:ほかにはいかがでしょうか。
質問者:保坂先生、2 点ほど。
今の短時間正職員ですか、短時間、もう1 つ ありましたよね。短期時間制度でしたっけ。一 緒でよろしいですか。そのときには自分から進 んでそれも取って、それはオーケーでというふ うなのがあって、それはそれなりに問題がある ということだったんですけれども、例えばそれ を女性医師が雇用者、病院長とか施設長にこれ を取りたいと言ったとき、それを例えば施設長 が「だめ、できない」と言ったときに、これは 罰則とかがありますでしょうか。
保坂先生:これはまだそういう制度について は、国家公務員と地方公務員についてはそうい う制度を導入するというふうに決まったので、 そういう制度が導入されているのに、何でうち の病院にはないのと言っていいと思うんです。 だけど罰則はないと思います。
あとは、私立病院とか公的病院については、 そういうものをどんどんやりなさいというふう に今はまだ促進しているような、その促進のた めの補助金を国もつけますというようなことを 言っている段階ですので、罰則がつくまではい きません。すみません。
質問者:それともう1 つお伺いしたいんです が、院内保育所のことなんですけど、30 %の 院内保育所があるということなんですが、これ はほとんどが民間なんでしょうか。例えば国立 とか公的病院、県立とか総合病院とか、いわゆ る自治体病院とか、そういうふうな総合病院と かはどうなんでしょうか。
保坂先生:全国的にみますと、公的病院のほう が多いと思います。公立病院や公的病院のほう が院内保育所の開設率は高いと思います。今ち ょっとデータを持ってきておりませんけど、そ れも後で先生にデータをお送りしますけれど も、私立のもののほうが少ないです。
質問者:今日はとてもためになる話をありがとうございました。
1 つ、再研修について補助がついているとい うことについてお聞きしたいんですけど、来年 度から大学病院の小児科、産婦人科女性医師復 帰に際して人件費補助というのに関しては、そ れはもう決定していて、実際に研修を受け入れ ができる体制か、決定していることなんでしょ うか。
実は、私は産婦人科なんですけれども、私の まわりで長いこと子育てしていて、実際に現場 に復帰するには研修を受けたいというふうに希 望されている先生が何人かいらっしゃるんです けれど、なかなか常勤でどこかに復帰してとい うのは、やはり難しくて、できれば再研修した いというふうに言われている先生がいるもので すから。大学病院でこのように補助が出ている ということであれば、ぜひその情報をお伝えし たいなというふうに思ったんですけど。
保坂先生:来年度予算の概算要求で出ている ものでございますので、文部科学省の人件費 補助については決定はしていません。ですか ら、できるとしても来年度からできるのかな と。どういう形でできるのかわからないけどと いうことです。ただ、医学教育課はやる気はす ごくもっていらっしゃるので、医学教育課はさ っきの交流人事の話ですけれども、医学教育 課長は、今、医師です。厚生労働省から行っ た方です。ですから具体的に来年度はできる かもしれません。
ただ、人件費補助というのは、お勤めする方 にはお金を払う話ではなくて、再研修をさせる ために、教えるほうの先生についての補助とい うことなので、ちょっと違うというふうに思っ てください。それと、多分、わかりませんけ ど、沖縄の事情がちょっと全国とは違うかもし れませんが、どこの大学病院でも、あるいは大 きな病院でも再研修の受け入れは非常に熱心に やってくださっています。再研修については全 国にどの地域の方も、先ほど9 人再研修をお願 いしているというふうに申し上げましたけど、 全国にまたがって紹介しています。北海道か ら、九州はちょっといないんですけど、中四国 地方まで科も様々な中で、こちらでお願いし て、別に再研修システムをやっていますよと手 を挙げているところに頼むんじゃなくて、こう いう方がいるけど先生のところで再研修をお願 いできませんかということでやっています。
ただ、人件費等については、その人の給料と いうか、再研修を受ける方の身分とか待遇につ いては、それぞれの病院の事情、経営母体の事 情とかもあるので、結構お金を出してくれると ころもあります。ただ、それは再研修を受ける 方が実際に仕事のサポートになるかということ と、それから、再研修が終わった後どうしても 勤めてもらいたいと思うところは非常勤でお金 を出したりもしています。
先生、そういう方がいらしたら、先生が個人 的にお願いをするのでもいいですけれども、一 応、日本医師会という看板で私たちはやってい るので、そこから再研修してくださる病院にお 願いするという方法もありますので、ぜひ日本 医師会の女性医師バンクというところにご連絡 いただくようにお願いします。
再研修を受けてくださる病院にすごくちょっ となんですけれども、一応は30 万円、日本医 師会の委託事業の中からお払いはすることにな っておりますので、一応申し上げておきます。
質問者:県立南部医療センターの當銘と申し ます。
今日は女性医師支援の先進的な取り組みを紹 介いただきましてありがとうございます。
質問ですけれども、最後のスライドで先生が 取り組んでいる理由の3 番、4 番に関してです けれども、とりわけ医師の勤務環境の改善を図 るために女性医師への取り組みは糸口となると 共に大きな役割を果たすということを掲げてい るのに対して、我々としても本当にそうであっ てほしいという期待がいっぱいなんですけれど も、ただ、1 つ懸念するのは、女性医師のそう いうふうな例えばパートとか、短時間正社員と いう方法がともすると、今の医療崩壊の一番の 原因と言われている低医療費政策を補完するような形で利用されないかというのが非常に懸念 されるんですけど、そのへんのことに関してど ういうふうにお考えですか。
それともう1 点は、こういうふうな職業分野 で女性医師バンクを実際に登用して運用してい るような、ほかの職業の領域というのがほかに 何かあるのかどうか。そのへんを併せて教えて いただきたいと思います。
保坂先生:すべて制度はそうですけども、先ほ どの座長の先生の質問でも、短時間正職員制度 を逆に賃金カットに利用されているというふう な感じを私は受けたんですけれども、おっしゃ るようにどういう政策も、私たち働く側が気を つけていないと低医療費政策といいますか、雇 用側の経済にプラスになるような方向に利用さ れるというのはもちろんです。先生がおっしゃ るように、女性医師の労働力を安価に使ってや っていくということが流れになると、結局は最 終的にはプラスにならないとおっしゃるのも十 分その危険はわかっています。今、医療崩壊と 言われている。女性医師支援が大事、大事と言 われていますけれども、もし女性医師を特別扱 いするということが定着した場合に、逆に差別 されるようになることを一番気をつけないとい けないと思ってやっています。というのは、女 はどうせ半人前だということで、先生の質問か らちょっとずれるんですけど、そういうふうに されないようにということは、もう限りなく気 をつけているつもりです。ですから女性医師す べて一緒ということではなくて、女性にも様々 な考え方、立場の人がいる。それから例えば子 供をもっても全然何も配慮してもらう必要はな いです、私は普通でいいですという方もいらっ しゃる。だけども配慮してもらわないと仕事を 続けられない人もいる。ということで、それは まず女性のことですね。
今後、男性のほうにも同じことが言えていく と思うんです。男性も介護の問題が出てきます から、たいてい男性の先生はおいくつかちょっ とわからないけど、先生ぐらいから上の人は親 の介護の問題が出てきたときに、男性も今女性 がとるように言っているような勤務制度をとる ことが絶対求められてくると思うんです。そう でなければ辞めてしまうぞというふうになって くると思うので、今やっていることは決して女 性だけのためではないということ。
それから、本当に今、先生がおっしゃったよ うに、低医療費政策に利用されるのは、私たち は限りなく気をつけていますし、今のところは 女性のパートタイム勤務は、実は時給を上げて います。常勤の方の時間給にすると、怒ってし まうかもしれないけど、常勤で頑張っている男 の先生には本当に申しわけないぐらい賃金はい いです。
ですから、それを逆に医師の賃金全体に反映 していくような形にもっていければいいなと思 っておりますので、今のところは先生、それは 心配ないです。
もう1 つ、医師以外に女性のバンク云々とい うのは、私は聞いたこともないですし、それか ら職業的な内容からいって、特別なことをしな くてもうまくいってきている職業がほとんどで すし、医師に関しては、女性に限らずあまりに も勤務環境について放置されてきているという 部分があって、それが女性のところで表に出て いるということだと思いますので、それを何と かするのについて女性医師バンクという形で医 師が生涯を通じてキャリアを継続できるよう な、そういうことを目指している事業ですの で、バンクというと、なんか貯金しておいてそ れを使うみたいな、そういうイメージで考えて られて、どうも一般社会の方はそう考えておら れるようですけど、私たちはそういうふうに思 っていないので、よろしくお願いします。
予定時間を超過するほど、活発な質疑応答が 行われたが、時間の都合もありフォーラムを終 了した。引き続き、懇親会が開催され、南部福 祉保健所所長の譜久山民子先生の乾杯のご発声 で歓談に入り、終始和やかな雰囲気で懇親会が 行われた。
印象記
沖縄県医師会女性医師部会委員
松本 美幸とにかく楽しい会でした。保坂先生は「肝っ玉姉さん」という雰囲気の先生でしたし。その後 の懇親会では、普段お話する機会のない他施設他科の先生方とお話ができて、このような機会は 本当に貴重だな、と思いました。多分、女性医師は職場ではチームリーダー的な立場にあって、 愚痴をこぼせるような場は少ないと思います。このような交流の場で、他施設の状況や先輩方の 経験をうかがったり、不満を口にすることでなにか解決の糸口をみつけられるかもしれません。こ のような楽しい場に孤軍奮闘の女性医師にもっと参加していただければ、と思いました。