会長 宮城 信雄
みだし合同会議が、去る10 月31 日(金)午 後4 時からホテルニュー長崎で開催された。
同合同会議は、九州各県の行政と医師会が交 互に担当して開催され、本年度は長崎県医師会 が担当した。
長崎県医師会赤司常任理事より開会の辞があ り、挨拶、来賓挨拶に引き続き議事等が進めら れたので概要について報告する。
挨 拶
1)九州医師会連合会長 北野邦俊
世界経済は、世界の金融危機の煽りを受け大 混乱の状況にある。我が国もその経済の影響を まともに受け一気に不況の様相を呈してきてい る。このことは、本格的な少子高齢化を迎えた 我が国の医療環境にも少なからず影響を及ぼし ている。迅速且つ、適正な施策が喫緊の課題と なっている。今、行政と医師会が連携をより深 め、お互いの持てる力をフルに発揮し、よりよ い医療、介護サービスの提供に努め、国民が平 等で安心して安全な医療を確立しなければなら ない。ご参加の皆さんのより一層のご支援ご協 力をお願いしたい。
2)長崎県知事 金子原二郎(立石副知事代読)
我が国の医療制度は世界的に最も整ったシス テムとして、これまで高い評価を受けてきた。 この4 月から始まった後期高齢者医療制度を始 めとして、近年の様々な構造的な改革は国民に 大変大きな不安、不信を招いている。特に長崎 県では新しい臨床研修制度に起因する医師不 足、或いは医療費抑制等による医療の崩壊とい うものが現実的な問題となっている。多くの離 島を抱え、離島のへき地医療を支援するため、 離島医療へき地医療講座を開設すると共に、平 成18 年12 月から全国で初めて県が実施主体と なりドクターヘリの運行を開始し、離島へき地 の医師確保、救急医療の充実に取り組んでい る。本日、医師会と行政が一堂に会され、地方 自治体が抱える課題の解決に向けて討議される ことは大変有意義なことであり、その成果を大 いに期待したい。
来賓挨拶
厚生労働省九州厚生局長 青柳親房
昨年のこの会の挨拶の中で、医療構造改革の 考え方、進め方として、1)これまでの厚生行政 の課題解決のための最後の取り組みであること や2)医療の供給、医師確保、健康作りというも のが、相互に連携して総合的な体系として実施 しなければいけない問題であり、しかも、それ は医療の問題のみならず社会保障の全体に繋が る問題であるということも触れさせていただい た。又、3)そういう形で進める以上、財政問題 ということと切り離してこの問題は取り上げる ことはできないということも付け加えさせてい ただいた。
平成20 年度において、社会保険庁の再編と いう大きな問題の中で、厚生局にも大きな影響 が生じてきた。平成20 年度から社会保険庁が 所管していた事業の内、政管健保の保険者事業 が今回健康保険協会に移った。又、保険医療の 指導監督事務については厚生局に移管された。 更に平成22 年1 月には年金事務も年金機構に 移ることに既に決まっている。九州厚生局は何 れにしても保険医療の指導監督事務を移管して いただき、その事務を行うことになっている。
組織を抜本的に見直し、総合的、効果的な行政事務を行えるよう体制を構築するということで 取り組んでいる。今後は地方のブロック間で行う 意味を認識し、指導監査の実施方法について統 一化、均一化について徐々に進めていきたい。
又、従来から行っている健康福祉部の中で福 祉と医療はバラバラになった部分があるが、指 導養成という形で一元化して養成施設について の指導監査をより徹底的に行うということにさ せていただきたい。今後、医師会並びに県行政 のご意見等を拝聴し情報交換を行いながら連携 して進めていきたいと思っている。
座長選出
慣例により、当番県の長崎県医師会蒔本会 長を座長に選出した。
議 事
(提案理由抜粋)
限られた医療資源を有効に活用し、全ての住 民に良質な医療を提供していくためには、IT 技術を用いた全県的な地域医療連携体制の構築 が効果的であると考えられる。
現在、総務省や各自治体ではICT の利活用を 推進しており、医療分野でもこれを共同活用し ていくことは効率的で、大学病院や自治体病院、 中核的民間病院、診療所、介護施設、在宅等の ネットワークへの参画もスムーズに進むと思わ れるが、これには総務省と厚労省及び各自治体 内関係部局の横断的な連携は不可欠である。
厚労省においては、総務省が推進するICT 利活用をどのように位置付け、どのように活用 していくのか、考えを伺いたい。
また、各県行政において、ICT の具体的な利 活用事例や計画があれば伺いたい。
【回 答】
福岡県 本県においては、民間ベースで病院 間、診療所・病院間で画像伝送して専門医の判 断を仰ぐ遠隔画像診断支援システムを導入して いるケースがある。
○遠隔画像診断システム
県内の3 病院から久留米大学病院へ画像診 断を依頼するシステムを導入。
(平成13 年度補助事業)
〔問題点〕
国の通知では、「診療は、医師又は歯科医師 と患者が直接対面して行われることが基本であ り、遠隔診療は、あくまで直接の対面診療を補 完するものとして行うべきであり、医師法第20 条等における「診察」とは、問診、視診、触 診、聴診その他手段の如何を問わないが、現代 医学から見て、疾病に対して一応の診断を下し 得る程度のものをいう。」とされている。
現状、この考え方をクリアできるような遠隔 医療については想定されない。
当面、遠隔画像診断支援システムの導入に対 する設備補助事業を継続実施し、遠隔診療の新 たな考え方を待ちつつ、検討を進めていきたい。
【参考:民間等での取組事例】
・九州大学病院…「アジア遠隔医療開発セン ター」の開所(スタートしたばかり)
・九電工…(株)ネット・メディカルセンタ ー(100 %出資子会社)による遠隔医療診 断事業の展開。九州一円で160 病院が提携 してCT,MRI の画像診断等の補助システ ムを行っている。
佐賀県 当県としては、医療機関相互のネット ワークを構築することは、地域医療連携を進め る上で有効であると認識している。
ICT の医療分野への利活用について取り組ん でいく必要があると考えている。本年度「佐賀 ICT ビジョンが策定され、その中で医療分野に おいてもIT の活用に取り組むことになっている。
長崎県 当県におけるICT を活用したシステ ムの事例は以下のとおり。
○遠隔画像伝送システム
〔導入の経緯〕
平成12 年9 月、総務省の認可法人である 「通信・放送機構」に「長崎県マルチメディ ア・モデル医療展開事業」を申請、採択され、県が協力機関となり、通信・放送機構の 直轄事業として進められた。
平成17 年2 月にシステム一式を県で引き 継ぎ(購入)、現在運用中である。
〔事業の内容〕
(1)遠隔画像診断システム
離島の10 病院、2 診療所から、本土親 元病院へCT 画像等を送信するシステムの 開発・研究を目的に導入。(救急患者搬送 の判断材料として有効活用)
自衛隊ヘリ等による救命救急センター ((独)国立病院機構長崎医療センター)等 への病院間搬送必要性の有無の判断などに 活用されている。
(2)医療相談システム
離島の8 診療所から長崎大学医学部・歯 学部附属病院へインターネットを使って医 療相談を行うシステムの開発・研究を行う ために導入。
医療相談とともに大学病院での講演会や カンファレンス等の医療情報を診療所に配 信することとしていたが、提供する情報が 少ない等の課題もある。
〔問題点〕
設備の経年劣化により保守管理の経費が増大 しており、総務省のモデル事業等を活用して機 能の充実を図っていきたい。
熊本県 当県における医療分野でのICT 利活用 について本県では具体的な取組は行っていない。
なお、国立病院機構熊本医療センターにおい て、画像電送装置を救急車に乗せ病院でモニタ ーを見ながら搬送中に指示を出すモデル事業が 実施されている。
大分県 具体的活用事例(大分県豊後高田市)
豊後高田市では、高速情報通信網の整備に取 り組んでいる。この情報網を活用し、市及び関 係機関との連携によりICT 技術を活用した遠 隔画像診断の実現に取り組んでいる。
具体的には、大分大学医学部、市内の病院及 び診療所を情報ネットワークで結ぶことによっ て、病院、診療所で判断出来ないX 線画像、 CT 画像等の遠隔画像診断を実施することによ り、医療体制の充実を図るもの。
宮崎県 本県においては、県内の情報通信格差 の是正と産業の活性化を図るため、県内全ての 市町村を結んだ高速・大容量の光ファイバー網 (宮崎情報ハイウェイ21)の基盤施設を整備 し、平成14 年8 月から供用開始したところで ある。
また、その利活用の促進等にあたっては、 「宮崎県市町村IT 推進連絡協議会」を県と市町 村が共同で設置し進めているところだが、現 在、具体的には、河川や気象の防災情報や道路 規制情報など県庁ホームページや携帯電話など を通じた県民への提供といったブロードバンド ネットワークやケーブルテレビ回線等で活用さ れている。
医療分野における利活用としては、宮崎大学 や県医師会が中心となり、医療関係機関間ネッ トワーク(はにわネット)を通してより良い医 療サービスを提供することを目指し、平成13 年から県内の医療関係機関の間を宮崎情報ハイ ウェイ21 で結び、電子カルテの開発や共同利 用、電子会議利用による地域医療連携を推進し ている。(ただし、現在は、宮崎情報ハイウェ イ21 ではなく民間のブロードバンドを活用し ているとのこと。)
また、3 つの県立病院に電子カルテを平成18 年に導入し、院内の情報の共有化を図ってい る。(病院間のカルテ等の共有については行っ ていない)
鹿児島 県本県においては、離島のへき地診療 所の一部で、CT 画像等を転送する遠隔医療支 援システムを導入しているほか、鹿児島大学病 院で行っているインターネットを利用したカル テの共有など、医療機関によっては個別にシス テムを構築するなどしてICT を活用している事 例はあるが、いずれも全県的な取組にまでは至 っていない。
なお、本県では、今後、離島・へき地医療の充実を図るため、ICT の活用についても検討す ることとしている。
沖縄県 当県では、離島医療の情報格差是正を 図るため、「沖縄県離島・へき地遠隔医療支援 情報システム」を平成12 年度から運用し、各 県立病院と附属診療所等をネットワークで結ん で、離島において指導医等の診療指導や助言が 受けられるようにしている。
また、同システムの中で平成13 年度から「多 地点テレビ会議システム」を運用し、遠隔講義 の配信や遠隔会議が行えるようにしている。
現在はISDN 回線を使用しているが、今年度 からブロードバンドへの移行を進め、離島診療所 における通信環境の改善を図ることとしている。
九州厚生局コメント(野上医事課長)
ICT の医療分野への活用の方向性について は、現在、「遠隔医療の推進方策に関する懇談 会」で議論が進められている。この懇談会で今 年7 月に出された中間報告では、遠隔医療は画 像診断等を遠隔で専門医が支援することを含め た医師会地域医療機関間の連携や支援体制の促 進について、又、慢性期健康管理、予防医療生 活習慣に関わる治療健康相談教育への活用につ いては、遠隔医療のニーズが明らかに存在する と懇談会では記している。
そして、モデル事業の実施等により遠隔医療 のエビデンスをつけていく必要があることも提 言されている。このように遠隔医療が今までの 補完的なものから、更に汎用性のある社会シス テムとして定着させる方向へ議論が進んでい る。尚、この懇談会は地域医療の充実に資する 遠隔医療技術の活用方法とその推進方策につい て検討するため、厚生労働省と総務省が共同で 設置したものである。そして、経済産業省と厚 生労働、総務が参加しているもので、現在、関 係省庁が協力して遠隔医療のあり方の議論を進 めている。又、日医からは内田常任理事が出席 している。
議事の中では医師会側から、行政は余り積極 的に進めてないと思われるが、どこに問題があ るのかとの質問があり、野上医事課長から、 「今まで各省庁が担当して議論していたが、こ のように総務省と共同で行うというのは画期的 なことであると思っている。三省がそれぞれの インフラを整備して更にそれが医療に有効に使 えるかということを検証していきたい。ただ、 医療に堪えうる通信技術であるのか、個人情報 の保護等、医療が通信技術を使う中で、更に難 しい特異的な問題を含んでいるのではないかと 考えている。三省も一緒になって議論していく ことが有効な第一歩であると考えている。」と のコメントがあった。
又、新しい技術をどんどん取り入れてやって いく必要があると思う。金がかかるから積極的 にできない面があると思う。こういうことを厚 生労働省が詰めてやっていただきたい要望が医 師会側から出され、青柳九州厚生局長から、 「これまで技術と医療分野で応用してやってい くということが、うまくいってなかったと思う。 このあたりを協力してモデル事業を実施してい く必要がある。沖縄では平成12 年という早い 時期から病院と診療所をネットワークで結んで いたということもあり、このようなことを積み 上げて改善する方向に進んでいければよいので はないかと考えている。」とコメントされた。
昨年秋の行政側の部長会議で、福岡市・北九 州市から県と政令指定都市とでは取組みレベル に違いがあり合同会議への参加を辞退したいと の申し出があり了承されている。従って、この 会の名称を次回から「九州各県保健医療福祉主 管部局長・九州各県医師会長合同会議」に名称 を変更したいとの提案があり、特に異議なく承 認された。
当番県の順序に基づき、次回は熊本県行政が 担当することに決定した。次期開催県として、 熊本県森枝健康福祉部長より挨拶があった。