沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 7月号

前のページ | 目次 | 次のページへ

編集後記

8 月の“暑さ”に比べると沖縄の7 月のそれは、 “いたい”とでも表現したいほどの“熱さ”です。 日射しは皮膚を突き刺す勢いを持ち、クマゼミの けたたましい合唱とともに通勤のわずかな時間で も体力を奪われます。新医師会館に棟上げされた ドーム型の屋根は、強い日射し、台風、潮風、厳 しい自然の与える試練をしなやかにいなす曲線で あってくれと願うものです。

さて、力をためはじめた初夏の太陽が、表紙で 築城400 年の熊本城に降りそそいでいます。写真 をとられた会長の宮城先生、常任理事の真栄田先 生からは彼の地で行われた定例の九州医師会連合 会の報告を寄せて頂きました。

生涯教育コーナーでは、琉球大学の須信行先 生からは5 月のバセドウ病に続いて、甲状腺機能 低下症の橋本病についてご寄稿頂きました。長年 の研究から診療へのフィードバックされるボリュ ーム豊かな内容は、前稿とあわせると、甲状腺機 能性疾患の広範な知見を会員にもたらしてくれる ものと思います。またもう一稿、那覇市立病院の 山里將仁先生からは漏斗胸に対する治療の変遷に ついてNuss 手術とその成績を中心に手解きして 頂きました。きちんとした週術期管理で年長児、 成人にも適応可能な手術法とのことで今後の発展 で漏斗胸患者のますますの福音となりそうです。 また、プライマリ・ケアコーナーでは、日常診療 で遭遇する事の多い肩関節周囲の疾患について豊 見城中央病院福嶺和明先生にご指南頂きました。 明快な検査の指標、初期治療、専門医受診のタイ ミングについて示して頂きました。

インタビューコーナーでは、琉球大学医学部長 に就任された佐藤良也先生にお伺いしました。琉 球大学医学部創設期から30 年近くにわたり研 究・教育にご尽力されてきた先生からは、離島県 ならではの医師育成の方向性の問題点、新臨床研 修医制度開始後の大学病院での人材確保について の問題、医師会と大学との関わりにについてご発 言頂きました。

離島県の抱える問題の別の一面として、血液供 給とその離島搬送に関わる実績について、「愛の血 液助け合い運動」月間にちなんで、沖縄県立赤十 字血液センターの屋良勲先生からお知らせを頂い ております。その中で、県内で血液供給量が漸増 しているということ、血液センターを中心とした 関係者の方々のご尽力の賜物と感謝いたします。

感染症にまつわる話題が3 題。安里哲好先生か ら県福祉保健部との連絡会議からは旅行者からの 麻疹発生時の絞り込みと緊急ワクチン接種により 蔓延を防御しえた実例とともに、県内で流行が懸 念される日本脳炎ワクチン確保にかかわる問題点 の報告がなされました。さらに金城忠雄先生から の新型インフルエンザのパンデミック対策行動計 画の策定に関する報告は、行政と医療現場の綿密 な連結の必要性と平時におけるシュミレーション の重要性を示す内容でした。またこのような感染 症対策・治療の法的整備としてその一部改正の骨 子について稲福恭雄県衛生環境研究所長からご説 明いただきました。

発言席では、かじまやークリニック山里将進先 生からご自身が携わる在宅医療の中での問題点を 多々指摘して頂きました。在宅介護サービス整備 の遅れは制度の不整備がその根源にある実情につ いても報告して頂きました。今後の在宅医療・在 宅介護への移行をはかる上での矛盾点、問題点は 山積しており、その早急な解決が求められます。

そんな中、後期高齢者医療制度とともに様々な 問題をはらみながらも走り出した特定健診・特定 保健指導制度についてですが、そのFAQ につい ての記事が、少しでも現場の混乱の解消になる事 を祈念します。

しみず内科胃腸科21 清水健先生のロゴマーク に込められた21 の数字は、診療時間が示したもの との事ですが、走り始めた21 世紀をとあいまって キュートな印象をうけるものでした。

今月号でも珠玉の随筆が4 編寄せられました。 会員の諸先輩の皆様の懐の深さに恐れ入りるばか りで人になげかけられるもののない己の哀れを感 じます。

さて、嶺井リハビリ病院久手堅憲史先生の魔 女の一刺しにはじまる痛みと付き合いですが、そ の中での希望と落胆、癒すはずの場でご自身が癒 されていく事に気づき、その経験を財産と呼べる ようになったとの事。紺屋の白袴、髪結いの乱れ 髪とともに、医者の不養生ととかく世間に揶揄さ れがちな我々自身の健康ですが、会員の皆様も、 お忙しい中十分にご自愛頂き、この長く暑い夏を 乗り切っていけますよう祈念いたしまして、編集 後記とさせて頂きます。

広報委員 豊見山直樹

前のページ | 目次 | 次のページへ