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お知らせ

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の
一部改正の概要及び留意点について

沖縄県衛生環境研究所所長 稲福 恭雄
同  上  衛生科学班長 玉那覇康二

わが国では、感染症対策の中心的役割を果たすために「感染症の予防及び感染症の患者に対する医 療に関する法律」(以下感染症法という。)が平成11 年4 月1 日から施行されています。その後、平成 14 年に発生した新型肺炎(重症急性呼吸器症候群: SARS)等の流行防止に対応するため、感染症法 の一部改正が行われました。さらに、平成18 年12 月8 日に2 度目の「感染症法」が改正され平成19 年6 月1 日より施行されています。改正内容については、1)生物テロや事故による感染症の発生・ま ん延を防止するための病原体等の管理体制の確立、2)最近の医学的知見に基づく感染症の分類の見直 し、3)結核を感染症法に位置付けて総合的な対策を実施することの大きな3 つの柱となっています。

今般の規制対象となる病原体等については、ヒトの病原性、生物テロとして使われる可能性、病原 体の国際的な評価を勘案して、一種から四種に分類を行っています。病原体等の所持に係る安全管理 を求めるとともに、生物テロ防止対策の強化を図るために、一種から三種病原体の所持については、 厚生労働大臣の許可、届出等により所持することや施設基準、保管、使用、運搬、滅菌等の基準の尊 守が求められています。(図1)(病原体等の管理規制、分類、詳細な基準についての情報はhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou17/03.html で確認することができます。

主に病院、診療所、病原体等の検査を行う機関等で臨床検体を取り扱い、業務に伴って病原体を同 定した場合においては、この時点で直ちに「所持」する者となるため、省令で定める一定の期間内に 当該病原体等を滅菌または譲渡する必要があります。

感染症サーベイランスのためには、これら病原体等を滅菌されてしまうと、感染症対策に必要なデ ータが失われてしまう恐れがあるので、二種病原体の場合は所持許可のある施設に、三種、四種病原 体等の場合にはいずれの施設にも、譲渡が可能のようにしています。なお、譲渡までの間も、当該病 原体等の適正な保管は必要なことから、施錠された保管庫への保管を義務づけています。

また、臨床検体から同定された病原体等を滅菌・譲渡を行うことなく使用される場合には、二種病 原体等にあっては事前の許可、三種病原体等にあっては事後の届け出をした上で、施設基準、保管等 の基準に適合した施設で所持することが必要となります。

さらに平成20 年5 月に感染症法が一部改正され、医師及び指定届出機関の管理者が都道府県に届出 する基準の一部変更が示されています。また、新型インフルエンザの発生まん延が懸念される状況にか んがみ、鳥インフルエンザ(H5N1)を 二類感染症に追加するとともに、感染 症の類型に「新型インフルエンザ等感 染症」を追加し、発生した場合に備え て、まん延防止が迅速に図れるように 入院、検疫等の措置の強化が図られて います。

なお、詳しい内容については、沖縄 県健康増進課及び保健所等お問い合わ せください。

図1

図1.一〜四種病原体等所持者と法律上の義務一覧表