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平成19 年度第4 回マスコミとの懇談会
「特定健診・特定保健指導」について

玉井修

理事 玉井 修

平成20 年3 月13 日(木曜日)那覇市医師会 館において第4 回マスコミとの懇談会が開催さ れました。今回のテーマは今年度から導入され る特定健診に関して取り上げました。4 月から 施行というのに、様々な調整が難航し、この時 期になってようやく形が見えてきたという事 で、特定健診の目的、特定健診の仕組みなどで きるだけ詳しく情報をマスコミに提供しようと いう目的で懇談会が開催されました。従来の住 民健診より更にメタボリック症候群にフォーカ スを絞った健診項目、受診者が受けやすいよう にやや簡略化された内容、健診の実施主体が保 険者(市町村)である事など、これまでにない 取り組みが要求されます。壮年期の男性肥満率 が50 %を超え、女性の肥満も大きな問題とな っている沖縄県においてこの特定健診によって 早期にメタボリック症候群を拾い出し、特定保 健指導に結びつけて行動変容を促し、ひいては 長寿県復活の起爆剤としたいものです。沖縄県 の健診受診率はこれまで20 %前後と他府県の およそ半分と言われています。外来受診率も全 国一低いという調査も出ています。沖縄県の傾 向として、20 代後半から急に肥満傾向が増大 し、健診を受ける率も低くて現状認識も甘く、 よって生活習慣病の早期発見早期治療に結びつ くことなく、ある程度年齢がいってから、どう しようもない状態で腎不全に至って透析治療を 受けたり入院治療を受けるという危険なパター ンになりやすいのが現状なのです。沖縄県ほど この特定健診の普及が求められる県もなく、あ らゆる手段を用いて特定健診の受診を呼びかけ る必要があります。今回の懇談会にも出てきま したが、マスコミが健診を受けましょうという 呼びかけをポジティブキャンペーンで盛り上げ ていけば、健診受診率のアップに繋がるかも知 れません。特定健診自体の取り組みが遅れて現 場ではやや混乱しています。市町村単位での取 り組みにばらつきがあるのも現実です。後期高 齢者広域連合との健診契約の締結もなされる予 定ですが、受診券がはがきで、小さな印字で印 刷されているなど、決してお年寄りに対して優 しい作り込みがなされていません。特定健診の 受託施設はインターネットのホームページで閲 覧可能な状態ですが、高齢者にインターネット 環境を要求しても無理があります。まだ実際に 動く前から、その運用に疑問符が多く投げかけ られている特定健診。また更に、今回の健診で は5 年後までに健診受診率が70 %に達してい ない場合は後期高齢者医療制度に対する交付金 を減額するなどのペナルティも発生する可能性 があります。人参をぶら下げてそこに誘導しよ うという政府のやり口には確かに釈然としない ものがあるのも事実ですが、健診そのものを広 く実施し、生活習慣病の早期発見、早期治療、 積極的介入に結びつけていくことは壮年期以降 のQOL に対してきっとポジティブな結果をも たらすと思われ、特に沖縄県においてはその効 果は大きいものと期待されています。いろいろ な問題が山積し、さらにいろいろな思惑が錯綜 し、動き出す前から混乱している特定健診・特 定保健指導。走り出す前から疲労困憊のマラソ ンランナーをイメージしてしまいます。沿道の 声援を受けて、無事ゴールまで走りきりたいも のです。

懇談内容

開 会

○司会(玉井) 皆様、こんばんは。本日は お忙しい中、沖縄県医師会マスコミとの懇談会 へご参加いただきまして大変ありがとうござい ます。

まず初めに本会を代表いたしまして、本会会 長の宮城信雄会長よりご挨拶をお願いいたした いと思います。

挨 拶

○沖縄県医師会長 宮城信雄

宮城信雄

皆さん、こんばんは。 本日は非常にお忙しい 中、当懇談会に出席を していただきましてあ りがとうございます。

今回は、特定健診に ついて懇談をさせてい ただきたいと考えております。

来月、4 月から特定健診が始まります。これ は40 歳以上75 歳未満の方に対する特定健診、 それから特定保健指導というのが保険者に義務 づけられています。保険者というのは市町村国 保、それから健保組合等、そういう保険者に業 務づけられるということになっております。き ょうはその新しい制度について本会の今山裕康 理事より説明をさせていただきたいと考えてお ります。

この制度の目的というのは、メタボリックシ ンドロームの早期発見、その予備軍とされた人 に対して保健指導を行うということにあります。 現在、国民医療費の3 割というのが生活習慣病 に起因するものによってかかっているというこ と。それから、亡くなっている方の6 割がやは り生活習慣病に起因する病気で亡くなっており ます。それから、肥満者の多くは糖尿病、高血 圧、高脂血症の危険因子というのを伴っており ますが、その危険因子というのが増えれば増え るほど心臓の病気、これは心筋梗塞とか狭心症 等の心臓の病気とか、脳卒中等の脳血管障害を 発症する危険というのが増えていくということ が言われております。そのために自主的に健康 増進、あるいは疾病予防の取り組みを働きかけ るということが医療保険者の役割として重視さ れてきております。

きょうは当制度を十分にご理解をしていただ くとともに、県民の皆様に周知をしていただくということで、なにとぞ忌憚のないご質問を寄 せてくださるようお願いをして、甚だ簡単では ありますが、挨拶に代えたいと思います。あり がとうございました。

○司会(玉井) それでは早速、当会の担当 理事でいらっしゃいます今山理事に特定健診に ついて解説していただきたいと思います。よろ しくお願いいたします。

懇 談

「特定健診・特定保健指導」
沖縄県医師会理事 今山裕康
今山裕康

今山でございます。

先ほど宮城会長から お話がありましたよう に、この健診の目的は メタボの早期発見、早 期治療であり、メタボ に対して早期に介入す るということが目的であるということで、最終 的には医療費が適正化されればいいということ で始まったものでございます。

まず、これまでの健診との違いということです。

スライド左側が本年度まで施行されている住 民の基本健診で、平成20 年度からスライド右側 の制度になるということです。一番大きい違い は何かというと、40 歳〜 74 歳のほとんどの方が 対象であるということです。しかもこれが保険 者の義務になったこと、ここが一番の目玉でご ざいます。今まで健診は市町村が施行していたのですが、今度は保険者がやらないといけない こと、しかもこれが義務化されたということ、 ここが大きな違いであるということをご理解し ていただきたいと思います。

スライド1

スライド1

スライド2

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今まで健診は市町村がやっていたわけです。 もともと被用者保険の本人は労働安全衛生法と いうところで事業主健診というのがございます ので、スライドの上半分は今のままで変わりま せん。ところが被用者保険の被扶養者の部分は 今まで住民健診に任せていたわけですけれど も、これを保険者の責任でやりなさいというの が今回の大きな違いでございます。

スライド3

スライド3

先ほども会長が言われましたように、40 歳 〜 74 歳までの全被保険者、被扶養者も含む全 被保険者が対象であるということです。

特定健診、保健指導は、実を言うと、昨年辞 められました辻前事務次官が非常に熱心で、ことのほか思い入れもあったかというふうに聞い ております。

スライド4

スライド4

最初に特定健診、保健指導が医療費を下げる かは、不適切な表現かも知れませんけど、全く エビデンスはありません。これはちょっと私の 個人的な見解ですが、世界でも類を見ないトラ イアルだと思っております。

これで本当に結果が出せるかどうかわからな いのですけれども、まずこの目的はさっきも申 し上げました早期介入、早期に行動変容という ことであります。そして、生活習慣を予防する ための保健指導を必要とする者を抽出するため に特定健診をやるということです。そこで抽出 された人たちに早期介入して行動変容を起こさ せて、結果的に生活習慣病の予防をする。また 評価としては糖尿病の有病率であるとか、予備 軍の数値目標、そういったものをもって評価を していこうというのが今回の今までの健診と大 きく異なるところでございます。

スライド5

スライド5

簡単に健診と保健指導のプログラムの流れと してはどういったことになるかというと、まず 保険者が特定健診・保健指導の計画を作成いた します。そして実際にその計画にのっとって健 診をしていただきます。健診は保険者ができま せんので、アウトソーシング即ち外部委託する と思います。その結果をもって階層化ならびに 保健指導の対象者の選定を保険者がやります。 そして、その対象者に対して保健指導を行いま す。ここは自前でやる保険者もあれば、アウト ソーシングするところもあると存じます。保険 者がその結果を集積し、再評価を行い、次の行 動計画に反映させるといったサイクルが回って いくという流れになっております。

スライド6

スライド6

特定健診の健診項目について、国の標準的な 健診項目として出されているのがこの欄でござ います。身長、体重、肥満度、腹囲、それから 理学的所見、血圧、血液検査等、脂質、肝機 能、代謝系、いわゆる糖尿病ですね、それに尿 検査、これが国の標準的な健診項目です。沖縄 県ではこれに加えて尿酸、それから血清クレア チニンも必須項目として加えられております。 これはなぜかと言えば、沖縄県の人工透析増加 率が非常に高いからです。特定健診によって少 しでも早く人工透析に移行しそうな方々が見つ かれば、人工透析導入が少しでも減るのではな いかというふうに理解しております。

これは今の健診項目に加えて詳細な健診項目 ということでやられる項目であります。貧血の検査、診察とか、過去に貧血の既往症をもって おられる方は貧血の検査をやるということで す。次いで、血糖値、脂質、血圧、腹囲、この すべての基準に該当される方については、次年 度(今年度はこういったデータがない保険者が 多いと思います)スライドにあるようなことに 該当する受診者は心電図、眼底の検査を行うこ とになっております。

スライド7

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スライド8

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その結果が保険者に返るわけですけれども、 保険者のほうではそれをもって保健指導の対象 者を選定するという作業をやります。その選定 する作業においては、健診の結果、それから質 問票という問診票がございますが、後ほど出て まいります。それから生活習慣上の課題、そう いったものを加えて判定をすることになります。

ここで言っていいかどうかわかりませんが、 保険者の財政状態というのも非常に関与してい るものと思われます。

スライド9

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実際に今度は対象者に対して保健指導を始め るわけです。まず最初は情報提供というのがご ざいます。この情報提供というのは、対象者即 ち健診をされた全対象者に対して情報提供をや るということになっております。従って健診を受 けられた全受診者に結果を返すときに情報を提 供するということです。次に選定されました対 象者ごとに動機付け支援、積極的支援という保 健指導を行うわけであります。“動機付け”とい うのは、自助努力による行動変容を可能となる ように動機付ける。要は自覚してくださいよと いうことです。動機付け支援は自覚させて行動 変容を支援していこうというやり方であります。

積極的支援というのは、自覚しているだけでは なくて確実に実現できる目標を設定して、継続的 に支援していく、これが積極的支援でございます。

それぞれの支援において、その結果をもって 対象者ごとの評価をやるということであります。

評価は何をもってやるかというと、まずマス(全体)としてのアウトプット(事業実施量)、 要するに実施の回数や参加人数は大体どんなも のであったかということであります。

スライド10

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スライド11

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スライド12

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それから今度はアウトカム(結果)の評価として は糖尿病の有病者とか、予備軍の減少率であると か、保健指導の効果とかいったものを評価します。

それから、プロセスですね。

加えて健康度の改善と医療費適性化の効果な ど、こういったことをもって評価をして次年度 の計画を策定するということになるわけです。

今までのものが特定健診と特定保健指導の全 体的な流れでございますけれども、各保険者と いうのは、たくさんございます。この保険者が 健診をやる一つ一つの機関と、一つ一つこうや って契約していたら、もう、とてつもない数の 契約を結ばないといけないということでありま すから、保険者もある程度集まって、そして健 診機関もある程度集まって、ここで契約をして、健診の委託契約を結ぼうというのが集合契 約という考え方でございます。

スライド13

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沖縄県ではどういうパターンで契約をしてい るかということです。ここでは、市町村国保の ことを書いてございます。市町村国保の場合に は、いろんな市町村、市だけではございませ ん、群、町、村もありますけれども、そういっ たところの市町村国保が集まりまして、那覇市 を代表とする1 つの集合体をつくっておりま す。健診を実際にやる側は、各地区医師会がと りまとめる。各健診機関を地区医師会がとりま とめます。この地区医師会をまた県医師会が取 りまとめて、先ほど申し上げた那覇市を代表と する市町村国保の集合体と契約を結ぶわけで す。ただし、ここに国保連合会というのを書い てございますけれども、実際は那覇市がやるわ けではなく、国保連合会が事務代行をやってお り、実務は県医師会と国保連合会が委託契約の 話し合いをやっているところです。

ただし、ここで契約を結んだからといって、ほ かの健診機関と契約を結ばないということではご ざいませんけれども、概ねこういったことで、今、 市町村国保とは集合契約を結んでいます。

社会保険の被扶養者に関しては、どうしても 住んでおられる市町村に頼るしかございません ので、社会保険にかかる被扶養者にかかる契約 を今県医師会とやっているところであります。 代表保険者は社会保険事務局でございます。

特定健診が実際どうなるかというと、保険者はまず対象者に対して新たに健診を受けてくだ さいよという受診券をまず発行します。次に受 診者は健診機関に予約をしないといけません。 この健診機関というのは県や医師会のホームペ ージ等で掲載されてございますので、受診者が 健診機関を見つけて自分で予約して受診すると いうことになります。次はその結果を健診機関 が受診者にお知らせするということをやります。 健診機関は請求を直接保険者にするのではなく て、医療保険と同じく保険者との間に代行機関 という機関がございます。市町村国保であれば 国保連合会、被用者保険であれば支払基金とい うところに健診のデータを送付いたします。そ してデータを送付すると同時にかかった費用に 関しては、ここに請求をしていただく。そのと きに代行機関は最初に受診券を発行した、受診 者のリストを保険者が出しておりますので、こ のデータと照合いたしまして、費用を支払うと いうことをやります。代行機関はまたそのデー タを保険者に返して、そしてここで費用の決済 をやります。これが特定健診というものの仕組 みです。

スライド14

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このデータを保険者は集めてきて、保健指導 の対象者であるかどうかを選定いたしまして、 対象者に対しては保健指導をやるようにという 通知をするわけでございます。大体こういった 流れになっております。

今度の場合は、社会保険、被用者保険の被扶 養者です。これはどうするかというと、保険者 が直接住んでいるところがばらばらですので、事業主としてやることは無理ですから、委託する ことになるわけです。ですから保険者は、社会 保険事務局ですけれども、これが健診機関、こ こはとりまとめたときの県医師会ですね。県医 師会に委託して実際には被扶養者も市町村国保 と大体同じような流れで健診を受けていただく ということになります。ただし、ここの代行機関 が支払基金になるというだけでございます。

スライド15

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ここで個別健診の単価というのが出ておりま す。個別健診で6,050円、集団で5,000円とい う単価です。私が知り得る限りでは全国一安い 単価でございます。これはどういったいきさつ でこういったことになったかというと、まず最 初はやはり受診率を上げたいためです。少しで も健診をたくさん受けていただきたいというの が第1点。

スライド16

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もう1 つは財政事情です。国からの補助が、 国と県と市の三者が1,760 円という補助金を出します。国と県で合わせて3,520 円になるわけ ですけれども、残りは市もしくは受診者の負担 になるわけです。沖縄県の場合には市町村国保 の財政状況が非常に悪いです。保険料でまかな う率というのが非常に全国一悪い。そういった ところで市町村国保にも負担をかける、それか ら個人にもまた負担をかけなければいけないと いう、そういった二重の苦しみがあるわけで、 そういった中でこういった健診単価を設定した わけでございます。これで少しでも健診率が上 がるということを願っているわけです。

スライド17

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実際にはさっきも言ったような流れです。市 町村国保が受診者に受診券を発行して受けると いうことです。

スライド18

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これが実際の受診券でございます。これはま だ案ということでございますけれども、実際の 受診券は大体こういったはがき大のものがやってまいります。もう実際にはすでに発券されて いる一部の市町村があるやに聞いております。 こういったものが各受診対象者に配られるとい うことになります。

スライド19

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スライド20

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スライド21

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受診者は健診実施機関に行くわけです。

この健診で特徴的なことは、データがすべて 電子化されていかないといけないということで す。しかも、XML 形式という国際基準のデー タに全部置き換えて、そして、データのやりと りをやるということをしないといけないという ことが1 つの特徴であります。

健診機関は結果を受診者に通知すると同時 に、そういった電子データで代行機関にデータ を渡すということをやります。

スライド22

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代行機関はここで費用の決済をやるととも に、この健診データを各保険者に返す。そし て、各保険者はそういった選定、さらに情報提 供をやるということでございます。

この流れをちょっと詳しく書いておりますの で見てください。

ここでちょっと見ていただきたいのは、健診 機関が結果を出すときに、あなたはメタボリッ クシンドロームの基準に該当するか、予備軍に該当するのか、該当しないのか、それとも判定 不能なのか。こういったことの結果を本人に通 知をします。この健診機関であなたはすぐに保 健指導の対象になって動機付け支援であるだと か、積極的支援の対象になりますよということ は判定をしません。ただし、メタボリックの基準にあるのか、予備軍なのかということの判定 はこの健診機関がやって本人に通知するという ことであります。ここは知っておいていただき たいと思います。

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スライド29

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スライド29 は実際にやる問診票です。それ と健診の結果を書く票でございます。大体こういった項目について質問をされるということで す。あと、これは字が細かいので後で見ておい てください。

スライド30

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最終的には受診結果票というのを健診機関が 受診者に対して発行します。メタボリックシンド ロームの判定をやります。基準に該当するのか、 予備軍該当なのか、非該当なのか、判定不能な のかというのを、ここの部分で判定されたものが 各受診者に通知されるということであります。

スライド31

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次に、保健指導でございます。実際には健診 の結果を保険者が集め、階層化を行い保健指導 の対象者を選定し保健指導の対象者に受診券を 送付するということをやります。まず階層化の 最初ステップ1 というのは、腹囲即ちお腹のま わりです。腹囲の測り方というのはどうするか というと、まず立っていただいて、裸というか 直接測るわけですけれども、立った位置で楽に 呼吸をして息を吐いたときにへそのまわりで測ります。腹囲が男性85cm 以上、女性90cm 以 上、もしくはそれに満たないけれども、BMI (ボディ・マス・インデックス)が25 以上の受 診者を抽出します。ステップ2 では血糖、脂質、 血圧、並びに質問票の項目からスライドにある ような項目について該当する方を抽出していき ます。

ステップ3 は、ステップ2 該当者の中から (1)腹囲が該当する方で、ステップ2 の1)〜4) のリスクが2 つ以上あれば積極的支援の対象、 この中のリスクが1 つであれば、動機付け支 援、何もここにひっかからないのであれば情報 提供というふうに選定します。

(2)の場合、即ち腹囲は該当しないがBMI が25 以上の方です。ステップ2 のリスクが3 つ 以上の場合には積極的支援、1 つまたは2 つの 場合には動機付け、ゼロであれば情報提供とい った階層化をここでやります。

スライド32

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ステップ4 は最終的な選定です。ここでは、 服薬中の方は対象外、さらに前期高齢者65 歳 以上75 歳未満の方については積極的支援の対 象になっても動機付け支援、1 つランクを下げ るということをやります。予防を期待できるよ うな保健指導は65 歳までに行われてきている、 もしくはあまりやることでQOL の低下につな がるのではないかということで、こういった前 期高齢者に対しては1 つランクを下げるという ことをやります。

そういったことで標準的な保健指導が始まるわけですけれども、対象者が自ら生活習慣におけ る課題に気づき、健康的な行動変容の方向性を 自ら導き出せるように支援することであります。 それから、健康的な生活を維持できるように支援 するということが大きな目標でございます。

スライド33

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情報提供というのは、先ほども言いましたよ うに、全受診者が対象ですから保険者が郵送も しくは医療(健診)機関から配送される場合も あると思います。

それから、動機付け支援です。これはまず最 初、行動計画策定、それから行動計画の実績を 評価するということです。行動計画をつくるの はこういう医師、保健師、管理栄養士の面接・ 指導のもとに策定をするということです。計画 の策定を指導したものが計画の実績評価を行 う。これが動機付け支援です。

スライド34

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それから、積極的支援はこれに加えて適切な 働きかけを継続する。ここの継続というのが非常に大事なことでございます。進捗状況、途中 での評価、それから実績の評価をやるという、 この積極的支援というものがあるということで ございます。

スライド35

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動機付け支援というのは、面接でやる場合は 1 人20 分以上の個別支援、もしくは1 グループ 80 分以上のグループ支援というのをやります。 評価は6 カ月後の評価でございます。個人支 援、グループ支援、電話、e-mail、こういった ものを使いながら6 カ月後に評価を行うという ことであります。支援の内容についてはスライ ドを参照ください。やっぱり一番大切なことは 気づかせるということです。気づかせるという ことと、自分で行動目標や評価時期を設定する ことを支援する。要するに自分で何でも自己決 定をしていただくように、即ち自分で自覚して 自分で何でもやるように、上から押し付けるの ではなくて自分が自発的にやるんだということ をとにかくやっていただくということが支援の 目玉というか、一番大事なところでございま す。次いで6 カ月後に身体状況や生活周辺に変 化が見られたかについて評価をやるということ でございます。

積極的支援というのは、今度は支援形態が同 じではございますけれども、合計が180 ポイン ト(沖縄県では190 ポイント)というポイント 制になってございます。

先ほどの動機付けに加えて積極的に関与して 実施状況の確認、それから必要に応じた支援をするということ。また、動機付け以上にちょっ とした介入をしないといけないということです ね。それから、必ず中間評価をやる。取り組ん でいる実績結果の評価をやって、再アセスメン トをやる。必要ならばまた行動目標計画の設定 を行うということをやります。そして、支援の ポイントとしては合計180 ポイント、いろんな ことでポイントがございます。個人面談を5 分 間以上やったら何ポイントというので、ポイン トが決まってございますので、そういったこと に関しては180 ポイント以上やるということで す。そして、最終的には6 カ月後に評価をやっ て、身体状況、生活変化がみられたかについて また確認をやって、積極的支援をやるというこ とでございます。大体こういったことが保健指 導でございます。

スライド36

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質疑応答

○司会(玉井) 今山先生、どうもありがと うございました。

確認なんですけど、保険者が健診をするのは 義務ということでしたけれども、この義務が果 たせなかったら何かペナルティがあるんですか。

○平専門監

平専門監

後期高齢者医療制度 が4 月から始まるんで すけど、そこの後期高 齢者75 歳以上の新たな 保険制度ができて、そ の財源は国と県、市町村が半分は負担するんです。残りは保険者が負 担するんですね。保険者と、それから1 割は後 期高齢者が保険料として払うという形なんです けれども、各保険者が支援金としてお金を出 す、共済とか、健保連とか、市町村国保とかお 金出をしていくんですよ。それで後期高齢者の 医療費をまかなっていくんですけど、その割 合、各保険者の出す割合を± 10 %で、例えば 成績がよければ払うお金は少なくて済むよと。 成績が70 %に達してなかったときには、ペナ ルティで後期高齢者の保険に多くお金を出さな いといけないというような仕組みになっている んですよね。そういう形でペナルティがありま す。

○司会(玉井) はい。このペナルティのこ とも、実はあるわけなんですね。

マスコミの方から何か確認したいこと、何か ございますか。

○新垣(琉球新報)

新垣(琉球新報)

琉球新報の新垣です。 説明ありがとうござい ました。

今のペナルティの話な んですが、40 歳以上で 受ける受診者が受けなか った場合、受診者に対 するペナルティというのはあるんでしょうか。

○平専門監 受診者に対するペナルティとい うより、保険者が例えばペナルティを払うとな ると、多くお金を出さないといけないんですよ ね。保険というのは保険料でまかなっているわ けですから今まで払ってきた保険料ですべてが まかなえるのであれば、個人に負担が追加され ることはないと思いますけど、集めた保険料だ けでは払いきれないとなると、ややもすると保 険料を上げざるを得ない可能性だってあるわけ です。そうなると個人の責任になってしまうわ けです。

ですから要は、自分は健診を受けたのに何で 保険料は上がるのかと。受けない人が多くいれ ばいるほど、受けた人にも影響が被るという仕 組みになっている可能性があるわけです。そう なるかどうかは実際やってみないとわからない ということです。

○新垣(琉球新報) ちょっと関連して、そ もそも論で、これをやると医療費の抑制につな がるかどうかというところで、逆に潜在的な予 備軍を発見してしまって、それが特定保健指導 という形でこれが保険適応なのかどうかちょっ とわからないんですけれども、あるいは医療機 関で治療を受けるということになれば、掘り起 こしによる医療費増大、これがまたゆくゆくは 保険料に跳ね返る。行くも地獄、やらないのも 地獄みたいな、そういう非常に悪いイメージが あるのでそのへんはいかがでしょうか。

○司会(玉井) 今山先生、長い目で見てや っているわけですよね。

○今山理事 言い分はいろいろあると思いま す。見方はいろいろあります。これがまず何で 始まったかということの大元から考えなければ いけない。この大元は、財政諮問会議と厚生労 働省の戦いであります。いわゆる医療費抑制を するために数値目標を出せと言っている財政諮 問会議に対して厚生労働省は2 つのスキームを 出してきた。1 つがこの生活習慣病の予防であ って、もう1 つが平均在院日数の短縮です。特 定健診、特定保健指導はその1 つのスキームで す。でもはっきり言って医療費が下がるかどう かわからない。ただ、厚生労働省の考え方とい うのは、そういった掘り起しがあっても、より 重症化する人たちが少なくなれば医療費は少な くなるのではないか。要するに長い目で見た場 合のときの医療費は下がる。しかし確かに目先 の医療費は上がるかもしれません。しかし、重 症化を未然に防いで医療費の増大を防ごうとい うことが医療費適正化の計画の大目玉だという ふうに理解しております。ただし、先ほど言い ましたようにエビデンスはありません。

○司会(玉井) 何かほかにありませんか。

○平専門監 特定健診の効果はどうかという ことがありますけど、逆に沖縄ほど健診率を上げるのが重要な県はないんです。実は沖縄県は 3 歳児健診、乳幼児健診から受診率は全国最下 位なんです。子供のときからですよ。沖縄の人 は平然と「命どぅ宝」という言葉を使いますけ れども、自分の子供を3 歳児健診に連れて行く ということも全国一低いところです。

それと健診受診率と老人医療費の相関関係と いうのがあるんです。長野県なんかは健診の受 診率が非常に高いんですね。1 人当たり老人医 療費は非常に低いんです。沖縄県は受診率は非 常に悪く老人医療費は高いんですよね。北海道 なんかもそうなんですよ。そういう相関関係が あります。

それともう1 つが糖尿病を見てください。糖 尿病の外来患者数、日本一少ないんです。とこ ろが糖尿病腎症から人工透析に入る人の割合は 全国第2 位なんです。北海道が第1 位なんで す。もう圧倒的に高い。結局、外来に行かな い、住民健診で血糖値が出て、ドクターから 「あなたは医療機関へ行って受診しなさい」と 言われても受診してない人の割合が圧倒的に多 いんです。そういう実情があって、老人で入院 費用を払っている割合が非常に高いんですね。 これが特徴なんですよ。

厚生労働白書でも沖縄は入院医療費が非常に 高くて、外来医療費が非常に低い。医療の特徴 として、メタボリック保有者割合が非常に高い という県は沖縄県だけで、ほかの県はいろんな グループ化されているんですよ。ところが沖縄 県だけ1 つになっているんですよ。沖縄県と同 じような県はどこにもないんです。沖縄県は本 当に特定健診の効果がどうのこうのというより も、健診をきちんと受けさせて、本人の健康状 態をきちんと知らしめていくということ、これ は重要なことなんですよ。だからそれをそうい う発想でやれば、その後どういう効果が出てく るかというのは、やはり特定保健指導がどの程 度効果があるかというのは、いろんなやり方を 考えていかないといけないと思うんですけど、 特定健診はきちんと受診率を高めていかない と、健康長寿にもつながらないだろうというふ うに思います。

○司会(玉井) 今の住民健診の受診率が 20 %ぐらいですか。

○大城(医師会)

大城(医師会)

前から沖縄県の受診 率が低いのはわかりき っていることで、これ は全然改善していない わけですよね。改善さ せるためには具体的な 方策としては、多分マ スコミの皆さん方の応援も必要だろうと思いま すし、そのあたりの具体的な方策を県としては 平さんどういうふうに考えておられますか。

○平専門監 それで今回、県医師会とか地区 医師会にお願いをして、いろんな医療機関に健 診機関になってもらおうと思ったのがまず1 つ なんですね。なぜかといえば、まずは今までの 住民健診が集団健診中心なんですね。年に1 回 とか2 回。受診機会が少ない中で、やはりその 日に都合が悪ければ受けられないと。受けられ なかったらもうずっとその1 年間受けられない という状況でしたので、今回いろいろ受診機会 をまず増やしてみようと。ですから地域の各診 療所のところにも健診できるようにしてくださ いということで、県医師会にお願いしたんで す。住民がいつでも身近なところの診療所で時 間があったときにぱっと受けられるという仕組 みをまずつくりましょうと。これがある程度少 し芽生えてきたかなと。数としてはまだ少ない と思います。それをまず増やすことも重要だと 思います。

それから、普及啓発ということでいろんなマ スコミを使ったり、国保連合会でテレビコマー シャルを流したりとか、ラジオでやったりとか やっていきますけど、まずやるべきことは普及 啓発と健診機会の拡大をやっていこういうこと をまずやるんですけど、住民が一歩踏み出すと いいますか、そこらへんまでもってくるのにど ういう形でやるべきかというのは引き続きずっ と検討していかないといけないです。

ですから医療費適正化計画にはいろんなこと を書いてあるんですけど、それだけではまだ不 十分だと思っています。ですから実際の特定健 診が始まった段階で、ずっと評価していきます ので、どこどこにもう少し力をいれないといけ ないとか、そこらへんはずーっと検討していき ながら早めに対策をやっていきたいと思ってい ます。ですから今まで住民健診がずーっと 30 %、25 %とか低い状況の中でなかなか動か なかったということがありましたので、身近な 診療所でいつでもできるようになれば、少し動 いてくれるかなとちょっと期待はしています が、どこまで動くはちょっとやってみないとわ からないんです。その結果を見て、また別の新 たな対策を考えていきたいなというふうに思っ ております。

○司会(玉井) ありがとうございます。

マスコミの皆さん、スライド18(58 頁)受診 券をちょっと見てください。この受診券、今、平 専門監から一歩踏み出すという言葉が出ましたけ れども、この受診券を受け取った県民の方がこれ を見て健診を受けますかね。マスコミの方、どう でしょうか。感想をお聞かせいただきたいんです けど。

○大城(エフエム沖縄)

大城(エフエム沖縄)

生活習慣病を予防し て生活習慣を改善して 健康になるためのそう いった情報が必要な人 を抽出するという理想 は非常に素晴らしいと 思うんですが、私は対 象の年齢ではないんですけれども、会社で健康 診断の予約をとってくださいということで、健 保のほうから紙が実際にきて、予約をして総務 に提出をしなさいというふうに言われるんです けれども、社内でもそういった健診の紙が実際 に総務から配られても、やっぱり受診しない。 そして、入社して10 年経つけど受診したこと ない人、人間ドックに入ったことがない人がい るのも事実なんですね。なので、実際こういった受診券が送られてきても、県民の性格なども 考慮したときに、若干受診率はアップするかな とは思うんですが、5 年後に65 %とか70 %と いう水準にもっていくには、ちょっとまだ受診 券の状況では足りないのかなというのが率直な 感想ですね。

○司会(玉井) そのほか何かご意見ないで しょうか。

はい、照屋先生。

○照屋(医師会)

照屋(医師会)

ふれあい広報委員の 照屋と申します。

とても個人的な意見 ではありますが、一言 述べさせてもらいます。 今回の「特定健診・特 定保健指導」の対象年 齢は、40 歳〜 74 歳までという事です。前回の 「マスコミとの懇談会」で、那覇市医師会の崎 原永辰先生が、肥満比率が25 歳から全国平均 と比較して、加速度的に急上昇していくという 興味深いデータの内容を話されておりました。 学校卒業後、就職しフレッシュマンの頃から 「飲み放題、食べ放題」に通って、食べなきゃ 損、損という感じで、過食・飽食を繰り返しま す。本当に、最近の外食産業は、ハイパーカロ リーという面で多少問題があると思います。久 しぶりに会った甥っ子、姪っ子もほとんどメタ ボになってしまっています。そこで、可能であ れば、「特定健診・特定保健指導」を25 歳から 導入する事を切望いたします。予算がかかると いう事は重々承知しておりますが、予算をかけ てでも「25 歳」という年齢をぜひ行政側のほ うで考慮して頂き、対処してもらいたいと思い ます。

「25 歳」の話が出てきますと、流れ的に「小 中学生」はどうなのかという話になりますが、 そうすると必然的に「食育」の話になってきま す。この「食育」に関しましても、行政側に予 算など格段のご配慮を頂きたいと思っておりま す。これから10 年後、15 年後、今回のこの健診制度が、継続出来ているかどうか疑問です が、15 年後に、40 歳を迎える世代を、今から 何とかする方向性を早めに打ち出さないといけ ないと思います。

最後に、「動機付け支援」や「積極的支援」 の話もありましたが、それこそこの「25 歳」の 世代に「動機付け支援」をしないといけないと 思っております。

○司会(玉井) 平専門監、そういうことで きるんですか。

○平専門監 情報として、今、市町村では40 歳からは遅いと。沖縄は、20 代からもう断然肥 満が全国よりオーバーしているんですね。です から節目健診、例えば35 歳とか30 歳とか25 歳 の方の節目健診という、この特定健診とは別の 費用で健康増進法に基づいてやる市町村がかな り増えているということで、県としてもできる だけそういうことに取り組んでいただきたいと いうことで市町村には話してあるんですけど。

今回、皆さんの職場健診の受診率も特定健診 の受診率に加算されるんですよ。被扶養者だけ じゃないですよ。職場健診でやった健診率もこ れに加算されます。例えば健診を受けた方と健 診を受けてなかった人がいて、健診を受けなか ったために70 %に達しなかった場合に、先ほ ども言いましたが、保険料が上がる可能性が十 分に考えられるんですね。そうなるとあなたの せいで私の保険料まで上がらざるを得ないとい うことが出てくるわけなんです。ですからきち んと自分の健康は自分できちんと守っていくこ とも重要なんですけど、自分と同じ働いている 同僚を保険料を上げないようにするということ も重要だということなんですよね。

○司会(玉井) 村田先生。

○村田(医師会)

村田(医師会)

広報委員の村田です。

先ほど新垣さんが掘 り起こしをしたために、 医療費が上がるんじゃ ないかな、今山先生は 慎重論でやってみない とわからないと言っていましたけれども、私は 職場で働いている感触からすると、これは絶 対、もし動機付けがうまくいって、疾患が減れ ば医療費は減る。というのは、例えば心臓病で いうと、狭心症を起こして内科的に治療をしよ うとしても、ステントを入れるんですけど、そ れだけでも1 人当たり150 万円ぐらいの医療費 がかかるんです。これを手術をするとなると、 優に500 万円とか、合併を起こしたら1 人で 1,000 万円医療費を使ったりするんです。沖縄 の場合は、これがなんと50 歳代ぐらいでどん どん起こる。こういう患者さんが。本土ですと 70 歳ぐらいになって起こるのが50 歳代で起こ る。そうすると50 歳代で起こる1 人をこうい う動機付けを行って、せめて70 歳ぐらいに発 症してもらうという事で、20 年間の保険料が 節約できるんです。

それともう1 つ、これは個人の意見ですけ ど、指導をしても本当にこれにのって自分の生 活習慣を変える人がどれぐらいいるかと。私は 自分がアウトドア派ではないのでよくわかりま すけど、多分、指導しただけでは根本的には変 わらないんじゃないかなと思っているんです。 もしこれを変える何か力があるとすれば、医療 機関がもっと積極的にかかわって、1 つは、や っていることの達成感というのを個人に与える ことと、もう1 つは1 人でしこしこやってもな かなかのらない。グループをつくって出会いの 場を医療機関が提供するような取り組みをすれ ば、仲間ができてその生活習慣が変わる。この 2 つが個人的にはポイントじゃないかと思って おります。

私、今度4 月から久米島病院の院長として赴 任するんですが、ちょうどいい機会なのでぜ ひ、久米島というのは9,000 人ぐらいの小さな 集落なので、そういうことをやってみてアウト カムがどうなるかということをぜひやってみた いと思っております。もしうまくいけば、マス コミの方にこんなにうまくいきましたというこ とをアピールしますので、ぜひ取材に来ていた だきたい。1 カ所でこういうことはおそらく県民の意識を変えるためには、どこかでうまくい って、これをマスコミの方が大々的に取り上げ てくださって、あ、そうかと。そうならば自分 たちも同じ方法でやってみればうまくいくんじ ゃないか。それが沖縄の長寿復活につながるん じゃないかというふうに一人一人に思わせない ことには、多分大きな改善はないんじゃないか なと、個人的に思っております。どうかよろし くお願いします。

○司会(玉井) マスコミの方から何かご質 問とかありませんか。新垣さん。

○新垣(琉球新報) 個人的にはこれが実施 されて生活習慣病が減るということは大変いい ことだとは思っているんですけれども、どうし てもいろいろ考えてしまうところがありまして、 受診券の話が出たので、まず入り口論として行 きたくなるかどうかというときに、いくら払わ ないといけないのかというのは大事だと思うん ですね。6,050 円、集団健診5,000 円とあります ね。実際、自己負担、個人的な負担というのは いくらぐらいになって、それが今までの住民健 診とか、社会保険の健診などとの差額はどれぐ らいあるかというのは非常に気になるところで すね。やっぱり村田先生がおっしゃったように、 楽しく達成感が楽しめてみんなで盛り上げてい こうと。そういう雰囲気をつくり出すのが一番 大事なのかなと思っていますが、入り口論とし て自己負担はどれくらいになるんでしょうか。

○司会(玉井) 平専門監。

○平専門監 自己負担は各保険者で決めてい く形になります。例えば公費負担ですから、 国・県・市町村、市町村の一般会計のほうの市 町村なんですよ。実施するのは市町村国保なん ですね、特別会計。ですから実際、補助率は 5,000 円近くになると思いますけど、例えば個別 健診であれば6,050 円ですので、1,000 円ぐらい 取るところもあるかもしれません。無料のとこ ろもあります。一般会計から持ち出してやろう というところもあるし、それからその市町村国 保の中で負担していこうと、保険料の中で負担 していこうという部分もあろうかもしれません。それから、被用者保険については多分、無料の 方向がまだ決まってはいないですけれども、そ ういう方向にいくんだろうなと。

ただ、普通の健康診断に行ったら保険きかな いですから、5,000 円取られますよ。それが例 えば1,000 円で健診が受けられる。はっきり言 えば安い健康診断なんですよね。

僕は一歩踏み出すために何が必要かという と、この意識を変えるためには本当は特定健診 がありますよとか、そういうことです。日頃か ら、だから各市町村が、今、健康づくり事業と かいろんなことをやっています。読谷村や南城 市がいろいろ取り組んでいます。日頃からの健 康づくり事業をいろいろやっていくということ で、やっぱり健康に対する意識をもっている人 を増やしていくしかないんですよ。裾野を広げ ていかないと、その中で特定健診、例えば 1,000 円ぐらい出して、あるいは無料でもあな たの健診結果が出ますよと。健康増進計画でい う通常のポピュレーション・アプローチといい ますか、そういう日頃からの健康づくり、それ を各市町村がきちんとやっていくということが 重要だと思います。

○司会(玉井) 宮城会長。

○宮城会長 健診料については、今山先生が 全国一安いという話をしていますよね。医師会 としては7,000 円以上ということを設定してい たわけですよ。保健所はもっと安くということ を言ってきていたんですけれども、医師会のほ うが妥協してかなり安い価格で設定をした。こ れはやっぱり受診率を高めてほしいということ が1 つあるんです。

それと、自己負担が増えたら受診率が減るか といったら、そんなことはないです。今でも住 民健診やっていますよね。住民健診の中で自己 負担ゼロのところから2,000 円、あるいは 3,000 円近く取っている自治体があるんです。 じゃその自己負担が増えていけば受診率が減っ ていくかといったら、そんなことは全くない。 自己負担が高くても受診率が高い自治体はいく らでもあるんです。

ということは、先ほど平専門監が言ったよう に、日頃から住民健診、健康に対する啓蒙がそ の自治体が一生懸命やっているかどうかで受診 率に差が出てくるんです。ですからそういうこ とをやっているところは、自己負担が高くても 健診率は高いですから、自己負担の高さで受診 率は変わらないとは思います。

たた、医師会としては安ければ受診しやすい だろうということで低く抑えてはいるんですけ れども、その結果、自己負担を求めない自治体 が非常に増えてきています。今度の健診では、 そのへんのところもきちっとアピールしておか ないといけないですね。

マスコミに協力してほしいというのは、健康 に対してキャンペーンをはっていくということ です。住民一人一人が健康を保つためにはどう したらいいのかというキャンペーンをぜひやっ ていってほしいということです。

○平専門監 特定健診を受けて、あまりに悪 い結果が出たらすぐ受診勧奨なんです。特定保 健指導をやるのは、そこまで至らない方々、そ のまま放っておいたらもう受診せざるを得なくな るよというふうに思われる方々を行動の変容を もたらすために、日頃からの生活習慣の改善に ついて指導していこうということなんですね。

ですからすぐ受診しなければいけない人を見 つけて、そういう人が例えば今より増えると、 受診率がアップします。逆に言えばこれは本当 はいいことなんですよ。早く受診させて重症化 させないということですからね。そういう人が 増えても将来的には長い目で見ると、その人た ちが年を取ったときに早く受診してやることに よって入院もしないでも済むような形になって くるということですので、最終的には医療費の 適正化にもつながっていくだろうなとは思いま す。ただ、その結果が5 年で出るかといえば、 今回の医療適正化だけでは、5 年過ぎないと出 ないでしょうということで、今回は入れていな いですね。

○司会(玉井) 本橋さん。OTV ではいい キャンペーンがはれそうですか。

○本橋(沖縄テレビ)

本橋(沖縄テレビ)

そうですね。先ほどの 皆さんの話の延長上にな りますけれども、やはり 嫌なことというよりは、 ポジティブなイメージの ほうがいいと思うんです ね。今この話を聞いて 「かりゆしウェア」を思い出したんですけれど、 かりゆしウェアの普及が始まるときというのは、 背広を脱ぎましょうじゃなくて、身を軽くする と環境にもよくなるよという付加価値をつけた んですよね。それでみんなが積極的になったと いうのがあるんです。脱ぐというネガティブな 発想を発信するのではなくて、こうするといい よというポジティブなアクションだったので、ど ちらかというとこの健診というと、確かに現状 としてメタボリックが問題になっているので、 そこは伝えないといけないんですが、ただ、メ タボリックかどうかを判定してもらおうという よりも、今の自分の健康に自信をもってもらお うというようなポジティブなアクションのほう がいいのかなと思いました。

あとは、もしこのメタボリックとしてこれか ら保健指導が必要になっていくような場合で も、やっぱり継続してこれが健診が終わったか ら終わりではなくて、どうしても私たちってそ うなりがちなので、日頃から意識してもらうと いう何かポジティブな動きになるといいなと思 っています。

○司会(玉井) ありがとうございます。

ポジティブで、しかも継続してやっていくこ とが大事ですよね。

儀間さん何か連載ものとか張れますか、いか がですか。

○儀間(沖縄タイムス)

儀間(沖縄タイムス)

特定健診については 新垣さんもおっしゃっ ていたんですけど、す ごく感じるところがあ って、マスコミ、新報 さんも、タイムスも、 テレビもあわせて健診 を受けましょうというのはずっと言ってきてい ることではあるんですが、一方で平専門監がお っしゃったようにペナルティをかけていくと、 やはりあなたが行かなかったから保険料が上が るというような、結局、県民同士、国民同士で 競争させて、いい意味の競争だったまではよか ったんですが、そこに保険料というお金が入っ てくるというところで、先ほども今山先生がお っしゃったように、医療費抑制から始まったと いうところがすごく新聞社として、マスコミと してもキャンペーンしづらいというか、これま ではすごく単純に健診を受けましょう、健康に なりましょうと言えばよかったものが、それが 結局は保険料に跳ね返って、あなたたち、医療 費抑制のためのものですよというのが裏に潜ん でいるというのを、やっぱり我々も意識せざる を得ないので、あなた自身の健康の問題ですよ というキャンペーンと、あと、その奥にひそん でいる国の医療費削減抑制というものの切り離 したキャンペーンというか、取材をしてその説 明をしていくやり方がすごく逆にやりにくくな ったというか。これをやればやるほど、どうな んだろうという部分はすごく自分の中では矛盾 があるし、そのへんをとても考えつつ、でも健 診を受けましょうというのは単純にいいことだ し、無料化していこうというのもいいことだ し、そのへんはすごく迷いつつ、これまでも、 これからもやっていくんだろうなというのをす ごく感じているところです。

あと、ちょっと思ったのが受診券についてな んですが、ちょっと勉強不足でわからないんで すが、社保に入っている人たちの保険者の家族 もこれからは会社が、いわゆる保険者がという ことですよね。すると、例えばうちの社員の奥 さんの受診券も会社に来るんですよね。

○今山理事 本人に来ます。

○儀間(沖縄タイムス) 本人の家に行くわ けですか。会社にもしあなたの奥さんの分です よと渡されたら、多分奥さんに渡さないだろう なとちょっと思ったので、すごくもどかしいな と。自分ですら多分放ったらかして、どこにい ったかわからない人が多いはずなのに、それを 家族の部分まで社側、保険者のほうに行くと、 これ本人にちゃんと届くのかなというのもすご く思ったりもして、話はしたことがあります。

○司会(玉井) 健診を受けること自体は悪 いことではないと思うんですよね。ただ、その 中にペナルティなんていう変なものがぶら下が ったためにちょっとおかしくなっているところ は確かにあるところはあります。あとは、これ は相互乗り入れができるんですよね、専門監。 那覇市の人が浦添市で受けるとかということは できるわけですよね。これまでは自治体ごとで 健診が別々でしたけども、これからは相互乗り 入れができるために、いわゆる集合契約という ものがスタートしているということもありま す。ですから名護の方が那覇市で受けるという こともできるということですね。

それ以外に何か。はい、下地先生。

○下地(医師会)

下地(医師会)

今回の特定健診・保 健指導は、かなり頑張 ってうまくもっていか ないと、沖縄の状況は 大変になるなと思って おります。ただ、保健 指導が40代、50代、 60代で元気世代、とても忙しい方たちですよ ね。こういう方たちに面接に来てもらったりと か、電話したりとかいう場合に、そんなときに ちゃんとできるかな、どうかなという、あるい は受け入れてもらえるかなという、そのあたり とても不安なんですけど。

ちょっと浦添の宣伝を少しさせてほしいんですが、浦添市医師会は去年の夏からグラフ化体 重表を使って減量運動をやっています。これは かなり簡便でかなり効果的なんですよね。大体 6割ぐらいはうまくいくかなと思っています。 1つのムーブメントとして、県民全体でグラフ 化体重表を付けようとか、何か1つのきっかけ にもなり得るし、そういうふうな形をもってい ければ全県民的にこうやって減量運動にもって いけるし、1つのツールとして何かそういうふ うなことも考えられるんじゃないかなというふ うには思っております。

○司会(玉井) 受診券が、お年寄りの方は 絶対に目が見えないと思うんですよね、読めな い。こういう手紙が来たときになんだこれはと捨 ててしまうんじゃないかと。これを受け取った方 が受診をしようと。どこに行けばいいのかしらと いうところをちゃんと聞こうとか、どこに問い合 わせればいいのかなというところで考えていただ けるような仕組みというか、工夫というか、仕 掛けをやっていただければいいかなと思うんです ね。このあたりもぜひマスコミの皆さんのお力も 添えていただいて、受診率を上げていきたいな というふうに思っております。

○平専門監 先ほど儀間さんから裏にペナル ティとかいろいろあってというのがあって、実 際、我々も特定健診とか医療制度改革自体を聞 いたときも「何ぞや、これ」と思ったんです が、沖縄県のことをいろいろ調べていくと、や っぱり健診率をきちんと上げていくのは本当は 重要で、県としてはもうそういうことはあるに しても、医療費適正化ありきじゃないんです よ。我々はいろいろと調べていると、やっぱり 県民の健康長寿を守っていくためには、やっぱ りこういうことをきちんとやっていかないとい けないというふうに思っているんです。医療費 適正化ありきじゃないんです。ですからぜひマ スコミの書き方によって、住民の気持ちも変わ るんです。ネガティブに書いてしまうと、あ、やっぱりそんな財政的なことでやるなら自分も 行かないでおこうかなという形になります。そ ういう気持ちを起こさないようにマスコミにも お願いしたい。逆に本当に沖縄の健康長寿を守 るための1つの手段として、これは重要なこと なんだよという意識でぜひ記事も書いていただ ければと思います。特定健診については非常に 重要。特定と付くからやはり、受診率をきちん と上げていくということは非常に重要なんです よ。一歩踏み出すのも皆さんの書き方にもより ますので、ぜひ行きやすいような記事を書いて いただきたいなという 要望でお願いします。

○司会(玉井) 野 原先生、どうぞ。

○野原(医師会)

野原(医師会)

ふれあい広報委員の 野原です。健診率の上 げ方なんですが、これは医師会にも耳の痛いあ れかもしれませんけれども、やっぱり時間どお り、その診療時間内でやるからほとんど集団で も無理ですし、それでプライバシーの問題もあ るから個別にやるわけですね。ところが個別に なったときに、その診療時間だと健康な人がな かなか休めて行けないということで、医師会の ほうも本当は時間外に何かを対応するような努 力をするとか、両方でやっていかないと健診率 は上がらないと思うんですね。予防接種もそう なんですね。もう全然上がりませんけれども、 やっぱりそこらへんも医師会のほうもやってい けたらいいなとは思っていますね。

閉 会

○司会(玉井) きょうは県から平専門監に も来ていただいて、非常に私たちも勉強になり ました。

どうもありがとうございました。お疲れ様で した。