理事 玉井 修
平成20 年2 月2 日(土)午後1 時半よりロワ ジールホテル沖縄において第16 回沖縄県医師 会県民公開講座が開催されました。今回は昨年 の年末に発表された都道府県別の平均寿命の結 果を踏まえて、いわゆる26 ショック以降の問 題点を明らかにし、これまでの取り組みを検討 しつつ、今後の課題を話し合う内容になってい ます。昨年末、平均寿命の発表において、多く の医療人が長寿県沖縄の惨憺たる崩壊を予想し ていた事と思います。しかし、予想に反して男 性は25 位と順位を上げ、女性は全国1 位を堅 持しました。その内容は今回崎山先生がご報告 になった様に安穏としていられないという事は 間違いないのですが、いわゆる26 ショック以 降様々な機関が地道に取り組んできた健康長寿 復活へ向けての動きがある程度効果をあげたも のと思っております。対外広報活動の様な啓蒙 活動はお金がかかる割りに明かな効果を数字で 見ることが難しく、評価がしにくいものと思わ れますが、私はしっかりと県民に危機意識を持 って貰う事に成功していると思います。波及効 果はこれからの取り組みが如何に継続してなさ れるかが鍵です。今後はもう少し具体的な取り 組みに関して提示できるようにしなくてはなら ないと思います。また、県民の中にピア・エデ ィケーション(Peer Education)の様な相互 に健康長寿復活に向けての情報や行動に関して 語り合い、高め合う機運が生まれれば何よりの力になるでしょう。つい先頃までは、盆や正月 など親族が集まれば深酒をして、次から次へ 「カメー、カメー(もっと食べなさい)」と言っ てはおかわりを強要する雰囲気があり、肥満を 良しとする風潮があったものです。しかし最近 では親族の集まりの中でも、太り過ぎや、健康 に関しての話題が当たり前のように話題に上 り、ダイエットに成功した人が減量の秘訣など を自慢げに講話する風景も見られる様になりま した。我々医師会が県民公開講座を通じてやっ て来た事は、その場での医療情報伝達だけが目 的ではありません。参加した人たちが地域や家 庭に帰り、県民全体の意識を高め、親類縁者や 隣近所で健康長寿に関しての会話が自然に生ま れる素地を作る事が最も大切なのです。この様 な中にあって、沖縄県医師会県民公開講座は今 後も対外広報の中核を担う事になると思いま す。ややもすると不要な不安をあおってしまう 事もある様々なメディア報道の中にあって、節 度と責任ある医療情報を提供していく沖縄県医 師会県民公開講座の果たす役割はとても大きい ものだと思います。
座長ごあいさつ
沖縄県医師会副会長
玉城 信光
昭和48 年 東京大学卒業
昭和54 年 県立那覇病院勤務
平成8 年 那覇西クリニック開業
平成17 年 那覇西クリニックまかび開業
乳癌学会 専門医 評議員
乳癌検診学会 理事 評議員
5 年前男性の平均寿命が全国26 位になり、 第1 回の県民公開講座がもたれました。そのと きも座長をさせていただきました。医師会をは じめ県民がいろいろな取り組みをしてきまし た。この努力により5 年後の昨年、平均寿命の ランクが25 位に上昇し寿命も1 年のびました。 これらの要因を分析して、今後5 年間の活動に つなげようと思います。皆さんと共に今日の講 座のサブタイトルにある“見えてきた長寿復活 への道”を考えてみましょう。
人口10 万人あたりで見ると肺がんの死亡率は 男性の場合全国平均の改善率は1.7 名ですが沖縄 県は8.9 名改善しています。全国3 位から17 位 と低下しました。女性は全国の死亡率が11.7 名 なのに沖縄は14.5 名と高く全国2 位です。
胃がんはもともと沖縄県は全国1 低い死亡率 ですが、5 年間で男性2.5 名と女性1.5 名減少 しました。
大腸がんは男性も女性も悪化していて死亡率 22.2 名と12.9 名になりました。今後の課題です。
心筋梗塞は全国で3.8 名改善、沖縄は5.3 名 改善しました。女性は1 人悪化し死亡率16.1 名になりました。全国で2 番目に悪い値です。
男女とも脳血管疾患が大きく改善しています。 男性は11.6、女性は6.9 名の改善が認められま す。血圧のコントロールが大切な病気です。
肺炎の死亡率は男性49 名と女性20.1 名と高い 数値です。これは慢性閉塞性肺疾患などタバコの 影響のある肺の病気があると風邪から肺炎にな り、死亡へとつながると思われます。糖尿病があ ると肺炎も重傷になり死亡につながります。
自殺も少し減りましたが、まだ死亡率として 39.4 名あり、脳血管疾患と肺癌についで高い数 値を示しています。自殺対策、うつ病の対策も強化されなければいけません。
男女とも腎不全と肝疾患が増えています。腎 不全は肥満から糖尿病になり腎臓が悪くなると いうパターンをとっていると思われる。
肝疾患は酒の飲み過ぎです。男性死亡率21.1 名、女性7.5 名です。アルコール性の肝障害が 多くなっています。居酒屋天国の沖縄では飲 み、食いが多すぎると思われます。少し酒を減 らし、食事を減らす努力が必要でしょう。
この様なことを頭に置きながら先生方の講演 を聞いていただいて、皆さんとともに長寿復活 への今後の取り組みを考えてみましょう。
長寿県沖縄の課題と展望
沖縄県中部福祉保健所長
崎山 八郎
現 職:沖縄県中部福祉保健所長
生年月日:昭和31 年2 月25 日
最終学歴:千葉大学医学部
【長寿県沖縄の課題】
平成12 年の都道府県別平均寿命が発表され、 そのとき男性平均寿命の順位が26 位に後退し、 県内に大きな衝撃が走ったのは記憶に新しい。 また、平成19 年4 月に都道府県別年齢調整死 亡率が公表され、女性の死亡率が13 位となり、 いよいよ女性の平均寿命も1 位の座を明け渡す のではないかと多くの関係者が予測していた。 しかしながら、12 月に発表された平成17 年の 都道府県別平均寿命では、沖縄県女性は何とか 1 位の座を維持することができた。この結果は、 85 歳以上の高齢者の頑張りによるものであり、 平均寿命の1 位の座が危ういものであることに 変わりはない。
男性の平均寿命は、25 位で前回とほとんど 変わりはなく、若い年齢層の健康状態の悪さに 加え、70 歳代においても全国とそれほどの違 いがなくなりつつあるということが影響してい ると考えられる。
このように男性の平均寿命は全国並みとなり、 女性においても全国との差が縮小してきた大き な理由は、全国に比べがん(特に胃がん)、脳卒 中、心疾患、肝疾患、自殺等による死亡状況の 改善の度合いが悪いということが挙げられる。
これらの疾患は、日頃の生活習慣と大いに関 係があるものであり、特に、肥満あるいは肥満 に至る生活の在りようが大きな影響を与えてい ると考えられる。沖縄県の肥満の状況は、全国 一であり、脂肪摂取過多、運動不足、アルコール多飲等が肥満をもたらしていると考えられる。
また、折角、健診で異常を指摘されても、そ れを今後の生活習慣改善や治療に結びつけるこ とができず、自己の健康管理が十分できていな い状況も窺える。
【長寿県維持へ向けて】
肥満によってもたらされる健康状態の悪化を 改善することが最優先課題と考えられ、肥満改 善のための県民運動の展開が求められている。
各地域、団体等ですでに組織的に取り組みを 始めているところもあるが、それを全県、全県 民に広く浸透させることが必要である。
健康づくりや生活習慣改善は、個人の努力も さることながら、それを支援する家族、仲間、 専門家の役割も大きく、更に、健康づくりに適 した環境を整備することも重要である。
禁煙・分煙施設を更に広げ、栄養成分表示店 や健康づくり応援店を増やすなど健康づくりの ための環境を改善していくために、一人ひとり がその働きかけをしていくことが重要と考えら れる。
私たちの目指すところは、ただ単に長寿であ るということではなく、健康な長寿を達成し豊 かな人生を送ることであり、「健康おきなわ 2010」の最終目標も健康で豊かな人生の実現 となっている。健康長寿県であるということを 内外に発信し続けることができるかどうかとい うことは大変重要なことであり、健康長寿県で あり続けることがわたしたち県民に様々な恩恵 をもたらし、豊かな人生の実現をもたらすこと であろう。
県民の幸せ、豊かな人生を実現していくため に、沖縄県は今後も健康長寿県であり続けなけ ればならない。そのために、一人ひとりの行動 が求められている。
肥満のテーラーメイド治療は可能か?
浦添総合病院健診センター長
久田 友一郎
昭和43 年 金沢大学医学部医学科卒業
昭和48 年 金沢大学医学第3 内科助手
昭和52 年 同講師
昭和54 年 富山県済生会高岡病院内科
昭和57 年 浦添総合病院、内科部長
浦添市在宅介護支援センター長
糖尿病センター長を経て
現在に至る学会活動 日本内科学会認定医
日本糖尿病学会専門医
1)増え続ける肥満、太りゆく人類
ダイエットビジネスが異常なまでに氾濫する 時代、肥満者が多数派となる社会の到来を、私 たちの祖父母は予見していたでしょうか?
450 万年の人類史上、多くの国々で、初めて 遭遇する過食・肥満社会。これらは文明や文化 の進歩がもたらした負の遺産であり、その複合 要因は地球温暖化現象と酷似する。
国民の健康志向が強まる中、街中にサプリメ ント、ダイエット関連書籍が氾濫し、スポーツ 関連施設も増加、盛況を極めるなか肥満はなお 増加し続けている。
「健康日本21」の中間報告は、5 年前と比 べ、高血圧、糖尿病の患者数は改善せず、肥満 者の割合は増加、日常生活における歩数も減少 と総括。厚労省はこの現実に危機感を抱き、平 成20 年度からメタボに焦点をあてた「特定健 診・特定保健指導」を導入する。
我が沖縄県では、平成12 年の26 ショックから 5 年、都道府県別平均寿命では、男性25 位、女 性1 位との朗報?この結果をどう捉えるか?私は 沖縄が改善したのではなく、ライフスタイルの本 土の沖縄化の序章に過ぎないのではないか?
2)これまでの肥満治療
これまで提唱されてきた肥満治療は「カロリ ー制限・摂取カロリーの減少と正しい栄養バラ ンス」「運動による消費エネルギーの増大」「筋 力トレーニング」を基本としており、国は「健 康づくりのための運動基準2006(週23 エクサ サイズ運動)」を、日本肥満学会は「肥満治療 ガイドライン2006」を提唱。理路整然として、 体系化され、論理的にも正しい。医療・保健・ 運動指導士関係者が語る言葉には威厳があり、 反論の余地がない。しかし、現実には、個人の ライフスタイル、年齢、性別、価値観、家族構 成、日々変化する食品市場、夜型社会、職の多 様性、過重労働の現代で、疾病管理・論理主導 型の肥満指導法には限界があると考える。今の 私にはできない、今はやりたくない、以前に失 敗した、もっと楽に減量する方法がある筈だ? などと考えるのが多数派。
3)脳科学からみた肥満治療ツールとしてのグ ラフ化体重表について
最近、「神経(脳科学)経済学」という研究 分野への注目が集まっているという。人間の決 断や選択の多くは感情に関係した脳の領域の分 野が関係し、人間には非合理的な経済行動をす る特性もあるという。肥満・禁煙治療の分野に おいても共通点が多い。
これまで再生しないと考えられていた人間の 成人の脳でも、「海馬の歯状回」では「神経細 胞は日常的に新生している」ことが明らかにさ れた。なぜ、この領域のみに新生ニューロンは 誕生するのだろうか?
「海馬は脳の情報システムの要」であり、 日々流入する脳への大量の情報は「海馬」を中 継し、「好き、嫌い」「快、不快」「安心、不安」 など情動に関わる情報は扁桃体へ送られる。海 馬はその情報を過去と照らし合わせ、好ましい 記憶と認識すれば、やる気のある「側座核」へ、 「嫌い、不快という記憶」と認識すれば「扁桃 体」へ送り届けられる。新生ニューロンは「海 馬」の情報処理機能をアップさせ、嫌な記憶や情報を減らして伝える働きもあるという。これ までの肥満治療情報は、「脳の何れの神経核」 へ送り届けられてきたのだろうか?
海馬の新生ニューロンの誕生には、感動、驚 き、喜び、せつなさ、悲しさ、気持ちよさなどの 情動といった刺激が重要な役割を担うという。
グラフ化体重表で記録される体重の変化に は、未知の新鮮な情報が多く含まれている。医 学的に解明されていない謎が隠されている。多 くの感動を伴うドラマがある。
論理のみの世界ではなく、実践者のみが知り うる知的好奇心を刺激する要素が沢山ある。何 よりも大事なことは、行動の選択権は本人にあ り、強制されない。自ら考え、実践し、検証し た知識・経験は意識を変える。意識が変われ ば、肥満のテーラーメイド治療は可能となる。 グラフ化体重表は「好ましい、快の記憶」と認 識される「側座核」へ、そして意欲や充実感を 生む「帯状回前部」へ送られる肥満治療ツール の一つになりうると信じたい。
がん、早期発見で治ります
国立病院機構沖縄病院長
石川 清司
昭和49 年 岡山大学医学部卒
昭和52 年 琉球大学保健学科付属病院
昭和55 年 国立療養所沖縄病院
平成13 年 国立病院機構沖縄病院院長
日本外科学会認定専門医・指導医
日本胸部外科学会認定専門医・指導医
日本呼吸器外科学会認定専門医・指導医・評議員
日本呼吸器学会認定専門医・指導医
日本呼吸器内視鏡学会認定専門医・指導医
【はじめに】
県民が今後とも、長寿県沖縄を誇ることがで きるよう「がん」の早期発見と早期治療による 「がん」の治癒について考えてみたいと思いま す。そして真実は、「がん」が恐いのではなく て、進行した病気が恐いのだということ、「早 期がん」は決して恐くないことを説明したいと 思います。そして禁煙によるがん予防と正確な 情報収集の大切さを強調いたします。
【‘がん’の早期発見法】
胃がん:バリウムを飲んで、X 線で胃の形や 粘膜(しわ)の状態を見る胃X 線検査と内視鏡 (ビデオスコープ)による検査があります。最近 では、胃の内視鏡も細くなり、しかも鼻からの 内視鏡検査も可能となり楽な検査になりました。
早期の胃がんは開腹せずに、内視鏡下に切除 する治療法も行われています。
大腸がん:便の免疫学的潜血反応検査は、手 軽に受けられる検査です。血液検査の腫瘍マー カー(CEA,CA19-9)の異常値でみつかるこ ともあります。大腸内視鏡検査は、多少負担の かかる検査ですが、専門医が素早く、安全に行 います。
子宮がん:通常、子宮がん検診は子宮頚部が んの検診です。綿棒・ブラシ・木のスティク等 を用いて子宮頚部の外側と膣を丁寧にこすり、 細胞診テストを行います。
月経とは無関係の出血、おりもの、閉経後に 少量ずつ長く続く出血を自覚した際には、専門 医による子宮体部がんに対する検査が必要です。
乳がん:定期的な自己検診の習慣を身につけ ましょう。症状がなくても、40 歳を過ぎたら (リスクの高い女性は40 歳未満でも)2 年に1 回は乳がん検診を受けましょう。視診・触診・ マンモグラフィー・超音波検査が行われます。
肺がん: 40 歳以上の成人男女ともに、最低 年1 回の経年受診がすすめられています。胸部 X 線写真と高危険群(重度喫煙者)に対する喀 痰細胞診の検査が行われます。低線量CT 検診 は男女50 歳以上の高危険群(喫煙指数600 以 上)が対象として想定されています。検診間 隔、有効性に関してはデータが集積されている ところです。
【科学的根拠に基づくがん予防】
がん死亡の原因は、喫煙(30%)、食事 (30%)、運動不足(5%)、飲酒(3%)の合 計68%が関与してしていることが報告されて います。つまり、約7 割のがんは生活習慣の見 直しで予防できたものと考えられます。
バランスのとれた食事、毎日の適度な運動、 禁煙、過度の飲酒を避けることが基本であり、 高価な特別な食品、薬品は不要であり、悪徳商 法には注意が必要です。
【フィルター付きたばこは安全か?】
フィルター付きたばこの普及は、たばこの発 がん物質の組成の変化と喫煙方法・習慣の変化 をもたらしました。末梢型肺腺がんの増加と関 係していることが指摘されています。
【まとめ】
3 人に1 人が「がん」を経験する時代になり ました。「がん」も早期発見により、内視鏡、 レーザー、そして痛みのない、傷の目立たない 手術でもって治癒がもたらされます。氾濫する 情報の中から正確な情報を選択しましょう。
○玉井理事 皆さんお疲れ様でした。本日の ご感想を伺いたいと思います。
いかがでしたでしょうか。
○玉城座長 今日の話を聴かれた方が広めて くれたらいいですね。
先生方の話も非常に面白くて良かったと思い ます。
ありがとうございました。
○崎山先生 会場を見てると、参加されてい る方は年齢が若干高いという印象があります。 恐らく関心の高い方達と思います。そのような 方は言わないでも出来る方なので、その人たち がその周辺の人に広げていくことが重要かと思 います。中々来たがらない人に直接我々が働き かけることは出来ませんので、関心のある方達 を「ちゃーがんじゅう応援団」として広めてい く必要があると思います。
○久田先生 メディアの役割も非常に大切だ と思います。今日来られた方は基本的に自分で きちんと対処できる方達だと思いますので、メ ディアと医師会等が連携して活動していくこと が大事ですね。マスコミは、時々医師会に対し て風当たりが強い時がありますが、今回の企画 についてはマスコミの果たす役割は一番大きい のではないかと思います。
○玉井理事 ディスカッションの時間はどう でしたでしょうか。
○玉城座長 やはり長く取るべきですね。講 演をしていると一方通行だけど、ディスカッシ ョンは会場からの質問に直接答えるからいいで すよね。
○玉井理事 どういった質問が出てくるか分 からないところに怖さを感じませんか。
○石川先生 想定質問は随分考えていたので すが(笑)
○玉井理事 お酒の話は面白かったですよね。
伊波部長いかがでしょうか。
○伊波輝美県福祉保健部長
とても楽しく、わか りやすい講演でした。 県としても3 倍ぐらい の予算を取ったんです が、どのような方法が 効果があるのか工夫し ないといけないと感じ ています。先ほど意識の変容のお話も出ました が、どのようにすれば一人ひとりに届けられる のかその対策を練り直さないといけないと考え ております。
○玉井理事 やはり、このようなことを伝え るには底上げをしないといけませんね。オピニ オンリーダーだけでは駄目です。譜久山課長、 いかがでしょうか。
○譜久山県福祉保健部健康増進課長
参加して下さる方達が 私たちのサポーターなん だと感じています。この サポーターを育てること も大事なのではないかと 思います。今日の質問の 内容を聴いていて、非常 に関心のある方達がいらっしゃることを感じま した。沖縄県では「ちゃーがんじゅう応援団」 をつくることになっていて、現在加盟している団 体だけではなくて、NPO や住民組織等を巻き込 んでいきたいと考えています。そういう意味でも 地域のリーダーとして活躍いただけるサポーター を育てていきたいと考えています。
○玉城座長 今後は、地域の要望に応えられ る「出前塾」のようなものも必要かと思います。
○崎山先生 専門家が話をするよりも、身近 な人たちが話をすると非常に効果がありますよね。
○玉井理事 医者は近所のおばあちゃんに負 けますよね。「あんた一生血圧の薬を飲むつもり なの?」と言われると飲まなくなりますよね。
○崎山先生 身近な人に話をしてもらうにし ても、ちゃんとした知識を持ってもらわないと 駄目ですね。
○玉城座長 一緒になって活動していかない といけないですね。もしそういう要望があれば 医師会もチームを作ってそのような場を持つよ うにしたいですね。
○宮城会長 久田先生が示された、グラフ化 体重表の使い方をそういった地域ごとに説明を 行って拡大していくことも実効性があるのでは ないでしょうか。
○久田先生 浦添市医師会は昨年の11 月か らグラフを使って肥満治療を行っており、今年 の3 月にデータが集まります。
○崎山先生 その体重表を各地区医師会に普 及していったらどうでしょうか。
○宮城会長 それは自治会単位でやるべきで すね。
○久田先生 医師はそれぞれ色々な考え方が あります。ボクはこのツールに命をかけてやっ ているようなものですが、他の医師からすれば 批判的な意見もあるかもしれないのでドクター 間の意志統一は中々難しいと思います。
○宮城会長 今日提案した「新生活改善運 動」は、そういう小さな単位で活動することも 目的にあります。そうゆう意味では、このツー ルは非常に有効ですが、それを説明できる人が いないですね。
○玉城座長 ボクもコンピュータでグラフを 作りましたけど、はじめ500 グラム単位で測定 していたので全然変動が無かったんですね。そ れで100 グラム単位にしたら、女房が「あなた 100 グラム単位で計るの?」って言うんですよ ね。それが大事じゃないですか。
○諸見里編集局長
5 年前の「26 ショッ ク」の際に「長寿の島 の岐路」の連載を始め たのですが、今のグラ フも含めて、どのよう に読者に実践型で伝え るかということを考え、「メタボ兄弟」の連載 を始めました。僕らも色々試行錯誤しているの ですが、肥満について体験談や専門家の話を取 り入れたり、漫画を活用したり、僕らなりに工 夫して読者に伝えておりますので、今後もメデ ィアを色んな形でご活用頂きたいと思います。
○宮城会長 競争という点では、こちらが提 案したんですが、楽しみながら実効性を求める には、競争させることですね。今回は記者がや ってるんですが、今度は自治体毎に競争させる べきではないかと思います。そういう意味では 自治体の担当者がおりますので、その人たちを 集めてそこで競争させるといいですね。これは 医療費抑制にも繋がっていくので、実利のある 運動だと思います。これまで5 年間、県民に対 して啓発活動を行ってきました。今後は実行に 移すような活動を行っていかなければいけませ んね。
○久田先生 出来るだけ、お金が掛からない ようにしたいですね。
ところで、先日、家森幸男先生という方が日 経新聞に投稿してたんですが、長寿自慢の沖縄 でも男女差が大きい、沖縄は日本より15 年〜 30 年間先に進んでいるので、沖縄が最前線で 頑張って欲しいとの投稿がありました。
○玉井理事 沖縄県は海に囲まれてて人間的 な動きがあまり無いですから、うまくいけばモ デルケースになりますね。
○玉城座長 やろうという地域運動が本当に 成功するかどうかのモデルケースにもなりますね。
○崎山先生 中部保健所の管内で、「健康お きなわ2010」の中部地区大会があります。小 グループで健康づくりの目標を設定してその目 標を多く達成できたグループを表彰するため、 今月に大会を開催します。そういった形で楽し みながら運動を広げています。企業、婦人会も 参加していますし、市町村にも働きかけている ところです。
○諸見里編集局長 沖縄は外食が多いです し、夜型でアルコール依存も多いですね。日本 が将来こうなったらまずいですよね。僕ら自身世界的に色んな課題を持っています。復帰35 年経った今、そのマイナス面を暮らしの中で治 していけるのかが大きなテーマですね。
○玉城座長 夕飯は7 時前後に食べようとい う話があります。10 時になると夜食になるので、 夕ご飯として同じ量を食べるとダメなんです。
久田先生ご自身は5 割しか食べないそうで す。私の場合も10 時に夕ご飯を食べると肥る んです。それで、腹七分目〜八分目にしないと いけないと気づきました。
○諸見里編集局長 飲酒運転撲滅キャンペー ンのような対応を考えないといけませんね。
あのキャンペーンで沖縄の人の意識も変わっ たと思います。
次のターゲットを肥満にして活動していくこ とも大切ですね。
○宮城会長 ゴルフ場で飲む人は皆無になり ましたね。
○玉城座長 交通事故は明かに減ってますよね。
○久田先生 企業ではアルコール治療中の人 はバス通勤ですね。
○玉城座長 それと、アルコール中毒の人を どうするかですね。飲まないと動けない人がいる のでその人をどう治療していくかでしょうね。
○玉井理事 明かな形でポンと出さなくて も、地道に飲酒運転撲滅という形でやっていく とああやって結果が出てくるし、26 位ショッ クから25 位になって良かった、女性も1 位を 守って良かったと一安心してしまう論調は避け たいですね。ここで危機感をしっかり持ち続け ないといけません。
○玉城座長 4 月から始まる特定健診で異常 が出た人が病院に行くかどうか勝負がかかって るんです。
○諸見里編集局長 どうしても沖縄の人は “病院ウトゥルー”というのがあるんですよね。
これをどうにか払拭してもらいたいですね。
○崎山先生 やはりそういうのは沖縄の人に あるんですか。
○玉井理事 病気と言われるのが怖くて行か なかったというのもありますよね。
○玉城座長 奥さんが連れて行かないと病院 に行きませんよね。
○崎山先生 健診は病気を見つけるためにや っているのに、その引っかかった病気を病院に 指摘されるのが怖くて行かないというのは話に ならないですね。
○平良社会部長
昨年末は女性も一位 陥落するだろう予測し て新聞社もその準備も していたんですが、結 果は女性が辛うじて1 位を保って、男性も1 ランク上がりました。 このことはこれまでの5 年間の活動がある程度 の歯止めになったのかという気がしています。
また、今後の5 年間をどう対応していくかが 課題ですね。
○玉城座長 具体的に見えて来ましたよね。 私は久田先生の言い付けを守って食べ過ぎに気 を付けるのと、ベルトは変えないようにしま す。(笑)
○崎山先生 9 時以降に食べる場合は7 〜 8 割にすることを普及したほうがいいですね。
○宮城会長 はっきり10 時以降の場合は半 分にすると言ったほうがいいと思います。
○平良社会部長 公開講座の開催前に目標を 決めて、そのテーマに向かって進めていくこと も面白いですね。
○玉城座長 これは、譜久山先生が進めてい る県の健康増進計画とタイアップさせて、県民 運動として浦添市のやっている3 s減量運動な どと一緒になってやっていけると良いですね。
○玉井理事 意識が高まっているのは間違い ないと思います。
○玉城座長 ウォーキングは10 分でも良い ということなんで、雨が降って外出出来ない場 合は家の中でウロウロしたほうが良いですね。
○諸見里編集局長 1 時間やらないと効果が 無いという人もいますけど10 分だと出来ます よね。
○久田先生 駅伝ウォーキングや、日野原式 階段二段飛びといった特徴のあるキャッチフレ ーズを考えたいですね。
○玉城座長 僕も外に行けないときにはテレ ビを付けてその回りをグルグル回ってますよ。 (笑)
何もしないよりはいいですよ。
僕は手術するんですが、手術って精神的疲労 はあるけどエネルギーは何にも使ってないです ね。試しに万歩計を付けてみたら500 歩ぐらい しか歩いてないんです。だから手術って疲れる割 には全然エネルギーを消費しないですね。だから 手術日はなるべく食べないようにしてます。
○久田先生 一口20 回噛めといいますけど、 医者ってすぐ食べてすぐ仕事という習慣が身に 付いてますよね。20 回噛むとなると一端お箸 を置いておくぐらいの時間が必要です。
僕はその人にあった減量のやり方があるんじ ゃないかと思います。
○崎山先生 県も9 ヵ条を出してますけど、 全てをやるのは難しいので先ずそのうちの2 〜 3 つをやってみることが大事ですね。
○玉井理事 そろそろお時間となりました。 最後に宮城会長一言お願いします。
○宮城会長 皆さん今日はありがとうござい ました。
専門的な立場から啓発していただけることは 非常に大事なことですし、会場からの質問を具 体的に応えてくれたことは非常に良かったと思 います。そういうことを続けていくことによっ て長寿復活に必ず結びつくと思いますし、それ を実行に移させるための仕掛けを是非久田先生 も考えて頂きたいと思います。そのアイディア を医師会にご提供頂ければ、沖縄県に提案した り、マスコミのご協力を頂き県民運動に持って 行きたいと思います。今後もよろしくお願いい たします。
当日お越しいただいた方々の中から、数名の方にインタビューをさせていただきましたので、その 中から下記のとおり3 名の方のご意見・ご感想を掲載致します。
また、医師会への要望が多数ありましたので、主なものを併せて掲載致します。
本会の広報活動にご協力いただきまして、誠に有難うございました。
インタビュー1):
本日の講演会に参加されての感想をお聞かせ下さい。
また、今後の日常生活でどのような事に気をつけようと思いますか。
インタビュー2):
医師会への要望をお聞かせ下さい。
(67 歳・男性・会社員)
1)大変参考になりました。
今まで、メタボ対策をいろいろと試しましたが、途中で挫折していました。今日講演を聞い て、自分の体重を毎日記録し、意識づけする事の重要性に気付きました。 これからは、体重の変化の原因を把握し、食事や会食に気を付けるようにします。
2)医療費抑制も大切ですが、健康長寿の為、このような大規模な講座ではなくてもミニ講演会 を、各市町村単位で行政と一緒に開催していただきたいです。
(62 歳・男性・無職)
1)高年齢になっても気持ちを若く持ち、体を鍛えることによって健康長寿につながることが改 めて分かりました。
夫婦で一緒に毎日ウォーキングを実践したいです。
2)専門的用語は出来るだけ避けて、実践事例を多用してほしいです。
(35 歳・女性・保健師)
1)私自身も指導(支援)する立場にいるので、自らの生活習慣をふり返り、食事・運動に関し て目標を立て、取り組んでいきたいです。
2)県民の皆さんや、医療に携わる人たちが健康について学べる機会をもっとつくっていただけ たらと思います。
(その他の意見)
○今後は、健康づくりに関心のない人に、少しでも「気づいてもらうきっかけ」(TV、CM、ラジ オなどで、強烈なアピールで情報提供する等の機会)を作っていただけたらと思います。
○開業医の先生方に、いろいろな講演会や勉強会の機会を多く持ってもらいたいです。
○実際に長寿で元気な方は大勢いると思うので、直接その方から健康法などのお話が聞きたい です(インタビュー形式でもいいのですが)。また、減量成功者や実践中の方の、実際の実践 法を見てみたい。
○医師の技術格差が大きいと思います。
また、専門外の病気については、専門医を紹介してください。かかりつけ医だからと、何で も抱え込まないでほしいと思います。