理事 玉井 修
平成20 年1 月24 日(木曜日)ロワジールホ テル那覇において県民との懇談会が開催されま した。平成16 年から始まったこの県民との懇 談会も、のべ11 回を数え、毎回テーマを決め て様々な懇談を行って参りました。現行の形態 での懇談会は今回で最後となります。これまで 長くこの会に関わっていただいた各委員の皆様 には大変感謝申し上げます。県民は医療に何を 望んでいるのかを直接お聞きできる大変貴重な 会でありました。私たち医師に望まれる事を考 えさせられる一方、私たち医師または医師会に 対する様々な誤解を解消し、我々の誠意をいか に伝えるかを考え続けた懇談会でした。最近で はモンスター・ペイシェントという言葉さえ聞 かれ、萎縮医療へ繋がる現場医師のモチベーシ ョン低下が危惧されています。医師と患者間に 広がる漠然とした不信感と不必要な対立の構図 は医療崩壊を決定的な段階に至らしめるでしょ う。ここに私は大きな危機感を感じます。平成 16 年から関わっていただいた委員の皆さんに は、医師会というものの実際の姿をかなり理解 していただけたと思います。懇談会のはじめの 頃はほとんど医師会のプレゼンターによる一方 的な話が多く、委員からの活発な発言は少な く、うち解けた雰囲気とはほど遠いものがあり ました。もっと相互間の意見交換が出来なけれ ば県民との懇談会の意味がありませんので、担 当理事としても頭を悩ませておりました。他県 で同様な医療と県民との直接対話を行おうとす る試みが無いかどうか探していると福岡県医師 会がメディペチャという懇談会を主催している との情報があり、内容を聞いてみました。メデ ィペチャはまず、医師会関係者の関わり方が極 端に少なく、医師会側のプレッシャーを感じる 事無く県民側の本音を引き出しやすい形態をと っている事がわかりました。今後県民との懇談 会の持ち方には改善すべき点があることに気が つきました。県民との懇談会の機能を高め、医師や医師会への理解を大きく拡げるために何か 工夫をしなくてはなりません。今後、医療に関 する県民との懇談会は広く参加者を募集して県 民参加者をもっと増やし、県民から求められて いるテーマをしっかり選び、活発に意見交換が 出来る様な工夫をしつつ、決して対立の構図で 終わらせることなく何らかの相互理解を深める 一助となるべき目的を明確に持って進行すべき と考えています。詳細はまだ明確ではありませ んが、100 人程度の集会を持ってみたいと考え て今準備を進めています。
開 会
○司会(玉井) みなさん、今晩は。私は司 会を務めさせていただきます、沖縄県医師会理 事の玉井です。
先ずはじめに本会会長の宮城信雄よりご挨拶 申し上げます。
挨 拶
○沖縄県医師会長 宮城信雄
みなさん、今晩は。
当懇談会は平成16 年 7 月から始まり、本日 で11 回目の開催となり ます。
その間、委員の皆様 からいろんなご意見、 ご提言をいただきました。そのご意見に基づき まして、会員とそれから患者に皆さんと信頼関 係が深まっていくと、そういう役割に役立てて いるということです。
なお、次年度(平成20 年度)からは会の持 ち方について、いろいろ検討した結果、今後は 違った形で県民の意見を聴取できる場所を設定 していきたいということになっております。
本日の懇談のテーマですけれども、最後の懇 談会にふさわしく「医師会に望むもの」という のをテーマに取り上げております。医師会に対 して今後どうしてほしいのか、それから、こう いう点はぜひ注意してほしい、直してほしい。あるいは、会員に対してこういうことは徹底し て意見を言ってほしいというようなものがあれ ば、ぜひ出していただきたいと思います。
最後になりましたが、皆様の今後ますますの ご健勝を祈念して、甚だ簡単ではありますが、 私の挨拶にかえたいと思います。どうもありが とうございました。
○司会(玉井) 宮城会長、ありがとうござ いました。
次年度から、もうちょっと規模を大きくしよ うかなとか、いろいろやり方を考えている最中 でございます。委員の皆様からのご期待をひし ひしと感じながら、非常に活発な懇談会をこの 2 年間やらせていただきました。さらに、医師 会というものが何をしているのかということ も、皆様の中に理解を深めていただけたのでは ないかなと思っております。
日本医師会が新たに制作いたしましたコマー シャルが3 つあります。その3 つを1 つずつ見 ていただきながら、さらに委員の皆様からいた だいたご質問等ございますので、それも紹介し ながらやっていきたいと思います。その中で、 まずCM の1 番目は、「小児救急医療」に関し てのCM が流れます。1 分程度です。その後、 懇談に移ります。
そして、CM の2 番目は、「長期療養ベッド削 減」についてのCM が流れます。最後の3 番目 は、「産業医」それと「メンタルヘルスケ ア」・「自殺」に関してのCM が流れます。
懇 談
○司会(玉井) 救急医療ということに関し ては、たらい回しと言いますか、何カ所に断ら れたとか、救急医療が崩壊している現場が他府 県で多く見られているようです。この救急医療 に関して、何かご意見等ありますでしょうか。
○玉城副会長
皆さんご承知のよう に、沖縄県では今はも うたらい回しはありま せん。これは沖縄県の 救急医療の中心を担っ ている県立病院がしっ かりやってきたという ことと、やっぱり県立病院だけですと負担が相 当大きかったんですけれども、大きな法人病院 が救急をするようになって、沖縄ではたらい回 しは今現在はないと思います。
それは実は救急現場にいる先生方の相当な負 担の上で成り立っているという事実を決して忘 れてはいけない。私自身が今考えているのは、 勤務医は非常に過重労働というのが言われてい るんですけど、勤務医の過重労働の足を引っ張 っている医療というのが救急医療なんですね。 医者は36 時間ぐらいずっと働いているという のが現実の姿なんですね。
それと、今、沖縄は離島が多くていろいろ分 散していますし、皆さんご承知のように、遠い 離島からは自衛隊とか海上保安庁が空輸をして 患者さんを運んできますけど、今、浦添総合病 院と北部地区医師会病院がドクターヘリを持っ て、辺戸あたりからでも急患を搬送する。伊江 島・伊平屋からでも搬送する、久米島からでも 搬送するというシステムができつつはあるんで すね。沖縄県でも来年度、国から救急ヘリの事 業認可を受けたので、それをどう運用していく か。また、救急の充実に向けてどう運用してい くかということが、これから県庁の中でも議論 されるところだと思います。
○司会(玉井) 黒島さん、この間、新聞記 事に書かれていましたよね。中部病院への妊婦 さんの搬送の問題ですね。救急搬送によって稼働率が104 %でしたか。もう100 %超えて、す ごい過重労働になっているということがありま したけど、現場取材していかがですか。
○黒島委員
以前に5 〜 6 年前でし たか、那覇市立病院の小 児救急がパンク状態にあ るというのを取材したと きに、あのときに印象的 だったのは、既に那覇市 医師会のメンバーの開業 医の先生たちが交代で助けに来ている状況とい うのがあって、ただ、それがなかなか受ける患者 さんの側からすると、先生がいつもかわっている とか、あとは開業医の先生の患者さんは、自分 のところの先生が倒れてしまうのではないかとい う心配があったりとかで、やっぱり少ない医者 の数の中で、地域の中で連携をやっていこうと しても、なかなか一朝一夕には改善に至らない ような、試行錯誤しているような状況がものす ごくよく見えてきたんですね。
あのときに、現場のお医者さんたちはとにか く何かしようと思って、窮状を訴えるし、大変 だということをわかっているんですけれども、 私たちも含めてなんですけれども、知らせる努 力が足りなかったのかなと思って、そういう思 いで書いたんですが、あの頃からしても、今あ れから5 年、6 年たっているんですけれども、 状況はまだ「医師の負担」で吸収して成り立っ ているような状況にかわりはないのかなと、今 回の取材をしても思います。先生たちのやる気 とか精神とかに、私たちのほうがまだ頼りきっ ているんだなと。いつもああいう記事を書いて いて思うんですけれども、大変だというのを書 いて、ちょっと書きすぎてしまって県民も慣れ てしまったのかなと。
○玉城副会長 小児の救急に限りましょうね。 ほかのとは若干ニュアンスが違いますので。
実は、小児の救急の7 〜 8 割は、昼間来ても いい患者さんなんですよ。それと、今、少子高 齢化で子供の医療を無料化すると。夜間に行っ ても割増料金をとられないから、お母さんたち が昼間仕事を終わってゆっくり行くんですよ ね。それが、いわゆる市民・県民の考え方なん ですね。
私は外科なんですけれども、保育園でけがす ると大変ですから保育園の先生がすぐ連れてく るんですよね。熱が出ても同じだから、保育園 の先生が連れていってあげてもいいんじゃない かという感じを持っている。
もう1 つは、企業の側が、子供が熱を出した ときに、お母さんに1 時間休暇を与えられるよ うなシステムを導入していくということも日頃 から、産休・育休と別に考えてもいいんじゃな いかということを考えていろいろ話はしている んですけれども、具体的に誰が、どういう方法 でこういうことを完成させるかというのが一番 難しいです。
○司会(玉井) 何か小児救急に関連してご 意見のある方。
○野原(医師会)
小児科の開業医の野 原です。医師会に望む ものではなくて県民に 望むものということで、 日本小児科学会はホー ムページで、小児救急 で例えばどんな症状だ ったら救急に行ったほうがいい、行かなくても いいという情報を提供しています。日ごろから 思うのは、やっぱり小児科の場合は非常に軽症 が多くて、せめて解熱剤ぐらいいつも常備で置 いておくようにしてもらいたいということと と、日頃からもうちょっと医療について勉強す るべきではないかと思うんですね。あと、もう 1 つは、玉城先生は1 時間と言ったんですが、 私はもう熱が出たら休めるシステムをつくって ほしいと。これは夢の話なんですが。
○金城委員
本当に働く主婦とし て、子供が急に発熱す ると保育園からたびた び電話が来ます。私は、 今は事務所は南風原で すが、以前、移転する 前までは那覇に事務所 がありまして、子供は糸満の保育園に預けてい ました。なので、往復も1 時間程度かかります し、1 時間ぐらいの休みではとても太刀打ちが できないんです。兄弟や誰かあいている人がい ないか、みんながみんな土日が休みの仕事をし ているわけではなかったので、あちらこちら電 話をしまくって迎えに行ってもらえないかとか いうふうにしました。
子供が小さい間は、個人に預けたんです。こ の預けた方は助産婦さんだったものですから、 小さい間、私が預かっている間は私があなたの 代わりになってこの子をしつけるよということ で、おむつも彼女が率先して取れるように訓練 してくれたんです。だから、ちょっとした熱で も病院に連れていってくれたりしたんです。随 分助かったんですけれど、2 歳半を過ぎた頃か ら、そろそろ私はいらないから、早く保育園に 入れて集団生活に慣れさせなさいということで 入れたんですが、それから後はもうたびたび呼 び出しで、とても熱の出やすい子だったもので すから、本当によく呼び出されました。だから といって、うちの主人はすぐに休めるような立 場にないものですから、ほとんどみんな私にか かってくるので、あと、うちの祖母も働いてい たので、本当にフル動員で子供の看護とか、そ ういったお迎えとかをやったんですけれども、 こういったシステムがあったら本当にいいのに なとつくづく思いました。
あと、私はお姑さんと同居していますが、お 姑さんが、このくらいのこういった症状だった らまだ大丈夫だから解熱剤を入れなさいとか。 子供が3 名いますが、1 人がはしかにかかって しまって、そしたら、予防接種を受けてない赤 ちゃんまで伝染しちゃったんですね。そのとき にも的確に指示してくれて、とりあえず病院は 行ったんですけれども入院までは至らなかった んです。ネットワークといいますか、同級生と か、あるいはお兄ちゃんの学校のお友達の親同 士で仲良くなって、自分の家に集まって昼食会 をしながらこういったことを話しているとか、 情報交換の場を最近の若い人達はよくもってい るみたいなんですね。だから、このへんを有効 活用できるような情報提供みたいなものがあれ ば、もっとよくなるんじゃないのかなと思いま した。
○司会(玉井) 看護休暇の話が出たんです けれども、看護休暇を実際に実践していらっし ゃる組合とか、企業で取り組もうとしていると ころとかございますか。
○高嶺委員
私は、調理現場で長 いこと働いていたんです が、結局、みんな子供さ んを人に預けることをあ てにしますよね。基本的 には企業の内部の問題で あって、私は自分の下で は部下は一切辞めることはないです。
男であっても、急に子供が病気だと呼び出し があったらすぐに行かせます。もしくは出勤前 に何かあっても、病院に連れて行って落ち着か せたら出勤させてます。今、うちも2 人女性職 員を使ってますけど、子供に何かあったらすぐ 帰してます。落ち着いたら戻ってくるようにし て、勤務時間内にそういうやり繰りをしてやれ ば、みんな安心して働けるんですよ。
会社は、昔から仕事優先で、普通、上司は 「あんた、仕事と家族とどっちが大事か」と言 います。しかし、何のために働くかということ です。子供を育てるために働いているんですよ ね。家族を捨てて、行かなくて死んだら誰が責 任取るかですね。いわば、働く人も勇気を持っ て、嫁さんが病気だから悪いけどきょう帰るよ とか、1 時間ぐらい時間くれよとかいう言い方で強く出る必要もあると思うんですよ。
何のためにいるか。男であろうが、女であろ うが、それをちゃんとしないと、やはりこうい う問題は解決しないですよ。
○司会(玉井) 少子高齢化の時代で、子供を 大切にしないといけない時代ですよね。
○山田委員
老人クラブ所属の山 田でございます。
先ほど野原先生もお っしゃいましたように、 本当に患者さんとか地 域のお母さん方は、育 児に対しての知識が全 くゼロに等しいんですね。
風邪ひいてすぐ熱が出るのはいいんですけれ ども、熱が出てもすぐ下がらないともうやいや い言ってあちらこちら病院を駆け回っているご 両親がいらっしゃるわけですね。
地域の高齢者だとか育児の支援体制というの は今考えていると思うんですけれども、これが 充実すれば医療機関に行く回数も少なくなると 思います。
今、小児科の先生は大変ですよ。本当にもう 診察が終わってやれやれと思ったときに、午前 中診察して薬を飲んだけれども熱が下がらない と。だから、また来ましたというふうに、そんな に病気って薬を飲んだからすぐ良くなるもんじ ゃないし、経過というものもあるんですからね。
そこらへんの話は、私たちが若いときには母 親教室とか、育児教室が頻繁にありましたの で、これは地域の保健師さんが出てきてやって いただいたと思うんですけど、なにがしかの知 識が得られたんです。今は子供がちょっと腕が 上がりにくそうだからといって、小児科に行く んですが、小児科の先生の前に行ったら手を上 げるんですよね。
だから、地域力、これは市町村の役割かもわ かりませんが、行政のほうでもっと地域の赤ち ゃんを持つお母さん方を教育するようなシステ ムをもっともっとしないといけないけど、今、 地域の保健師さんもケアマネジメントに忙しく て、地域に出られるような状況ではないらしい んです。だから、本当にいろいろとひずみがあ ります。
医師会の先生方も、どうぞ赤ちゃんをお持ち のお母さん方を集めてこういうふうな簡単な教 育でもしてあげたら、ちょっと楽になるかと思 うんですけど、小児科の先生もご苦労さんで す。大変だと思います。以上です。
○司会(玉井) 大変だと思います。沖縄県 は、特に救急医療がいろいろな沖縄県の医療の 矛盾を吸収しています。
国吉さん、どうぞ。
○国吉委員
今、患者さんのこと もありましたけれども、 本当にお医者さんを増 やせばいいという一般 的な考えがありますけ ど、むしろ一般の県民 も医者に協力するとい うか、本当に医療に協力するという意味では、 例えば今、昼来てほしいのが救急に来るとい う、そういう概念を直さないとずっと悪循環す るんじゃないかと思います。
どうしたらもっとスムーズに、このまま続く と本当に過労で、少ない小児科のお医者さんが 倒れるとよけい大変だと思うんですね。しか し、長いこと待たされたので、県民はもっと医 者を増やせというふうに考えるんですけど、同 時に、昼行ける方はできるだけ昼に行くとか、 そういうような県民の医療に対する教育という のが必要ではないかと。
そうしないと、何かお医者さんと県民とやり とりがうまくかみ合っていないような気がする んです。
○司会(玉井) ありがとうございます。
次は、療養病床の削減ということでVTR があ りますので、それをまたご覧になってください。
○司会(玉井) 「療養病床削減」のVTR で ございました。非常にこれ大きな問題でして、 先日、山田さんもご一緒に懇談会をもちまし て、非常に大きな問題だなということでした。
○山田委員 では事例をちょっと紹介いたし ます。退院間際の患者さんです。もう病気もな いし自宅でケアなさったらいいですよと退院を 勧められた患者さんがいらして、病院の方針だ ったら退院しましょうということで納得された んです。そして、退院する当日になって、息子 さんとお嫁さん、中学生か高校生ぐらいの坊ち ゃんが一緒に来られて、退院なさる本人に向か って「おじいちゃん、よかったね。次の病院、 一生懸命探してきたよ」と言うわけです。
私たちは、「おじいちゃん、あなたは帰りた いとおっしゃっていたでしょう。よかったね、 お家に帰られて。また、必要があったら私たち も訪問もしますし、頑張りましょうね」と。 「もう大丈夫、よかったですね。慣れたお家で、 お部屋もいっぱい飾られているし、よかった ね」と言って、本人は家に帰ったら、歩きたい ねとか、庭に出て散歩したいねなんていう夢を 持っておられたんですけど、そのお孫さんの 「よかったね、次の病院探して決めてきたよ」 というその一言には、本人さんもがっかりでし ょうけど、聞いている私たちもがくっときまし たよ。ああ、高齢者の扱いってこんなものか。 医療制度が悪いのか、親子の絆が薄くなったの か、これが現代社会かなというような気持ち で、とっても惨めな思いをしました。
だから、医療制度もむろん悪いんでしょう ね。受け皿がない。いわゆる福祉のケア、福祉 の手段というのも十分にいろいろとどんどん使 って、そして訪問看護も使ってというふうに説 明ができるようなシステムになっておればいい んですけど、ただ、帰すだけが病院の、ソーシ ャルワーカーなんかでも帰らせることばかりに 一生懸命。地域の受け皿ということが制度上ま だないんですからね。本当に職員も嘘を言って 悪かったねというような、良心の呵責に耐えら れて。こういうようなことがしょっちゅうあり ました。
本当に姥捨て山ではないけれども、高齢者の 我々は惨め、将来どうなるんだろうと大きな不 安は抱えております。私が身近にそういう経験 がございましたので、ご報告いたします。
○司会(玉井) 沖縄県社会福祉協議会の山 内さん、ソーシャルワーカーは今山田さんからお 話がありましたけれども、ソーシャルワーカーに 関してのご質問があるということですけれども、 ちょっとご説明いただいてよろしいですか。
○山内委員
ソーシャルワーカー の問題が少し出ました ので、あんまりなじみ でない方もいらっしゃ るかもしれませんが、 県内でも百数十名の医 療のソーシャルワーカ ーと、百何十名かの精神科のソーシャルワーカ ーが配置されている病院もございます。
去年9 月、大阪の堺市で「全盲の患者公園置 き去り事件」がありまして、その後追いの記事 が昨日載っていて、結局それをやった病院職員 4 人が書類送検。その原因の1 つに、そこにソ ーシャルワーカーがいなかったからじゃないか というふうなことが産経新聞で指摘されていま した。
確かに、ソーシャルワーカーは退院に際して ご家族の相談に乗ったり、次の落ち着き先を探 したりということの仕事が随分大きな部分を占めていますが、ただ、退院だけというよりは、 退院後の受け皿でどのような社会保障制度が使 えるか、福祉サービスが利用できるか、あるい は自宅に帰ることができなければ、何らかの施 設や住まいを用意することができるかというこ とで、大変頑張っている職業ではございます。
それではありますが、県が今つくっている医 療保健福祉計画の中にも私ども提案したんです けれども、なかなかそれが取り上げられません で、今度の計画の中にはこのソーシャルワーカ ーの位置づけがまだ見あたらないんですが、も っともっとこれは医療チームの一員としての業 務として注目されていますし、沖縄ではもちろ んこのような堺市の事件はあり得ないんです が、療養病床の削減によってどうしても退院を せざるを得ないという状況がやってまいりま す。精神障害の患者さんも退院促進ということ で、県が今一生懸命それを進めているところで すし、それはいいんですけど、本当に受け皿と いうことやそこへのつなぎということでは、ソ ーシャルワーカーの仕事はもっともっと評価さ れて、あるいは体制を強化される必要があるだ ろうなということで、少し後ろのほうにも書か せていただいているわけです。
○司会(玉井) ご提言ありがとうございます。
小渡副会長、先日、ソーシャルワーカーの又 吉さんと一緒にシンポジウムがありましたが、 ソーシャルワーカーとの連携は、医師会はどの ようになってますでしょうか。
○小渡副会長
医師会とソーシャル ワーカーの連携は、直 接はありません。そう いう委員会なり会議は 持っていません。しか し、ソーシャルワーカ ーは、病診連携(病院 と診療所の連携)、病病連携(病院間の連携) の際にはなくてはならないもので、現在、病院 間ではソーシャルワーカーを介してある程度連 携が図られていると思います。
ソーシャルワーカーと一言で言っても、国家 資格のあるMSW(社会福祉士)とPSW(精 神保健福祉士)がありますが、一般には資格を 持たずに病院に勤務し、そのような仕事に当た っている人達もソーシャルワーカーと呼んでい ます。
通常ソーシャルワーカーの仕事は、受診相談 や入院の受け入れ、転院先の病院探し、在宅療 養の公的・民間サービスの調整、あるいは患者 さんの経済的な制度の紹介など、それらの仕事 を専門的に行っており、仕事そのものはかなり 多岐にわたっています。
しかし、法的に配置義務がないので、全ての 病院にソーシャルワーカーが配置されている訳 ではありません。むしろ業務上必要に迫られて 配置している状況だと思います。本来ならば、 国はソーシャルワーカー等を配置したら診療報 酬上でも、保証すべきだと思います。そういう 意味では、これから国が在宅医療を推進し、療 養病床を削減する考えならば、その医療難民や 介護難民を出さないようにするためにも、本人 や家族の相談に乗ってくれる相談窓口がますま す必要になると考えます。
○司会(玉井) 療養病床の削減に関してなん ですけれども、今、政府は6 割削減ということ で、VTR では半分と言ってましたけれども、 そうするとこの間の新聞では、1,100 床がなく なるということが出ていました。このへん実際 にどんなふうになっていくんでしょうか。
○小渡副会長 療養病床の削減は、医療費適 正化計画の中で決められますが、医療難民や介 護難民を出さないようにするために、高齢者ケ ア整備構想を策定することになっています。本 来はこの整備構想を策定し、国に昨年の12 月 末までに報告することになっておりました。し かし、削減率が決まらないため、高齢者ケア整 備構想の策定が遅れております。現在、国に整 備構想を提出したのは17 都道府県しかありま せん。その中でも、ほとんどの県が4 割しか削 減できないという報告で、国が求めている6 割 削減はできないようです。国も途中で削減率を緩和してきております。いずれにしても、国は 35 万床を15 万床にするという方針ですが、一 方では各県の事情を考慮していいということに なっていますので、沖縄県も当然その構想の中 で国が言うのとは別に数値を出していきたい と、私を含め、医師会として本県の事情に応じ て、今やっているところです。
○司会(玉井) 何かご質問とかご意見とか ございますでしょうか。
実際に、在宅も含めて今から整備しないとい けないことが多々あるんですね。
○小渡副会長 いわゆる療養病床削減を行う と、自宅で生活しないといけなくなります。そ の時在宅での医療や介護をどのようにするかと いう事が問題になります。今後は、在宅でも看 れるような医療システムや介護システムを各県 でどのように作っていくかが課題になります。
沖縄県の在宅医療は、他府県に比べて診療所 や訪問看護ステーションの数が少なく、往診の 件数も少なく、在宅医療が整備されている状況 にはありません。ただ、今のところ県民は、か かりつけ医がいなくても不安がないように思わ れます。その一つは、県民が在宅医療システム の必要性を強く感じていないからでしょう。そ の理由としては、沖縄県は救急医療システムが 充実しており、救急車を手配するとすぐに来て もらえ、救急病院は受診を断らない形が出来て いるからだと考えられます。しかし一方では、 このシステムが気楽に使えるということもあ り、救急でも重症でもない人が利用したり、あ るいは家で亡くなった人が運ばれて来るケース もあるようです。そのため救急外来はいつも混 み合い、そこで働く救急の医師も疲弊している ように思います。今後、病床削減が行われ在宅 患者が増えると、在宅医療システムの整備を図 らなければ、ますます救急外来に殺到し救急シ ステムが混乱する可能性があります。
○司会(玉井) 療養病床削減は5 年後とい うことで、我々も今政府と様々交渉して頑張っ ているところでございます。これからもまたこ とあるごとに、こういう問題をあらゆる場で取 り上げていきたいと思っています。
それでは、次に移りたいと思います。
次は、産業医を絡めたメンタルヘルスケア。 自殺の問題についてのCM をご覧ください。
○司会(玉井) 産業医、あとそれに関連し て、メンタルヘルスケアと自殺のことを扱った CM でございました。
皆様に配付してあります資料がありますけれ ども、これは県警に問い合わせて、自殺者の推 移の数を出してもらったり、手段まではいらな かったなと思うんですけれども、どうやって亡 くなったか。またどういうところで、またどう いう問題で、どういう方々が、どの年齢層でと いうことで出してあります。
これを見ると、どんどん自殺者が増えてい る。特に女性が最近、対前年比18.1 %の増加 ということで、女性の自殺者が少し増えてきた のがちょっと気になるところであります。あと は、原因、動機が「病気苦」と、あと「経済、 生活問題」、そして無職の男性の50 代、40 代、 30 代の働き盛りといいましょうか、今から働 かなければいけない世代の男性が自殺をしてお ります。この現状があるということで、自殺問 題については様々な取り組み、講習会・講演会 もやっているんですけれども、なかなか結果が 出てこないというのが現状です。
さらに、産業医の選任率というものも調べさ せてもらいました。
沖縄県の産業医選任率は、78.4 %ですね。産 業医要選任事業場数1,062 カ所の中で833 カ所 ということは、78.4 %の事業所が選任してい る。これは、50 人以上の従業者を有している 事業所は産業医を選任しなくてはいけません。 50 人以上ですね。そういうところの沖縄県は 78.4 %が選任しています。50 人以下のところ は、選任する義務は負ってません。実は、沖縄 県は99 %が50 人以下の事業所ですよね。そう いうことになると、選任率は非常に低いという ことになります。
全国では80.7 %の選任率。沖縄県は若干低 めという形になりますけれども、沖縄県は何し ろ中小企業が多いということでございますの で、産業医のサービスを受ける、または職場で のそういうふうなアドバイスを受ける、場合に よってはメンタルヘルスケアを受けるという可 能性は沖縄県の労働者は非常に少ない、低いと 言わざるを得ない状況だと思います。
産業医と、または自殺に関して、何かご意見 のある方はいらっしゃいますでしょうか。
実際に産業医を置いていらっしゃるという企 業とかございますか。どうですか、メンタルヘ ルスケアは十分されてますでしょうか。
○山内委員 ニーズとしては、多分それが一 番多いんだと思いますが、産業医の先生がその ご専門ではないということで、必要があった場 合には適当な機関を紹介していただいています。
○司会(玉井) 実際に産業医として勤務し ていらっしゃる方は精神科でない場合が多いで すよね。様々な科の先生が産業医をされていま すけれども、様々な産業医を支援するシステム がございまして、いわゆるうつとかそういうも ので就業が不可能になったところから就業を支 援するような県総合精神保健福祉センターとい うところもございます。そういうところでちゃ んとうつに関してのケアを受けてから現場に復 帰される方もいるということです。うつ病デイ ケアというものが現在あるんですけれども、こ れについてはどうでしょうか。
○玉城副会長 沖縄県の県総合精神保健福 祉センターでうつ病デイケアというのをやって いて、実はもう去年か一昨年ぐらいでなくなる 予定だったんですけれども、そこに通って少し ずつ職場復帰している方がいるので、あと1 年 間延長するという話になってはいるんですけれ ども、その県総合精神保健福祉センターは県の 仕事なんですけれども、いつまでやるかという のがはっきりしないんですね。
本当はこの3 月で終わりの予定ですけど、い ろいろな動きがあってあと1 年間は延長して、 その後は民間へという思惑もあるのですが心療 内科の先生方があちこちにたくさんいらっしゃ るんですけれども、その先生方がやるには、時 間と部屋と空間が足りないんですね。先生方は 日常たくさんの患者さんを診ているものですか ら、この人たちの作業療法とか、いろいろな療 法を続けながら回復させるという時間がないの と、そういう作業療法的な、いわゆるリハビリ ですね。心のリハビリと思っていただいていい と思います。心のリハビリには時間がかかるも のですから、なかなか難しいところはあるよう ですね。
○小渡副会長 皆さんご存じのように、自殺 問題は今や大きな社会問題となっております。 昨年は国で自殺対策大綱が策定され、本県でも また県医師会でも、この問題に取り組んでおり ます。沖縄県の自殺の特徴は、先ほどもちょっ と話がありましたように、全国でも多い方で毎 年増え続け、昨年は400 人台になっておりま す。他府県との違いは山が2 つあります。1 つ は20 代の若年層で、それから40 代、50 代で す。自殺者の多くは多重債務者で、それから無 職というのが多いようです。司法書士協会で も、多重債務の相談ができるような窓口がある ようですが、まだよく知られてないように思い ます。
それから、私は精神科医ですが、精神科医の 視点でみると、日医の広報や国の自殺対策につ いては「自殺予防」という言葉を使っています が、自殺予防も重要ですが、現状の自殺対策と しては、予防よりも既にうつ状態になっている 人達の治療に力点をおくべきだと思います。と いうのは、現状の問題は、色々なストレス等か ら既にうつ状態ないし、うつ病になった人達が 適切な治療がなされていない事が問題だと思い ます。このような精神的な病気は身体症状も出 現するため、一般科を受診するケースが多い事 と、精神科を受診するのに偏見等があり、受診 することをためらう事があるからです。そうい う意味で、国は自殺対策に当たっては、まず精 神科に対する偏見をなくす活動をし、さらにう つ病やうつ状態を感じたら専門領域が精神科であることをはっきりと啓発すべきであると思い ます。これは認知症に関しても同様で、認知症 は認知症患者の増加に伴い様々な機会で啓発が 行われてきましたが、認知症の専門領域が精神 科であることを強調しないため、「認知症と分 かったけれども、どこに行けばいいの」という 話をよく聞く事があります。
ただ、いまやこの自殺の数とかうつ病の数が 増え、一般科を受診する患者が増えているの で、一般科の先生方にもうつ病のことを勉強し ていただいて対応してもらおうと、うつ病に関 する様々な研修会や研究会が行われています。
○司会(玉井) きょうの新報で、ちょうど このへんの記事を書いていらっしゃる新垣記者 がいらしているので、ご意見をお願いします。
○新垣委員
きょう記事を書いて 掲載させていただいた んですけど、小渡先生 がおっしゃるのはごも っともだとは思うんで すけれども、今の実態 というのは、多分、自 殺の確たる原因がわからないと。うつ病もかな り複合的な要因はあると思うんですけれども、 先生がおっしゃるように、うつ病の人が自殺に いかないためには病院に行きましょうというの は大変有効ですが、そもそも自殺の原因はどう いうところにあるのか。これがどういうふうに 自殺にまで至るのかというプロセスが解明され てないというところに、きちんとした予防策が 打ててないという実態があると思います。
それは別に県を擁護するわけではないですけ れども、今度、遺族の集いを何とか結成して、 遺族の心のケアもしながら、どうやって自分た ちの大事な、大切な家族が自殺に至ったかとい うのを、言い方は悪いですけれども情報収集を して、その実態解明に努めようと。本当に初歩 の初歩だと思います。
だから、先生がおっしゃるように、計画とか 国の大綱などが対策になってないというのはご もっともな話で、自殺に関してやっと緒につい たというのが実態ではないかなというのが、私 の印象です。
今できることというのは、まずは、企業の働 き手の仲間もそうだし、家族だとか友人、やっ ぱり身近な人たちがサインに気づくことです ね。ちょっと疲れたとか、もうやる気が起こら ないというサインに早く気づいて、うつ病を少 しでも疑ったら診療してみたらどうかと言える 雰囲気を早くつくるというような、先生がおっ しゃるとおり重要ではないかなと。
もう1 つは、多重債務の話が出ましたけれど も、多重債務のことが、またあしたの夕刊に載 せる予定ではあるんですけれども、見てみると 社会的な弱者が非常に多い。自己破産を宣告す る人たちですね。生活保護を受けていたり、無 職であったり、パートとかアルバイト、そうい う人たちがたくさん金を借りてしまって、よけ い追いつめられると。
ところが、司法書士会によりますと、今、法 律がいろいろ整備されていて、精算してみると お金が返ってくるというんですね。要するに、 実際は借金をしてないわけです。それぐらいの 高金利で不当な返済を強いられているものです から、目安は消費者金融と5 年以上つき合って いる方のもうほとんどが実態の借金はゼロで、 あるいは人によっては精算してみると200 万円 ぐらい返ってくるときもあると。それを知らず に自分を追いつめてしまって、極端な場合、自 殺に走る人もいるという。そういう実態がある そうなんですね。
それで、沖縄の場合は模合とか、親族とかが 結構助けてお金を貸してしまうので、その分、 高利貸しも儲かるといいますか、たくさん金を 貸せられると。そういうところにつけ込んでい るというのもあるそうです。
ですから、高失業率とか低所得者、生活保護 者が多いというところと、そういう弱い人たち であっても助ける人がいるという沖縄の特徴に つけ込んでやられている。そういう社会的弱者 につけ込む高利貸しがいるものですから、よけい追いつめられるという、社会的な背景の要因 は実際あると思います。ただ、そういうところ からどういうふうに自殺までいくのかというの はまだわかっていないので、やっぱりそのへん のプロセスの解明が必要なのではないのかなと いうのが私の印象でした。
○司会(玉井) 国吉さん、何かあります か。実際に声を聞いていらっしゃると思うんで すけど。
○国吉委員 うつ病が確かに多いですから、 それはもうはっきりとそのようなことを示さな ければならないと思います。
また、今、新垣さんの意見の中に、本当にう つ病だけではないという、様々な社会現象、リ ストラが多くなると自殺も多くなっているという 現実もありますし、特に沖縄はユイマールとか 非常にいい面があるんですけど、それで簡単に 保証人になって、保証人が非常に困って、追い つめられ、相談を受けたケースが多々あります。
昨年ついに400 名になったわけですけれど も、沖縄は、最初はみんな助け合いをするから 自殺は少ないと思ったんですけれども、現実に は多くなっています。
それで、例えば交通安全運動だったら、国・ 県挙げてやってますよね。これからだとは思う んですけれども、先ほどもありましたようにシ ンポジウムとか講演会とか、これは県を挙げて やっていただきたいと思います。
本当に交通事故で亡くなる方も、自殺をされ る方も同じ尊い命ですので、数にすれば随分多 いのに、関心という面ではだいぶ少ないんじゃ ないかと思うんです。だから、やはりそういっ た自殺予防ということでしたけれども、実際に 予防の面もあると思うんです。誰かの声かけ、 例えばそういった相談が来たときに「あなたに は死んでほしくない」とか、そういった言葉で 非常に助けられる人もおりますし、説教はいけ ないんですけれども、でも、聞いている人の命 を大切にしているというような、そういったこ とは意外と予防になる面もありますので、そう いう運動というか、それを広げていって、講演 会などを通して、もっともっと自殺に対する認 識を広げていってそういった、命を救う運動で すから大いにしていいんじゃないかと。
実は命の電話も全国各県にセンターが50 あ ります。そして、国のほうも2000 年からは、 国のお金を出してフリーダイヤルがあるんで す。毎月10 日フリーダイヤルで、その時間は どこにかけても、沖縄にかけてもそこがもしい っぱいだったら東京でも、全国通じるようにな っているんですね。だから、そういうようなこ とも我々の宣伝が足りないのかもしれませんけ れども、皆さんのおかげでちょうど去年30 周 年を迎えまして、こういった面も少しずつ広め ていくと少し予防の面と、はっきりとお医者さ んに行くことを促すこととか、今そういう方向 でやっております。よろしくお願いします。
○照屋(医師会)
てるや整形外科の照 屋と申します。一言、 意見を述べさせて頂き ます。ある雑誌で見つ けたのですが、「G-P ネ ット」というシステム があるそうです。一般 内科(G)などの先生方と、精神科(P)の先 生方とのインターネット上のネットワークをつ くり、情報を共有しようという大阪での取り組 みです。例えば、一般の内科の先生方や、整形 外科・産婦人科などの先生方が、患者さんの情 報の把握が十分にできていて、少し敷居が高い と思われている「心療内科」や「精神科」の先 生と情報を共有し、早々に相談・紹介するとい う素晴らしいネットワークです。自殺者が 1997 年から3 万人を超えたということで、精 神科の先生方の間では「97 ショック」という 言葉があるそうです。一日約80 人の方が亡く なられるという現実の中で、国や県を挙げての キャンペーンがどうしても足りないと思いま す。先ほど、国吉さんもおっしゃっていました けれども、交通事故による死亡者が年間約 7,000 人として、「交通事故撲滅キャンペーン」や「飲酒運転撲滅キャンペーン」などは行われ ていますが、どうしてもちょっと隠しておきた い「自殺撲滅キャンペーン」などはまだまだ少 ないと思われます。先ほどお話しいたしました 「G-P ネット」などをどんどん活用して、他科 の先生方との交流を広げていく事が必要だと思 います。また、新聞の紙面でもいいですし、テ レビやラジオのニュースでもいいですから、ど んどん県民にアピールして、メンタル的な治療 が必要にもかかわらず、未治療のまま埋もれて いる人を拾い上げるシステムを早目につくって いかないと、やはり自殺者は減っていかない。 年間3 万人を切ることができない状況は今後も 続くでしょうから、それこそ医師会の先生方の 力で改善させる・・・こういう事が「今後の医 師会への要望」という事になるのではないか と思いますね。
○司会(玉井) 何かほかにご意見のある方。
○金城委員 私の遠縁にも自殺をした方がお りまして、その身内の方は、自分の身内から自 殺者が出るというのが恥ずかしいと思っている みたいなんですね。沖縄独特の告別式を告知す る死亡広告欄にも載せませんでしたし、私はそ のときに初めてそういう人たちは載せないんだ というのを知ったわけなんですけど、だからあ まり大っぴらにお葬式もしない。県民の体質み たいなものも、隠してしまおうとか、そういう のもあるのかなとそのときつくづく感じたんで すけれども、もっと心を開いて、こうならない ようにみんなで頑張ろうという気持ちでその方 向づけをしていかないと、下まではなかなかそ ういったのは浸透しないのではないかなと思い ました。
それから、仕事の件でなんですが、業務が大 変過重になってきて、やはりうつで休む方が増 えてきたんです。一度職場復帰するんですが、 業務、部署は違っても狭い範囲の業務ですの で、しばらくするとまたぶり返したりしたんで すね。
そのときからそういったふうなものに興味を 持ちまして、総務の出身の私ともう1 人の方と 交代交代で、メンタルヘルスケアの講習会が無 料でちょこちょこあったので、それをリサーチ しては勤務時間中に許可をもらって聞きに行っ たりしていたんです。それから、やっぱり産業 医を置かないといけないということで、精神科 医の先生をさがしたんですけれど、皆さんいっ ぱいでまずいなかったんですね。そういう場合 にはどうしたらいいんでしょうかということ で、うちの上司が那覇地区の医師会だったんじ ゃないかと思うんですが、確認をしましたら、 心療内科の先生でも大丈夫ですよということだ ったので、医師会に協力してもらって心療内科 の先生を招聘しまして、産業医として就任して いただいたわけなんですね。
この先生は、一番最初に皆さんを集めて講演 会を持って、その後から毎月定期的に行いまし ょうということで、一定時間、一定場所を決め て、ここにこの時間になれば僕はいるから誰で も来て相談していいですよということだったん ですけど、それまではこういったうつ病が治ら ずに辞めていった方が、毎年1 人ないし2 人出 ていたんですよ。ですけど、先生はそれをこの 職場はおかしいから改善しないといけないとい うことで、1 年かけて全員と面談するというこ とで面談を始めたんですね。それから随分変わ りまして、まず、うつになって休職する方がこ の2 年間おりませんでした。やはり産業医の効 果はすばらしいなと感じたところです。
○司会(玉井) 自殺またはメンタルヘルス ケアのことで、何かご提言あるでしょうか。
○下地(医師会)
内科を開業していま す浦添地区の下地と言 います。
やっぱり内科の開業 医でも不眠とか倦怠感 でよく来るので、うつ がないかどうかという のをいつも頭に置きながら診ているんですよ ね。それらしい患者さんはできるだけ心療内科 に送るようにするんですけど、やっぱりだんだん心療内科の先生も忙しくなって、何カ月先と いうふうになってくるんですよね。
だから、そういう患者さんは、1 回は必ず診 療内科を通してそこでプランを練って、開業医 で診ていい患者さんは帰して開業医で経過を診 ていくとか。何かそういうふうなシステムづく りが必要ではないかなと思いますね。
○司会(玉井) 様々な施設がありますが、 それをうまく利用してメンタルヘルスケアを組 み立てていくというのが重要かと思いますけ ど、1 年間の延長ということで、今後どうなる かわからないですけれども、県総合精神保健福 祉センターとかありますので、そのあたりをま た活用していきたいと思っています。
それでは、大きなテーマについての協議はこれ で終わりまして、各委員からの質問に2 〜3 答え ていきたいと思っています。
国吉守委員からのご発言で、母子手帳を、そ のまま高校生まで使えるようにしていけたらいい んじゃないかというご意見があったということで すけれども、何かこれに追加してありますか。
○国吉委員 これは、実際に子育てもしなが ら、母子手帳が非常に有効であると。親子の関 係も結びますし、そして子供の健康がわかりま すし。今、中学生になってくると親子の関係も 非常に薄らいでくる、様々な事件も起こってく ると。そういう大事な成長期のときに、もう少 し親子の絆も強くしながら、また、年1 回の健康 もみながら、中学卒業までは母子手帳を有効に 使ったほうがいいんじゃないかという。私も初め て聞いたんですが、でも、とってもいいことでは ないかなと。そういう今日の社会の情勢から見 ても、家庭の崩壊もありますし、そういう親子 の絆を強くしながら、また健康を保っていくな らば社会にも非常にいいのではないかなと。
○司会(玉井) 実は、この母子手帳に関し てちょっと調べてみたんです。
この母子手帳というのは、母子保健法という 昭和40 年に制定されているんですけれども、 この内容が「母性及び乳児及び幼児の健康の維 持増進についての法律」ということで、妊娠初 期から小学校入学までをカバーするという趣旨 で、地方自治体がそれを交付するということに なっています。
ところが、小学校に入学してしまってから後 のいろいろな健診は、これ学校保健法といいま して、昭和33 年に制定されていますけれども、 産業法の法律が違うようなんですね。これに関 しては、児童生徒、職員も入るんですね。職員 の健康管理とその維持増進ということで、ちょ っと管轄が違うものですから、法律の問題もあ るのかなという感じはしますけれども、法律の 整合性がないというんでしょうか、橋渡しがで きてないので、ちょっと難しいかなという感じ がします。でも、今のご意見はとてもいいと思 いますので、これに関しても何かご意見のある 先生、いらっしゃいますか。
○野原(医師会) 私は、小児科で母子手帳 を活用しているといっても、この質問の意味が わからないんですが、母子手帳が大事なのか、 親子の絆を強めるのか、いろいろな意味でちょ っと理解ができないんですけれども、母子手帳 が基本的に役立っているのは、ほとんどが予防 接種歴を見ている状態です。ですから、小学校 上がる前の母子手帳としては健康を見ながら非 常に役立っているし、これは世界にも日本の母 子手帳を広めて公表して、子供の衛生面に非常 に役立っているんですね。
ところがこの質問を見ていると、母子関係と かいうのは医療側から言うものではなくて、や っぱり親子の問題、あるいはみんなで築くもの であって、あまりにも期待過剰ですし、健診と いったらみんな期待しているかもしれませんけ れども、学校健診とかはほとんど1 分ぐらいあ りませんので、それだけで全部できるかという と、まずできません。ですから、そこらへんも 含めて、本当に母子の絆というのは別なところ でやるべきというよりも、親子の関係でやるべ きでしょうし、あと家族、あるいは社会が見守 るのであって、私個人的にあまりにも医師に期 待過剰ではないかと思います。
○司会(玉井) 母子手帳から中学校入学にかけて、それが今食育の問題とか様々な母子ま たは家族間の絆という問題に、もし利用できる のであればいいのではないかなというご意見で すよね。
○国吉委員 そうですね。本人も法律のこと もある程度わかってますね。すぐそのままできる とは思わないけど、ただ、この乳幼児からずっと 続いているものが中学ぐらいまでは、この親子 の関係で健康もお互いに守りながらいけたらい いなという、そういう思いなんですけどね。もち ろんすぐにはできないと思いますけど。
今の母子手帳の有効は接種だということです けれども、それが主かもしれませんけれども、 しかし、やっぱり子供が生まれて、育って、中 学ぐらいまでそういう親子の関係が強まれるな らばいいんじゃないかなと、こう思うんですけ どね。
○野原(医師会) ちょっと追加でいいです かね。
私は、今むしろ母子手帳というよりも、例え ば健康手帳のような1 人の人が一生涯自分で日 記をつけるなりして持っていくべきではないか と。何も子供に限らないと思います。もう本当 に予防接種だけで、20 代、30 代でもはしかに かかる人がいたりで、記憶もカルテさえも見つ かりません。だから、本当はつくるなり、ある いは国がつくってもいいんですけれども、健康 手帳というのは何も子供だけに限らずつくるべ きですし、今の母子手帳はちょっとお母さんの プライバシーが随分子供にいきますので、もう ちょっと改良しないといけないのがあると思い ますので、要するに、子供だけの問題ではなく て、手帳だったら、将来、健康手帳というのは 一生涯持ったほうが理想ではないかなと思うん です。
○司会(玉井) 照屋先生から何かありますか。
○照屋(医師会) 先日、ある新聞に「PTCA」 という話が掲載されていました。P(父兄: Parents)、T(教師: Teacher)、A(連帯: Association)の事ですけれども、それにC(地 域: Community)を加えて「PTCA」・・・。 これは県立伊良部高校の話だったのですが、素 晴らしい内容の記事でした。今日たまたま八重 瀬町具志頭のほうで「食育検討委員会」という のがありまして、その委員会に参加してきまし た。そこでも、この「PTCA」を是非八重瀬町 でもやりませんかという話をして参りました。 最終的には家庭が一番大事だという事はわかっ ているのですが、何でも学校に押しつけたりせ ずに、家庭・学校・地域という三位一体が重要 で、ぜひともコミュニティーの「C」を入れて もらい「PTCA」でなんとか乗りきって行きた いと思うのです。ところで、「健康おきなわ 2010」には、大きな六つのキーワードがあり ます。まず、栄養対策としての「食育のすす め」です。ご周知のとおり「メタボ対策・肥満 対策」は急務です。次に、運動対策としての 「貯筋のすすめ」です。筋肉トレーニングも重 要です。当然のことですが、「禁煙のすすめ」 ですね。たばこは絶対やめられます。あと「節 酒のすすめ」です。できるだけ禁酒日を設けて お酒を減らしてもらいたい。今、自殺の話も出 ましたので、ストレスマネージメントとしての 「笑いのすすめ」です。ぜひこういうコミュニ ティーの中で「笑い」をどんどん取り入れてい ってほしいと思います。最後は歯科保健対策で すから、「歯ブラシのすすめ」ということです。 実は、八重瀬町の具志頭小学校では、衛生上の 理由で学校での歯ブラシは許可されていなかっ たのですが、地域からの働きかけで、なんとか 学校での歯ブラシができるようになりました。 こういう話からすると、やはり、この「PTCA」 は必要不可欠なものだと思います。
○司会(玉井) やはり先ほどの自殺問題も そうですけれども、地域のコミュニティーがう まく機能していくというのが理想だとは思いま すね。ご提言どうもありがとうございます。検 討させていただきたいと思います。
それと、2 番目、福祉士を養成するコースで、 講師をしてくれる医師が確保できないというこ とですけれども、県医師会にもいろいろ講師の 依頼とか、または看護学校、コメディカルを養成する様々な専門学校に講師を出してほしいと いう要請は来るんですけれども、それに対し て、産業医も選任もなかなかできない状況で、 人材を派遣するのが難しいというか、お医者さ んは忙しいものですからかなりつらいところも ございます。
ただ、これから先、やはりコメディカルを含 めた医療関連の人材育成に医師が積極的にかか わるということは、非常に重要なことだと思い ますし、それに対して我々も善処していきたい と思ってますけど、宮城会長、それでよろしい でしょうか。
最後に、宮城会長、締めの言葉をお願いします。
○宮城会長 本日は、多方面からいろいろな 意見を出していただきまして、どうもありがと うございます。これを医師会としても参考にし ながら、これからの医師会運営に役立てていき たいと思います。
冒頭に出てきた小児救急の問題ですけど、ス トレートに今度の日本医師会というのは出して ないですね。あの中で考えてほしいということ もいろいろあると思います。
私が非常に印象に残ったのは、子供が熱を出 して病院に行くけれども、総合病院のドアが閉 まって開かないんですね。ということは、もう 救急医療を閉じているんですよ。それから、特 に小児救急なんかはもうしないと。その結果、 救急医療センター、救急救命センターに患者が 集中していくという現象も起こってきている。
ですから、あの1 つの絵を見て、いろいろな ことがその裏にはあるということをぜひ理解し ておきながら、あれが本当の医療ではないと私 は思っています。理想の医療が実現できるよう にするためには、医療側の努力だけでは駄目だ ということですね。先ほど言った地域の問題、 それから親の問題、医者にかかるための賢いか かり方と、様々な問題がすべて凝縮されている と思います。
そういう意味では、こういう懇談会の中でぜ ひ自分たちのためですから、自分たちがいい医 療を受けられるためにはどうしたらいいかとい うことでこういう懇談会をやっております。皆 さんがいろいろなご意見を出された。それを会 員に伝えて、会員が本当に理想とする医療が実 現できるような世の中をまたつくっていきたと いうことを、医師会としても努力をしていきた いと思います。
本当に貴重な時間、貴重なご意見をありがと うございました。必ずそれが医療の現場に生か されるような形で役立てていきたいというふう に考えております。こういう形式の懇談会はこ れで終わるのですが、もっと幅広い形で県民の 意見が反映できるような場というのは考えてい きたいと思っておりますので、今後ともひとつ よろしくお願いいたします。ありがとうござい ました。
閉 会
○司会(玉井) 皆様、本日は長時間にわた りましてお疲れ様でございました。
ご提言・ご要望を様々いただきまして、本当 に感謝申し上げます。2 年間の任期、誠にあり がとうございました。今後も何かご不明な点が ございましたら、また沖縄県医師会事務局まで ご連絡いただければ幸いでございます。
本日はどうもありがとうございました。