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第105 回沖縄県医師会医学会総会

玉井修

理事 玉井 修

平成19 年12 月8 日、9 日、パシフィックホ テル沖縄及び沖縄県立浦添看護学校において第 105 回沖縄県医師会医学会総会が開催されまし た。12 月8 日はパシフィックホテルにおきまし て沖縄県医師会定例総会に引き続き、比嘉實医 学会会長より沖縄県医師会医学会総会開会宣言 が行われました。会頭の那覇市医師会会長友 寄英毅会長よりご挨拶があり、引き続いて特別 講演が行われました。医療崩壊の著者として有 名な虎の門病院の 小松秀樹先生より 「医療事故調査制 度の設立にむけ て」と題して特別 講演がありまし た。医療事故調査 に関して官僚主導 で報告義務を課し た制度が導入され ようとしている事に警鐘を鳴らし、医療の不完 全性、医療が内包する危険性を一般の方にもっ と理解していただく必要があると訴えて頂きま した。

小松秀樹先生

虎の門病院泌尿器科部長
小松秀樹先生

その後、沖縄県医師会医事功労者表彰が行わ れ、県知事表彰3 名、沖縄県医師会会長表彰36 名の表彰が行われ、県知事表彰では仲井眞弘多知 事より直接表彰して頂きました。(別紙参照)

午後の4 時半頃からは「療養病床の削減につ いて」と題してシンポジウムが行われました。 2011 年までに療養病床が6 割削減され、23 万 床の療養病床が無くなろうとしています。医療 難民、介護難民という言葉がマスコミでも大き く取り上げられ社会不安を招いています。今回 のシンポジウムでは医師会、行政、ソーシャル ワーカーなど様々な立場から発言を頂き、更に フロアからの質問に答えながらこの問題を考え ていきました。6 割削減に関しては地方自治体 の現状に合わせた裁量の幅がある程度認められ そうです。しかし、療養病床から老健施設など への転換をする場合の補助金の問題や、医療区 分の軽い方に対する診療報酬が低く採算性に問 題が残る件、受け皿として期待されている在宅 療養における問題など、かなり複雑な問題が絡 んでいます。在宅療養支援診療所の申請が極端 に少なく、往診や訪問看護ステーションも少な い沖縄県の現状では、療養病床の削減が医療難 民、介護難民の発生に直結します。今後の課題 は多いのですが、この療養病床の削減に関して は地域ケア整備構想の具体的な形が出るまでは まだ紆余曲折が予想され、療養病床の転換支援 に関する補助金の問題などはまだまだ予断を許 さない状況です。また、療養病床の削減は、急 性期病院の転院先が無くなる事を意味します。 急性期病院においてもかなり深刻な問題に発展 する可能性があります。沖縄型ソフトランディ ングの可能性を様々模索する継続した取り組み が必要です。

シンポジウムの後は、懇親会が行われ、料理 を頂きながら率直な意見交換が行われました。

翌9 日は193 題の一般演題の発表が行われ、 各ブースでは活発な議論がなされました。今回 はかなり若い医師の発表が多い様に思いまし た。今後も若い世代がどんどん積極的に参加し て頂き、医学会を盛り上げて頂きたいと切望し ております。また、今回のミニレクチャーは 「予防接種について」と題してアワセ第一医院の浜端宏英先生に御講演頂き、予防接種実施状 況を諸外国と比較して解説して頂きました。 日々の診療において役に立つ、実際的なお話で 大変有り難かったです。妊婦に対するインフル エンザワクチンの接種は、日本では禁忌とされ ていますが、アメリカではむしろ積極的に行わ れている現状は大変興味深かったです。また、 琉球大学医学部附属病院周産母子センターの佐 久本薫先生より「プライマリー医師の頻用薬剤と妊娠、授乳への影響」と題して御講演があり ました。日常診療で対応に苦慮する妊婦、授乳 中の方への薬剤投与に関して具体例を挙げてお 話頂きました。影響を及ぼしやすい妊娠の時期 と、投与を控えるべき薬剤に関して具体的なお 話を聞けたのは大変有意義でした。

9 日のお昼には分科会長会議が行われ、次回6 月に開催予定の医学会総会における特別講演とミ ニレクチャーのテーマに関して議論されました。

会頭挨拶

友寄英毅

第105回沖縄県医師会医学会総会会頭
友寄 英毅

会場の皆さん、第105 回沖縄県医師会医学会 総会にご出席下さりありがとうございます。

医学会長の比嘉實先生、県医師会長の宮城信 雄先生はじめ関係者の皆さん、学会開催のご準 備ご苦労様でした。

沖縄県の医学史を繙きますと、1885 年(明 治18 年)「沖縄医生教習所」が設置され、明治 45 年廃止となるまでの27 年間に172 名の医師 を養成しています。

この医生教習所で第1 回沖縄医学会が開催さ れたのは、今から104 年前の1903 年(明治36 年)であります。医学会が現在のような年2 回 開催になったのは、戦後間もない1947 年(昭 和22 年)からであります。1951 年(昭和26 年)10 月の沖縄医学会総会を第1 回として、 以後、今日まで通算しています。学会の名称は 1974 年(昭和49 年)以降は沖縄県医師会医学 会総会となっています。現在、200 題前後の一 般演題を集めて年2 回医学会総会を開催する医 師会は、九州では沖縄県以外にはありません。

日本医師会には昭和62 年から「生涯教育自 己申告制度」がありますが、制度が始まってか ら数年間、沖縄県の自己申告率は10 〜 30 %台 を低迷し、平成7 年にはついに全国最下位とな りました。当時の日医の担当理事が「沖縄県の 申告率が上がったら、全国の申告率も変わるだ ろう」と苦言を呈するほどでした。沖縄県医師 会の会員は、決して不勉強ではなく、申告をし ない人が多かっただけであります。その後、沖 縄県医師会員の申告率は向上し、平成17 年度 の申告率は77.7 %、全国で第19 位となってい ます。今後とも会員各位が積極的に生涯教育自 己申告をされるようにお願いいたします。

沖縄県医学会には19 の分科会がありますが、 医師会入会の窓口である地区医師会におきまし ては、新入会員に「19 分科会のいずれかに入 会するよう」に勧めて下さい。分科会活動がま すます活発になることを期待いたします。

小泉政権と安倍政権は、「改革」の名の下に医 療費抑制を推し進めてきました。このために地方 の病院の医師不足、産科医師の不足、小児救急医 師の不足、療養病床の削減など医療経営環境は悪 化し、医療崩壊と表現されるまでに至っています。

国民医療は医学の社会的適応であり、疾病や 医療に対する国民の意識と社会の仕組み、特に 医療・保健・福祉の制度が適切でなければ、私 達は医療の力を充分に発揮することはできませ ん。私達はもっと日本医師会の医療政策に関心 を持ち、声を大にして、より良い医療制度への 改善を求めていくべきであります。

然し、医療経営環境が悪化しても、医師の社 会的責任が軽減されることはありません。医療 費抑制とは裏腹に、国民の医療への期待は高ま り、その一方で医療に対する批判の目は厳しく なるばかりであります。私達は、これからも「安 全で、やさしく、良質な医療」の提供のために、 地道な努力を続けていく外はありません。

本日の小松秀樹先生の特別講演「医療事故調 査制度の設立にむけて」とシンポジウム「療養 病床の削減について」は真に時宜を得た企画で あります。また明日は、193 題の一般演題の発 表と2 題のミニレクチャーがおこなわれます。 今回の医学会総会が実り多い集会になりますこ とを祈念してご挨拶といたします。

シンポジウム「療養病床の今後について」

座長:沖縄県医師会副会長 小渡 敬

沖縄県医師会理事 玉井 修

(1)沖縄県医師会より

沖縄県医師会会長 宮城信雄

(2)行政より

沖縄県福祉保健部医務・国保課

医療制度改革専門監 平 順寧

(3)沖縄県療養病床協会より

沖縄県療養病床協会会長 松岡政紀

(4)ソーシャルワーカーより

沖縄県医療ソーシャルワーカー協会

事務局長 又吉智子

(5)沖縄県政策参与より

沖縄県政策参与 玉城信光

1.沖縄県医師会より
宮城信雄

沖縄県医師会会長 宮城 信雄

増え続ける医療費を抑制するとして国は昨年6 月に突然介護療養病床の廃止と医療療養病床の削 減を決めた。2012 年までに25 万床ある医療型を 15 万床に削減し、13 万床ある介護型は全廃にする方針である。療養病床の実に6 割の削減になる。 医療の必要性の低い患者は介護施設や在宅への移 行が可能とみなしたのである。日本医師会は緊急 に実態調査を行い、必要な病床数の推計を行った。

医療療養病床の患者の状態は、医療区分1 が 42.1 %、医療区分2 が45.1 %、医療区分3 が 12.7 %であった。また医療区分1 の患者のう ち、病状不安定で退院の見込みのない患者が 30.9 %あり、さらにこのうち、一定の医学的管 理や処置が必要な患者が68.4 %であった。こ れより医療療養病床の入院患者の66.8 %が引 き続き医療療養病床を必要としているとした。 一方介護療養病床の入院患者のうち38.7 %は 医療の必要性が高く、医療療養病床を必要とし ている患者とみなしている。

2005 年の療養病床は38.4 万床あり、患者の 状態を踏まえた必要性からすると2012 年には 療養病床は26 万床必要としている。国の方針 通りの削減が実施されると大量の医療難民、介 護難民が出るおそれがある。

日本医師会としては国が決めた通りの画一的 な削減がされないように、地域の実態を踏まえ て行政と交渉し数値目標を出すようにとしてい る。各地から出された数値を積み上げて国の数 値目標にするように働きかけるとのことである。

日本の総病床数は1990 年の194.9 万床をピー クとして減少してきている。一般病床は1990 年 には153.6 万床あったが、2005 年には104.7 万 床であり、この間に48.9 万床(31.9 %)減少し た。ただし、2005 年度に入ってからは、一般病 床数は横ばいで推移している。

療養病床は2006 年4 月以降、急激に減少が 進み、2006 年4 月の38.1 万床から2006 年12 月には36.9 万床になっている。

医療費増大の原因は諸外国に比して入院病床 数が多いからだとして病床削減計画を策定した。 まず一般病床から利益誘導をして療養病床への転 換を勧めた。結果38 万床が療養病床に移行。移 行がピークに達したとみるや、6 割の削減を打ち 出した。介護型は制度上廃止にしたが、医療型の 医療区分1 は病院運営が不可能な点数設定にして 介護施設に転換せざるを得ないような状況に追い 込んで自然に減少するのを期待している。

100 万床ある一般病床についても在院日数短 縮化と7 対1 看護基準の導入で約4 割の削減を 目論んでいる。目論み通りに削減が進まないと より厳しい在院日数と5 対1 看護の導入も視野 に入れてくるものと思われる。

日本の医療費はGDP 比でOECD 加盟国最 下位(19 位)に転落をした。これ以上の医療 費削減政策は崩壊しつつある日本の医療に壊滅 的打撃を与えることになる。先進国平均の GDP 比10 %の医療費にすべきであるが、日本 医師会は医療機関の倒産、病床の縮小など地域 医療の崩壊を食い止め、フリーアクセスを堅持 するために、次年度の診療報酬改定では5.7 % の引き上げを要望している。

2.行政より
平順寧

沖縄県福祉保健部医務・国保課医療制度改革専門監
平 順寧

※内容は、別紙質疑応答部分をご参照下さい。

3.沖縄県療養病床協会より
松岡政紀

沖縄県療養病床協会会長
松岡 政紀

【療養病床の現状】

人口減少社会を迎えたわが国では、今後高齢者数は増加しそれに伴って、高齢者の一人暮ら し世帯および高齢夫婦のみの世帯の占める割合 は高くなることが見込まれている。

厚生労働省は高齢者の状態に即した適切なサ ービスすなわち介護サービスと医療サービスの 需給増を考え、効率的に提供する体制づくりと して、地域ケア体制の整備に取り組んでいる。 医療費適正化計画の実施が平成20 年4 月に迫 る中で、療養病床の削減を骨子とする再編計画 が発表されたが時代の流れに逆行し誠に不可解 である。

現在全国で療養病床は医療療養病床25 万床、 介護療養病床13 万床ある。しかし、介護療養 病床は平成24 年に廃止されることとなった。

沖縄県では療養病床数は平成19 年8 月の時 点2,800 床である。これは平成18 年10 月の 3,045 床より減っている。一般病床や回復期リ ハビリへ移ったためと思われる。

療養病床の役割として重視している機能は、 1)急性期病院で治療を受けた高齢の患者が、 引き続き治療が必要と見なされた場合に入院し ているが、これが入院患者の56.6 %を占めて いる。COPD や重度障害患者、神経難病患者 などの長期入院が52.4 %。また、脳卒中など で、四肢に障害を負った患者さんに対するリハ ビリテーションで入院が50 %、在宅復帰支援、 及び虚弱高齢者で在宅では困難な認知症の看 護・介護やうつ病患者さんのケアー、褥創ケア ー42.9 %、悪性腫瘍などの終末期医療ケアー 22.2 %あり、さまざまな複合的なニーズに対応 してきた。

医療療養病床は、平成18 年4 月の医療法改 定で医療区分による包括的診療報酬が導入され た。難病患者、特定の重症患者、重度障害者を 医療区分2,3 とし、その他を医療必要度がほと んど無いものとして医療区分1 とした。(配布 資料参考)今度の医療区分最大のポイントイは 「重度意識障害」や「重度麻痺」という病態それじたいが区分1 であることである。

平成19 年8 月の医療区分調査では区分1 は 27.3 %、区分2 は55.2 %、区分3 が17.3 %で ある。厚労省は区分1 全部、区分2 の2 割は、 老健や特老へ行ってもらうかあるいは在宅へ移 す方針である。しかし医療区分1 の実態調査で は20 %が何らかの医療処置(経管栄養、気管切 開、喀痰吸引、膀胱留置など)が必要か、状態 が不安定で、退院できない患者であった。ADL でも区分1 は寝たきり40 %、車椅子で移乗全介 助40 %であった。とても退院してもらえる状態 の患者ではなく、施設から入所を断られたらす ぐに医療難民となることが危惧される。

入院患者の主病傷は脳血管疾患31.8 %、認 知症5.8 %、パーキンソン病4.4 %、糖尿病 3.7 %となっている。主病傷で最も多い脳血管 疾患は重度意識障害や、重度麻痺の後遺症を残 しやすい。

これらの医療必要度を考慮すると本来療養病 床の入院が適当であるが、しかしそれ自体が区 分1 であるため、急性期病院よりの入院の妨げ になり、療養病床と急性期病院の連携を困難に している。一方、療養病床側にとっては、区分 1 の診療報酬が764 点とあまりにも低いため、 全入院患者の30 %を区分1 が占めると、病院 経営は成り立たなくなる。この二つのことが、 療養病床の存続を危ういものにしている。

医療区分2,3 の重傷者に特化して患者を集め 病床を埋めることは、困難である。一方医療区 分1、医療区分の2 割を退院させ、その分のベ ットを老人保健施設や特別老人保健施設へ転換 をすることは、沖縄県の参酌標準上困難があ り、又これまで多額の投資を行ってきた療療病 床の病院にとっては、更なる投資は重い負担に なるため、県が行った医療病床再編計画の意向 調査では7 割が継続、3 割が態度を決めかねて いる結果となった。

4.ソーシャルワーカーより
又吉智子

沖縄県医療ソーシャルワーカー協会事務局長
又吉 智子

1.沖縄県医療ソーシャルワーカー協会とは:

・昭和63 年10 月発足、平成19 年10 月現在会員数132 名

・ベッド数50 〜 100 床に1 名のMSW が配置されつつある。

・主な業務内容:

  • 1)受診・受療援助
  • 2)療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助
  • 3)退院援助
  • 4)社会復帰援助
  • 5)経済的問題の解決、調整援助
  • 6)地域活動

2.急性期病院の特徴と現状:

・急性期病院の医師やスタッフは、制度の改変 に疎い。(どんな患者も受け入れてきた、出 来高でやってきた、医療レベルの違い・感染 症の管理の違い等)・・・DPC の導入後 は?

・急性期治療を担うだけではなく、社会的問題 を抱える人達の一時受け入れを行っているこ とも多い。

・急性期病院に関わる諸制度の問題として、例 えば介護保険は点滴中である場合等、申請が できない場合がある。

3.療養型病床の現状と課題:

・在宅療養を支えるためには、短期入退院が行 える機能が必要。

・「病院が安心」という家族の想い。

4.患者・家族の置かれている現状:

・事例1 急性期病院からの退院援助ケース

・事例2 療養型病床対象外患者の退院援助ケース

5.沖縄県の医療関係機関及び関係者と共に考 え、取り組みたい課題:

・制度の狭間にある患者・家族支援の必要性。

・それぞれの医療機関・施設の機能の整理と受け皿作り(それぞれの機能から一歩出た支援 の必要性)。

5.沖縄県政策参与より
玉城信光

沖縄県政策参与 玉城 信光
(沖縄県医師会副会長)

【はじめに】

政府は医療の効率的な提供の推進と医療費の 削減を目的に介護療養病床の全廃を決定した。 沖縄県において介護療養病床の廃止が行われた 場合どのような状況が持ち上がるのか、高齢者 医療はどうなるのか検討する。

療養病床の削減が行われるが、厚労省は「削 減の数値の基準を基に、後期高齢者人口の伸び 率、救命救急医療の充実、早期リハビリの強 化、在宅医療及び地域ケアの推進などを総合的 に勘案しそれぞれの実情に合わせ病床削減を決 定する」としている。

【高知県のモデル事業】

高齢者の多い高知県でモデル事業が展開され 問題点が浮き彫りになっているので、それを参 考に意見を述べる。

1)療養病床入院患者のうち、介護なしには生 活が困難な人は医療で4 1 . 5 % 、介護で 79.7 %、合計56.8 %になる。

2)医療区分1 の6 割が低所得者、さらに収入が 年金のみの人(年間80 万円以下)は44.6 %になる。これらは特別養護老人ホームなどの 低所得者に配慮した受け皿が必要である。

3)入院患者のうち医療区分1 のうち53.5 %が 高齢者単身・高齢者のみの世帯に属してい る。その他の世帯の者でも全体の75.3 %が 日中・夜間ともに介護できる人がいない。

4)上記から医療区分1 でも在宅で対応可能と するものは1 割にも満たない。医療区分1 の 人の住居は自宅が8 割を占めている。

【医療の連携】

平成20 年4 月から施行される様々な政策が すべて連携して行われていることを理解してお く必要がある。特定健診・特定保健指導が病気 の早期発見と予防を目的とされており、70 % の健診受診率をあげるためには医師会の関与が なければ到達できない。4 疾病(がん、脳卒中、 急性心筋梗塞、糖尿病)・5 事業の連携も急性 期の病院からリハビリ病院、介護施設、老人ホ ーム、在宅医療など密な連携がなければ、患者 のいき場所がなくなる恐れがある。介護療養病 床の削減のための受け皿づくりを「地域ケア構 想」で展開しているのである。

【考察】

療養病床の入院患者は急性期病院などから疾 患の慢性化と高齢化の中で療養病床へ移行して くる。

リハビリ病床、療養病床などの必要数とこれ らの連携が確立されなければ、急性期病院の患 者の流れが滞ることになる。

地域ケア体制の整備と患者の受け入れ先がな ければ療養病床からの患者の移行は難しい。

沖縄県の実情はどうなのか、在宅で家族がケ アすることができるのか?だれが連携の中心に たち情報を集約し発信できるのか?

【まとめ】

1)療養病床削減の条件として介護難民がでない ような、地域でのケア体制の確立が必要である。

2)医療連携の中で情報の集約を行い、情報伝 達の中心的役割をする組織が必要である。

3)地区医師会が地域連携の中心的役割を担う 必要がある。

質疑応答

質問1 在宅に向けてのいろいろな支援も進ん でいる状況ですから、そういうのがだんだん成果 を上げて実績を上げてくる中で、必ずしも療養 病床を平成24 年の3 月いっぱいまでに削減しま すというのではなくて、もう少し10 年ぐらいの スパンをもって考えてもいいのではないかと。そ ういう意見を、厚生労働省に言えば、ある程度 聞いてくれそうな感じもするんですけど。

○玉井座長 今の長期的な展望に立って、計 画の変更の見直しなどができうるのかどうなの かというのは、玉城先生、どうなんですか。

○玉城参与 厚生労働省から言われる削減の 目標が県によっていろいろ違うみたいです。

要するに、その県の人口が高齢化してくるの がピークを越えている県があるんです。沖縄県 はまだピークが来ない。沖縄県は、これからど んどんお年寄りが増えていくところにいるよう なんです。

ただ、国が決めて5 年でというのを10 年に延 ばすかどうかは、これでは駄目だという声に押さ れるんじゃないかなという気はしております。

とりあえず、目の前の5 年の目標と、これか ら介護のお世話にならない人をたくさんつくっ ていく。元気に歩いている人をたくさんつくる ということが、我々医師会の仕事ではないかな と感じております。

○玉井座長 このことに関しては、地方自治 体にある程度裁量権がある部分もあるようなん ですけれども、小渡先生、何かそのへんについ ての追加発言ありますか。

○小渡座長 今、削減率をどれぐらいにする かということを、まず国に上げないといけない ことになっています。それで、国は6 割〜 7 割 をカットするように言っていますが、どこの県 もそんな数字を出すところはないと思います。 先ほど平専門監の方から3 割前後が妥当だとい う話をしておりました。3 割前後というのは日 医が言っている数字に大体近いんです。国は 15 万床まで減らせと言っているが、日医は25 万床ぐらいは必要だとしています。その日医の 削減率が大体3割なんです。急激にこれが決ま りましたけれど、ソフトランディングさせるために24 年までにということを言っているわけ です。それで上手く行けばいいんですけれど も、色々な問題があります。先ほど又吉さんが 言ったように容易にはいかないと思います。

○平専門監 ただ、都道府県で裁量権のない診療報酬がどんどん改定されると。介護報酬 と、来年早々、医療機能強化型老健施設の介護 報酬が出てきます。それから、4 月には診療報 酬。2 月中旬ぐらいには診療報酬の部分が出て きます。そうなりますと、診療報酬がどんどん 出てきますので、医療機関側としては10 年待 ってという状況になるのかなと。多分、経営的 な問題ですね。そこらへんを踏まえて考えない といけないんじゃないかなという部分もあろう かと思います。

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○玉井座長 実際に、もう経営的に成り立た ないレベルまで診療報酬は下げられているとい うところもあるようです。つづいて、フロアー からのご質問です。

質問2 医療区分1 という決め方ですね。要す るに、クライテリア(基準)というんでしょう か。家族背景も住環境も何も考えていない。介 護力、家族力、そういうことは何も考えていな いで乱暴な決め方をして、社会的入院みたいな 扱いを受けていると。これはよくないんじゃな いかということですけど、松岡先生、どうでし ょうか。

○松岡先生(沖縄県療養病床協会会長) も ともとこの医療区分を決めている元のデータ は、医者の指示ですね。指示がどれだけ変更さ れたかどうかによって決まっているんですよ ね。医療区分1 の患者さんはほとんど指示がな かったということで、その指示と重症度をすり かえて色区分しているんですね。

僕らは、毎朝、回診して患者の状態を診てい るんですけれども、どんな重症でも状態に変化 がなければ指示というのは変えないんですね。で すから、医療区分1 には、1 から3 までまたがっ ている人も多いと思うんですね。2、3 は非常に 詳しく書いているんです。区分1 の病態が非常 にあいまいで今の混乱を招いているんですね。

ですから、僕もこれはしっかりしたクライテリ アをつくって、もう少し区分2、3 の特定な人だ けを入院させるのではなくて、幅広く必要があ れば療養病床に入れるべきだと思っております。

先ほどちょっと区分1 の日常的な医療処置に ついてお示ししたんですけれども、一番多いのは吸引ですね。吸引で医療区分1 の場合には、 発熱がないときだけです。発熱があると区分2 になります。

それから、もう1 つ。区分1 は、吸引が7 回 までです。8 回になると区分2 ですね。このへん は、厚労省にとっては非常にわかりやすいやり 方ですけれども、現場では非常に複雑な思いで やっているんです。年寄りは病気の長期化、そ れから、多疾病ということで、区分1 でも結構 治療が大変な場合もあります。

質問3 医療療養病床に入院されている方での 医療区分1 の患者さんがいた場合、その方が例 えば療養病床から廃止されるということになる と、どこに行けばいいんでしょうかということ なんですけど。

○小渡座長 質問の意味は、多分こういうこ とだと思います。区分1 で適用除外だから退院 してくださいといった場合に、特養とか老健に 行くなら介護保険の適用になるんです。だけ ど、65 歳以上でないと介護保険の適用にはな らない。しかし、65 歳以下の人でもそういう 人がいます。そうなった場合には医療施設にも 介護施設にも受け入れられず行き先がないわけ で、それで介護難民とか医療難民とかいう話が 出てくると思います。そうなると、託老所や有 料老人ホームが受け皿になると思いますが、お 金がなければ先ほど玉城先生が高知県の例でい った様に、年収が低かったらそれこそ託老所に も行けない。それで難民という話が出るわけで す。このようなケースも出てくる可能性がある と思います。

質問4 今、小渡先生が言ったことなんです ね。ちょっと具体的になりますけど、実際、う ちは82 床の医療の療養をやってまして、交通 外傷とか後遺症で20 代、30 代の寝たきりの患 者さんがいるんです。いわゆる植物状態の方。 こういう方は医療区分1 です。胃瘻もありま す、膀胱瘻あります。ところが熱発もしません から医療区分1 なんです。こういう方を介護老 人保健施設関連の施設に入れるといったときに は、小渡先生が言いましたように、いわゆる第 2 号被保険者でもないですから、40 歳以上にな るまで待っておかないといけないですね。とこ ろが、医療区分としては1 なんです。こういう 人が結構いるんじゃないかなと思っているんで すね。

実は、うちの82 床でそういう方が2 〜 3 人 いるんです。そうすると、親も在宅でみれない と。ところが、障害者の病棟というんでしょう かね。そういうところに申し込んでもなかなか 何年も入れないというのがあって、実はうち患 者さんは区分2、3 が9 割いるんです。その 10 %にそういう方がいて、どうしても100 % にするつもりはないんですけれども、こういう 方が結局、僕らが手間暇かかるんですけれど も、みているというのが現状なんですね。

ですから、そのへんが沖縄県としてどれぐら いいるかというのは把握されているかどうかと いうのを1 つ聞きたかったんです。以上です。

○平専門監 先ほどのスライドでお見せしまし たけど、いわゆる64 歳未満の方が去年の10 月の調査では、全療養病床数が4,300 ぐらいあります ので、そのうちの130 名ぐらいというような数字 が64 歳未満の方という形になっております。

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質問5 療養病床の削減で沖縄県はどれほど医 療費または介護費の抑制効果があるのか。お金 の問題ですけど、大体具体的に出ているんでし ょうか。

○平専門監 一応、療養病床の数によって、 大体どのぐらいかという形がありまして、現 在、総医療費が3,200 億円ぐらいあります。そ のうち例えば療養病床を3 割ぐらい介護保険に いくとすればという粗い計算ですけど、多分20 億円から30 億円ぐらいの間で医療費の適正化 効果といいますか、そういったものが出てくる のかなと。これは個人的に粗い計算しています ので、正式にはきちんとやらないといけないん ですが、今、レセプト上では、医療療養病床の 医療区分1 の人がずっと1 カ月入院しまして平 均大体36 万円。それから、医療区分2 の方が 52 万円。それから、医療区分3 の方が65 万円 という形になっております。

こういった数字をもとに粗い計算をすると、 先ほど言ったような金額になるのかなというふ うに思っております。

○玉井座長 ただ、これは医療保険の抑制で すよね。

○平専門監 介護については、実は今から地 域ケア体制整備構想。うちの医療費適正化計画 のこの数値を明確に出さないと計算できない形 になっておりまして、それから今のところ数字 は出ておりませんので、近々地域ケア体制整備 構想という案をつくっていきますので、その中 で医師会、県民、それからパブリックコメント の中で、今後、数字は出していきたいなという ふうに思っております。現在試算しているとこ ろです。

○小渡座長 平さん、厚労省が出している試 算では、療養病床の削減によって確か削減効果 が医療費が4,000 億円浮くんですよ。そして介 護施設が増える分、介護保険に増える分が記憶 は確かではないが2,000 億円ぐらいだったと思 います。これを差し引いた場合、削減効果が 2,000 億円ぐらいであったように思います。そ のかわり、介護保険に移行する分だけ各自治体 に負担が増える訳で、国の負担は軽くなるわけ です。そういうことではないかと思います。

平専門監 最終的な金額ではないですが、 例えば医療療養病床の平均の1 人当たり費用は 49 万円、それから介護療養が41 万円となって いまして、現在、老人保健施設の1 人当たり費 用が31 万円なんですね。介護療養から老健に いきますと1 人当たり10 万円ぐらい、医療療 養から老健にいきますと1 人当たり18 万円で すか。その分が費用としては減るという形にな ろうかと思いますけれども、ただ、医療機能強 化型老健施設というのが出てきますので、そう なりますと、これは24 時間体制の見守りとか いう形で、看護師さんを増やしたりという状況 になりますので、この老人保健施設の31 万円 よりは高くなろうかと思いますけれども、そこ らへんが来月あたりに出てきますので、そこら へんを見越して計算していかないとわからない と思います。

質問6 地域ケア整備構想は今どういうところ まできているんですかね。何か具体的なものが 動いているんでしょうか。

○玉城参与 まだ実際にはどうするか出てき てません。だから、療養病床削減というのは、 地域ケアで受け皿ができない限り削減できない んですよ。みんな連動しているんですけど、まだ 仕事がこうして後ろのほうになると思いますけ ど。ただ、4 月までにはおそらくまとめないとい けないでしょうし、それをほとんど統括しているのが平さんだから、どうでしょうか。

○平専門監 地域ケア体制整備構想。これか ら原案をつくっていきますけど、医療費適正化 で示した療養病床数の目標数引く去年の10 月 時点での3,751 床というその差額、転換分です ね。転換分を踏まえて地域ケア体制整備構想 で、各圏域ごとに介護保険事業で県は受け皿づ くりをつくっていきたいと考えておりますの で、各圏域ごとに示していくと。例えば老健施 設は北部圏域ではどのぐらい、中部ではどのぐ らいという形で増やしていく分ですね。それを 示していきたいというふうになっていまして、 あと、もう少し待っていただければと思ってお ります。

質問7 平専門監に質問したいと思います。療 養病床の病床数が大体決まっていきますと、今 度の医療計画では一般病床と療養病床と、そう いう病床数も計画の中に入れられるのかどうか ということと、もしその療養病床の数が決まっ ていきますと、今まで病院によっては一般病床 から療養病床にしたり、マンパワーとか、ドク ター、ナースの状況によっては病床を一般から 療養に変えたり、療養から一般に変えたりとか 状況を見て判断したり、地域のニーズによって も変えてきましたけれども、そういうのが可能 かどうかという。そのへんをお願いします。

○平専門監 医療計画の、昔は必要病床数と 言いましたけど、現在、基準病床数の算定を今 やっているところですが、基準病床の算定にあ たっては療養病床の転換分を差し引くことにな っております。

今回の医療計画を策定した段階で、今現在 は、例えば療養病床から一般病床にいくのも結 構自由にいけるんですけど、医療計画を策定し た段階でできるかと。これが困難になるんじゃ ないかという話がよくあります。

今回の医療計画でも、基準病床は一般病床と 療養病床は小分けしない形に示そうという方向 になっております。どういうことかといいます と、一般病床及び療養病床ということでマルメ で出しますので、はっきり言って今と変わらな い。だから、療養病床から一般病床に、これは 許可制ではあるんですけれども、特段の理由が ない限り大体認めることにしておりますので、 今後も5 カ年間の間は、療養病床から一般病床 にいくことについても認める方向になってくる んだろうというふうに思っております。

質問8 地域ケアの話を少し質問させてください。

在宅にシフトするのは行政がこれをねらって いるわけですから、それを支えていく方向でや っていかないといけないと思うんですけれども、 それは具体的にどうやっていくかと聞きたい。

例えば、訪問ナースステーションの所長さん と話したことあるんですけど、訪問ナースステ ーションの数は減ってきているんだという話も 聞きますし、あるいは、ほかの県ではやっぱり 在宅医に手を挙げる先生方も少しずつ増えてき ているのも現実ですけど、沖縄県はどうなって いるか。ちょっと不安なところがあります。

○玉井座長 在宅医療支援診療所があまり手 挙げがないということですけど、このへんにつ いて、なぜ在宅支援診療所があまり手が挙がっ ていかないのか。

○今山 沖縄県医師会医療保険担当理事の 今山でございます。

在宅支援診療所は、今現在49 施設。県下で 届出があるのは非常に少ないです。人口当たり の届出数は、全国で40 番目ぐらいです。その 最大の理由は、診療所が少ないんですね。開業 医の先生方がもう圧倒的に少ないです。全国の 平均が人口10 万人に70、沖縄は大体50 ぐら いですね。それぐらいしか開業医の先生がおら れないということが第一にあります。それが一 番だろうと思います。

それと、24 時間の連携とかいうこともあり ますし、言われるように訪問介護ステーション も全国平均すると圧倒的に少ないです。しか も、それがだんだん少なくなっているという現 状もあります。

○小渡座長 今山先生が言ったように、在宅 診療を今回のこの発表で平さんが報告してくれ るかなと思ったんですが、この介護難民とか医 療難民の問題を解決するには在宅診療しかない んです。だから今のままでいくと、本県は今後高齢者が増えるため、削減をしなくても5年〜 10 年で必ず介護難民、医療難民が出ると思い ます。それぐらい高齢化率が他府県と違い高い んです。後期高齢者も含めてです。いずれにし ても、在宅で診る以外にないと思います。現に 病院も施設も満床のため、託老所とかそういう のが、すごい勢いで増えています。その在宅の 問題は、医師会で一度取り上げないといけない と思います。在宅医療についてまとめますと、 例えば診療所数は全国で45 位です。そして、 人口10 万人当たりで本県は56.3 で、全国は 76.3 です。それから24 時間体制で往診と訪問 看護をする在宅療養支援診療所は、先ほど今山 先生がおっしゃったように、本県は49 施設し かありません。この数は全国で35 位です。非 常に少ないということです。それから、もう1 つ訪問看護ステーション、これも全国38 位な んです。非常に少ない。それでも減っているの が現状です。それから、さらに往診件数も全国 最下位です。

本県の医者の数はどうかというと、大体全国 並みになってきました。医者の数はいるんだけ れども、どこに居るのかということになります が、それは病院で勤務していることになりま す。病院にいる医師数は本県は73.2 %で、全 国では63.8 %なんです。病院に働いている先 生方が10 %多いんです。それに対して診療所 で開業している医師数は本県は26.8 %で全国 は36.2 %、ちょうど10 %少ないんです。なぜ 本県は病院勤務医が多いかというと、おそらく 救急病院の数が多く、その結果救急医療がかな り充実していると思います。そのため在宅医療 が充実していなくても医療難民が出ない理由 は、救急医療が全部抱えているからだと思いま す。だから、その後どこに回すかはケースワー カーが努力しているわけです。そんな状況で現 在保たれています。病床削減によってこの先は もっと患者が増えると考えられます。このまま では救急医療が崩壊しそうになると思います。 在宅医療の充実というのは、そういう点を踏ま えてやらないといけない。これをやらないと、 先ほど玉城先生が言われた地区医師会を中心に した在宅システムを作ると言っても、それに関 わる在宅療養支援診療所や訪問看護ステーショ ン、さらに往診を行う病院や診療所等の数を増 やさないと、なかなか上手く行かないと思いま す。在宅システムを考える上での課題だと思い ます。

質問9 在宅での終末期を望むよりも、むしろ 施設での終末期を望む人が多いような傾向が出 ているような気がするんだけれども、そういうこ とになると、療養型病床は減らせないんじゃな いかということなんですけれども、どうなんでし ょうかね。終末期医療において、在宅で看取っ てほしいという願いのほうが多いんでしょうか。 それとも、施設依存型なんでしょうかね。

○又吉事務局長(沖縄県医療ソーシャルワーカ ー協会事務局長) 今のところ施設依存型で す。家族の意向は先ほども申しましたように、 医師がいるから安心、そばにいるから安心とい うのがあります。

質問10 さっきから聞いていると、医療難民 ということですけど、私は、楢山節考から習っ て棄老だと思っているんですけどね。方向性は やっぱり新たな棄老伝説が始まろうとしている んじゃないかなという気がするんですけれど も、それは置いといて。

以前から長野県の泰阜村というところは、在 宅での亡くなる方がとても多いことで有名だっ たんですけど、最近は、何か若い家族が両親を 病院に入院させたり、施設に入れてという傾向 になってきているんだそうです。親のほうも、 若い世代の言うことを聞かない頑固者はいなく なってきたと嘆いておられましたけれども、そ ういう傾向はあると思うんですね。それを、全 く一方的に厚生労働省のほうから出たような案 で、切っていっていいのかなという心配が1 つ あります。

私のところではグループホームを始めている んですけれども、グループホームは、今現在ど れだけ安く抑えても自己負担が全部で12 万円 ぐらいになりますね。そうすると、生活保護の 人は入れるけれども、年金だけでやっている方 は入れないという現実が出てきている。どうしてもグループホームへ入れていったほうがいい んじゃないかなと思っていても、現実問題入れ ないんですね。

これからの療養型をなくす方向性というの は、どうもそういう自己負担を増やしていく方 向なので、やはりこれは棄老じゃないかなと考 えて、その提案をしてみたんです。

○平専門監 ことし3 月に「終末期における 沖縄県保健医療県民意識調査」というのをやり ましたけど、その中で終末期をどちらで終えた いかという結果なんですが、これ多分又吉さん の場合は患者さんの意向なんだろうと思うんで すけれども、これは一般市民も入っているんで すね。大体43 %ぐらいが自宅で最期を迎えた いと。だけど、結果としてどうなりますかとい う質問については、多分、病院で死ぬんだろう ということになるんです。

では、その理由は何ですかと。やはり家族に迷 惑をかけたくないというものがかなり多かったと いうことで、多分、一般市民としては本音として は自宅で最期を迎えたいというのはあるんだろう と思いますね。ただ、家での介護力の問題。

沖縄県は高齢者と一緒に住んでいる世帯の割 合が低いんですよ。多いような感じするんです けど、長野県がかなり多いんですね。離れて暮 らしている状況が沖縄県はありまして、それと 一人暮らし高齢者というのも結構多くて、ちょ っと離れたところの子供とか孫とか、そういっ た人たちに迷惑をかけたくないという人たちが 多いという背景があるんじゃないかなと思って おります。

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○又吉事務局長 現場からなんですけれど も、先ほど医療区分の全国平均が沖縄県は低か ったと思うんですね。それは、療養型病院にお いて先生方も看護師も、それからMSW(ソー シャルワーカー)もやっぱり入院相談から、そ の人にかかわってその人の今後の療養先、お家 に帰るの、どこまでよくなったら施設に帰るの という確認を随時、やっています。

ただし、お家で介護はするけれども、何かあ ったらすぐ病院で受けてよと、そういう保障を してお家に帰しているのが療養型の先生方と か、急性期、お家に帰すときに何かあったらい つでも来ていいからという保障をして帰してい るので帰れている。

それから、これもまた補足で、特別養護老人 ホームに申し込んで、県内は割と多いほうなん ですけれども、それでも4 〜 5 年はかかります。 だから、急性期の病院のワーカーも療養型のワ ーカーも、何カ所でも申し込んでおいて、最近 は地区内だけではなくて、例えば那覇市の人だ ったら、ご家族が中部にいるなら中部のほうも申し込んでおきなさいよということで、1 名で 5 〜 6 カ所の特別養護老人ホームへ申し込んで いる人もおります。老健入所が大体2 カ月から 3 カ月、タイミングがよければ2 〜 3 週間で入 れる状況。

○玉井座長 小渡先生、追加発言お願いします。

○小渡座長 自宅で亡くなりたい、畳の上で 死にたいと考えるのは当たり前だと思います。 それができなくなったのは、医師側にも責任が あるように思います。沖縄県は特にです。とい うのは、亡くなると死亡診断書が必要になりま す。しかし、亡くなった後に来ると検案書にな るので、警察に出さないといけなくなります。 本県では往診することが少ないので、死亡診断 書を書いてくれる医者がおらず、家族として は、病状が悪くなるとすぐに救急病院に搬送し ていると思われます。在宅医療を推し進めると いうのは、死亡診断書も含めすぐに診てもらえ て、色々なことに対応してくれるという家族の 安心感がなければ、何でも救急病院に連れて行 くという事が起こってしまうと思います。

それから、厚労省は在宅医療を進める理由 は、きれいごとでは畳の上で亡くなってもらい ましょうと言うんですけれども、実際は、亡く なる間際に救急で運ばれると死亡するまでの3 日間で約120 万円かかるそうです。これを厚労 省は医療費の適正な使われ方だとは考えていな いようで、そこで新たに在宅療養支援診療所を 制度化し、往診を行い死亡診断書を作成した場 合は、診療報酬を1 万点にするとしました。在 宅医療を推進するための政策誘導をしていると 思います。ただ、我々医師会としては、在宅医 療に関して県民のためにどうあるべきかという ことで議論すべきであると考えます。

質問11 診療所をしているんですけれども、 さっきから「医療適正化」という言葉が使われ ているんですけれども、どういうことなのかと いうのが1 点ですね。

医療費の適正化という言葉の中には、個人個 人の必要な医療を提供するのが医療適正化だと 思うんですよ。日本の医師会のほうでも、医療 費は上がれば上がるほど国はよくなると。これはなぜかといったら、道路よりも医療というの は効率的な産業だと。そういう定義をしている はずなんですよ。

「医療適正化」という言葉を使われているん ですけれども、どういう意味で使っているのか ちょっと教えてもらいたいんですけど。

○宮城会長 「医療適正化」という言葉を使 うのは、これは国とか県が使うのであって、 我々はこの「医療費適正化」というのは「医療 費抑制」と置きかえたらいいんですよ。私は、 「医療費適正化」というときには、医師会側か らは「医療費抑制」というつもりで受け取って おります。

私はそう思っております。

○平専門監 国の説明では、医療費適正化と いうのは、例えば平均在院日数が長いとか、平 均在院数が短いとかいろいろあります。平均在 院数が長いから老人医療費が高いとかいろいろ ありますが、沖縄県は平均在院日数が長くても いいという理屈。要は、そういう状況が適正だ というような理屈が通るような説明ができれ ば、それが医療費適正化と。

○玉井座長 難しいですね。

○平専門監 実は難しいんです。うちのほう も国のほうにこういう質問を実際して、こうい う回答でした。

○玉井座長 時間も迫ってまいりましたの で、小渡先生、最後に。

○小渡座長 今日のシンポジウムの1つは、 病床をどう削減するかということについてでし た。平さんは最初、四面楚歌と話しておりました が、来ていただいて本当にありがとうございまし た。そして、ある程度の方向性は話されたと思い ます。我々医師会としても、基本的に病院がどう こうではなくて、県民に迷惑をかけない、介護難 民、医療難民が出ないような施策を、県とよく話 し合っていきたいと考えています。

それともう1 つは、この調査をした結果、 我々の側にも少し改善しないといけない点もあ ります。それは療養病床の長期在院患者です。 これは、ある程度改善しないといけないと思い ます。ただし、なかなか改善できない理由は、 本県は他府県と比べて医療療養病床が適正に運用されているということです。要介護度1は 24 %で、全国でも低い方だからです。重度の 人を診ているために長期在院患者が増えている 可能性もあります。それから、もう1 つは、在 宅系のサービスが全国に比べて貧弱であるとい う事が分かりました。もしこれを推し進めるな らば、在宅系のサービスを含め、県民が安心し て医療にかかれるシステムを作るということも 併せて、高齢者整備ケア計画の中で検討してい きたいと考えております。

それから、あと1 点だけです。気をつけて欲 しいことは補助金に関する問題です。先ほど平 専門監が、医療療養病床から介護型の施設にか わる場合には補助金が出ると言われましたが、 現在、介護療養病床を運用されている先生方 が、例えば老健にかわるといったら、これは補 助金は出ない可能性があります。補助金で増改 築しようと考えているならば、行政との連携を 図る必要があると思います。

○平専門監 当初補助金は出ないということ でしたが、介護療養からも転換する場合、補助 金が出ることになりました。

○小渡座長 補助金に関しては、介護療養病 床でも医療療養病床でも、補助金が出るという ことでいいですね。

○平専門監 ただし、枠があるということで すね。療養病床数の目標数を出しましたら、そ れまでの転換分という数字が出ますので、その 転換分について国庫補助しますよと、あるいは 県の補助もつけますよという流れになっており ますので。

今後もいろいろな説明会、制度が変われば説 明していきたいと思っておりますので、そこら へんはご注意いただきたいというふうに思って おります。

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○玉井座長 どんどん状況が変わっているの も事実でございますので、ぜひ注意していただ きたいと思います。補助金の問題も微妙に動き がある様です。

それでは、定刻になりましたので、このシン ポジウムをこれで終わらせていただきます。皆 様、どうもありがとうございました。

印象記

稲田隆司

理事 稲田 隆司

死の否認と医療崩壊

平成19 年12 月8 日、第105 回沖縄県医学会総会で、虎の門病院泌尿器科部長の小松秀樹先生 による「医療事故調査制度の設立に向けて」と題する特別講演が行われた。

資料1)から5)が準備され、先生の熱い主張がみなぎる1 時間であった。

まず、国民に充満する死の否認、死をみようとしない、認めようとしないメンタリティーが述 べられ、その結果としての医療への過剰な期待、反転時の攻撃性の増長が指摘された。そもそも 医療は危険を伴うものであり、安全な医療の幻想が、死を受容できない不安と相まって国民の医 療に対する不満、攻撃に転化していると分析し、「未来の明るい希望は死を前提としている」「医 療の不確実性は死の認容を前提とする」と話され、この事を社会の共通認識とすべきであると力 説された。

そして、調査委員会の設立に向け、厚労省、日医の対応を厳しく批判し、法理を展開、過失は 罪ではない、英米法には業務上過失致死法はない、ヒューマンファクター工学に学び、科学的認 識に基づいた調査委員会の制度設計、国の統制ではなく、医師集団による自律的処分が求められ ると強調された。

この問題は現在進行形で、風雲急を告げており、各方面からの議論、判断を要すると考える。 刺激的な講演であった。

尚、資料は以下のとおりで、興味のある方は事務局にお問い合わせください。

資料

1)「医療崩壊について」

2)「医療の内部に司法を持ち込むことのリスク」

医療と司法の齟齬の解決は多段階で時間をかけて

3)「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案」

−第二次試案−

4)「刑事訴追から不安を取り除くための取り組み」

5)「日本医師会の法リテラシー」