会長 宮城 信雄
みだし会長協議会が去る年9月18日(火)午 後3時から日本医師会館で開催された。各県より 提出された議題は10題、その内特定健診に関す る質問が4題提案されそれぞれ協議が行われた。
始めに司会の羽生田常任理事より開会の辞が あり、唐澤会長より挨拶が述べられた。
唐澤会長からは、この度の集中豪雨で、東北 地方北部に大きな被害をもたらしたことに対し お見舞いの言葉が述べられ、又、先の参議院議 員選挙について、武見先生が次点という結果に 終わってことについて、力至らずかような結果 になったことをお詫び申し上げ、ご協力いただ いたことに対し感謝の意が表された。
今後の取組みについては、現在、自民党の総裁 選が行われているが、その中で小泉政権下の構造 改革路線で、特に医療制度改革はやり過ぎであっ たという反省が伝えられており、そのことを今後 の政局に期待し私どもも十分に取り組んでいきた いと述べられた。又、日本医師会のグランドデザ イン2007の各論を発表し、関係の各分野には説明 し国民にも広く周知をしているところである。各 都道府県でも国会議員、県議、関連の先生方等を 通じて医療の現況を訴えていただきたいとして、 各地域において取り組む事項も沢山あり、日医の 基本方針が大きく影響することを十分認識し強力 に活動を進めていきたいとの挨拶があった。
唐澤会長の挨拶の後、佐々木新潟県医師会長 より先の新潟中越沖地震に際して、日医はじめ 各地の医師会からお見舞い等をいただいたこと に対しお礼の言葉が述べられ、森京都府医師会 長からは、故横田耕三元会長の葬儀に対する お礼が述べられた。
その後、協議が行われたので、概要について 報告する。
協 議
提案要旨(抜粋)
デジタル化の問題、医師の診察料の設定等多 くの問題がある。日医の対応が遅すぎたのでは ないか。他団体では契約の話が進んでおり、ガ イドラインも示してもらいたかった。他県の交 渉の状況、価格の交渉額がどうなっているの か。又、各県とのメーリングリストでも作って いただければ、わかり易くなるのではないかと も考えているが如何か。
【内田常任理事回答】
特定健診の料金は、老人保健事業の基本健康 診査と同様に診療報酬に沿って算定していただ きたい。診療報酬の検査費用を積み上げた上で 情報提供料、医師会の対応費用を加え、日医総 研でも料金を提示しているが、これはあくまで も目安である。健保連が5,000円の金額を提示 して、これに対応するような調査をしている が、これは医師の判断料は含まれておらず日医 として認める額ではない。
都道府県の状況については、8月31日付で調 査を実施しており、纏まり次第情報提供した い。又、厚生労働省が7月時点で調査した結果 では、全国国保保険者の内24.7%が日程未回答 となっているが、35.3%は個別方式で実施する ことになっている。又、特定健診の単価につい ては最低5,000円から最高金額まで非常にバラ つきがあるが、これは上乗せ分を含んだ健診記 録というふうになっている。これについても調査結果が出次第報告したい。
料金については、老人保健事業の業績がベー スになるということであり、各都道府県、郡市 医師会によってそれぞれの歴史があり、それを 基に交渉していただくことが必要になると思う。
特定健診に関わる情報提供並びに情報交換に ついては、日医のホームページでアクセスがで きるようになっている。又、各担当理事とのメ ーリングリストを作成することについて検討し ていきたい。
提案要旨(抜粋)
・平成24年度末までの経過措置としてとられ ている「一定の保健指導の実務経験を有する 看護師」とは、具体的に何を意味するのか。
・厚労省が立案した「特定健診・保健指導」の研 修プログラムに沿った講習会を各都道府県医師 会または保険者協議会が開催し、看護師を受講 させることにより、保健指導補助者として従事 可能となるよう折衝していただきたい。
【今村聡常任理事回答】
厚生労働省の健康保健指導室では産業保健の 現場で働いている看護師を想定していて、病院 診療所に勤務している看護師は想定していない。 日医の考え方としては、ご提案のとおり看護師 を受講させることにより保健指導補助者として 従事可能となるよう努めていくことにしている。
今回の保健指導はメタボリックシンドローム 対策ということであるが、ターゲットは糖尿病 である。糖尿病の療養に関しては、国家資格で はないが看護師が講習を受けて糖尿病療養指導 師の資格を取っていて認められているケースも ある。それから平成24年度末まで5年間の期間 限定ということであるが、5 年間経験した人が 活用できなくなるという非常に矛盾のある仕組 みとなっている。又、600時間を超える講習を 受けた糖尿病専門の認定看護師も資格はないと いう極めて現実離れしたものだと考えている。
今回の保健指導は実施までに5年かけて計画的 に増加させていくということであり、いきなり全 部の保健指導対象者が出てくるというわけでは ないので、その実施条件を踏まえながら協議を 継続して必要な見直しを要望していきたい。
質疑では、看護師が現時点で研修プログラム に沿った講習を受けても認められないのかと確 認の質問があり、今村聡常任理事から公にそう いうことを聞かれると医師、管理栄養士、保健 士ということであり、それは現実的ではないの で改めるよう要望をしているとの回答があっ た。又、この保健指導に一般の医療機関が参加 できないとシステム全体の大きな問題となるの でしっかり担保してもらいたいとの要望があ り、内田常任理事からは状況をみながら柔軟に 対応させていただきたいとの回答があった。
提案要旨(抜粋)
・日医が集合契約を結び会員医療機関で実施で きるようにすべきと考えるが、如何か。
・実施医療機関のホームページで情報提供、請 求事務の電子化など、IT化対応できない医療 機関はどうするのか。
・介護保険発足時と同様に、平成20年3月31日 以前に開設されている医療機関は、受託医療 機関として「みなし指定」すべきであるが、 どのように対応するのか。
【内田常任理事回答】
集合契約について、被扶養者の利便性を考え れば、現行の老人保健法で行われているように 居住地で健診を受けるようにすることが必要で あると考えている。又、上乗せ健診といったも のも含まれ、それを含めた現状の中で統一料金 として日医が全国規模で契約するということは 非常に厳しい問題がある。他に独禁法の問題が ある。従って、郡市区医師会或いは都道府県医 師会が代表保険者と契約して、それを束ねる形 で日医が何らかの対応ができるのか考えている。 日医が料金設定、健診項目まで含めた総合的な 契約を全国的に統一して結ぶことは難しい。
IT化対応について、これは特定健診に限定した 上で統一した標準様式を決めて代行入力機関と契 約する方法を考えている。形態として1)都道府県 医師会或いは郡市医師会が取り纏めて代行入力機 関に送る。2)郡市医師会が代行入力を行う。3)書 いたものをそのまま伝送して代行機関で入力す る。その辺を近日中に取り纏めることにしている。
みなし指定の場合は、本来辞退届が必要にな ってくる。介護保険の際に見なし指定した時 は、辞退届が出されていない医療機関が多く 様々なトラブルが生じている。
支払い基金で登録ができるので届出を出すと いうことでご理解いただきたい。今月中に案内 が行くと思う。
質疑では、集合契約について細部に亘り日医が 契約するということではなく、全体としての契約を 結んでいただきたい。又、政管と共済が中央に組織 がないため、ゆるい形でも日医の方で集合契約を結 んでいただきたいとの意見要望等が出された。
内田常任理事からは、代表保険者については 都道府県の保険者協議会で決めて対応すること になっており、都道府県の保険者協議会の中に 政管、共済組合の入るよう指示が出されている との回答がなされたが、愛知県の保険者協議会 では政管と共済は中央が代表保険者だと言われ ているとの説明があり、食い違いがあることか ら確認することになった。
提案要旨(抜粋)
・各自治体においては、アウトソーシング等の 実施方法、実施経費の見込み、他の健診との 共同実施予定等決定していないことが多い。 このような状況であることをいかに考えるか。
・全国労働衛生団体連合会や、健康保険組合連 合会が結核予防会等の団体に提示している料 金は、国に示した補助金額に近い。日医総研 の試算したものは、これらとかけはなれてい る。日医は、補助金額について厚生労働省と 話し合いをされたのか。
・集合契約は、日本医師会または都道府県医師会 と契約することが能率的と考えるが、いかがか。
【内田常任理事回答】
未確定部分が多く、対応が遅れていることに ついては誠に遺憾であると思っている。日医と しても省令、通知に向けて協議を重ねていると ころである。特定健診については、従来の老人 保健事業が基本となっているので地域の先生方 におかれてもご尽力を賜りたい。
料金についても地域によって差はあるが原則 3割の自己負担というのが前提となっている。 この自己負担分は補助の対象外となっている。 従って日医総研の試算7,500円の料金から自己 負担の3割を除いたのが5,270円になっている。 その1/3が国の補助金の1,760円になるという ことであり、総研の試算と国の考え方というの は、診療報酬の積み上げという形に沿ってい て、そういう点では一致している。
集合契約については、円滑な実施に向けた手 引きの中で、小単位である郡市医師会を基本的 な契約先と想定しているが、都道府県でとりま とめることができる場合はその限りではない。
質疑の中でヘモグロビンA1c、心電図は是非 入れてほしい意見があり、今村聡常任理事から は、ヘモグロビンA1cは厚生労働省の健康局の プログラムでは必須となっていたが、労働安全 衛生法の事業主健診との整合性のすり合わせの 中で労働安全衛生法を改正しなければできない ということになり、外した経緯があるので各地 域で対応していただきたいとの説明があった。
提案要旨(抜粋)
インフルエンザ対策の中で大きな問題がある。
1)昨年及び本年、備蓄したタミフルを5年後に廃棄すること。
2)パンデミック時の具体的医療体制が示されていない。
【飯沼常任理事回答】
タミフルの備蓄は、中外製薬ととても安い価 格でパンデミック時に行政的に放出するという 約束で行われている。又、流通も特殊な形で行 われており、医療機関に有効期間である5年分 の1/5ずつを放出するということは不可能に 近く、契約条件に違反する。有効策があればご 教示いただきたい。
パンデミック時の医療チームの編成について は、所轄の保健所を含め都道府県、医師会関係 者が協議して行動計画の地域版を作ってもらい たい。避難場所に学校が使えるかということに ついては、政府から指示があれば使える。医療 フタッフに事故があった場合労災保険は適用で きないが、休業補償制度をつくるよう予算化の 要望をしている。地域の対応が非常に大切であ り、少なくとも医療圏がどこまでカバーできる かまで検討してもらいたい。
提案要旨(抜粋)
1)厳しい財政状況の中で、日医の医療政策実現に 向かって具体的な対応をどのようにするのか。
2)各都道府県医師会にいかなる具体的な行動を 求めるのか。
3)次期診療報酬改定に向けて、各学会、各医療 関係団体等から様々な要求があると考えられ るが、どのように意見を集約し、中医協に望 まれるのか。
【中川常任理事回答】
小泉政権下、5年間の医療費抑制が現在も医 療崩壊と言われる地域医療の壊滅的危機的状況 を作ったと思っている。日医執行部は内閣が改 造されるといち早く主要閣僚、党三役を中心と した国会議員にロビー活動を展開している。先 般も新しく就任した舛添厚生労働大臣をはじめ 党三役、主要閣僚にも面談を行い医療の現状に ついての説明をしている。今後も医療制度改革 の諸問題、保健財政の分析を行い、エビデンス を積み重ねロビー活動、国民への啓発活動を続 けていきたい。
又、各都道府県医師会にはこれまで請願書の 採択等に関わる活動をお願いしてきた。今後は 都道府県において医療費適正化計画の策定が本 格化してくるので、厚生労働省、行政の一方的 な計画が策定されないよう徹底的に議論してい ただきたい。そして国会議員の先生方には疲弊 した医療の実態を説明してもらいたい。
次期診療報酬に改定に向けては、8 月9日に会 内の社会保険診療報酬検討委員会から唐澤会長 へ要望書が提出されている。関係者の意見を尊 重しつつ医療崩壊を食い止めることを優先に具 体的なアクションを示しながら進めていきたい。
提案要旨(抜粋)
医療を取り巻く環境は、経済至上主義に基く 医療制度改革により急速に悪化している。中で も最も懸念される課題は改革に名を借りた医療 界の分断である。
例:日医会長選挙に政治家が介入した件、病 院医療を政策的に破壊し、遠因を医師会・開業 医に転嫁し、病診の分断を画策している件、標 榜診療科の見直しに伴う総合医の位置付等
これに対する日本医師会と会員の取るべき態 度について説明願いたい。
【竹嶋副会長回答】
ご提案のとおり医療制度改革と言っている が、医療費抑制策によって現場崩壊の危機にさ らされていることは共通した認識である。分断 的な政策が直接的でないにしろ、間接的でも分 断が起こっていることは決してぬぐいきれない ものである。
一昨年進められた医療制度改革の一連の施策 として、例えば、療養病床の再編策についても 日医と十分な協議がなく特定の団体と協議が進 んだこともある。又、リハビリの問題について も関係団体が一堂に会するということではなく、 厚生労働省がそれぞれ個別に折衝するというこ と等が行われてきた。そういう中で日医が窓口となってやっていかなければいけないので対応 を進めていくことにしている。各県会員と日医 が一体となって進めていくことが必要である。
提案要旨(抜粋)
1)届出について
2)届出機関について
3)調査報告書が刑事処分に利用される場合があ るのか。
【木下常任理事回答】
この委員会は厚生労働省内に今年5月からス タートしている。そもそものきっかけは県立大 野病院の産婦人科医師が逮捕された事件に端を 発している。刑事訴追というのが問題になり、 日医では医療事故責任問題委員会を立ち上げ、 本来刑事訴追のあり方はどういうものであるか を議論し答申書を作成した。その委員会での提 言をベースにして検討が行われている。
全ての診療関連死については、警察に届け出 るのではなくて厚生労働省の第三者機関に届出 るということで調整が進められている。しか し、警察へ届け出た方が望ましいというものも ある。仮に警察に届け出ても、警察としては実 際の原因究明は第三者機関にお願いしたいと言 っており、その流れの中で交渉している。
行政処分については、新たな委員会を設置し て検討することになっている。第三者機関に届 出は義務化されることにより、当然ペナルティ ーを科すことについては避けられないと思う。
遺族から警察に届けることは止められない。 また、第三者機関のメンバーは未だ検討されて いない。調査報告書が刑事処分に利用されるこ とへの質問については、求められれば提示する ことになる。
提案要旨(抜粋)
1)費用負担が多く、レセコンの端末機器の操作 などに対応できない医療機関もあるが、日医 の対応策に伺いたい。
2)政府やIT業者やNTTなどと費用負担につい て交渉する時期にきていると思うが、現状は 如何か。
3)患者情報のセキュリティについて日医の見解 は如何か。
【鈴木常任理事回答】
医療機関の費用負担については、費用が40 万円、毎月の回線代が5〜6千円、新制度が平 成22年以降になると思うので、国への概算要求 等も含めて満足いただけるような形を作ってい きたい。
IT弱者への対応については、地区医師会への 代行の話しもあったがプライバシー等の問題も あり、従来どおり支払い基金に任せて代行(手 数料も含めて)していただくべく交渉中である。 韓国の状況も調査してもらいたいとのことであ るが、韓国のオンライン請求は無くなったと聞 いているが、しっかり調査していきたい。又、 セキュリティーについては情報漏洩に対する責 任の範囲のデータアップ化、個人情報保護法と の関連についても検討し対応していきたい。IT 化加算の算定問題についても検討されることに なるのでご示唆ご教示も頂きたい。
本件について、診療側に高額な費用がかかる 上に殆どメリットがないと思う。専用回線が求 められているが、今後IT化がどんどん進み別の ラインもできる可能性があり、広範な形で対応 できるようにしてもらいたいとの要望があった。
提案要旨(抜粋)
1.レセプトオンライン化と社会保障カードの 導入について
・手書き診療所が20%程度あるという現状 で、これら医療機関が平成23年4月以降継 続できるのか危惧しているが、見通しは如何か。
・国家なり保険者がレセプト情報を収集管理 することは「重大な基本的人権の侵害」に あたるとの見解もあるが、法的な手段等へ の日医の見解は?
・強制的な導入については、慎重な議論が必 要と考えるが?
2.医師不足対策について
・医師不足解消に定年延長や再雇用制度の導 入に助成金を出すことに意義があると考え ますが、今回の医師不足対策の予算措置に 含まれているのか。
・地域の実情に応じた人材バンクを各府県で 立ち上げ連携することが、女性医師バンク と並ぶ大きな柱になると考えます。経費が 嵩むので、予算の確保などをご検討いただ きたい。
【中川常任理事回答】
オンラインができないから地域医療ができな いということはないので、診療所へのオンライ ン対応については頑張っていきたい。レセプト 情報の収集管理の提案について、保険者が被保 険者のレセプト情報を収集するのは本来の業務 であり、法的には制度利用と考えるのが一般的 である。従って違法ということは想定しがた い。一方で、国家が国民の病歴等あまり知られ たくないことを強制的に収集することはプライ バシーの侵害で違憲の恐れがある。最も基本的 人権と言っても絶対無制約ではないので医療の 質の安全、医療安全に繋がるといった場合は許 される場合もある。
社会保障カードの導入については未だ具体的 なものは出てきてない。この社会保障カードは 年金、医療を一元管理するシステムなので個人 情報保護法との関連で個別法の作成も念頭にお いて進めていきたい。
【内田常任理事回答】
ご提案のある定年の延長、再雇用については 非常に現実的、即効性のある対策であると思 う。ただ、これは医療機関側の対応なので周知 を図るようにしていきたい。又、高齢者雇用継 続給付金という制度があり、直接医師確保を目 的にしたものではないが、今後日医の要望に盛 り込んでいきたいと思っている。ドクターバン クについては、全国的なネットワークにするに は地方から逆に都市に医師が流れるという話し もあり、とりあえずはドクターバンクが必要な 県において対応をして頂き、それに対する助成 ということを求めていきたい。
その他
アフリカでの感染症等の疾病対策に貢献した 医学研究・医療活動等を懸賞する目的で、昨年 7月に「野口英世アフリカ賞」が閣議決定し創 設された。基金への協力について日本医師会と して未だ案の段階であり、詳細が決まり次第改 めて提案したい。