副会長 玉城 信光
去る4月1日(日)、日本医師会館において標 記代議員会が開催された。
本会からは、宮城信雄代議員、小渡敬代議 員、金城進代議員と小生(玉城)の4名が出席 した。
定刻になり、石川議長から開会が宣され、挨 拶が述べられた後、受付された出席代議員の確 認が行われ、定数350名中、4名欠席、346名の 出席で、過半数以上の出席により、会の成立が 確認された。その後引き続き、石川議長より議 事録署名人として、末長敦代議員(岡山県)、 須藤俊亮代議員(山形県)が指名され、議事が 進行された。
唐澤会長は所信表明(別紙参照)の冒頭で、 過日の能登半島地震により石川県をはじめ近隣 の地域において犠牲となられた方に対するご冥 福と、お見舞の言葉を述べられた。また、当日 『グランドデザイン2007』が資料として配布さ れ、同グランドデザインについて、唐澤会長は 「医療提供体制と国民皆保険制度を堅持し、国 民の安心を守り、最善の医療を提供したい、そ の気持ちで『グランドデザイン2007』を取りま とめた。希望を持てる未来を実現するために挑 戦し続ける気概を込めた。今回のグランドデザ インは「総論」として、大きな方向性を示すに 留めている。今夏までに「各論」を策定し、基 本的医療政策として発信したいと考える。」と 述べた。その後、小森貴代議員(石川県医師会 長)から、被災者を代表して、全国から寄せら れたお見舞いに対するお礼が述べられた後、県 医師会及び地区医師会、医療関係者、住民等 が、今後更に一丸となって復興に努めていくこ とを誓う旨決意を述べられた。
続いて、竹嶋副会長から会務報告が行われた 後、議事6議案の審議並びにブロック代表質問 (7題)、個人質問(18題)が行われた。
特に7対1入院基本料をめぐる「看護師不足 について」質問が相次ぎ、これに対し答弁した 竹嶋副会長は、新卒看護師の大量確保だけでな く、中医協建議の後も既存の看護師の引き抜き が起きていると聞いている。日医では4月1日 時点の各病院の採用状況の調査を都道府県医師 会にお願いして実際の正確な数字を出したい。 特別入院基本料算定条件の一つである夜勤72 時間以内の規制緩和については厚労省に働き掛 けていきたい。自民党社会保障制度調査会鈴木 会長、木村会長代理等に対して、中医協建議後 も地域医療の混乱が続いている状況にかんが み、前倒しできる策は早期に実施してほしいと の要望を出していると述べた。
また、「療養病床の再編問題について」につ いて竹嶋副会長は、患者に必要不可欠な医療が 提供できるよう、必要な病床数はなんとしても 確保していくことを強く主張している。具体的 には、昨年、療養病床の再編問題について会員 にアンケート調査を実施し、新しい資料作りに 取り組んでいる。出来あがれば中医協に提示し ていきたいと述べた。
「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあ り方に関する課題と検討の方向性(厚生労働省 試案)」について答弁した木下常任理事は、診療 行為に関連して不幸にして死亡した事例につい て、予期せぬ死亡例だからといってすべて届け 出るのではなく、届け出は担当医が死亡診断書 を書けない場合とすべきであり、届け出先は、 所轄警察署ではなく、厚労省内に新たに組織を つくって、そこに届けるべきであると述べた。
「周産期医療の崩壊」について答弁した今村 定臣常任理事は、無過失補償制度の創設はすで に政府で予算化がなされ、出来るだけ早い時期 の制度の施行に向け鋭意努力している。看護師 の内診問題については、厚生労働省看護課長通 知の廃止・見直しを強く求めてきた結果、3月 30日に医政局長通知という形で決着をみた。こ れについては、4月2日に都道府県あてに発送 される予定である。助産師不足問題への対応 は、厚労省看護課と協議し、助産師養成定時制 コースの設置を決定したので、医師会立学校で の開設を検討して欲しい。補助金の増額、設置 基準の緩和などについては当局と引き続き交渉 していくと述べた。
「日本の医療提供体制の危機と日本医師会の 対応」について答弁した唐澤会長は、今日の医 療の状況を展望ある方向に打開すべく「国民医 療推進協議会」などいくつものかかわりを通 じ、ITやネット情報など双方向性の情報戦略を 展開しつつ、多面的で総合的、実効性のある活 動を推進していく。将来におけるわが国の医療 制度に対する日医の考え方は、「グランドデザ イン」の中で述べている。今後、このグランド デザインは政府・与党をはじめ関係各方面に広 く配布する予定である。万が一、医療制度改革 関連法の実施に当たって、我々が示した「グラ ンドデザイン」の内容に反する施策が推し進め られるような事態が起こった際には、国民医療 推進協議会各参加団体と協力して全国的な活動 を展開する覚悟であると述べた。一方、中川常 任理事は国民医療推進協議会を5月中旬までに 開催する予定と述べ、財務省の財政制度等審議 会の平成20年度予算に関する建議や「骨太方 針2007」の他、厚生労働省の平成20年度予算 の概算要求の時期よりも前に国民医療推進協議 会を開催し、先手を打って医療政策を提言する と述べた。
この他、「後期高齢者医療制度」、「日医の広 報戦略」、「日医総研の活動状況」、「医師免許更 新制」等についても活発な質疑が交わされた。
議 事
第1号議案 平成18年度日本医師会会費減免申請の件
宝住副会長から資料に基づき提案理由の説明 があり、賛成挙手多数により原案のとおり承認 された。
第2号議案 平成19年度日本医師会事業計画の件
第3号議案 平成19年度日本医師会一般会計予算の件
第4号議案 平成19年度医賠責特約保険事業特別会計予算の件
第5号議案 平成19年度治験促進センター事業特別会計予算の件
第6号議案 平成19年度医師再就業支援事業特別会計予算の件
上記第2号議案〜第6号議案については関連 議案として一括上程され、第2号議案について は竹嶋副会長より、第3号議案〜第6号議案に ついては宝住副会長よりそれぞれ提案理由の説 明が行われた。
なお、議案の審議については、議事進行の都 合により、議長から予算委員会を設置して当委 員会に一括審議を付託することが提案され、賛 成多数で承認された後、予算委員25名がそれ ぞれ指名され、別室にて審議が行われた。
その後、予算委員会の横倉委員長より、第2 号議案〜第6号議案について、担当役員から説 明を受け、慎重に審議した結果、全会一致で原 案どおり承認した旨報告が行われた後、表決に 移り賛成起立多数で原案どおり承認された。
第65回日本医師会定例総会
総会は、先ず唐澤会長より開会の辞が述べら れた後、次の3点について報告が行われ、全会 一致で承認され、会を閉じた。
(1)庶務及び会計の概況に関する事項
(2)事業の概況に関する事項
(3)代議員会において議決した主要な決議に関する事項
本日は公私共にご多忙の中、早朝より先生方 にはご出席賜りまして、誠にありがとうござい ます。
また、前年度、私ども執行部を担当させてい ただきましてより、本会会務運営につきまし て、多大のご指導、ご支援をいただきまして、 厚く御礼を申し上げます。
過日の能登半島地震により、石川県をはじめ 近隣の地域におかれまして、犠牲となられた方 に対する心からのご冥福と、多数の負傷者並び に被災された方々に心よりお見舞い申し上げる 次第であります。余震はいまだ続いており、家 屋倒壊や道路の亀裂、土砂崩れなどによって、 断水をはじめ避難された方々には、大きな不 便、不安の中に過ごされております。一刻も早 い地震の収束と、復興を祈念申し上げます。
さて、わが国は、地震をはじめ火山噴火など 常に様々な自然災害の危険にさらされておりま す。さらに地震の活動期にあるといわれる今日、 私たちは国民の健康と生命の確保・維持に係わ る者として、全国各地域の地震やその他の災害 発生の予知・予測や対策のための最適な体制が 整備されるよう強く期待するものであります。
この一年間、職務を担当させていただく中 で、様々に現在の医療をめぐる状況を俯瞰いた し、また各分野の識者の方々のご意見を拝聴さ せていただきました。それを踏まえて、今年度 の会務運営に取り組んでまいりますうえでの、 基本的な行動規範といったものを申し述べたい と存じます。
先に述べましたように、この国土に生活する 者としての基本的な取り組み方として、日常生 活上、健康確保あるいは生命の安全のために、 予測や予見に基づいた危機管理のためのできる 限りの方策やその体制を整備する気構えが、常 時必要ではないかと考える次第であります。
また、同様な意味で、戦災も生命の安全に多 大の係わりがあります。わが国は先の大戦の混乱 期より60年以上が経過しました。この間、今日 までわが国は世界平和を希求して核武装を否定 し、戦禍のない時代を過ごすことができました。
そのようなわが国の安定した状況にもかかわ らず、今も世界各地で国際紛争や武力衝突が繰 り返され、各地域紛争によって、幾多の一般市 民が戦乱の犠牲になっており、戦禍を避けた多 くの難民が困難な生活を強いられております。 ことに幼小児の悲惨な状況は目を覆うばかりで あります。
このような中、多くの国々にとって、この21 世紀からどのような時代に向かうのか、今日が 文明発祥以来、最重要な時期にあるように思え てなりません。
先進諸国では科学・技術が大きく進歩しまし た。東京大学小宮山宏総長先生は地球エネル ギーと環境問題を論じられる中で、科学的知見 について、「先端科学は、医療も含め細分化し、 いまや科学の全体像が喪失しつつあり、知識が 爆発的に膨張するとともに、全ての分野で科学 的知見の構造化がますます必要となってきた」 とおっしゃっています。すなわち、「全体像を 持つ人間の育成が重要であり、そのことを社会 が要請しはじめている」とのお話から、「知の 構造化」、そして「自律分散協調系」を追求す る分野の発祥と発展が最重要という学説を披瀝 されました。
私は、わが国土の自然条件と地球規模の国際 的現況についてなぞったお話をしてまいりました が、今後の日本は、世界中どの国も経験したこ とのない少子化と同時に、超高齢社会に突入し ます。エネルギー資源、食料資源に乏しく、予 期せぬ自然災害が頻発するわが国にとって、ど のようにこの状況を切り開いていくか、諸課題 が山積するわが国が、今日までの実績を基にし て、いかに世界の期待に応えることができるか、 真摯に取り組んでいかなければなりません。
しかし、わが国がすべての課題を解決するた めの知見は、世界のどの国にも用意されていな いのです。
わが国は、これから世界の誰も経験したこと のない、課題山積の中に突入します。日本は、 世界のお手本になるような課題解決先進国にな っていくことが求められているのです。科学技 術先進国の日本国民は、今、社会保障制度の確 保に最大の関心を持ちつつあります。自国の自 然風土に培われた日本文化と、未来の地球的課 題に初めて挑戦するスタートラインに立ったと 認識することが重要です。
私は、科学が凝縮している医学の使命は、人 間の健康・生命を守るという人間の安全保障に 貢献することだと考えています。そのために は、医学・医療を専門分野として「構造化」 し、本来の使命を達成できるような「新たな医 師像」を描くことが必要です。
自殺者が年間3万人を超え、親子の人間的つな がりが希薄化し、個別的、疎外的で個人の利益 追求により価値を認めがちな、社会的連帯感や 協調行動が薄れつつある社会状況ですが、医療 を担当する者として、国民が高齢になってから 一層疎外感を深めていくようなことは正してい かなければなりません。高齢まで生き長らえるこ とが喜ばれ、そのこと自体が価値あると認めら れる社会をめざすことに貢献し、注力すること が責務であると感じているところであります。
そうして、私たちは、日本がこのような様々 な人間の生存を未来に約束する健康な社会作り によって、課題を解決してゆく方向こそが、ひ たすら国際紛争や武力衝突を繰り返す方向以上 に、最も世界平和に貢献できることを証明でき るはずであり、そのことに力を発揮して行くべ きであると考えております。
本日、お手元にお配りした「グランドデザイ ン」は、課題解決への第一歩であります。
社会保障制度の行方が大きく論じられる今 日、日本医師会は、その中核にある医療提供体 制と国民皆保険制度を堅持し、国民の安心を守 り、最善の医療を提供したい、その気持ちから 「グランドデザイン2007」を取りまとめました。
ここでは、国民のニーズを再認識するというところからスタートしました。国民は医療に対 して不安を抱き、それは格差社会、そして高齢 期の不安につながっています。1990年代の失わ れた10年に続く2000年代の厳しい改革圧力で、 国民は未来に希望を抱いていない状況にありま す。国民の希望と幸せは、生命と生計の不安が 解消されてこそもたらされます。そして、それ を支えるのが社会保障であります。現況のよう な社会保障が財政危機の責任を負うという発想 は、ことの順序が違うということを認識する必 要があります。
常に国民と向き合いつつも、国民と同じ方向 を向いているわれわれ医師は、医療のみでな く、医療制度のあり方についても最善を尽くす 責務があります。希望を持てる未来を実現する ために挑戦し続ける気概を「グランドデザイン 2007」に込めました。
今回のグランドデザインは「総論」として、 大きな方向性を示すことに留めています。今夏 までに「各論」を策定し、基本的医療政策として発信したいと考えています。この内容につき まして、機会を改めて、じっくりとご意見、ご 批判をいただきたいと思います。
そして、いかなるときもわが国を支えてこら れた国の宝である高齢者を、感謝の気持ちで全 国民の総力を持って支える理念を具現化し、礼 節を持って応える心優しい福祉国家への扉を開 きたいと思います。
本日上程いたしました各議案の詳細につきま しては只今からの説明と、本日全分野にわたり ご質問をいただいておりますので、各審議事項 に沿って基本的な課題や会務運営の具体的内容 に応じ、ご説明申し上げることとさせていただ きたく、お願い申し上げます。
各議案につきまして、慎重にご審議いただ き、ご承認賜りますようお願い申し上げますと ともに、今後とも役員が全力を持って活動して まいる所存でございますので、よろしくご理解 とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
印象記
副会長 玉城 信光
平成19年4月1日に日医会館で開催された。昨年は会長選挙で2日にわたる大変くたびれた日程 であった。今年度は1日なので気持ちの上では少しゆっくりと出て行けた。
駒込駅前の桜も満開で六義園のしだれ桜も満開のようで多くの入園者が並んでいる。
九州地区の代議員は5階の会議室に集合し代議員会の開始を待っている。今日の議事運営に関 して鹿児島の米盛会長より説明がある。質問時間、関連質問の時間を厳守してほしい。なぜな ら???
今年の代議員会が早く終わるとは甘い期待のようである。代表質問(各地区で取りまとめた質 問)が全8ブロックの中で東京を除き7ブロックから質問が出されている。さらに個人質問が18も あるのだ。15時30分までに終了して、総会が開かれる。私たち沖縄は総会を引けさせていただい て、上野に桜見物としゃれ込む予定であった。
4月の代議員会は19年度事業計画と19年度予算の審議である。別ページの報告のように 唐澤人会長の挨拶に続き事業計画の承認がされ、予算の審議に入った。
一般会計収入15,528,308千円、医賠責特約保険事業特別会計861,001千円、治験促進センター 事業特別会計1,179,196千円、医師再就業支援事業特別会計95,914千円である。
これらの内容を検討するために予算委員会の先生方が別室で検討をおこなった結果、原案通り可決された。
個人質問、代表質問たくさんあるが、興味を引いたものをいくつか述べる。
死因究明制度で異常死の報告を警察ではなく厚労省内に届けができるような組織を作りたい。 日医のCM放送や読売、朝日全国紙への広告は大変好評であった。これからも日医のイメージア ップを図っていきたい。看護師の内診問題はマニュアルに基づき、産婦人科医師の指導のもとで 行ってよいという通達が出るであろうといわれた。助産師コースに対して資金需要が大きいので 設立一時金を増額するようにお願いしたい。
たくさんの質問があり、答弁する中で今年の日医の委員会を通じての活動の具現化と行政との 折衝が重要であると感じられた。
遅くなった会議を終え、急いで上野の山にいくと、人人人の大混雑である。白っぽい桜を見な がら羽田へと急いだ。
印象記
副会長 小渡 敬
平成19年4月1日、日本医師会館で第116回日本医師会定例代議員会が開催された。代議員定数 350名中欠席者はわずか4名であった。唐澤会長の挨拶では、これからの医療制度のあり方につい て日医の基本的医療政策として「グランドデザイン2007」を総論ではあるが策定したと報告があ り、この夏までに各論を策定すると述べていた。今後、この日医の医療政策がどこまで国の政策 に取り入れられるか、注視していきたい。
次に、会務報告とブロック代表質問までは時間通り進行したが、今回は個人質問が多く、また 関連質問をする代議員も多かったため終了時間が大幅に遅れ、終盤では退席する代議員が多かっ た。私も長時間座ったままで甚だ疲れた。
質問では、特に7対1入院基本料をめぐる看護師不足について各県から質問が相次いだため、答 弁した竹嶋副会長は各病院の採用状況について、実態調査を行い正確な数字を把握したいと述べ ていた。また、夜勤72時間以内の規制緩和についても厚労省に働きかけると話していた。療養病 床の再編問題についても多くの質問が出されていたが、これについても会員にアンケート調査を 実施し新しい資料作りに取り組み、中医協に提示していきたいと述べていた。いずれにしてもこ れらの問題については、容易に解決することは困難なような印象を受けた。今後、さらに大きな 問題になる可能性があるように思われる。
診療行為に関連した死亡いわゆる「異常死」の届け出問題については、不幸にして死亡した事 例について、予期せぬ死亡例だからといって全て届け出るのではなく、届け出は担当医が死亡診 断書を書けない場合とすべきであり、届け出先は所轄警察署ではなく、厚労省内に新たに組織を 作ってそこに届け出るべきだと述べていた。
その他、「周産期医療の崩壊」「助産師不足」「看護師の内診問題」等の質問がなされ、日医とし て解決に向けて鋭意努力していると回答があった。来年4月に施行される「後期高齢者の医療制 度」については日医案と厚労省案は対峙しており、今後、日医執行部にはしっかり取り組んで頂 きたいと思った。
また、前回の会長選挙で生じた近畿ブロックとのしこりは、前回の代議員会ほどではないが、 今回もまだ一部尾を引いており、やや揚げ足取り的な質問も見受けられた。