沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 12月号

平成18 年度第2 回マスコミとの懇談会
〜介護保険・医療保険同時改正のポイントと今後の市民生活への影響〜

玉井修

理事 玉井 修

会場風景

会場風景

去った9 月21 日(木)に、マスコミの皆さん にお集まりいただき、介護保険・医療保険改正 について懇談会を行いました。まず、玉城信光 沖縄県医師会副会長よりご挨拶頂き、実際のポ イントに関しては小渡敬沖縄県医師会副会長よ り詳細なご説明がありました。今回は、平和病 院ケアマネージャーの当銘則子さんにも積極的 な発言を頂きました。介護保険が大きな流れと して、より緊縮した予算規模の中で運営され、 これが様々な歪みを生じつつある事をわかりや すくお話頂きました。当銘さんからは実際の現 場でおきている困惑、問題点をご指摘頂きまし た。マスコミ各社にも我々の抱いている危惧を 共有して頂いたものと思います。療養病床の6 割が削減され、どのように解釈しても、お金を 持った者だけが充分なサービスを受けられると いう方向に進んでいます。医療経済についての 議論は、ついには終末期医療の話へと話題が転 換していきました。

現在の終末期医療の実態に関してマスコミは 興味を示し、在宅ターミナルの実態、沖縄的終 末期医療の特徴へと話は尽きませんでした。人 がいかに老い、いかに死んでいくのかを議論し なくてはいけない時期に来ているのかも知れま せん。介護・医療保険の問題点を突き詰めれ ば、最終的には包括的な終末期医療のあり方も 論じなくてはならないでしょう。医学的に死を どのように定義するかも未だに議論が分かれて いる一方で、死とは何なのか、人は死をどのよ うに迎えるべきなのかは重く、しかも根本的な 問いであるような気がします。この終末期医療 に関しては、別の機会に是非取り上げてみたい テーマだと思っております。

下記に懇談会における質疑を掲載します。

※講演内容は11月号に掲載済の医療に関する 県民との懇談会と重複しますので割愛させて いただきます。

懇談内容

○仲宗根氏(週刊レキオ社)

仲宗根氏

週刊レキオの仲宗根です。

小渡先生のお話を聞いて、結局、医療の基本 的な問題に移ってくると思うんですけれども、 現物給付ということと、要介護の問題のもので すね。現物給付というのは本来はお医者さんが 患者さんからお金を取らないというものですよ ね。一般の国民はなかなかこれは理解していな いと思います。

アメリカはメディケア・メディケードがあり ますけれども、約5,000 万人の人が保険に入っ ていないという状況ですよね。

今、いただいたパンフレットの例の中で、将 来的に、ちょっと心配なものがありまして、今、 民間開放推進会議がやろうとしていることなん ですけれども、混合診療のものにかかってきた この例を見て感じたんですけれども、なんとな く混合診療をこれから含めていってどんどん導 入していこうとしている制度じゃないかという ふうな感じを私は受けるわけです。

現在ですと、例えば一般の人が入っていて自 己負担というのはどれぐらい出ますか。そうす ると貧困の人たちだと、なかなかお金が払えな いというのが出てきますよね。そういった場合 というのは自己負担が払えない人というのはど ういう状況になるんですかね。

○小渡副会長

小渡副会長

介護度によって支払いは異なりますが、所得 に応じて1号被保険者〜4号被保険者まであり ます。1号〜3号被保険者は低所得者で、4号被保険者の場合は一般の所得の人たちです。その 場合、施設利用料は食費やホテルコストを含め ると、自己負担額が大体10万円くらいになる と思います。低所得者の場合でも、概ね3〜5万円 くらい負担していると思います。今回の改 正のように、どんどん自己負担が増えると皆保 険制度と言っても、利用し難い状況にあるよう に思います。

国は、この方式を医療にも導入しようとして いるように思われます。こういうことをやりだ したら、今おっしゃったように、お金持ちでな いと気楽に医療が受けられなくなり、アメリカ 型の医療になる可能性があると思います。

医療制度を財源論で考えると、保険料を上げ るか自己負担を増やすか、あるいは診療報酬を 下げるか、さらには国の予算をどれだけ医療費 に充てるか等、どのような選択をするかによる と思います。

○司会(玉井) 実際に金額のことが出まし たけど、当銘さんどうですか。そういうお金を ご家族の方は払っていらっしゃいますか。実際 に、共働きが多いという沖縄の現状もあります よね。

○当銘ケアマネージャー

当銘ケアマネージャー

このパンフレットにある例は、在宅の場合に 保険を使ってのサービスを使うお金の支払い と、保険がきく分と、きかない分の説明になっ ているんですけれども、ほとんどの場合は、 「保険のきく16 万5,800 円分の中でサービスを 組んでほしい。」という方が大半ですね。介護 保険はケアマネージャーがいっぱいプランをつくって過剰に使っていると言われたりしていま すけれども、実際そういう方はごくわずかで、 ほとんどは6 割ぐらいしか保険の使用分は使っ ていないんですね。こういう状況がありますの で、今は食費も通所サービスになりますと保険 がきかないので、1 食当たり350 円とか390 円 とか保険外で支払っているんですよ。それが施 設になりますと、もっと大きなお金が動きます ので、その点、実際利用されている、生活され ているご家族の方、ご本人さんに関してはとて も不安なことであるというのは確かですね。

○司会(玉井) かなり厳しいという状況に あるようです。

そのほか何かご質問がありますか。

○平良氏(沖縄タイムス社)

平良氏

まず当銘さんに。新予防給付の新しいもので 運動機能向上というのがありますよね。これは 実際に現場ではどのような状況で、広まってい るのかというのと、効果が上がっているのかと いう点ですね。どうもイメージしづらくて、栄 養指導と口腔ケアというのはすぐイメージでき るのですけれども、お年寄りが果たして筋トレ というのが有効なのかと、これは何歳くらいま で本当に効果が上がるのかという点ですね。

もう1点は、小渡先生に質問です。アメリカ型 の医療制度に移行しつつあるというふうにあっ たんですけれども、もう少し具体的にどういうふ うになってしまうのかというのを教えていただき たいと思います。以上、2 点お願いします。

○司会(玉井) 当銘さん。

○当銘ケアマネージャー まず、新予防給付 での運動機能訓練の効果。これがまだ始まった ばかりではあるのですが、昨年度のモデル事業 というのを行政がやったものがありまして、そ れで効果を上げるために利用者を、対象者を選 択していたんです。これが非常に厳しいんです よ。「75 歳前後の認知症のない方」、「健康な方」 なので、多分効果の上がる方というのは身体的 にも、それから、認知の部分でも理解して動く ことができるかという部分で限られてくるので はないかなというふうな印象を受けました。

あとは、介護予防になってからは、多くても 週2 回しか行かないんですね。上限、程度と法 律にはなっているのですけれども、実際2 回以 上すると採算が合わない現状があります。その ため、事業所としては大体2 回程度というのを 実施しているところが多いんですけれども、自 宅でできるように宿題を出すんですよ。デイで は週に2 回しかしないので、「家でこの運動を やりましょう」、「楽しくやりましょう」という 形で宿題のようにして、いつでもエクササイズ できるような取り組みでやっています。

あと、ちょっと補足です。栄養改善です。こ れが低栄養の方にしか対象にならなくて、やっ ている方はほとんどいないような印象を受けま す。利用者の方は、結構体重オーバーの方が多 いんですよ。在宅では栄養摂りすぎのほうです ね。自由におやつを食べるし、家族とも一緒に 食事をするので、コレステロールが高いですと か、血糖値が高いとか、そういう方が多いのが 現状です。ダイエットを介護予防のプログラム に組んだりします。

○司会(玉井) 介護予防に関して他にご発 言ある先生はいらっしゃいますか。

○照屋氏(医師会)

照屋氏

最近、「貯筋のすすめ」というのがブーム ですが、沖縄県内のいくつかの施設でも、筋 肉トレーニングを積極的に行って素晴らしい 成果を上げております。しかし、筋肉トレー ニング・パワーリハビリをやってから、さら に痛みが強くなったと言う方も少なくありま せん。いずれにしても「引きこもり」のよう に家にずっといて動かないでいるより、積極 的にトレーニングをした方がよいという事は 周知の事実だと思います。

ところで、「生活不活病」という言葉を最 近よく耳にします。「成人病」という表現か ら「生活習慣病」という表現に変わりまし た。今後は、「生活不活病」という表現に変 わっていくのかもしれません。「廃用症候群」 という運動器の症状や、「うつ病」などの精 神的な症状を総合的に考えて「引きこもり」 にならないように、生活が不活化しないよう に・・・ということだと思います。そういう 流れの中で「貯筋のすすめ」というのは、す ぐに劇的な効果は出てこないかもしれません が、介護予防という観点からも、もっと推進 されるべきだと思います。

○司会(玉井) ありがとうございます。

介護予防はまだ始まったばかりなので、まだ 評価をしにくいというところもございます。

小渡先生、アメリカ型の医療に変貌しようと いうことですけれども、いかがでしょうか。

○小渡副会長 アメリカ型に変貌しようとい う意図を国が持っているわけではないと思いま す。ただ、結果として、今回の改正は中身をみ るとアメリカ型に近いように思います。それと もう1 つは、アメリカ型かどうかは株式会社の 参入だと思います。先ほど言ったように、アメ リカはGDP で14 %ぐらいの医療費を使ってい ます。医療にものすごくお金を使っている。そ の割に医療費の国民負担率は世界の先進国の中 で一番少ない。ということは皆保険ではないので、一部の人しか医療の恩恵を受けていない可 能性があると思います。そして、支払いの仕組 みもホスピタルフィーとドクターフィーに分か れており、医師は技術者であり、病院とは別と いう考え方の仕組みで行われているので、日本 の制度とは全く異なります。それに対して介護 保険制度では株式会社を参入させましたが、基 本的には皆保険制度とは相入れないように思い ます。中途半端に、株式会社を介入させたよう な形になっているように思います。株式会社参 入の考え方は、オリックスの会長がやっている 財政諮問会議にあるように思います。あのメン バーはみんな保険屋さんで、医療保険に民間保 険をもっと参入させたがっている意図がある。 だから、そのような裏も考えながらやらないと いけないように思います。

介護保険で株式会社を導入して、5 年が経っ たのだから、国はその成否を分析し、こういう やり方がいいのか、間違いなのかというのを明 らかにすべきであると思う。今回の介護保険の 改正では、その点が総括されていないのが問題 であると思います。今言ったように、別にアメ リカ型になっているわけではなくて、結果とし ては今度の改正はどうもアメリカ型に近いとい う意味です。

○工藤氏(ラジオ沖縄)

工藤氏

小渡先生にちょっと伺いますけれども、今回 の介護保険制度、それから医療保険制度の改 正、このままこのような形でずーっといったと すると、やはり非常に余裕のある方と、そうじ ゃない方とはっきりしてしまいますよね。そこで、国、あるいはその地域でどんな対策をとれ るのか。あるいは私たち1 人1 人がそれに対し てどういう形でかかわっていったら、より良い サービスを受けられるのか。このままでいくと 将来的に大変な不安というのがあるわけですよ ね。そのへん何かポイントというか、そのへん の目指すものというか、何かございませんか。

○小渡副会長 今の質問は非常に大事な部分 です。だけど一番難しい点ですよ。制度をどう 考えるかです。どんな制度にしたら一番いいか ということですね。

1 つは医療の質、中身がよく見えないという のがあるんです。何でかというと、いろんな病 院がありますが、一般の人たちがどの病院がい いか分からないということで、どれがいいかと 聞かれたら、僕ら医療人でさえ答えようがない んですよ。それは専門家でも、一部の知り合い の先生方は知っていますが、全部知っているか というと、そうじゃないんです。だけど一般の 人から見ると、医者はどの病院がいいか知って いるように思われているようです。でも実際そ うではないです。それを公開していくというの は必要だと思います。だから、我々としてはそ の公開の仕方を誤解がないようにしたいです ね。国が一方的にやると誤解が生じるんです よ。なぜかというのは、はじめから反医療とい う考え方で医療を見ている人たちがいるようで す。そういう人たちが絡むと、公開の仕方によ っては、公平にならない場合もある。だからそ ういうことにならないように、ちゃんと分かる ように医療の中身を公開していく。今後はそれ が大事だと思います。

それからもう1 つは、この制度が実施される と、住居で亡くなる人がだいぶ増えるでしょう ね。これは間違いないと思います。今後は、今 までみたいに病院とか診療所に末期になって入 院してきて亡くなることはもう無くなると思い ます。

例えば、認知症というのはだんだん進行する と食事をしなくなるんです。認知症という病気 ですから食事をしなくなる。ずっと鼻腔でやるわけにいかないので、結局、やむなく胃瘻をつ くるんです。胃瘻をつくってそこから食事を入 れています。そうしたら栄養は十分で、長生き するんです。アメリカではそれはやらないんで す。認知症で食べなくなったら、もう寿命とい う考え方をもっているようです。だから胃瘻な んかつくらないんです。日本もそういう形に変 わってくるだろうと思います。

さらに、現在の療養病床の状況を作ったの は、国の制度的なものもあるんです。療養病床 は包括医療で、いわゆるマルメなんです。その ため、出来高払いよりも診療報酬が低く、医師 や看護師の数も少ない。そのため、どうしても 軽症者を入れたくなります。重症者を入れると 手間もかかるし、医療費もかかるわけです。そ れを逆手にとって、社会的入院が入っていると いうわけです。その一方では、特別養護老人ホ ームは重症がいっぱいいるんです。これはどう してかというと、医療費は別立てなんです。介 護料とは別に、治療したら全部出来高で請求す ることができる。だから重症がいてもいいわけ です。そういう仕組みになっています。

今回の改正では、軽症者は点数を下げて介護 型に行くように誘導し、医療型の療養病床は重 症を診ないと運営が出来ないようにしている。 しかし、実際に現在の療養病床の人員配置で重 症者を診ることが出来るかどうかです。ややも すると、医師も看護師も忙しすぎて対応が出来 ず、辞める可能性があると思います。今のまま では、もっと混乱すると思います。あと何年か すれば時代が変わって、病院で逝くんじゃなく て、かかりつけ医を呼んで、自宅で亡くなると いう形になるのかなと、そういう感じがします。

○玉城副会長

玉城副会長

今の話も、僕は自分の父や、女房のほうのお 母さんとかをみていて、僕のお袋と女房の親父 さんはガンだったから、余命いくらということ で確実に死んでいったんですね。2 人は脳梗塞 で倒れて、ずるずると生きていったわけです。

重症者はどこかで見ないといけないんだろう けど、これから我々は最後の死に場所というか、食べられなくなったら終わりじゃないかな ということにもう1 回戻るべきではないか。だ から僕と女房のときには、倒れて食べなくなっ たらそれで終わりにしようという話。僕は自分 の父を見ていて、女房のお袋さんを見たときに は、実はその話をしていたし、女房も見ていた んだけど、現実に施設に預けていて「どうしま すか、胃瘻を置きますか」と。「置かないでそ のままにしてください」とは言えないというん ですよね。寝たきりの100 歳になってもしょう がないよという感じを、みんなでどうつくって いくかですよね。そうすると、必要な人はじゃ どうするかということを、またもう1 回整理が できるんじゃないかといって…。僕は自分の両 親たちを見ていて、自分の場合だったらこうし よう、ああしようとか。それをするための社会 のシステムはどうしていくかというのは、今後 おそらく1 人1 人、沖縄県民みんなに問われて いる問題ではないかなと思います。療養病床が 削減されるから慌てるんじゃなくて、死に際、 最期の瞬間、年を取っていったときにどういう 人生観があるかという大きな問題があるんじゃ ないかと思っています。

○司会(玉井) 在宅という言葉が出てきま したけれども、徳さん、今、取材されているい ろいろなところで在宅ということを考えた設計 とか、いろんなそういうふうなものというのは あるんですかね。皆さんも目の前の生活は必死 ですか。

○徳氏(タイムス住宅新聞)

徳氏

私、住宅新聞にかかわっておりまして、今、在宅の介護の話につながっていくのかな、どう なのかと思って考えていたんですけれども、や はり先ほどの寝たきりになる原因の第3 位が転 倒・骨折ということでありましたが、早い段階 でのバリアフリーの改修であったりとか、そう いったものを行いたいと思って、例えばケアマ ネージャーの方々だったりとか、ご家族だった りとか、そういった方々とご相談は進めるけれ ども、お年寄りにとっては非常に住み慣れた環 境でどうにかしよう、頑張ろうという気持ちの ほうが強くて、やっぱり変わっていくことに対 しての不安が非常に大きいと。あと費用の負担 の面というのが一番大きいと思うんですけれど も、実際20 万円でできる範囲というのは、本 当にしれています。水回りができるかどうかぐ らいです。例えば、その方が庭に出て行って毎 日庭の水やりがその方の生き甲斐だったり、ポ ストに出て行くのがその方の習慣だったとして も、例えば外部の周囲、できる範囲というのは 非常にしれていますし。今、県内で多いと思う んですけれども、30 年前に建てられた住宅等と いうのは、トイレであったり、お風呂場が外に あるケースも非常に多くて、それを内部に入れ るとなると、ものすごい費用がかかるんですけ れど、これに対して水周りの改修費用を市が独 自に県と補助費用を出しているところというの は、県内でこの間調べたんですが、本当にわず かです。人生の最後のしめくくり方みたいなも のを実際に携わっていらっしゃる先生方だった り、ケアマネージャーさんの方々というのは、 どうお話なさっていて、実際に対象者の方々、お年寄りの方々はどこで本当に死にたいと思っ ているのか。本当に自宅なのか。子供の世話に なりたいと思っているのか。そうじゃなくて自 分たちで、先生もおっしゃっていたように自立 した形で生きたいと思っているのか。そういっ た対象者の気持ちがなおざりにされたまま話が 進んでいるような気がして。すみません、とり とめのない話を今してしまいました。

○司会(玉井) 当銘さん、どうですか。何 かありますか。

やっぱり、住み慣れた環境が変わるというこ とに対しての不安というか、抵抗というのはお 年寄りの方は強いと思うんです。

○当銘ケアマネージャー 自宅にいる間に改 修する場合は、ほとんどが自宅でずっと生活を したいという意思が強くて、それで改修をして いきます。けれども、確かに20万円というの は本当に水周り程度しかできなくて、例えばト イレの段差を改修する、全部埋めると、もうこ れで14、15万円使ってしまうんですよ。トイ レ1 室だけで。それにお風呂場も付け加えてし まうと、どうしても20万円を超えてしまう。で も大体そのレベルになった方というのは自分で 動ける範囲というのが大体決まってくるんで す。なので、ADLで、最低自分の身の回りは 自分でやりましょうというレベルの段階でこの 改修を進めていきます。だけれども介護保険は 2段階介護認定のレベルが上がると、例えば1 から4になったりとかすると、また20万円発生 しますよね。そのときにまたもう一度改修を進 めていくというやり方もします。

あとは、最後までご本人さんは家で生活をし たいという意思をもっていても、実際にみる介 護者の方が「もう、これでは家でみれないから 施設でお願いします」というふうになる方がほ とんど多いですね。

私たちはできるだけ本人さんの気持ちに沿っ て、「家で頑張りましょう」とご家族にも、私 たちもこういうサービスもできます、こういう プランも組めますと、いろいろ提案とかしてい きますけれども、実際に一番みているのは時間の長いご家族なんですね。あとはご家族の方と 本人さんとで話し合っていただいて、施設を選 ぶか、大変だけれどもぎりぎりまで在宅で頑張 るか、もうケース・バイ・ケースなんですけれ ども、なるべく私たち介護にかかわる職員は、 亡くなるにしても、亡くなり方にしても、それ から住宅の改修にしても、家族の介護にしても ご本人の意向を第一に尊重して進めています。

○小渡副会長 今度の介護保険の改正は、介 護保険の理念から外れているように思います。 介護保険の理念は最初から自主性でした。「お 年寄りの意思を尊重します」というのが、一番 の理念なんです。それがもう今回は、財源あり きで、実際はみんな制限するわけです。サービ スがなかなか選べない。これがいい、これに通 いたいと言っても通えないとかね。あるいはこ のサービスしかできないとか。今、このサービ スをしなければ、寝たきりになるというのが分 かっていても、サービス出来ないことがあるよ うです。しかし、自主性と言っても難しい面が あります。例えば、老健施設は、元々がリハビ リ施設で中間施設と言われていました。リハビ リをして自宅に帰すには、リハビリできる年齢 というのがあります。70 代とかね。しかし、全 国の老健施設の入所者の平均年齢は85 歳なん です。85 歳でリハビリと言われても、自宅に返 すには無理なところがあります。老人クラブの 人達に老健施設に来てもらい、老人がどう考え ているか見てもらったんです。こういうリハビ リ施設があるけど、どうですかと話をしたら、 老人は「いや、あと10 年したら来るよ」と。だ から今は必要ないと言うんです。だけど私に言 わせると、元気なうちにリハビリを始めた方が いいと思います。その辺でギャップがあるんで す。そういう意味で、自主性と言っても難しい 面があります。

○当銘ケアマネージャー そがれている部分 はあります。予防の方というのはやはりしっか りしていますので、ご自分の意向というのがし っかり言えるんですよ。なので、もっと通って リハビリして頑張りたいというのがこの介護予防ではできないような仕組みになっている。思 うのはもっと介護認定にかからない段階でこれ だけの意識がもっと住民にあれば、認定を受け なくてもいいと思うんですよ。認定を受けない とこのリハビリができないではなくて、認定を 受けなくてももっと若い間、40 代、50 代…。 認定を受けるのは大体65 歳からというのが一 般的なんですけれども、それ以前からもっとこ ういう運動を盛んにやっていれば、予防なんか 必要なくなるかもしれない。

○司会(玉井) 後手後手にならないように したいですけど、在宅での看取りというか、タ ーミナルに関して何か先生方、ご経験がある方 いらっしゃいますか。

○下地氏(医師会)

下地氏

徳さんがおっしゃったように、在宅をすると きは患者さんと家族の意思はとても大切だと思 うんです。そういう希望がある場合は、そうい う在宅も利用できる。中には家族に遠慮して施 設を希望するという方も確かにいると思うんで すよね。調査で、ターミナルとか、在宅を希望 するかということに対して、大体6 割の方が希 望するとあったんですけど、ただし、何か家族 に手間をかけてしまうときがあったら施設に変 えたいと。「最後まで在宅で希望する」という 方は11 %ぐらいというのがあったんです。だ から、介護を受ける側が、家族に対してかなり 本人の遠慮みたいな部分もだいぶあるんじゃな いかなという気はします。

あと、ターミナルでの在宅に関して、病院の 頃にガンの末期であと1 週間か2 週間ぐらいで非常に危ないという場合、10 年ぐらい前です が、家族が希望して自宅に連れて帰りたいとい うことで自宅に帰って看取った場合がありま す。このときは家族がみんな大勢で最期を看取 って、家族もとても満足されていたんですけ ど、やっぱりああいうのをやると、在宅という のはやりがいがあるなという感じはします。

一方、僕は診療所で内科をやっているんです が、今は診療所でも在宅をやるようにという流 れにだんだんなってきてはいると思うんです。 正直なところ、僕は2 人ぐらい在宅で見ている んですが、落ち着いた方ばかりです。その中で どうしても不安定になって自分が対応できない ような場合には、在宅専門の診療所にお願いを するんですけど、個人診療所ではどうしてもか なり対応するのに限界があるのかなと。在宅専 門の診療所というのは是非必要だなと思います。

○司会(玉井) ほかに何かご質問ございま すか。あと2つぐらい受けたいんですけれども。

○小渡副会長 在宅で死亡した場合に、私は いつも矛盾を感じることがあります。私は警察 医をしていますが、医療にかかっている人も、 かかっていない人も、家で亡くなった場合、死 亡診断書を書いてもらえないと変死扱いにな り、警察に運ばれ、裸にされて冷蔵庫に入れら れます。それを検死するわけです。一生懸命真 面目に生きた人でも、死亡診断書を書く医師が いなくて、最期はこんな形になるということ に、非常に矛盾を感じます。だから、死んでも なお人格が傷つけられているような感じがし て、ものすごく嫌です。そういう矛盾を感じる わけです。本来、家で亡くなったら、そこへ行 ってその場で死亡診断書を書けばいいわけです よね。しかし現在のシステムでは、死亡してし まうと死亡診断書ではなく、死亡検案書になる ので、このようなことが起こっているのではな いかと思います。この点は、改善しないといけ ないと思います。

かかりつけ医の機能が制度的に追いついてい ないんですよ。今度の改正で自宅に行って、ち ゃんとそういうターミナルを診たら1 万2,000 点つけることになりましたが、そういうことをどんどんやらないと。これもかかりつけ医の業 務の1 つだという形に制度的にやってもらわな いと、今みたいな現象を起こすわけです。

○司会(玉井) 異状死とか、変死とか、死 亡診断書、また死体検案書という問題があるん ですけれども、我々、死を扱うやり方が細かく 決められているんです。24 時間以内とか。それ で本来は事件性はないんだけれどもと思いつつ も、もう死亡診断書は書けないため、死体検案 書という形にもならざるを得ないこともありま すね。

先生方で何か今の件でご発言のある方、いら っしゃいますか。

○玉城副会長(医師会) 例えば、ずっと僕 らのところに通っているガンの末期みたいな人 がいるんですね。それがある朝亡くなっていた ということで、1 週間前には診ているんだけど、 それで電話かかってきますね。どういう状況だ ったかと。途中でもちろん警察が判定するけ ど、異状死でなければ診断書を書いてくれると いうときもありますね。

在宅で介護するためには、1 人の人を見るた めに人手が3 名は必要なんです。そうでないと 嫁さん1 人がものすごく苦労をすることになる から、それは絶対できないですね。うちの場 合、結局女房しかいないし、もうできないとい うことで兄弟たちが来るんだけど、結局は来た ときにちょっと外泊するぐらいしかできません でしたね。

訪問の看護師さんとか、いろんな方が来るん だけど、その人たち1 時間ぐらいでみんな帰っ てしまう。残り20 数時間は自分たちで見ない といけないという現実があるので、ガン末期の 人を見ているときには、家族がいて、できるだ け家で見て、本人が意識がおかしくなっても寝 ているような状態だったらすぐ連れて来て構わ ないと。最期は1 週間ぐらいか2、3 日で終末期 を迎えるから、そのときには我々が見てもいい ということもあるし、頼まれて往診して、今晩 か明日ぐらいには亡くなるだろうから、亡くな ったら電話をくださいということで、それから 診断書を書くということもありますね。そのときに我々が直接診療所から出ていくことができ なければ、訪問看護ステーションの看護師さん にお願いをして、最後のケアをしてもらって、 診断書は見ている医者が書くとかという連携は 十分できることもありますね。そういうことも 何度かやっています。

○和気氏(医師会)

和気氏

14、15年前に宮古病院に勤務をしていた時 期があって、宮古の方々は臨終が近くなってく ると入院中であってももう家に連れて帰らせて くれ、畳の上で最期を迎えさせてくれというこ とで、お家に連れ帰られる方が多かったです ね。その場合も僕らは24 時間以内に診療をし ていないと診断書が法的に書けないんですよと いうことをご説明して、いよいよもう24 時間 もちそうもないなというときをみはからって人 工呼吸器を外して、酸素は出せますけれども、 連れて行っていただく。最期の看取りは家族に していただいて、おっしゃるようにあとから話 を聞いて、じゃ何時何分でしたねと診断書を書 くようなこともあるんですけれども、ただ、そ の見極めを誤って少し延びてしまうと、やっぱ り介護にかかるから人の手って大変なんです ね。3日目、4日目になってくるとやっぱり大 変だ、先生、病院にもう1回戻してくれと言っ て連れてきますものね。

○司会(玉井) いつのまにか終末期医療の 話になってしまっていますけれども、これも非 常に重要な話ですから、いつかはやりたいなと 思っていたぐらいです。本当に「介護」と「終 末期」は切っても切れない。結局それがまだ法 的には、まるで整備されていないというものもあるということもわかっていただけたなという ふうに思います。

○下地氏(医師会) 質問ですけど、例えば 厚生労働省は2025 年に医療費が70 兆円ぐらい になるとか、今回の療養病床の削減の根底も、 例えば、社会的入院が半数ぐらいいるとかいう ようないろんな調査報告を出しているんです が、ああいう基礎データというのは出されてい るんでしょうか。ちょっと何かの本で見たら、 日本の厚生労働省はそういう基礎データを出さ ないで、いろんな医療経済学者たちがそれぞれ いろいろ研究していろんな方針を出すというふ うなことがなかなか日本ではできないというよ うなことを少し読んだ覚えがあるんですが、現 実はどうなんでしょうか。

○小渡副会長 これは全部基礎データがあり ます。本日は時間がないので出さなかったんで すけれども、この制度の改正に当たっては国は 用意周到なんです。事前に各病院にアンケート を行っています。そのアンケートでは、医師が 患者にかかわった時間を調査しています。「毎 日診察をしている人」、「週に1 回診察をしてい る人」、「たまにしか診ない人」という見方をし ています。それから、ADL 調査です。どの程度 のADL があるかというのを調査しています。 その結果が、結局は介護療養型も医療療養型も ほとんど差がないというのが論拠だったんで す。その部分だけを捉えて、今回の改正を行っ ていますが、別のデータもあるようです。

○司会(玉井) かなり用意周到に外堀から 埋めて、もう路線は仕方のないところもござい ます。ただ、我々ができることは何かというこ とをまた皆様と一緒に知恵を絞っていきたいな と思っております。

では、本日は長い時間の懇談会、どうもお疲 れ様でした。どうもありがとうございました。

注釈:話し言葉で議論されているものを、発 言者の内容趣旨を重んじながら、簡素 化してまとめさせていただきました。

広報委員会