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第13 回沖縄県医師会県民公開講座
ゆらぐ健康長寿おきなわ
骨粗鬆症〜元気な骨をいつまでも〜

玉井修

理事 玉井 修

会場風景

会場風景

10月14日(土曜日)は秋の晴天となり、会 場のロワジールホテルには早い時間から多くの 方が会場に入り、準備した座席は700人の聴衆 でいっぱいとなりました。

会は、ほぼ定刻通り開催され、まず宮城信雄 沖縄県医師会会長よりご挨拶頂き、続いて沖縄 県福祉保健部保健衛生統括監の仲宗根正氏よ りご挨拶を頂きました。

進行を座長の大湾一郎琉球大学医学部整形外 科学助教授にお願いして、講演に入っていきま した。まず、大湾助教授より骨粗鬆症の疾患概 念と沖縄県の現状についてお話頂き、その中 で、無症状の時期に早期発見することの重要性 について強調して頂きました。続いて、吉川朝 昭先生より骨が如何にactivity の高い臓器であ るかをユーモアを交えながら講演頂きました。 「人は死んだら骨になるなどと言われるが、骨 は実際はとても活動的なイキイキとした臓器の 一つであり、人は死んだら死んだ骨になると言 うのが正解!これは試験に出るからね!」等と 軽妙なお話に会場が和やかなムードになりまし た。続いて、屋良哲也先生より骨粗鬆症の治療 についてお話があり、最近では薬物療法が長足 の進歩を遂げている事を詳しくお話頂きまし た。廣瀬友香さんからは、管理栄養士のお立場 から骨粗鬆症を予防するための食事についてのアドバイスと、特に今回は若い女性の痩せ願望 がpeak bone massの低下を招き、将来の骨粗 鬆症発症の温床となる可能性があることをお話 頂きました。また、石嶺友恵さんからは理学療 法士の立場から骨粗鬆症を予防し、転倒、骨折 を予防する為の運動療法について動画を交えな がらお話頂きました。

その後、会場からの質問にお答えする形でデ ィスカッションが行われました。その中でも特 に印象深かった内容に関しては座談会の中で話 題となりましたので、是非お読み下さい。特に 最後、「今日の公開講座は先生方が大変優しく て良かったです、今後も患者が質問しやすい優 しいお医者さんで居てください」とフロアから のご要望がありました。県民公開講座が正確な 医療情報の発信源であるだけではなく、医師と 患者の距離感を縮め、医療と県民との関係をよ り良好にするための一翼を担っていると感じま した。

会場を見回すと、ご年配の女性が多く、前回 脳卒中の県民公開講座を開催したときとは聴衆 の構成が違っているように思えました。県民公 開講座はテーマの選び方によって来場する方が 違うような気がします。各地催し物が多い中で、 県民公開講座に足を運ぶきっかけはテーマの選 び方が大切であるという事を認識しました。

会場風景

会場風景

講演の抄録

骨の健康を考える
大湾一郎

琉球大学整形外科 大湾 一郎




昭和63 年 琉球大学医学部医学科卒業
平成2 年 琉球大学大学院医学研究科入学
平成6 年 同上卒業後、米国インディアナ大学留学
平成9 年 帰国後、琉球大学医学部助手
平成12 年 琉球大学医学部附属病院講師
平成14 年 琉球大学医学部助教授


日本整形外科学会専門医、日本リウマチ学会専門医

骨粗鬆症は、骨の量が減少、あるいは骨の質 がもろくなることによって、骨の強さが低下 し、骨折しやすくなる病気です。高齢者や閉経 後の女性に多く、日本では約1 千万人の患者が 存在すると推定されています。骨粗鬆症になっ ても、最初のうちは自覚症状はありません。そ のうち、腰や背中が痛くなったり、身長が低下 して腰が曲がったり、ひどくなるとちょっとし た転倒でも太ももの付け根や背骨の骨折を生じ ます。このため、負担の大きい手術や長期間の 入院が必要になってしまい、寝たきりになるこ とも少なくありません。

太ももの付け根の骨折を股関節骨折といいま すが、日本では年間10 万人以上の方がこの骨 折を受傷しています。年代別では80 歳代での受 傷が最も多く、80 歳から84 歳で100 人に1 人、 85 歳以上では50 人に1 人の割合です。沖縄県 では2004 年の1 年間に1343 人の方がこの骨折 を受傷しました。骨折が治癒しても、歩行能力 は骨折前のレベルに戻らないことが多く、骨折 は高齢者の生活の質(QOL; quality of life)の 低下に大きく関与しています。現在、日本国内 で寝たきりの生活を送っている人は120 万人を 超えますが、寝たきりの原因として脳卒中に次 いで多いのが骨粗鬆症性の骨折です。

高齢化社会を迎え、骨粗鬆症の予防と治療の 重要性はますます高まっています。日本人の平 均寿命(2005 年)は、男性で78.5 歳(世界第 4 位)、女性で85.5 歳(第1 位)になりました。 人の一生のうち、自立して健康に暮らせる期間 を健康寿命といいますが、日本人の男性で72 歳、女性で78 歳と報告されています。健康寿 命を過ぎて亡くなるまでの期間、男性で6.5 年 間、女性で7.5 年間は、誰かの介護を受けてい ることになります。年老いて骨折し、足腰が弱 くなり、歩くこともままならない状況を想像し てみて下さい。ただ長生きするだけでなく、介 護に頼らない自立した人生を送りたいと誰もが 願うはずです。

健康寿命を延ばしましょう。そのためには、 高血圧などの生活習慣病に対する対策だけでは 不十分です。骨粗鬆症についても十分な知識を もち、できるだけ早い時期から骨粗鬆症対策を 開始し、骨折を予防することが大切です。

では骨粗鬆症対策として、まず行わなければ ならないことは何でしょうか。それは骨密度の 検診を受けることです。自分の骨密度を知るこ とは、骨の健康を考えるきっかけになるはずで す。是非、お近くの骨密度測定装置を備えた病 院で検査を受けて下さい。20〜30歳代の人の骨密度を100 %としたとき、70 %以下に低下した 状態を骨粗鬆症と診断しています。自分の骨密 度は若い人の何%に当たるのかを確認しましょ う。血圧の値を知らないで高血圧の治療を受け る人がいないように、骨密度の値を知らなけれ ば自分に迫り来る危険を知ることができません。

検診の結果、骨粗鬆症と診断されても手遅れ ではありません。しっかりと治療すれば、骨折 は予防することができます。骨粗鬆症の治療 は、食事療法、運動療法、薬物療法の3 本柱で 行います。どれか1 つが欠けても効果は不十分 です。薬は飲みたくないので食事と運動で頑張 りたい、薬の代わりにサプリメントで補給する といった考えは危険です。骨密度を上げる治療 効果の高い薬剤が使用可能となり、骨量増加や 骨折予防に役立っています。症状がないからと いって油断し、放置することがないようにお願 いします。

骨粗鬆症は、自覚症状がないまま、いつのま にか進行し、ほんのささいなことで骨折しやす くなる病気です。60 代女性の半数、70 代女性 の7 割が骨粗鬆症といわれるほど、誰にも身近 な病気です。いつまでも足腰が丈夫で、健康で 自立した生活が送ることができるように、骨の 健康を考え、早めの骨粗鬆症対策を実践しまし ょう。

「骨粗鬆症 基礎と臨床」
吉川朝昭

西崎病院 副院長・整形外科 吉川 朝昭




昭和60 年山梨医科大学卒業後、琉球大学医学部整形外科入局
昭和61 年琉球大学医学部大学院入学
平成3 年同上卒業後、米国インディアナ大学留学
平成5 年帰国後、琉球大学医学部附属病院助手
平成6 年琉球大学医学部整形外科助手
平成9 年琉球大学医学部整形外科講師
平成12 年西崎病院 副院長

生体における骨の役割は、1)筋肉と連動し、 姿勢の保持や運動機能を司る、2)骨格を形成し 重要臓器を保護する、あまり知られていないも のとして3)骨の内部(骨髄)での造血、4)カル シウム代謝への関与、などがあります。4)につ いて補足しますと、骨はカルシウムの貯蔵庫と して重要なのです。血液中のカルシウムの濃度 は常に一定であるべきで、その異常は生命の危 機に直結します。血液中のカルシウムが少なく なりかけたら、すぐさま骨からカルシウムを動 員し、その危機を回避するのです。1)と4)が骨 粗鬆症を理解する上で重要となってきます。

骨は生下時から成長期終了までは、成長とい う重要な任務をこなします。食事から得たカル シウムやリンを積極的に骨に添加し、長く太く なり、生体の活発な活動を支えます。成人して からは成長という要素がなくなるので、骨の主な働きは、造血やカルシウム代謝となるのです が、運動や労働あるいは単に体重増加などで骨 に対してさらなる力学的強度が求められるよう になると、骨はそれに応じて強くなります。一 方、生体の活動性が低下すると、骨に対する荷 重刺激が減り、「私はそれほど必要とされてい ないんだ。」と骨がいじけて(?)、骨塩量(骨 のカルシウム密度)が低下し骨は弱くなりま す。もうひとつ骨に対する環境の変化は加齢で す。加齢とともに、腸管からのカルシウム吸収 が低下、骨塩量維持に重要な女性ホルモンが減 少、運動量の低下など様々な要因が、骨からの カルシウム動員を促し、骨を弱くします。

壮年・老年期における骨塩量の減少は、生理 的な範囲であれば、大きな問題を引き起こすこ とはありません。しかしそれが病的になると、 軽微な外傷で骨折したり、円背などの胸郭の変 形や姿勢変化を引き起こします。このような病 態を骨粗鬆症といいます。高齢での骨折は、寝 たきりの原因の第2 位で、胸郭の変形は呼吸機 能や腸管運動の低下をもたらします。また姿勢 の変化は審美的な観点から引き籠もりの原因と もなります。高齢化社会の課題である老齢期の QOL を考える上で、骨粗鬆症の正しい理解と 予防、適切な治療は今後ますます重要なものに なると思われます。

骨粗鬆症の治療
屋良哲也

那覇市立病院整形外科部長 屋良 哲也




昭和61 年島根医科大学卒業
昭和61 年琉球大学医学部医員(研修医)
平成9 年琉球大学医学部助手
平成11 年琉球大学医学部講師
平成13 年那覇市立病院整形外科部長


日本整形外科学会専門医
日本脊椎脊髄病学会指導医
医学博士

日頃から食事、運動、日光浴を行い丈夫な骨 づくりをこころがけることはもちろん大事なこ とですが、骨粗鬆症と診断されたなら治療を受 けなくてはいけません。骨粗鬆症の治療薬には カルシウム、ビタミンD およびK、カルシトニ ン製剤、エストロゲン製剤、ビスフォスフォネ ートなどがあります(図1)。カルシウムは食事 からの摂取が不足している方に処方されます。 ビタミンD およびK は体の中で作用しやすいよ うに活性型ビタミンとして製剤されており骨の 代謝を助けます。カルシトニン製剤は週に1 〜 2 回注射することで、骨を丈夫にするとともに 骨折の痛みを和らげることもできます。エスト ロゲン、ラロキシフェンは骨密度を維持する作 用があり、女性ホルモン分泌が著しく減少する 閉経後女性に用いられます。ビスフォスフォネートは骨を壊す破骨細胞を減らし、骨を作る骨 芽細胞を増やすことで骨密度を高めることがで きます。実際の治療はこれらの薬から1 〜 2 種 類を選んで処方し、骨密度や血液・尿検査にて 効果を判定しながら薬を変更したり追加したり します。

それぞれの薬は服用法がまちまちで、また他 の病気の治療薬との併用ができないものや寝た きりの方には使用できないものありますので、 服用にあたっては医師への確認が必要です。治 療によって老化に伴う骨密度の低下を防ぎ、骨 折の頻度を下げることができます(図2)。

骨粗鬆症の治療は整形外科、婦人科、内科な どで行っています。骨折や腰痛のために整形外 科、更年期障害のために婦人科、かかりつけ医 であるため内科といった具合に各診療科を受診 してはじめて骨粗鬆症と診断されることが多い ようです。気になる方は人間ドックで骨密度を 調べてもらうか、最寄りの専門医を受診してみ て下さい。

図1

図1.治療薬のいろいろ

図2

図2.治療の効果(大腿骨頚部骨折の発生率)

「やせと肥満と丈夫な骨」
廣瀬友香

Nutrition Support Office えいよう相談室
管理栄養士 廣瀬 友香


平成7 年 大阪市立大学生活科学部食品栄養科学科卒業
平成11 年 医療法院沖縄徳洲会 南部徳洲会病院
平成14 年 医療法人信和会 沖縄第一病院
平成16 年 屋宜内科医院
平成18 年 Nutrion Support Office えいよう相談室
管理栄養士・健康運動指導士・糖尿病療養指導士
クリニックでの栄養相談を中心に健康づくり活動に携わる

「骨」と言えば「カルシウム」と答える方は 多いでしょう。テレビやラジオ、雑誌や広告な ど、黙っていても健康情報が勝手に耳に入って きます。

「一体どれが本当なの?」と戸惑ったことは ありませんか?

「骨」に関わる栄養素は、カルシウムの他に、リン、マグネシウム、ビタミンD、ビタミ ンK 等があります。他にも様々な栄養素が関係 しています。栄養の過不足は食事が決め手で す。骨粗鬆症予防に努めたいという気持ちか ら、何か一つの食品ばかりを一生懸命食べて も、骨粗鬆症以外の疾病にかかっては、健康に とって逆効果ということも考えられます。骨粗 鬆症予防に限らず、食事については、「量とバ ランス」が大切です。正しい知識を養ってくだ さい。

骨を作る重要な栄養素であるカルシウムの必 要量は、1日600mg以上とされています。日本 人のカルシウム平均摂取量は1日536mgですか ら(平成15年国民健康栄養調査)、平均的にカル シウム摂取量は不足していることになります。

牛乳の吸収率が一番高いのですが(表1)、牛 乳だけでカルシウムの必要量を満たすには、大 量に牛乳を飲むことになり、そのために健康を 害すことも考えられます。極端に一品を摂取す るのではなく、小魚や緑黄色野菜、海草類等、 いろいろな食品からカルシウムを摂ることが大 切です。表1 以外の食品では、大豆製品はカル シウムもあり、大豆製品の大豆イソフラボンは 骨密度減少抑制に役立つといわれています。

表1

サプリメントの利用も有効ですが、吸収率の 点からも食事のバランスが大切です。尿管結石 などの既往のある場合は主治医と相談されたほ うがよいでしょう。

骨のためには、摂取量を増やしたほうがよい 栄養素(表2)がある一方、摂取量に注意が必要な食品(表3)もあります。加工食品、イン スタント食品の摂りすぎは、多く含まれている リンがカルシウムと結びつき、カルシウムの吸 収を妨げることがあります。アルコール、コー ヒー、塩分の摂りすぎも影響があると言われて います。アルコール、コーヒー、塩分、これら の過剰摂取は利尿作用があり、尿中にカルシウ ムが排泄されてしまいます。アルコールの過剰 摂取は肝臓に、塩分の過剰摂取は血圧に悪影響 を与えることが一般に知られています。骨のた めだけでなく、健康保持のためにも摂りすぎに は注意しましょう。

表2
表3

さあ、あなたの食事はどうですか?「牛乳が よい、リンやマグネシウム、ビタミンD のため に脂質の多い魚や肉を食べて、大豆、豆腐、納 豆も加えて、さらにヨーグルトも・・・?」そ んなに食べたらエネルギー過剰になりません か?

沖縄県は肥満大国。肥満の割合が全国1 位で す。原因として、油の摂りすぎが考えられます が、1 人前の量が多いということも原因のひと つです。カルシウムなどのミネラル等を摂るた めに、カロリーオーバーになっては困ります。 量と質のバランスが大切です。

肥満が問題視される中、若い女性の「やせ」 も深刻な問題となっています。特に、骨の形成 に大事な時期である思春期に朝食の欠食や、無 理なダイエットが増え、20 〜 30 歳代女性の 「やせ願望」も強くなっています。骨折する人 は、「やせ」の人が多いと言われています。低 栄養が骨も弱くしてしまうのです。過度のダイ エットは、カルシウムが不足することは必至で す。他のミネラル、ビタミンも不足し、ホルモ ンのバランスも崩れてしまいます。また、受精 時の母親の低栄養状態が、低体重児の出生につ ながっていると言われています。胎内で低栄養 状態であった低出生体重児は、出生後の満たさ れた食環境に適合できず生活習慣病を引き起こ すとも言われています。

丈夫な骨のために「カルシウムさえ摂ってい れば大丈夫」というわけではありません。年齢 ごとの適正体重を知り、その体重を維持するこ と、そして、そのために適量でバランスの良い 食事を心がけることが大切です。

“丈夫な骨は一時にして成らず”

骨粗鬆症と運動
石嶺友恵

中頭病院理学療法士 石嶺 友恵




平成11 年 沖縄リハビリテーション福祉学院理学療法学科卒業
平成11 年 永生病院勤務
平成13 年 永生クリニック勤務
平成17 年 浦崎整形外科クリニック勤務
平成18 年 中頭病院勤務


・排泄ケア専門員

“背が縮んだ”“最近、背中が丸くなった” “腰や背中が痛い”などの症状はありません か?実はこれは単なる加齢による症状ではな く、骨粗鬆症の可能性があります。骨粗鬆症は 骨がもろくなってしまう病気の事ですが、何故 私達の健康を脅かすのか考えていきたいと思い ます。

骨粗鬆症になると姿勢が悪くなったり、骨折 することで日常の活動性や筋力の低下を招き、 寝たきりになる可能性があります(図1)。寝た きりになる原因の第1 位は脳卒中、第2 位が骨 粗鬆症による骨折であるため、骨粗鬆症の予防 が寝たきりの予防にもつながるのです。

図1

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丈夫な骨作りや、日常の活動性を上げるのに 欠かせないのが運動です。骨に負荷を加えるこ とで、骨の形成サイクルが活性化されて骨の強 度が増します。骨の量は成長期・思春期に増加 し、20 〜 30 歳をピークに年々減少していきま す。この骨の量の最大値を最大骨量(ピークボ ーンマス)といい、若い時にこの値が高い人ほ ど骨粗鬆症が発症しにくくなります。このため にも若い頃から最大骨量を増やすことが大切で す。最大骨量を高めるためには、そのピークの 時期までにしっかりと骨に刺激を加えることが 大切になってきますので、若年期にはクラブ活 動や屋外での活動が適切です。しかし過度な運 動はホルモンバランスを崩し、月経不順など閉 経後と同様の状態になってしまうのであまりよ くありません。またピーク後の骨の減少が始ま る時期からは、ジョギングやウォーキング、水 泳、水中ウォーキングなどが適切です。ウォー キングや水泳は骨にかかる力は多くありません が、継続して行えば効果がでます。運動が苦手 という方は、散歩などから始めると良いでしょ う(図2)。

図2

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身体を楽に動かすためには柔軟性も必要になってきます。ストレッチ体操を行うと単に身体の 柔軟性が増すばかりでなく、筋力も発揮しやすく なると言われていますので、他の運動と併用して 行っていただきたいと思います(図3〜5)

図3

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図4

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図5

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また最近では、有酸素運動とともに筋力強化 を併用して行うほうが、健康増進には良いと言 われるようになってきました。今回は自宅でも 行える筋力強化運動を紹介したいと思います (図6 〜 10)。

図6

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図7

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図8

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図9

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図10

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第13回県民公開講座 骨粗鬆症〜元気な骨をいつまでも〜座談会

○玉井理事 みなさんお疲れさまでした。

大湾先生、今日は700 名ぐらい来ていたかと 思いますが、座長をされてみて雰囲気はいかが でしたでしょうか。

○大湾座長 よかったですね。吉川先生は趣 向を凝らして大変ユニークでした。あれで大分 感じが和みましたし、非常に良い雰囲気で進め たと思います。

外来での骨粗鬆症について

○玉井理事 骨粗鬆症はお年寄りの方に多い のですが、先生方、外来をやっていていかがで しょうか。

○大湾座長 そうですね。骨粗鬆症を心配さ れる60 代、70 代の方の中で、予防意識が高い 方は良く来るんですが、骨粗鬆症がひどくなっ て出歩くのがおっくうになるとなかなか受診 しなくてどうしても閉じこもりがちになってし まいます。病院に来る方はまだ良い方なんで す。もちろん骨粗鬆症にならないことが理想な んですが、もしそうなっても治療すればある程 度良くなるし、症状がとれることがあるという ことを知っていただいて、病院に足を向けてい ただけるようにできたらと思います。

○玉井理事 なぜ、病院に行かないのでしょ うか。

○大湾座長 恐らく、骨粗鬆症の治療の知識 が十分に行き渡っていなくて、老化現象のせい だと思っている患者さんがいらっしゃると思い ます。それで閉じこもってしまって、どんどん 症状を悪化させる悪循環に陥っているのではな いでしょうか。

○玉井理事 寝たきりの流れになってしまう んですね。

石嶺さん、実際に年だからと諦めているよう な、そういったご家族の方は多いでしょうか。

○石嶺先生 そうですね。痛いのも姿勢が悪 くなってしまうのも、年だからと一言でかたづ けてしまう方が多いですね。多少痛みがあって も我慢してしまうのが沖縄の方の特徴なのかな とも思います。ひどくなる前に対応しないとい けないと言ってはいますが、実際に日常生活に 支障が出ない限り、なかなか相談にも来てもら えないですね。

○玉井理事 本人も治療をやる前に諦めてし まう、更に家族もしかたないと思ってしまっ て、そのまま寝たきりになってしまうパターン があるんでしょうか。

○屋良先生 本来は早い段階で治療すること が大切なのですが、出来れば診療所で骨塩量を 測って治療を行ってもらい、必要に応じて専門 医に紹介してもらいたいですね。

○大湾先生 出来れば、総合病院でDXA法診 断をして、必要であれば開業医の先生のところ で治療を行う。開業医の先生のところですとど うしてもMD 法等診断の種類が限られてきます ので、それだと正確な診断が出来なくなります。

○玉井理事 骨粗鬆症は診断・治療が可能だ ということが、未だ十分理解されていないとこ ろもあるのでしょうか。

○吉川先生 患者さんが分からないこともも ちろんあるのですが、治療しているドクター自 身があまり分かってないということもあります。 骨粗鬆症を治すツールは揃いつつあります。僕 も実際にビスフォスフォネート製剤を5 年ぐら い使ってきて、骨塩量0.6 ぐらいの方が0.9 まで 上がった方が結構いるので、将来の骨折を防げ ることが実感として分かって来ています。

そのようなことを解っていないドクターも多 いように思いますので、ドクターの意識改革も 今後必要ではないかと思います。

○大湾座長 それはとっても大きいですね。 例えば外来で50 〜 60 代の方が来ても症状がな ければ、ドクターは計測しないですね。骨粗鬆 症は自覚症状がありませんので、最初は年齢で 判断し、閉経が有る無しで判断して検査すると いったことを医師の側から進めないと効果は出 て来ないですね。

○玉井理事 宮城会長、医師会の仕事と言え そうですね。

○宮城会長 私が診ている腎も骨代謝の最た るものです。それを見てると治らないというこ とが頭の中にあるんです。今のお話を伺ってみ て、骨密度を上げるツールがあるということを もう少し、一般臨床医に対するアピールも必要 なのではないでしょうか。

ピークボーンマスと肥満

○玉井理事 あと、今日頂いた質問の中で、 若い女性のやせ願望に関する質問も沢山頂きま した。廣瀬さんも今日は大分それを強調されて ましたね。肥満も良くないけど、若い女性の十 分なピークボーンマスを持っていくことも1 つ の課題ですね。

○廣瀬先生 そうですね。肥満は最近大分話 題になってきていますが、一方の「やせ」につ いても強調してみました。

○玉井理事 大湾先生、このピークボーンマ スについてこれから訴えたい事などはありませ んか。

○大湾座長 特に食事と運動ですね。最大骨 量を上げることが非常に重要です。骨粗鬆症は 小児の病気だとする先生もいらっしゃいます。 小児科で骨粗鬆症を専門にされている先生もい らっしゃいます。子供の時から治療していかな いといけないとする考えもあるぐらいです。

県民の健康に対する意識

○玉井理事 銘苅さん、こういった県民公開 講座をするにあたって、県民の健康に対する意 識というものは高まっているような気がします がいかがでしょうか。

○銘苅部長 そうですね。県民公開講座は今 回で13 回目を数え、ある程度関心が高まって いると思います。これまで脳疾患、うつ病、肥 満等さまざまな問題を取り上げてきました。

本日は骨についてということで地味なテーマ ではありますが、今回は骨も重要なものだと大 きくアピールできたと思います。本日の先生方 のお話を聴いて、栄養のあるバランスの取れた 食事、運動、早期発見・治療がやはり重要であ ると同時に、色んな疾患対策にもこの3 点が当 てはまることを再認識しましたし、本日の参加 者の方々も実感したのではないかと思います。 この県民公開講座も開催を重ねるにつれて重要 度が高まってきていると思います。

○玉井理事 今日のテーマは「死に繋がる」 というよりも寝たきりや介護、QOL に関わっ てくる問題ですよね。屋良先生から寝たきりに なった場合に4 年間で1,500 万円掛かるというお話がありましたが、社会資本を上手く活用す る上でも大きな課題でもありますね。

○銘苅部長 今日参加された方々の中には、 実際に介護をしている方等、実体験をされてい る方が多いのではないでしょうか。

介護保険と骨粗鬆症

○玉井理事 宮城会長、介護保険制度もどん どん変わっているようですが、骨粗鬆症対策の 重要性も大きいと思いますが、今後はこの制度 はどういうふうになっていくのでしょうか。

○宮城会長 介護保険を一番使っているの は、要介護度1 等の比較的軽い人が殆どなんで す。色んな問題があって、サービスの掘り起こ しをしていっています。都道府県によってその 差は全然違います。使い方の問題です。そうい う意味では、介護保険をきちんとやっていかな いと医療保険と同じように必ず削減されること になります。骨粗鬆症が原因で骨折を起こして 寝たきりになった場合、4 年間で約1,500 万円 が必要となる試算が出されておりましたが、そ ういうことをもっとアピールしないといけない と思います。いかに健康を維持していくことが 大事であるかということです。平均寿命26 位 ショック以来、色々な啓発が行われて来ました が、これからは県民のみなさんが実践していか なくてはなりません。

医師の診療態度の大切さ

○玉井理事 大湾先生、最後の質問に「患者 さんにやさしくしてください」という言葉があ りましたが、どういうふうに受け止めていらっ しゃいますか。

お年寄りの方などは、ドクターに対して怖い というイメージがあるのでしょうか。

○大湾先生 怒らないことは医者として当然 のことだと思います。私もそうですが、反省点 はそういった質問が出来ない雰囲気を与えてい ないか、忙しい診療の中だとそうなりがちでは ありますが、その辺を意識していかないといけ ないと思います。

○宮城会長 そうですね。患者さんが質問し やすい雰囲気を作ることが医師として大事なこ とですね。

以前は医者の言うことを聴いていれば良いと いう態度でも許されていたのですが、これから はそういう訳にはいかないですね。医師全員が それを自覚していかいなといけません。そうし ないと一緒に予防や治療を実践できませんの で、そういう意味でも診療態度は非常に大事だ と思います。

○大湾先生 質問してくれると逆にうれしい ですよね。身近に感じてくれてるのかと思いま すね。

○玉井理事 医療に携わる者すべての皆さん が、患者さんにやさしくありたいと願います。

本日はどうもありがとうございました。

注釈:話し言葉で議論されているものを、発 言者の内容趣旨を重んじながら、簡素 化してまとめさせていただきました。

広報委員会